機動戦士ガンダム虹の軌跡   作:シルヴァ・バレト

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19:己が刃で斬り捨てる

 宇宙世紀0079.12.31 05:00 連邦軍、残存艦隊の再編成終了。

 

 08:10 連邦軍と公国軍によるア・バオア・クー攻防戦の開始。連邦軍、突撃艇を主力とする第1次攻撃隊を発進させる。

 

 08:40 連邦艦隊からMS隊発進

 

 俺達第00特務試験MS隊は、【()4()0()()()()()()()】、さらに【()0()1()()()()()】と共闘することになった。

 

 そして、既に俺たちは、Xフィールド付近で待機していた。

 

[……長いな…]

 

[まだ時間かかるんですか…?もう手持ちのお菓子切れちゃいますよ…]

 

 そう言いながらも、何かお菓子を食べているユーリ。

 

[…少しは甘いものを控えられないのか…?]

 

 呆れ気味に言う道夜。

 

[えー、だってー。美味しいんですもん]

 

[……お前という奴は…]

 

「…敵の反応は…ないが…」

 

 そんな二人をよそ目に、俺は小さく呟く。

 

「…ここまで来て待機なんて…」

 

 待機するのには理由があった。

 

 第40特別攻撃小隊の小隊員は揃っているものの、いまだに第01遊撃小隊が誰一人として来ないのだ。

 

 そして、既に他フィールドでは戦闘が始まっているはずなのだが…。

 

「…おかしいな…」

 

 そろそろおかしいと思っても仕方が無い時間だ。かれこれ俺たちは小一時間は待っているだろう。

 

「…まさか…落とされたか…?」

 

[そんな訳は無い。背後には味方が待機しているというのに、どうやったら落とせるんだ…]

 

「…それもそうか…」

 

 二人で考え込んでしまう。すると、ユーリが口を開く。

 

[そうですね…あるとするなら、寝返りですかね…]

 

「ね、寝返り…?」

 

[…なくはなさそうだが…あまり考えたくないな…]

 

 

[う、うわああああ!!!]

 

 唐突に聞こえる悲鳴。そして背後で聞こえる爆音。

 

「…!」

 

[なんなんですか!?]

 

[くっ…なんだ…!!]

 

 

[くそっ!!なんで連邦が攻撃して来るんだ…っ!]

 

[お、落ち着くんだ!皆!!!態勢を立てなお…うわあああああ!!]

 

 連邦のジムによって味方のジムが落とされる。そしてそれはさらに状況を悪化させることになる。

 

[た、たいちょおおおおおお!!!]

 

[…!!まずいな…むこうの隊長機が落とされただと…!?]

 

「今から援護に…!ぐっ…!?」

 

 突然前からジオンのザクが接近してくる。

 

[あちゃあ…これは…裏切られましたね…]

 

[ちっ…!ムゲン!どうする?!]

 

「…くっ…!」

 

 俺は、Xフィールドの戦闘指揮をファングさんから任されていた。自分は嫌だといったのだが、周りの空気でそうなってしまった。

 

「俺が…。俺が味方機の救援に行く!道夜、ユーリは正面を!」

 

[…ふっ…。任された]

 

[りょーかいですよー。隊長さん]

 

 と、からかってくるが、声に余裕が見れないユーリ。状況が状況で仕方が無い。

 

 俺は二人に背を向け、味方の救援へ向かう。

 

 

 

 俺はブースターを起動し、急いで味方の元へ向かう。

 

「間に合ってくれよ…!」

 

 

[ひぃいい!!!死にたくない…死にたくない!!!]

 

 味方に裏切られ、完全に戦意を喪失している。そんな味方に向かって、ジムはビームガンで撃ち抜こうとする。

 

 だが…。今だからこそ、俺はビームライフルを構え、照準を合わせる。

 

「……今なら…当てられる…!」

 

 仲間を…守るために…!

 

 俺はその想いをこめ、トリガーを引いた。

 

「そこだぁあ!!!!!」

 

 ビームは鋭くジムの右腕を貫いた。

 

[…えっ…!?]

 

 すかさずビームダガーを引き抜き、ジムを通り抜けざまに切り裂く。

 

[ぐっ…シゼル……騙しやがったな…。簡単な任務だと…!!うおおおおおおお!!]

 

 その言葉と共に、機体が爆音を上げて爆発する。

 

[……た、たす…かった…?]

 

 まだ状況が理解できない味方に、無線を送る。

 

「こちら第00特務試験MS隊所属のXフィールド攻撃隊指揮官のムゲン・クロスフォードだ!ヨンマル。生存報告を!」

 

 その言葉を聞いて、1機のジムが近づいてきて言った。

 

[こちら第40特別攻撃隊です。現在生存者は自分を合わせて5機…。隊長機は…落とされました]

 

 そう、悔しそうに言葉を出す兵士。

 

[…そうか…。よし、これよりヨンマル隊は、俺達00隊が指揮権もつ!]

 

[えっ…!?]

 

「命令は2つだ!一つは、寝返った連中を抑えてくれ!」

 

[ま、待ってくれ!抑えるって言っても…俺たちは5機だぞ!?無理だ!!]

 

「何…。手はある…。10分だ。10分耐えるだけでいい。そうすれば、何とかなる!」

 

 こんな状況だ、こんな作戦では誰も乗ってくれはしないと思ったが…。

 

[…信じます。俺は…!]

 

 先ほど助けた兵士が叫ぶ。

 

[あなたは、可能性を捨てた俺を生かしてくれた…。一度死んでるようなもんですから…!だから、あなたに命…預けます!]

 

 その言葉を皮切りに、4人の兵士は声を上げて賛同してくれた。

 

「……お前ら…よし…10分でいい。耐えろ!!10分過ぎて勝てないなら、撤退しろ!そうすれば、俺達の部隊はやられる。そんだけだ」

 

[……了解です!隊長!!]

 

 隊長と呼ばれるのはあまり慣れていないからか、少し恥ずかしい。

 

「あー…そういや、もう一つだったな…。いいか…俺の指揮下になった以上は…死ぬなよ!」

 

[…!!]

 

 全員が驚いている。…ちょっとかっこつけすぎたかな…。

 

[…はい…!隊長!!]

 

 なんか、やはり少しだけ恥ずかしい。

 

「…じゃあ…10分…任せるぞお前ら!!!」

 

[…引き受けました!!!]

 

 そして、俺は道夜達の元へ戻る。

 

 

 

[はっ…!]

 

[…!道夜!左です!!]

 

[くっ…!]

 

 道夜達は既に、数機もの敵交戦していた。

 

「道夜!ユーリ!!!」

 

 俺はビームライフルをけん制で放つ。

 

 ビームはあらぬ方向へ向かって飛んでいく。その弾丸が道夜を掠めてザクに直撃した。

 

「おっ!やったぜ!」

 

[……お前は俺を殺す気なのか!?]

 

「あー…すまん…」

 

[まあいいさ。手を貸してくれ!!]

 

「もちろんだ!行くぞ!!!」

 

 彼らと約束した時間はあと8分…。少し時間が足りない気がする。

 

「…ちっ!!」

 

 俺達3人は背を向けあい、少しずつ敵を落とす。

 

[くっ…!]

 

 残された時間はあと…6分。

 

「…仕方ない…。ユーリ!俺らに構わず、後ろの味方、何とかしてやってくれ!!!」

 

[…えー…めんどくさい…]

 

「…お菓子くらい幾らでもおごってやるから!行ってくれ!!」

 

[…本当ですね…?じゃあやりますよ!]

 

 そう言って、ユーリは俺達の背中をバネにして、機体を動かした。

 

[いいのか?あんなこと言って…]

 

「よ、よくないかもしれんが、まあいいだろう!人の命よかマシだろ」

 

[…お前…変わったな]

 

 と、少し嬉しそうに言った。

 

「気のせいだろ…。さぁ…行くぜぇ道夜!!!!」

 

[背中は任せろ!相棒!!!]

 

 俺はビームダガーを引き抜き、ザクを2機切り裂く。

 

 道夜はそれにあわせて、ビームライフルを放ち、敵を貫く。

 

 

 あらかた片付いたであろうか…二人で少し安堵する。

 

[…ユーリは…うまくやってくれてるだろうか…]

 

「さぁ?だが、あいつは出来るさ…」

 

[…そうだな]

 

[先に進もう…!]

 

「んじゃ、行くか!」

 

 俺達二人は、先行し、先に進むことにした。

 

 

 

 しばらく進んでいると、正面に1機、見たことのない機体が立ちふさがっていた。

 

[……]

 

「どうした?道夜」

 

[…ムゲン…先に行ってくれ]

 

「何…?!」

 

[……分かるだろ…?お前にも【宿()()】と呼べる奴がいるんだ…俺にも居るんだよ…そういう奴がな]

 

 なんとなく察しはついていた。これが道夜の…道夜にとってのけじめなんだと。

 

「……分かった。生きろよ…相棒」

 

[…ふっ…任せておけ]

 

 道夜は小さく鼻で笑った。

 

 そして、俺は先に進む。振り返らずに。

 

 信じたら…信じきる。…それも…大切なものだと知ったから。

 

 

 

 どれくらい進んだだろうか…もう既に道夜もユーリの姿も無い。それでもここまで進んだ意味が…いや、進まなければいけないと思った。

 

「…ふぅ…」

 

 息を一つ吐く。周りを見渡しても、機体の残骸や、戦艦の残骸が散らばっているだけ。

 

 突然レーダーに反応が出る。動きがかなり遅い。戦艦だろうか…。それにしては、こっちに向かってくる。

 

「……っ!!!な、なんだ…あいつは…!」

 

 レーダーで見るより明らかに分かるそいつは、あまりにも強大で…ものすごいプレッシャーがかかる。

 

「…くっ…!」

 

 奴は俺を見つけたと思うと、両腕を前に出し、ビームを放ってくる。

 

 何とか回避するものの、そのビームは、戦艦の倍ほどの大きさがあった。

 

「くそっ!ジオンめ…!化け物作りやがって!!!」

 

 俺がビームライフルを構えた瞬間、右からビームライフルが打ち抜かれた。

 

「何っ!?」

 

 みると、奴の腕が有線式で繋がっていた。

 

「なるほどな…そいつで腕が伸びて攻撃してくるわけか…ずいぶんだな…」

 

 俺はビームダガーを引き抜き、接近する。

 

「近距離なら!!!はぁああああ!!!」

 

 奴の懐に飛び込み、敵を切り裂く。しかし…手ごたえが無かった。

 

「!?」

 

 みると、奴は前装甲のアーマーから出たビームサーベルでダガーを受けている。

 

「こ、こいつ…!!!」

 

 俺は間合いを取り、ビームダガーの出力を上げ、もう一度切りかかる。

 

「うおおおおおお!!!」

 

 しかし、奴もビームサーベルの出力を上げだし、鍔迫り合う。

 

「ちっ!!なんなんだ!!こいつは!!」

 

 すかさず左腕でビームダガーを引き抜こうとするが、一方のビームサーベルで左腕が切り落とされる。

 

「しまっ!!」

 

 さらに、奴の背後から歯車のようなものが射出されたかと思うと、俺目掛けて突撃してくる。

 

「くっ!!!」

 

 なんとか間合いを取ろうとするが、奴に右腕を掴まれる。

 

「くそっ!離せ!!」

 

 そのがら空きになった俺の背中に容赦なく歯車は突っ込んでくる。

 

 そして、背中で爆発すると、ものすごい振動と共に、モニターが砂嵐になる。

 

「ジャミングだと!?くそっ!!」

 

 さらに状況が分からぬまま、機体にどんどん歯車は攻撃を仕掛けてくる。

 

「うわああああ!!!」

 

 内部機器から少し電気が走る。

 

「ちっ!まずいな…!!!」

 

 俺もここまでか…そう思ったときだった。

 

 正面から爆音。そして、何かに掴まれ、移動している。

 

 モニターが元に戻って前を見ると、ピクシーの破片が散らばって、奴のビームサーベルが宙に浮いているのが分かった。

 

[ったく…世話が焼けるね君は…。ムゲン・クロスフォード君よ]

 

 聞き覚えのある声。そう、あの時別れた…あの…。

 

「カカサ…?!」

 

[クロノード君もいるぞ?]

 

[ずいぶんひどい有様だな…ムゲン。まぁ…相手があの化け物じゃ…そいつも不利だな]

 

「…二人とも…ジオンなのに助けた…?」

 

 それを聞くのかという口調でカカサが返す。

 

[そりゃあ、一度は同じ焼き鳥を食った仲だからな。ついでに…俺もこいつは倒しておかんといけないと思ったのさ。お前のためにも…後の奴らのためにも…残らずな!]

 

[そういうわけだ。もう一度共闘と行こうぜ?ムゲン]

 

「だが…これがバレたら…俺は良いとして、お前たちは…」

 

[なぁに…気にしなさんな。正面の奴は俺の部下が抑えてる]

 

「…それって!!」

 

[…まぁ…なんにせよ…こいつを潰す。それだけだろ?]

 

「……あぁ…」

 

 俺はもう一度自分の心を震いたたせ、奴と対峙する。

 

 2機増えて何が出来るかはわからない。それでも、今俺の心には『もし負けたら』なんて言葉が出てこなかった。

 

 ……それだけ…信頼しているのが、自分でも分かった。

 

 だからこそ…!!

 

「…行くぞ…!!カカサ!!クロノード!!!」

 

[うっしゃあ!!斬るぜ!!!]

 

[…さぁ…30特別遊撃隊。いっちょ暴れるぜ!!!]

 

 カカサの黒いゲルググが左側から奴に攻撃しながら移動する。

 

 ふと気がつくと、奴のデータが俺に送られていた。…いつの間に…。

 

「…ムゲン…ギア…」

 

 かつて父さんと母さんが研究していたデータを基に作られた機体…。これも運命なのだろうか。

 

 しかも、こいつに搭載されてるAI…。コードネームは【m()u()g()e()n()】…つまり俺なんだ。

 

 …こいつは俺の過去なんだな…自分でもそう理解できた。

 

 俺はこんな歪で大きな負の感情を持っていた。

 

 だからこそ…。

 

「終わらせる…こいつを…斬る!!」

 

 俺はビームダガーを構えなおし、奴の右側から斬りかかる。

 

 奴は、腕部のビームを放ってくる。

 

 俺はそいつを真っ向から受けて立つ。

 

 ダガーの出力を上げ、絶対にありえないであろう事を可能にした。

 

「俺とピクシーの刃は…!!ビームをも切り裂く!!!うおおおおおおおおお!!!」

 

 叫びながら突撃する。ダガーにビームが触れると、なんとビームが真っ二つに分かれる。

 

 それをみたクロノードが言った。

 

[……こいつも奴と同じくらい化け物だな…。その度胸も…腕も…そして…機体も]

 

「そりゃあ、褒め言葉として受け取っておくぜ?」

 

[あぁ…それで構わん]

 

 だが、どこを攻撃しても、まるでダメージが通っている気がしない。

 

「ちっ…なんなんだ?ビームは弾かれるし…ダガーで斬っても効いた様子が無い」

 

[…ムゲン、一度下がれ]

 

「な、なんだ?」

 

[カカサもだ。お前なら分かるだろ?]

 

 何かを察したようにカカサは呟く。

 

[戻る必要あるかぁ…?]

 

[戻ったほうが身の安全が図れるぞ?]

 

[…ったく…。なるほどな。分かった。ムゲン、下がるぞ]

 

 状況が理解できないが、俺もカカサに続いて、相手の攻撃を避けながらクロノードの元へ戻る。

 

[っと、こんなもんだろ]

 

[……いいか、ムゲン。俺が攻撃をしたら、一気に奴を叩け。奴の弱点は…装甲の奥にある!!!]

 

「装甲の奥…?」

 

 理解できない俺に、なるべく早い口調でカカサが言う。

 

[いくらお前の親の研究データを使おうが、結局作った元はジオンだ。俺はあの装甲は貼り付けてあるだけだって思ったんだよ]

 

「…なるほど…つまり…その奥に…ケーブルがあるって言うのか?」

 

[そういうことだ。考えてる余裕なんか無い。狙うのは、頭部のケーブル!!!俺とお前で2本ずつだ!!そいつさえ…そのケーブルを切ればAIも逝く!!]

 

「…よし…それに賭ける」

 

[じゃあ…始めるぞ!]

 

 クロノードがライフルを構え、射撃の準備をする。

 

 すると、奴は胸部の装甲を開き、ミサイルを俺達のいる場所目掛けて放ってくる。

 

[くるぞぉ…!お前ら!!頼んだぜ!!!]

 

[言われなくてもー。俺が生きたいから守るさ]

 

 そう言ってカカサがビームライフルでミサイルを撃ち抜いていく。

 

「くっ…俺も…!!」

 

 俺もビームライフルでミサイルを撃ち抜く。…3本くらいだが。

 

[もう少しだ…!!!]

 

[おいおい…!もうもたない…!!]

 

「……カカサ…俺は賭けたい事がある」

 

[なんだ…?]

 

 こんな事を戦闘中に言うのはおかしいかもしれない。だが、それしか俺達が生き残る可能性は…ない。

 

「…こいつを…受ける…!」

 

[なっ!?]

 

[ムゲン…?]

 

「お、俺とカカサで盾になって…このミサイル…受け切る!!!」

 

[……]

 

 さすがに唐突な作戦に驚きを隠せないカカサ。

 

 だが、少し考えた後、笑いながら言った。

 

[…お前らしいな…ははは…!!!いいぜ!!やってやるよ!!聞いたな?クロノード君よ]

 

 そして、カカサらしくない言葉を漏らす。

 

[…お前に命…賭けてやるよ]

 

[…カカサ……。……あぁ…任せろ。一撃で決める]

 

 ふっと笑ったカカサは、俺と共にクロノードの前へ立ちふさがる。

 

[んで?ただ受けるだけじゃあないんだろう?]

 

「…そりゃあな…。カカサ。お前はなるべく奴に派手にやられたように見せてやってくれ。AIですら見まがうほどの…な」

 

[…ったく…結構な注文だな。…オーケー…やろう]

 

「後は…俺に任せろ」

 

[ほいほい]

 

 迫るミサイルを前に、俺とカカサは身構える。

 

 着弾ギリギリまでひきつけ…俺はスモークバルカンをミサイルに当たるようにばら撒いた。

 

 ミサイルに着弾したスモーク弾は、ミサイルと共に爆散し、スモークが散布される。

 

 それに続いてカカサが、シャドウクナイを手前に投げ、集まった一箇所にビームライフルで撃ち抜くと、機体1機分が爆発したように見せかけた。

 

 そう。いくらAIだろうが、俺は俺なんだ。自分自身がこの状況、ましてや過去の自分なら、油断しないわけが無い。

 

[いける…!いけるぞムゲン!!カカサァ!!!]

 

「…グッドタイミングだ…クロノード!!」

 

[うっし。準備するぜ!!]

 

 俺とカカサは左右に分かれる。

 

 そして、スモークが消え去ると共にクロノードは

 

[こいつで…化けの皮剥ぎやがれぇえええ!!!!!]

 

 ライフルで奴の頭部目掛けてビームを撃ち込んだ。

 

 ビームが放たれると、俺達は駆ける…!奴の頭部目掛けて…!狙うは奴のケーブル!!!

 

 ビームが着弾し、ガンダムのカメラアイが剥がれる。みると、ケーブルはザクのような配置で接続されている。

 

[今だぁああああ!!!!]

 

 カカサが先行し、斬りかかる。流石に早かったのか、奴の攻撃に阻まれるが、それが幸いした。こちらに一切の目がいっていない!!!

 

[…ムゲン!!!決めろおお!!!!]

 

 だんだんとダガーの出力を上げる。気がつけば、出力は限界まで達していた。それでも下げることはしなかった。只今は…奴を斬る!!!

 

「うおおおおおおおおおぉ!!!!!」

 

 奴がこっちを見たときには遅かった。

 

 俺は、奴の二つのケーブルが接続されている場所を切り裂く。すると、奴の行動が遅れた。

 

『オ…オマエ…ダレ…ダ…』

 

 微かに聞こえる声。俺だった。俺の声だった。ありえないはずではある声が聞こえる。だが、それに答えるように俺は叫ぶ。

 

「…俺か…?俺はオマエを…殺す奴だ!!!!!」

 

 そのまま俺は、奴の頭部から真下へ、真っ二つに切り裂いた。

 

 そして、俺とカカサが身を引くと、奴は爆発する。何故かその爆発の光が、あのグレイの時と同じだったのは…気のせいだろう…。

 

「…ふぅ…や、やった…な」

 

[ほえー。案外やれば出来るもんだなぁ]

 

 カカサが珍しく安堵している。

 

[…なんとかなったな。助かったぜ…。ムゲン]

 

[いや、俺のほうこそ助かった。あのままじゃ勝てなかった]

 

 本当にそうだった。二人がいなかったら今頃俺はあの世に逝っていただろう。

 

[そういや、記憶は戻ったのか?ムゲン]

 

「クロノード…。すべて戻ったよ…」

 

 この二人には、もう隠す必要は無い。そう思ったからこそ、言った。

 

[そうか…そりゃあよかった。さて…普通この状況だったら、俺はお前を落として帰るんだが…今日は気分が乗らない。…いや…もう…俺は……っ!?]

 

 唐突に俺とクロノードを別つビーム。

 

[なんだ!?]

 

「…クロノード…!無事か?!」

 

[あ、あぁ…]

 

「……」

 

 珍しくカカサが黙り込む。いったいどうしたのだろうか。

 

 彼が見ている方向に眼をやると…。

 

「……シ…シゼ…」

 

[シィゼェルァアアアア!!!!!!]

 

 俺が言い切る前に怒りをあらわにしたカカサが叫ぶ。

 

[…お前達に会いにきたわけじゃない…狙いはムゲン・クロスフォード…。ただ一人だ!!!]

 

[んだとぉ…!!]

 

 その言葉が余計に彼をイラつかせる。俺は、カカサをなだめようとする。

 

「カカサ…!落ち着け!!!こいつの狙いは俺だ!!」

 

[うるせぇ!!!奴は…俺が…!!!!]

 

 そんな姿を見て、シゼルが不敵に笑いながら言った。

 

[いいのか?俺に構ってて。今頃お前らの味方は蹂躙され…部下の女共も…ふふふ…ははは!!!!]

 

[…黙って聞いていれば…!!!ふざけるなよ…!!!!]

 

 ついにクロノードも怒り始める。

 

[[奴は…俺が落とす…!!]]

 

 二人は声をそろえて叫んだ。

 

[ふふふ…はははは!!!!いいぞ…この憎しみの目…すばらしい!!!その目がみたかった。良いだろう…あいてを…]

 

「待て!!!!」

 

 そんな3人の仲を静止する。

 

[な、何だよムゲン!!]

 

[ムゲン…今の俺を止めたらぶっ殺す!!!]

 

[……]

 

 俺は静かに口を開く。

 

「…俺はずっと歩いてきた。家族を失って、軍に入って…そして、家族と言ってくれた奴らとも別れた時もあった。お前達と出会って共に歩いたときもあった!!」

 

「でも…その経験があったからこそ…その全てがあったからこそ…!今ここにいる!!!そして、道は違えど今戦ってくれている仲間がいる!!!」

 

 俺の頭の中に道夜、ユーリ、ファングさん、フユミネさん、そして、トラヴィスさんやボマーさん。…そして…ペイルライダー。その姿が流れてくる。

 

「多くの仲間、色んな奴とであったからこそ…こいつを倒すのは…俺だ…!!カカサ、クロノード…お前はお前の家族を守れ!!!」

 

「こんな所で足止めなんかしてちゃ…笑える世界なんて造れねぇぞ!!!」

 

 俺の言葉を聞き、カカサが口を開く。

 

[…諦めきれない…だが…ここはお前に任せる]

 

[何!?]

 

[行こう。クロノード君。家族って奴を守りにいこうぜ]

 

[…俺は…あいつらを馬鹿にしたシゼルを許せない…!!!絶対につぶ…]

 

[分からないのか!!!!!!]

 

 彼の叫びがこだまする。

 

[……!!]

 

[俺だって…俺だって奴を殺したい!!!だが…それよりも大切なものがあるだろう!!!……俺達の出番は…終わったのさ]

 

[……カカサ……。分かった…。ムゲン…必ずけりを着けろ。そんで…戦争終わったら…うまい飯食おうぜ…!家族全員で!!!]

 

「…あぁ…!また会おう!!!」

 

 カカサとクロノードはシゼルの機体とすれ違い、正面に消えていった。

 

[…いいのかぁ?3機でかかれば倒せたかも知れんぞ?]

 

「…必要ない。お前の相手は…俺一人で十分だ!!!!」

 

 

19  完




今回登場したMSです。



機体名  ムゲンギア
正式名称 MugenGia

型式番号  MS-XX1
生産形態  不明
所属    不明
全高    120.5m
全幅    56m
本体重量  173.2t
全備重量  441.2t
出力    計測不能
推力    計測不能
センサー  不明
有効半径

武装    腕部有線式メガ粒子砲x2
      ギアビットx30
      ハイドボンブシールドx2
      隠し腕ビームサーベルx2
      腹部ハイメガ粒子砲
      胸部ミサイルポッドx60
     
    

搭乗者  人工知能AI:code〔mugen〕

機体解説

グラン・クロスフォードとエルナ・シエナードが極秘で開発していた研究データをジオン軍が回収し、設計されたジオンの傑作の一機。

本機は、通常の格納庫では格納しきれない大きさの機体で、宇宙での戦闘しか考えてない武装と外見になっている。

カメラアイは、右眼はガンダムのカメラアイなのだが、左眼は、ザクのカメラアイになっていたり、所々ジオンと連邦の装甲が混ざっている。

色こそ緑色のカラーリングに施されて入るものの、機体全体の形が左右非対称である。

武装は、腕部有線式メガ粒子砲に、腕部篭手にラッチされたハイドボンブシールド。前装甲スカートアーマーにはビームサーベルが2本搭載されている。

胸部のミサイルハッチを開放すると、60ものミサイルが敵を襲う。

そして、ギアビットなる武装が本機には搭載されており、歯車のような形をしたビットで、ビット内部にジャミング効果のある爆薬を搭載。

ビットをぶつけ、爆発させることで、損傷とさらに通信障害を引き起こされる。

なお、本機には、研究データの中で見つけた、[一切のためらいがなく、冷酷さを秘め、それを無駄なく実行するためのAI]という人工知能AI:コードムゲンが搭載されている。



機体名  ゲルググ(クロノード機)
正式名称 GELGOOG

型式番号  MS-14S
生産形態  量産機
所属    ジオン公国軍
全高    19.2m
頭頂高   21m
本体重量  42.1t
全備重量  74.3t
出力    1,440kW
推力    61,500kg
センサー  6,300m
有効半径

武装    長距離射程型ビーム・ライフル
      ビーム・ナギナタ
      6連装脚部ミサイルポッドx2
      ビームキャノン

搭乗者   クロノード・グレイス

機体解説

ジオン公国最新鋭機である先行量産型ゲルググをカスタムしたクロノード・グレイス専用機。

基本的な武装は全て取り除かれ、長距離射程型のビーム・ライフルを装備、さらに6連装脚部ミサイルポッドを装備。

さらに、追加装備として、ビームキャノンを装備している。

本機はクロノード中尉の戦闘スタイルに合わせて中距離、遠距離での戦闘を得意とする。

ソロモン防衛戦で大破したザクⅡに代わり、彼の愛機となり、クロノード中尉はア・バオア・クー攻防戦でも見事本機で生還している。



機体名  ゲルググ・インヴィジブル・ソウル
正式名称 GELGOOG invisible soul

型式番号  MS-14S
生産形態  ワンオフ機
所属    ジオン公国軍
全高    19.2m
頭頂高   21m
本体重量  42.1t
全備重量  74.3t
出力    1,440kW
推力    61,500kg
センサー  6,300m
有効半径

武装    シャドウ・ブレードx2
      シャドウ・クナイx6
      ビーム・ライフル
     

搭乗者   カカサ・キヤモイ

機体解説

先行量産型のゲルググをクロノード中尉の計らいで武装の増設が成され、カカサ・キヤモイ少尉のためだけに作られた機体。

武装は、ザク・インヴィジブルと共通する武装があり、新しく装備されたシャドウ・ブレードは、刀身にジャミング効果のあるコーティングを施してあるため

相手に攻撃を当てると、その位置から瞬時に機体をショートさせるほどの威力を持っている。

そして、シャドウ・クナイはザクⅡの時より増設され、6本になっている。

カカサ少尉の戦闘スタイルに合わせ、近距離、中距離での戦闘が可能となっている。

ソロモン防衛戦にて、シゼル・クラインの駆るハデスによって大破したザク・インヴィジブルに代わり、カカサの新たな愛機となる。

愛用していたザクを破壊されたことに生まれて初めて殺意が沸いたカカサは、ザク・インヴィジブルの魂を引き継いだ本機と共にア・バオア・クー攻防戦へと参加する。
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