彼が歩んできた道も、決して楽な道ではなかった。
そして、ア・バオア・クーで見た人の心を包み込む優しい光を見て彼は何を想うのか。
これは、彼がムゲンと出会う前の話。
一年戦争と呼ばれる戦争が終わって数日後。俺達は再び地球に降り、地獄のような資料を片付けていた。
前回の寝返りについてのことをカカサがうまいこと言って、こいつを片付ければ免除という事になったわけだが…。
「…ったく…多いんだよ…これを5日以内だぁ…!?」
カカサもどこにもいないし、こういうときだけうまいこと言って逃げるんだよなぁ…。
今度会ったら焼き鳥はむこうのおごりだな…。
コーヒーをもち、資料が大量に詰まったパッドを持ち、テントを出る。
「あ、隊長!お疲れ様です!」
「おう。お疲れさん」
数人の兵士とすれ違う。たぶん、見張り番だろう。
ここの部隊の人数も前の戦争で随分と亡くなってしまった…。
外に出ると、今夜はとても月が綺麗な夜だった。
俺は愛機であるゲルググのコックピットを開き、備え付けの椅子に腰掛け、月を見上げ物思いにふけることにした。
「…そうだな…、あれから随分と経つ…ここの場所も随分変わってしまったな…」
思い出したくないというわけではないが、思い出すとあまりいい気はしない。
俺は幼い頃の全てを研究所で過ごし、戦闘兵器として改良された人間だった。
しかし、何故か記憶の調整だけはされなかったため、普通の人間として生活する事はできた。
が、まあ脳はある程度改良されたからか、時々言いたいことを忘れたりする。そのたびにカカサに弄られるのがもはや定番になっているんだよなぁ…。
まあ、そんな日常を送れるようになったのも、カカサのおかげではあるんだよな。
「俺は…あなたの命令には従えません…」
そこからだったな。カカサの瞳が強く宿ったのは。
そして、とんとん拍子で俺とカカサは今の名前になり、第30特別遊撃隊を作った。
それからか…、俺達の周りには気づけば沢山の人間が集まってきて、とても賑やかになった。
子供も来た、女性も。
全て受け入れた。カカサが願っていたからな。
俺も同じ想いだった。
だからこそ、俺はこの部隊を、奴と共に作り上げた。
「…正直…昔の記憶はほとんど無い。ただ戦闘の練習だのなんだのをやらされた記憶しかない」
思い返してみると、随分とひどかったと今では思う。
「はぁ…!はぁ…!!」
覚えているのは10歳くらいのころか…。
「ダメじゃないか!これくらいで動けなくなっては…」
「…も、もう…無理…」
「冗談はよせ。たった12時間だぞ?これで音を上げていては…。どうやら調整がして欲しいようだね」
あの時は、抵抗する事なんかできなかった。何せ随分と疲れていたし、加えて調整とか言いながら体の自由を奪って激痛が来る薬を打たれるわでそんな気も起きなかった。
よく考えれば、12時間もよく殺人のシミュレーターをし続けれたものだ。普通だったら気が狂ってしまう。
たしかあれは、人を殺すことへの抵抗感を無くす…だったか。
まあ、それは感情があるおかげで随分と抑制されているほうだが…時々無性に殺したくなってしまうんだよなぁ…。
そのたびにカカサと話すようにしている。だから、あいつがいる事がとても助かっているというのも理解はしているが…。
やはりあいつはムカつくんだよな…。
「クロノード君よ」
「なんだ?」
「なんでもないさね」
「……じゃあ呼ばないでくれ」
「はいはい。分かりましたよーっと」
そしてその数秒後にはまたあいつは口を開いて言う。
「クロノード君」
「なんだ…」
さっきより少し声を強く言った。
「ふっ…。今クロノード君が思っている事を当ててやろうか」
「…」
「今俺にめちゃくちゃムカついているだろ!どうだ!」
まるで探偵が犯人に指差すようにカカサがビシッっと俺に指を向けた。
「…正解だよ。カカサ、今お前にかなりムカついてる…。今仕事してるんだよ、邪魔をするなよ…」
「じゃ、邪魔…?こ、この俺がぁ…?!じゃまっていわれた…」
わざとらしく悲しむカカサ。
「お、おい…」
「ジャマッテイワレタボクトッテモカナシイ。…ボクハクロノードクンノタメヲオモッテヤッタダケダシ…」
と、ブツブツ言い出す。こういうときのカカサの扱い方は意外と簡単なんだ。そうだな、たとえば…。
「わかった。カカサ、焼き鳥おごってやるから、そんな事いってないで話を続けるぞ」
「……!!や…きとり…?」
「あぁ。今日は何本がいい?」
「えー?そうだなぁ…!じゃあ10ぽ…」
「却下」
「ひどっ!?というか返答はやくない?!」
「…もう慣れたぞさすがに」
こいつといてもう4ヶ月は経つのだろうか、流石にこのやり取りが毎日のように続けば、当然だろう。
でも、そんな生活が出来て、幸せだったりするんだ。
確かにあいつらといると疲れる。凄くな。本当は綺麗な夜空を見上げながら静かにしていたいときもある。
だが、彼らといると、嫌な事を忘れられて、それで、楽しい…。とっても。
少し話がそれたな…、さて戻ろう。
「くっ…!!なんで…こんなこと…」
確か、大量に民間人を虐殺をするシミュレーターもやったか…。
「さぁ…!殺せ!!」
「…くっ…!!」
俺は震えながら銃を手に持ち、民間人のようなものへ銃弾を放つ。
それをずっと繰り返す。シミュレーターだから、弾も減る事は無く、民間人も死んでは新しいものが現れる。
本当に気が狂いそうだった。
時折夜な夜な泣いた事もあったな。
「うぐっ…うぅ…!!うぁああ…!!!」
耐えられないだろうな、10歳くらいのガキがそうなったら当然だろう。俺が特別だっただけさ。
数年後、俺はMSと呼ばれる機械のシミュレーターをやらされた。
ずっと…ずっとやらされたんだ。一回がだいたい32時間だったな。相当なストレスで体がおかしくなりそうだったさ。
でもそれ以上に、自分がMSで敵を殺すことが楽しくなってしまう事に恐怖していた。
だから、俺はあの時…。
「もう…俺はこのシミュレーターをしたくない!!!」
自分に感情というものがこれほどまでに強く根付いていなければ、こんな事思う事も無かっただろう。
だが、俺には
「貴様ぁ…!言う事を聞け!!!」
「ふざけるなよ…!こっちだってずっと黙っていられるわけじゃない…!!!」
俺は研究員を全力で殴り飛ばす。力を入れすぎたためか、研究員は吹き飛ばされ、壁に打ち付けられた。
「が…っ…!!!」
その瞬間俺は、必死に逃げた。
だが、研究所の中でいつまでも逃げていられない。
それからしばらくして、俺は研究員に捕まり、牢屋に投げられるように入れられた。
「…くそっ!!!」
「お前の調整を怠ったな…もっときついのにしておけばよかったか…」
そんな事を吐きながら、研究者は牢屋から出て行った。
正直、きついとかそういうのはどうでもいい。俺は横になって、久々に長い間眠る事ができた。
そんな感じで、当時の俺には救いなんて無かった。その研究所でのこともあって、俺の脳の一部器官が壊れちまって、あまり物事をうまく判断できなくなっていった。
結局、俺はそのまま失敗作となってお払い箱。つまり研究所を半ば強引に追い出された。
行く当ても無いから、俺はジオン公国へ兵士として志願した。
最初に困った事は、名前だったな。当時の俺には名前なんか無かった。だから自分で作ることにしたんだよな。
それで、自分でつけた最初の名前は【
そして、ジョン・クライガーで入隊し、それから数ヵ月後。あいつと…ケンと出会う事になる。
奴との出会いが、俺の物語を大きく動かす事になる…。
確か、昔はあんな性格じゃなかった。
大真面目で、沢山の感情が見て取れた。それを隠すためだったんだろうな、あのフードも。
だが、カカサになってあいつはカカサになった。
人を弄るのが大好きで、うまい事人に物を伝えられない不器用さを持っているんだが、それでも助けようと必死に動く。影のようなやつだ。
確か、最初に会ったのは、廃れた街の路地裏先の小さなバーだったか…。そこであいつはコーヒーを飲んでたんだよな…。
その日は確か暑い夕方だったか…。
俺は隊長の補佐として働いて、バーに入った所だったか…。
「おい!親父!!ビールだ!!ビール寄越せぃ!!!」
隊長が扉を蹴破って入っていく。
俺は、ただ黙って彼についていった。正直、こんな場所にビールがあるとは思えないが…。
「……申し訳ございません。ここではビールは……」
店のマスターが頭を下げた。その言葉にムカついたのか、隊長が声を荒げて言う。
「ないだと…?ふざけるんじゃねぇ!!こっちは軍人だぞ!!とっとと出しやがれ!!」
「…そ、そんな無茶なぁ…!!」
流石にこっちも言葉が出ない。正直物凄いクズな隊長だったと今でも思うな。
「早くださねぇと…撃ち殺す…!!」
とうとう痺れを切らして、拳銃を構え始める。まったく…軍人と言う奴は…。
「…あ、あわわ…」
マスターは尻餅をついてしまう。まあ、当然だろう。
すると、黒いフードを被った男が立ち上がり言った。
「…マスター、勘定」
その言葉でマスターは我に返り、男に金額を言う。
「え…えっと、2ドルになります」
「……これで…足りるか?」
そんなやり取りを無視し、隊長はマスターへ向けて引き金を引いた。
「あぁ。はい。問題ありません。ありがとうございました……っぐ…!?」
こんなこと…あっていいのだろうか…。こんな、軍人が民間人を殺すなど…。
「……!!!」
フードの男も動揺が抑えられないようだ。
あの時、止めていれば運命を変えられていたかもしれない。だが…俺はこの道を間違ったとは思ってはいない。
確かに、民間人が死ぬ事が良いとはいえない。だが、それでも…、俺はこの運命を正しいと思っている。
理由か?まあ、色んな選択肢があっただろう。だが、結果としてそうなった。
なら、受け入れたっていいかもなって。
……それに、俺とカカサが変わるきっかけにもなったわけだし。
俺は、それでいいと思ってる。
「…黙れ…クズ」
「何…?!」
「部下を何に使ってんだ。そこで突っ立てる馬鹿な兵士の言うとおりだ!お前ら本当に軍人なのか?」
「ふざけやがって…!おい!お前ら!ジョンごとこいつを殺せ!!!」
「……部下ばっかに頼りやがって…!お前はただのクズだな…!!!」
そう言って男は驚くべき速さで隊長の懐へ潜り込み、全力の一撃を叩き込んだ。
「ごっふぁ…!!!…ぐ…!!てめぇ…」
そう言いながらも膝を突いてしまう。
「……あーすまんね。俺加減をしらないんだよねー。いっつも喧嘩ばっかやってたからな」
「…ぐっ……てめぇ…!!!」
俺は隊長の前へ歩いていく。
そして、俺は彼に銃口を向ける。
「…な、なんのつもりだ…!」
「……もう…あなたには従えません。あなたは…最低なクズだ!!!」
「なんだと…!?おい!お前ら!!何とかしろ!!!」
そう言って従うものが誰もいなかったのは、まあ当然といえば当然の結果だろう。
「見ろよ。こいつら、お前の下に居るのは嫌だってさ。これだったら俺が軍人になったほうがマシだな」
今思えば、あの発言は随分すごいってのが後々だからこそ分かった。
「…て、てめぇ!!!!」
「…うるせぇよ。だまり…」
俺は、彼が殴られる所を見たくは無かった。だからこそ、俺は無心で引き金を引いた。
それからはトントン拍子で話が進んでいって、俺とケンは、名前を変えることになる。過去の自分を殺し、新たに歩もうとする。
クロノード…こいつは
俺は物語って言うものが嫌いだ。
筋書き通りに生きていくのも、そうさせるのも大嫌いだ。
だが、その心もどこかで変わろうとしている。人との関わりはそれほどまでに大きいものなんだろうか。
もちろんカカサとの出会いもそうだが、もう一人…出会うべくしてであったかのような少年。
【ムゲン・クロスフォード】。彼は、カカサとは正反対の性格で、真っ直ぐで素直。そして真っ向からぶつかっていく。
そんな奴を見るのは2度目か…。まあ何にせよ、俺の心はそういった個性的な奴らに自然と変えられてた。
最初の出会いは、連邦のニューヤーク付近の基地を強襲する作戦のときだったか。
こちらの数は先発隊あわせて6機だった。
それで、向こうの面子は真っ白いデカブツとボロボロのジム。
先に先行していた先発隊は白いデカブツとジムによって全滅。正直ここまでは計算どおりだった。
カカサの寄越した情報どおりといったほうが正しいか。
俺はデカブツにマシンガンを放つ。当然だが、牽制でな。
デカブツはなんとかそれを回避する。まあそうだろう。普通のMSよかデカイ図体なんだ。回避すら辛そうだな。
デカブツが回避した先に待っていたのは俺が指示を送って待機させていたザクだった。
[待ってたぜ…!デカブツゥ!!!]
余裕の表情を浮かべているのが機体からでも分かる。そして、ザクはデカブツにバズーカを放つ。
弾頭はデカブツの肩に直撃して、デカブツはそれっきり動かなくなる。たぶん、衝撃で脳震盪でも起こしたんだろう。
なら、と俺はボロボロのジムへマシンガンを放つ。
ジムは間一髪でそれを回避する。だが、あまりにも回避が雑に見えた。こいつは…新兵か。
俺はゆっくりとジムにバズーカを構える。
そして、俺は無線を連邦のパイロットへ繋いだ。
「そんな機体で俺と戦う勇気は認めてやる、だがそいつじゃ勝てないぜ?無理に戦う必要はないんじゃないかな?」
俺はなるべく優しく言う。
すると、彼はキョトンとしながら彼は言った。
[あ、あの…どうしてそんなことを…?]
「どうしてって…そりゃそんな奴を倒したって面白くないだろう…?それに、連邦ジオン関係なく人間には変わらないからな、無駄に命はとらないさ」
しばらく黙って見守っていると、彼はビームサーベルを持ち直して叫んだ。
[そうだとしても、俺には基地を守る使命がある。悪いが引き下がれない!!]
俺は呆れて物も言えなかった。一つため息を吐いた後、小さく呟く。
「仕方ない…なら、やるしかないか…」
俺は少し間合いを取った後、バズーカを投げ捨て、ヒートホークを構える。
「ビームサーベル相手に遠距離じゃ、分が悪いだろう?こいつ一本で相手してやる、来い!!」
そう自分で叫ぶと、自分の身の毛が逆立つような感じが俺を襲う。
「……さぁ…始めるか」
[舐めるなぁあああ!!!]
彼は、ビームサーベルで斬りかかってくるが、俺は軽くそれを回避し、反撃としてヒートホークで切り裂こうとするが、しかしそれは、コックピットを掠めるだけで終わった。
ヒートホークの熱気でコックピットの装甲を焼き切れている。
[くっ!何故だ…!何故当たらないんだ!!]
「何故かって?それはな、お前の動きが遅すぎるんだよ!!」
こいつと戦う時、俺は俺で居られたのだろうか…。俺でさえもわからない。
その出会いを皮切りに、奴とも運命に導かれるように出会う事になる。
そして…。
「急ぐぞ…!カカサ!!!」
[…分かってるさ]
俺達はただ急いで目的地へと急ぐ。
[うわああああ!!!]
唐突に響くムゲンの声。嫌な予感がしたが、それに反応したカカサが機体のブースターを起動させ、移動する。
見えてきた巨大なMAとも呼べる機体。左右が連邦とジオンその両方が混ざったような…。そんな感じ。
俺はビームライフルを構え、奴のスカートアーマーについているビームサーベルを打ち抜く。
サーベルは爆散し、カカサがムゲンの機体を引っ張り、一度間合いを取る。
[ったく…世話が焼けるね君は…。ムゲン・クロスフォード君よ]
カカサがムゲンをからかうように言った。
[カカサ…?!]
[クロノード君もいるぞ?]
「ずいぶんひどい有様だな…ムゲン。まぁ…相手があの化け物じゃ…そいつも不利だな」
[…二人とも…ジオンなのに助けた…?]
それを聞くのかという口調でカカサが返す。
[そりゃあ、一度は同じ焼き鳥を食った仲だからな。ついでに…俺もこいつは倒しておかんといけないと思ったのさ。お前のためにも…後の奴らのためにも…残らずな!]
こんな事を言うようになったんだな。カカサも…。全てこいつと出会ってから変わったって事か…。
「そういうわけだ。もう一度共闘と行こうぜ?ムゲン」
[だが…これがバレたら…俺は良いとして、お前たちは…]
「なぁに…気にしなさんな。正面の奴は俺の部下が抑えてる」
[…それって!!]
「…まぁ…なんにせよ…こいつを潰す。それだけだろ?」
[……あぁ…]
あいつはたった一人であのデカブツと戦っていた。
ならせめて、俺とカカサでコイツの背中を押してやらないとな…。
[分からないのか!!!!]
俺は正直驚いた。彼が、ここまで感情を露わにしたのを久々に見た。
「……!!」
[俺だって…俺だって奴を殺したい!!!だが…それよりも大切なものがあるだろう!!!……俺達の出番は…終わったのさ]
何かを察した。そうか、俺達も
「……カカサ……。分かった…。ムゲン…必ずけりを着けろ。そんで…戦争終わったら…うまい飯食おうぜ…!家族全員で!!!」
[…あぁ…!また会おう!!!]
シゼルとすれ違い、俺達は家族の元へと急ぐ。
「くそっ!!シゼル…!!!」
俺はただムカついていた。彼を倒す事が出来なかった事。それだけだった。
[落ち着けよ。別にまだ仲間は全滅と決まったわけじゃない。最後まで仲間を信じろって、ムゲン言ってただろう?]
そんなことあいつ言ったっけな…。とか一瞬考えてしまった。
「…そう…だな…急ごう!こんな戦いもうやめさせるためにも!」
[隊長!カカサさん!!]
「皆!待たせたな!全員撤退だ!!!」
[どういうことです?!]
[…この戦いはもう終わる。そうクロノードが踏んだんだよ。だから、帰るんだ]
[……はい!]
その話を聞いた後、俺は叫けぶ。
「全機、聞け!!!」
味方機の目線が俺に集中する。
「この戦いはもう終わる!もう一切戦う必要は無い!!部隊を失った奴、生き残りたい奴は全員連邦ジオン関係なく俺について来い!!」
「そんで…!うまい飯でも食おうぜ!!!」
互いに信じた。この言葉は、ムゲンにも聞こえてくれているといいが…。
それから、集合してくる奴らを確認していた時、不思議な緑色の光を見た。
「…暖か…だな…」
ここにいる全員見えているのだろうか。
……俺は物語や筋書き通りが嫌いだ。だが…。
それでも、この光を見ている時だけは、何故かそれすらも許せた。
人は、こんな時何を想うのだろう。
全てを許せる事?それすらも拒もうとする事?優しさ?
それは分からない。
その答えは無いといったほうがいい。
人それぞれの感情があるからこそ、人は人で居られる。
だから、何を想うのかも人それぞれなのだ。
だがあの時俺は想った。
『優しさ…。少しは信じても良いかもな…』
と。
「…さて、そろそろ冷えてきたな。部屋に戻るか…」
俺は立ち上がり、機体から降りようとする。
「おーい!クロノード君!!!皆で鍋でも食べようぜー!!」
と、のんきにカカサが叫んだ。一瞬こいつにも俺と同じ苦しみを分けてやろうと思ったが…。やめておこう。
「あぁ。今行く!」
俺は急いで機体を降りてカカサに駆け寄っていった。
なんにせよ、俺はただ自分の信じる道を歩んでいけたらいい。
カカサや、仲間が沢山いるそんな道を進みたい。
だからこそ、こいつらを…。
「……守っていかなきゃな」
外伝 完