機動戦士ガンダム虹の軌跡   作:シルヴァ・バレト

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23:炎のトリントン

 宇宙世紀0083.10.13 21:00 旧ジオン軍残党デラーズ・フリートが奇襲攻撃。第00特務試験MS隊第一小隊隊長単機で戦線へ。

 

 格納庫を出るとすでに辺りは炎が施設を飲み込んでいるところがちらほらと見えた。

 

「くっ……ジオン…何が目的で…!」

 

 理由を考えながらもレーダーで周囲を確認するが、付近に敵影が見当たらない。

 

「……まてよ…今日は確か…新型戦艦が……」

 

 俺の脳裏に一つの予感がよぎる。

 

[ムゲン隊長!]

 

 無線から声が聞こえる。声の主はおそらくマーフィーだろう。

 

「なんだ?」

 

[敵の座標位置、送ります!言わなくてもわかるでしょうが相手の目的は新型戦艦の奇襲と思われます!]

 

「やはりか…!新型艦の援護へ回る!他小隊は周囲警戒!第一小隊は後続を頼む!」

 

 手短に指示を送った後、俺は単機で敵の位置へと向かった。

 

「レーダーに敵影…数は3機か…!!」

 

 目の前を見ると、今まさに戦艦を攻撃しようと武装を構えるザク。

 

 しかし、この距離では間に合わない。射撃をしようにもマシンガンでは火力不足であった。

 

[……一番槍は、いただくぞ。ムゲン]

 

 不意の無線。声の主は……道夜。そして彼は、素早く敵の懐へもぐりこみ、ジム・ストライカーのサイズが引き裂いた。

 

「おぉ!道夜、助かったぜ!」

 

[助けたつもりはない。それより、まだ来る……!]

 

「わかってる……まだ、ピクシーが暴れたりないとさ!」

 

[それじゃ、やってやるか]

 

「もちろんだ。相棒」

 

 ジム・ストライカーと背中合わせになり、正面を見つめる。敵は…2、3機はいるだろうか。

 

[ムゲン。敵はザク程度だが、油断はするな…。やつら、手練れだぞ…!]

 

「そんなことは分かってるさ。こっちだって死にたくはない…」

 

 ピクシーのダガーを引き抜きながら小さく呟いた。

 

 

 

[う、うわああああ!!!]

 

[隊長!!友軍機の損害が…!!]

 

「ちっ!こっちだって手が離せないんだ…!!」

 

 それもそのはず、2機の相手を1機で相手しなければならないのだ。

 

 ダガーでヒートホークを受け止め、受け流す。そして反撃の一撃を叩き込む。

 

「一機仕留めた!くっ…!」

 

 しかし、後続の機体がマシンガンを放ってくる。

 

「これ以上は……!」

 

[ムゲン、楽しそうだな?]

 

 その声とともに一機のザクをビームが撃ち貫いていた。声の主は言うまでもなく…。

 

「…ファングさん!助かるぜ!!」

 

[こっちは俺が相手する。ガンダムなら何とかなる!]

 

「俺の機体だってガンダムなんだけどな…。まあ、ここは任せるぜ!」

 

 ファングさんに後を任せて、戦艦付近の敵へ攻撃を開始する。

 

[ちっ……!この機体…!なぜガンダムが敵をする!!!]

 

「道夜!?」

 

 見ると、道夜の機体と新型と思われるガンダムが鍔迫り合っている。

 

[貴様のような分別(ふんべつ)のない者に、我々の理想が分かるものか!!]

 

[お前…!その声は…!!]

 

「道夜!退け!そいつはやばい!!」

 

 俺はマシンガンを連射し、道夜と相手の間を分かつ。

 

[すまん。ムゲン…しかし…こいつは…]

 

[ほお…少しは腕が立つようだな。しかし!!]

 

 相手はバルカンを地面に乱射する。

 

「道夜!散開して、挟み撃ちにする!」

 

[ああ!]

 

 俺と道夜は左右に分かれ、ガンダムにマシンガンを放つ。

 

[我々の邪魔をするなぁあああ!]

 

 ガンダムはサーベルを引き抜き、道夜の機体を盾で吹き飛ばした。

 

[ぐっ…!!]

 

「道夜!!てめぇ…!仲間をよくも…!!」

 

[ふん!]

 

[()()()少佐!]

 

[ゲイリーか、作戦は成功だ!!]

 

 今…ガトーという名を聞いた。それが間違いでないのなら…あのガンダムに乗っているのは……。

 

[ここから出すわけにはいかない!!]

 

 そういって、新たなガンダムが奴の前に立ちふさがった。

 

「な、なんだ…!?ガンダムが2機…!?」

 

 さすがに自分でも驚きが隠せない。まさか連邦は新型を2機も製造していたなんて……。

 

[2号機は俺がやります!下がってください!]

 

「ま、待て!君一人では無茶だ!俺も…!」

 

[ふん。小癪な真似を…。貴様…!]

 

[はっ……!]

 

[邪魔だぁ!!]

 

 2号機はサーベルでガンダムを攻撃する。それを何とか受け止めた1号機は、2号機の猛攻に耐え切れず転んでしまう。

 

「ちっ!見ていられない…!」

 

[う、うわあぁああ!]

 

 

 

[ムゲン少尉!これ以上はグロリアスが…!砲撃に晒されています!ど、どうにかしなきゃ…!]

 

「落ち着け。道夜を回収してそちらへ向かう」

 

 無線をガンダムのパイロットに繋ぐ。

 

「ガンダムのパイロット。こちらは第00特務試験MS隊所属、ムゲン・クロスフォード少尉だ。そのガンダムは任せる。すまないが、頼むぞ!」

 

[は、はい!]

 

 俺は道夜の機体を回収後、戦艦グロリアスへと向かった。

 

 

 

 母艦付近の格納庫へ来ると、こちらが既に敵に圧されつつあった。

 

[少尉!まずは正面の敵を!グロリアスをやらせてはなりません!]

 

「オーライ!任せときな!代わりに道夜を回収してやってくれ!」

 

 俺は前進し、まずは正面のザクをマシンガンで撃ち抜く。

 

「第一小隊!全機、散開して、敵を潰せ!」

 

[[[了解!]]]

 

 3人から了解の声が聞こえ、俺は少しだけ安心した。再び正面に目をやる。正面には、敵が3、4機。その中に、見覚えのある機体がいた。

 

 黒いゲルググと、白いゲルググ……。おそらく、いや間違いなく奴らが指揮官だろう。

 

「……全機!持ちこたえろ!指揮官機を潰す!」

 

 俺はゲルググ2機めがけて移動する。狙うは2機だけ…!

 

「邪魔をするな!!」

 

 道をふさぐザクを切り抜け、奴らを目指す。

 

「見えた!射程圏内!!」

 

 俺は牽制にマシンガンを乱射。すぐさまダガーを引き抜き、黒いゲルググを切り裂こうとする。

 

 しかし、黒いゲルググは待っていたかのように刀を引き抜き、ダガーを受ける。

 

 ダガーと刀が鍔迫り合う形となる。

 

「くっ……!」

 

 あの速さに反応できる奴は、やはり一人しかいない……奴は…。

 

[久しいなぁ!ムゲン君!!]

 

 うるさい声。間違いない。

 

「カカサ……キヤモイ…!!」

 

[でも、邪魔するなら容赦はしないぜ?あ、少しくらいはしてあげてもいいよ?]

 

「ふんっ!そんな事言ってられるか?カカサ!!」

 

 俺は刀を蹴り飛ばし、ゲルググにダガーを投げつける。しかし、寸での所でダガーは何者かの射撃により、防がれる。

 

[……まったく。俺を忘れるとは言わせないぞ。ムゲンよ]

 

「……やはり…!クロノード・グレイス…!!」

 

 白いゲルググは脚部のミサイルポッドとビームキャノンを放ってくる。

 

「ちっ…!!」

 

 それを何とかすべて避わし、ダガーを構えようとしたとき、背後から殺気を感じる。

 

「くっ!!」

 

 すかさず振り向きダガーでクナイを受けきる。

 

[うわぁ。さすがに早いねぇ……。でも、これで終わりだ。ムゲン君よ]

 

「……!」

 

 ビームライフルが背中に押し付けられる。負ける…!

 

[ぬおおおおらあああ!!!]

 

 突然声が空から響き渡る。

 

 そして、背後で轟音が響き渡り、ビームライフルを押し付けられている感覚がなくなる。

 

[な、なんだってんだ!?おーい!クロノード君!無事かいー?]

 

[……なんとかな……こいつは新型…みたいだな]

 

 背後を振り向くと、フルアーマーのジムが大剣を構えている。

 

[おいおい…ムゲン・クロスフォード。情けないぞ?俺に助けられるなんてな…]

 

「…いやぁ。悪ぃ。助かったぜ、イーサン!」

 

[……ちっ調子のいいやつめ…!]

 

 

[…今回はここまでだな。離脱する。また会おう!ムゲン!]

 

 そう言って2機は撤退していく。

 

[待ちやがれ!!]

 

「いい」

 

 追撃をかけようとするイーサンを、俺は止めた。

 

[なんでだよ!!お前は連邦だろう!?]

 

「ああ。だから、今は母艦を守ることが先決だ」

 

[……ちっ!!]

 

 悔しそうに、イーサンはうなだれているのが機体越しでもわかった。

 

 

 

 21:46 連邦軍の残存MS小隊がRX-78GP02Aガンダム試作2号機サイサリスの追撃開始

 

 ラバン・カークス少尉戦死

 

 0083.10.14

 

 00:50 アナベル・ガトー少佐、RX-78GP02Aガンダム試作2号機サイサリス積載のコムサイで宇宙への脱出を計るもRX-78GP01ガンダム試作1号機ゼフィランサスによって阻止

 

 ディック・アレン中尉戦死。カレント小隊全滅

 

 06:20 バニング小隊、海岸線でRX-78GP02Aガンダム試作2号機サイサリスと交戦。

 

 アナベル・ガトー少佐とRX-78GP02Aガンダム試作2号機サイサリスはU-801ユーコンに回収され脱出に成功。アフリカへ向かう。

 

 それから20分くらいしただろうか、新型のガンダムが海岸線から戻ってきた。

 

 ガンダムは無傷というのは無理だが、軽傷で済んでいそうな見た目だった。

 

 さすがの唐突な奇襲で、こちらの兵も疲れ、戦艦も損傷している状態。することのない俺は、新型ガンダムのパイロットに接触を試みることにした。

 

 

 新型の足元に行くと、丁度機体からパイロットが降りてくるところであった。

 

「よっ!追撃お疲れさん」

 

「……あ。どうも…」

 

「さっきは助かったぜ、あの機体の注意を引き付けてくれて。おかげでこっちが守りきれたよ」

 

「……」

 

「おっと、自己紹介がまだだったな…。俺は…」

 

「ムゲン・クロスフォード少尉ですよね?」

 

「ん…?そういや言ってたっけか…」

 

「それもありますが…一年戦争を生き残った部隊の隊員と、連邦軍では有名ですよ」

 

「……そ、それはそれは…」

 

 自分が有名とは、少し恥ずかしい気もする。

 

「自分は連邦軍所属、コウ・ウラキ少尉であります!」

 

 ビシッっと敬礼してみせるコウ。

 

「ま、まあ階級は同じだし、そんな堅苦しくしなくて問題ないさ」

 

「は、はい…」

 

「あー……少し時間あるか?ゆっくり話でもしようぜ?」

 

「わかりました。ただ、少し疲れたので、仮眠してからでもいいですか?」

 

「おっと、そうだったな。そうだな、ゆっくり休め。俺は、あのペガサス級を母艦にしてるから、いつでも来い。待ってるぜ?」

 

 そう言い残して、俺は母艦へと足を向けた。

 

 

23 完




今回登場した道夜の機体です。



機体名  ジムストライカー(宇宙戦闘適応型)
正式名称 GM Striker

型式番号  RGM-79FP
生産形態  試作機
所属    地球連邦軍、ティターンズ 
頭頂高   18.0m
本体重量  50.2t
全備重量  76.3t
出力    1,250kW
推力    92,000kg


武装    ツイン・ビーム・スピア
      100mmマシンガン
      スパイク・シールド
      60mmバルカン砲
180mmキャノン

搭乗者   八雲 道夜

機体解説

大破したAEWFCに代わり、道夜に配備された機体。

元々は陸戦型であったストライカーを、宇宙対応型のバックパックに変更することで、宇宙での戦闘も可能になった。

道夜の戦闘スタイルに合わせて、中距離から近距離の武装が搭載されている。

この機体で道夜は一年戦争、そしてデラーズ紛争を生き残っている。
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