宇宙世紀0083.11.12 23:20 デラーズ軍と連邦軍との大規模な戦闘。【スターフォール作戦】開始。
第00特務試験MS隊Aゾーン防衛。
[これ以上先に通すな!!こいつを守るんだ!!]
ファングさんが必死に叫ぶ。
「……くっ…間に合ってくれ!」
「……ムゲンさん」
「なんだ?」
「邪魔じゃないですか…?わたし、屈んでいますよ」
「いや、いい。普通にしていて構わないよ」
[ちっ!こちら道夜!!A-2ゾーン!持たない!!!]
[ムゲン!!]
「了解だ!!!」
機体を素早くターンしA-2ゾーンへ向かう。
「しばらくは戦闘が続く。しっかりつかまってて」
「は、はい!」
左手でダガーを引き抜き、右手のマシンガンで照準を合わせる。
[くっ!!]
「そこだな!!!」
トリガーを引く。マシンガンから弾が乱射され、気づいた敵が間合いを置いた隙を狙う。
「今だ!」
ダガーを投げつけ、足に直撃させる。
「道夜!止めを!」
道夜はそれに呼応し、ストライカーの刃でザクを裂いた。
「まだ来る!左、9時の方向、3機!」
[了解]
「まだだ。3,2,1……今だ!射撃を撃ち込め!!!」
[全機左9時方向に射撃撃ちかたはじめ!!!]
道夜の指示で第三小隊の全員が射撃を開始する。その隙に投げたダガーを回収。
続けてレーダーを確認。右2時方向に敵影2機。
「道夜、左を頼む。俺が右をやる!!」
俺はスラスターを起動し、一気に相手の懐へ飛び込む。
1機を蹴り倒し、吹き飛んだところへエッジナイフを投げつけ、コックピットに命中させる。
「まだだ!そこぉ!!!」
ザクの不意打ちを機体を屈ませて回避し、そこから勢いよくダガーを振りぬいた。
「次だ!!」
すぐさまレーダーを確認。と、背後からの殺気を感じ、機体を宙返りの如く反転させる。
[ほぉ。さすがぁムゲン君だね。また腕を上げてる]
「カカサか!邪魔するな!!!」
[僕にとっては君が今は邪魔なんだよね。退く気はないね!!]
俺はダガーで切りつける、それをカカサのゲルググは刀で受け止る。
互いに間合いを取りながらナイフを投げつけ、互いに相殺。
すぐさまスモークバルカンを発射、地面に撃ち込み、視界をかく乱させる。
煙の中に素早く入り込み、カカサに切りかかるが、相手もそれを見越したかのようにそれを受け止める。
そして、反撃と言わんばかりに刀を振ってくる。それを俺は受け止め、至近距離でナイフを投げつけるも、再びナイフで受け止めらた。
互いに間合いを取り、態勢を立て直す。
「……さすが…。……エミリー、大丈夫?」
「は、はい!私は構わずに…!」
「オーケー…。任せて!」
[いやぁ。ムゲン君と戦うと、心が躍るねえ!やっぱり戦いはタイマンに限るよね?ムゲン君もそう思うだろう?え?そう思わないって?]
このうるささは相変わらずだと思った。
「そうかもな…」
[だが……残念ながらここまでだ]
「何!?」
一瞬の勘で悟った。俺はナイフを正面に投げた後、左にすぐさま回避。
見ると、俺の元立っていた場所には煙を裂く一発の銃弾がナイフを粉々に砕いていた。
[おい!クロノード君!何してるんだ!これじゃあ俺がカッコ悪く見えるじゃないか!!あんないいセリフ言っておいて!]
[悪い悪い。相手がムゲンだと、なかなかに勘が鋭くてな]
[あ、わかるよそれ!前とは違くて、随分いい動きをするようになったよねぇ!!]
「…流石に……2機はきついか……!」
[それじゃ、情け容赦なくいかせてもらう!]
カカサが懐へ踏み込む。俺は刀を受け、反撃の一撃を与える。
見事に回避され、続けざまに、カカサが避ける予兆が見えた。
「左……いや、右…違う…これは…宙返りして…クロノードの狙撃…!」
とっさに体が動き、残りのナイフを正面に投げ、それをスモークバルカンでヒットさせる。
[なっ!射線が…!?]
[おーまかせ!ってね!!]
カカサが煙を切り裂いた一瞬を、見逃さなかった。これで決めなきゃこっちがやられる!
「いけええええ!!!」
【全開機構~オーバードライブ~ System standby】
瞬間、機体の右目が炎の如く赤く輝き、その姿はまるで鬼神の如く。
そして、その動きすべてに余韻のような美しい残像を残して。
刃はぶれず、機体こそが刃。
叫びと共に、俺はダガーをカカサの右肩に突き刺した。
[!!!]
カカサの機体を蹴り飛ばし、クロノードへ一直線に向かう。
[何!?ざ、残像だと!?]
「俺はこれ以上!!!」
クロノードのゲルググにスナイパーライフルを真っ二つに、続けて右肩から腕を切り落とす。
「誰も…死なせない!!!」
無線をすべての回線につなぎ、叫ぶ。
「俺は……第00特務試験MS隊、第一小隊隊長!ムゲン・クロスフォード!!!!」
「ジオン残党の全機に告ぐ!!ここから先に進むなら、地獄への片道切符だと思え!!!!」
「誰一人として逃がさない。お前たちの首にはいつでも俺の刃が掛かっている!!!」
通信を切り、静かに目をつぶる。
「……」
「ムゲンさん…」
「エミリー。大丈夫、死のうなんて思ってない。必ず生還という命令もあるし…な」
「……」
「安心して。必ずお父さんに会わせてあげるから」
「…はい!」
[ムゲン…その状態は…]
「どうやら、起動したみたいだ」
[オーバードライブ…システム…]
「パイロットの[感情の爆発]。または[意志の限界調和]の時に発動する…」
「俺は…今、こいつと共にある。ピクシーは俺で、俺はピクシーだ…!そして、大切な仲間を守るために、やっと目が覚めた
[……遅かったな…目覚めるのが…]
「ああ。随分長く待たせてしまったよ。道夜、お前にもな…」
[…だな。……すまなかったな…あの時は…]
「いいや、俺が謝らなければならない立場さ…」
[……そうかもしれないが…]
「だが、安心してくれ。もう……止まらない。俺は今、仲間を守るために戦っている」
[……変わったな…ムゲン]
「…そうだろうか…?」
[ああ。今のお前は、形が出来てきている感じがする…]
「いつまでも…『
[…ああ。本当に変わったな…お前…]
「その話は後だ、そっちの警戒を怠るな」
[わかっている…っ!!すまん、敵だ、また後でな]
「ああ。お互い生き延びようぜ」
[ああ…。無事の帰還を待っているぞ、相棒]
レーダーを確認。敵影が5機、A-1ゾーンへと向かっている。
「ファングさん、A-1は誰が防衛を!?」
[くっ!ムゲンかっ!?A-1は第一小隊だ!!早く行ってや…ぐあっ!!]
「ファングさん!?ファング!!!!!!」
ファングさんの元へと機体を向けようとしたとき、彼女の手がそれを阻止した。
「エミリー!?………そうだな…信じて待つのも…家族だよな…」
「……はい」
俺は機体をA-1ゾーンに向けて移動させた。
[ちっ!!こいつらぁ!!!邪魔なんだよ!!!]
大剣を振り回すジムカスタムを捉えた。どうやら、敵に囲まれているようだ。
「俺の……」
「俺の部下に……仲間に手を出すんじゃねぇええええ!!!!」
マシンガンを乱射。続けてスモークバルカンでジムカスタムの周りに着弾させ、敵から見えなくさせる。
素早くジムカスタムの近くへ移動。
「イーサン・マクラウドだな」
[あぁ?…てめぇは…なんで出てきてんだ?雑魚のくせによ!!]
「ああ。すまない。だが、雑魚でも何でもいい。お前を死なせるわけにはいかない」
[な、なに…カッコつけてるんだよ。てめぇに守られなくても俺は…]
「強がるなよ?お前は俺の部下だ。だから、隊長に任せておけばいいんだ」
[……な…]
「見ておけイーサン!!!お前の隊長の背中!」
ダガーを構え、煙を切り裂く。
燃える炎の右目がひときわ強く輝く。
その瞳は全ての敵の戦意を飲み込むがごとく。誰もがその瞳を見て立ちすくむ。
俺は素早く懐に潜り込み、敵の両腕を切り落とし、続けて、コックピットにダガーを突き立てる。
さらに、背後にいるザクへ、蹴りたおし、頭部を切り落とした後、コックピットを強引に開ける。
たまらず兵士が逃げ出していく。
正面から10機もの敵。だが、今の俺には恐怖を感じることはなかった。
「俺の名はムゲン・クロスフォード!!俺がお前らの首をいただきに来たぞ!!覚悟しろ!!!」
相手はビビらずこちらへ攻寄る。
[お、おい!そんな数を相手に…!]
「手を出すな!お前を傷つけさせるわけにはいかない!隊長として!なにより、仲間として!」
「おおお!!!」
1機のザクを切り伏せ、続けて、ダガーを投げつけ、2機目のコックピットに直撃させる。
「まだだ!もっときやがれ!!!」
背後からの殺気。とっさに左に回避する。
正面からの衝撃で頭を打つ。
「ぐっ…!」
「ムゲンさん…!!」
「……衝撃に備えて…!」
「でも…!!」
「君も…仲間も…誰も…傷つけさせない…」
全方向からの衝撃。爆発がピクシーを襲った。
俺は衝撃で頭を再び打った。
「がっ…ぁっ!!」
「ム、ムゲンさん!もう!もういいよ!!やめようよ!!!」
「………やめ……られ…ない…!!!俺は……俺と…ピクシーは…」
『まだ……終わってない!!!!』
「動け!ピクシー!!!俺はお前だ!!そして!!!お前は俺だ!!」
「動けよ…!!動きやがれ!!!俺の体ぁああああああああ!!!!!」
少しずつ、機体が膝を立てて起き上がる。左腕が使い物にならなくなっている。
右手も、ぎりぎり使えるくらいだ。
「…そう…それで……いいんだ……」
「俺たちは……まだ…終わってない…」
「生きて……エミリーを父さんに会わせて……」
「全員が無事に生還するまでは!!!!」
「だから頼む!ピクシー!!!力を…俺に力を貸せぇええええ!!!!」
消えかけた右目の炎が再び強く宿る。
「いくぜ……死にかけの妖精を……なめるなよ……!」
左のカメラアイは破壊され、右側しか見えてないが、それでも、ここで止まるわけにはいかない。
「オーバードライブシステムのリミッターを全解除。フルパワーで行かせてもらう!」
【全開機構~オーバードライブ~Limit Over System standby】
消えた左目をも再び炎に包まれ、怒れる妖精が姿を現す。
自らを地獄の業火で焼きながら、眼前に在るものをすべて
その動き1つ1つが妖精とはかけ離れ、その姿はまさしく本物の鬼神。
「………精神同調。行くぞ。ピクシー!!!」
ダガーを握る。そして、敵の背後へ素早く移動し、コックピットを貫く。
[ムゲェェェエエン!!!!]
ぼろぼろの黒いゲルググが迫る。
「くっ!」
なんとか受けきるが、損傷のせいで、態勢が崩れる。
[落ちろおおおおお!!!]
「くっ…!!カカサァアアアアアアア!!!!」
ピクシーの左腕が切り落とされ、ピクシーはゲルググの右腕を切り落とした。
[くっそおおおおお!!!!]
「はぁ……はぁ……ぐっ…!!!」
突然、強いめまい。ピクシーのシステムを使いすぎたのだ。
「……くそっ……ここで……終われないんだ…」
「ムゲンさん!!しっかりして!!」
「あ…………あ…………」
まずい…。意識が……。
「ムゲンさん!!!」
「……エミ………リー………聞こえ……て…」
[ムゲン!!!!]
リナの叫びだった。
[帰って…来るんだよね?]
[帰ってきて、皆で夕飯食べるんだよね!?]
[今日の夕飯はハンバーグだよ!!絶対帰ってきてね!!!]
「……ハン……バ………グ…」
「…はは……っ……」
だんだんと意識がはっきりしてくる。
「最………高だ……な………ハンバーグなんて……さ……」
「なら、いっちょ……終わらせないとな……」
「ムゲンさん!」
「…やるぜ、エミリー…。帰ったら飯だ…!」
「…はい!!」
[……おい]
「……なんだ……?イーサン」
[十分わかった。俺はお前を勘違いしていたようだな]
「……そうかい……。すまないな、力が入らなくて冷たい対応になっている……」
[へえ。それじゃあ、俺たち部下の出番ってわけだな?]
「な…に…?」
[こっからは第一小隊が相手になってやるぜ。隊長をよくもやってくれたもんだぜ…]
「…おまえ…ら…」
[よし、てめぇら!!気張りな!!!隊長を守りながら戦うんだ!!]
「ま…て…」
[あぁ?]
「俺も…戦おう。こんなんでも、お前たちの隊長なんでな……やらせてもらう」
[ああ。一緒に戦おう。俺ぁどうすりゃいい?隊長さんよ]
「…ああ。イーサン、お前は俺と共に、ジョンとクライスは互いに連携を意識して行動を。互いの背後を守れ!」
[[了解!!]]
「じゃ、お手並み…拝見と行くぞ?ルーキー」
[へっ!言ってくれるぜ!年下の隊長さんよ!!]
正面にとらえた5機。この数なら、二人で何とかなるはずだ。
「正面、敵影5!狙撃ライフル構え!!」
[ああ!]
「俺が切り込む、トドメは任せるぞ!!」
[わーってるよ!!言わなくてもな!!]
懐に飛び込み、ダガーで足を切り落とす。そして、そのタイミングと同じにコックピットが撃ち貫かれる。
2機目も同じく、動きを合わせて撃墜。
「連携を変える!俺が牽制。イーサン切り込め!あと3機まとめて堕とすぞ!!」
[無茶を言う隊長だ…!]
「ふっ。…だが、面白いだろう?」
[ああ。本当にセンスがないが…面白すぎるぜ!!]
俺は宙返りしながらマシンガンを放ち、相手を誘導させる。
「今だぁああ!!!」
大きくジャンプしたジムカスタムに合図を送る。
[うっしゃおらああああああああああ!!!!]
そのまま相手の懐へもぐって、横薙ぎ一閃。
まとめて3機が撃墜される。
「やるな!さすがだ!!」
[当たり前だ!俺の技術をなめてもらっちゃ困るな!!]
[全機!!現地時間11月12日20時13分にて、南米のジャブロー上空をコロニーが通過!]
[超大型ビーム砲台射撃準備!!!!]
「聞いたか!?イーサン!」
[ちっ…まずいな……]
「第一小隊、被害地域から後退!!!!」
「イーサン!退くぞ!!」
[言われなくてもそうする!!!]
[うおおおおおおおおおお!!!!俺の命に代えて!!!ジーク・ジオオオオオオオオオオン!!!!]
「なにっ!?」
見ると、ビーム砲台に1機の敵が突撃してきている。
「くっ!まにあわねえ!!!」
[んなろおおおおおおおお!!!!]
イーサンはスナイパーライフルで足を撃ち抜いた。しかし、相手のザクの爆発で、ビーム砲台が破損する。
[隊長!!悪い!!ビーム砲台が被弾した!!!]
「どうなってる!?」
[トリガーが引けなくなっている!!!]
「リナ!ビーム砲台が被弾した!!!トリガーが引けない!」
[ええ!?そ、そんな…。とりあえず、その状態じゃあ何もできない!!急いで離脱して!!!]
「わかった、イーサンを回収後、離脱する!」
イーサンの機体に近づく。
[で!?どうなんだ!隊長!]
「駄目だ!そいつはもう使えない。離脱するぞ!」
[ああ!?諦めんのか!?]
「…違う!トリガーが引けない以上こっちからできることはないんだ!」
[……ったく……まだ頭が固いな……]
「え…?」
[使えねぇなら、使えるようにすりゃあいいんだよ!]
「ど、どうすれば…?!」
[まあ見てな!こいつをコロニーの中で爆発させりゃあいいんだよ!]
「お、おい!それって…!!」
[そうだ!俺が……コロニーへ運ぶ!!]
「…だ、駄目だ!隊長の権限で……」
[嫌だね!!こういうのは大人に任せときゃあいいのさ]
「………!ムゲンさん!どいて!」
「エミリー…?!」
エミリーは突然コックピットハッチを開き、叫んだ。
「……パパ!!!!」
[…ああ?!……え……?]
「パパだよね!?イーサンって…!!!」
[……ちょっと待て。…隊長、機体を近づけてくれないか]
「あ、ああ。待ってろ」
俺は機体をギリギリまで近づける。
すると、イーサンはコックピットハッチを開き、彼女を見つめた。
「……エミリー……なのか……?」
「パパ…なんだね……」
「そうか……エミリーの親父さんって…」
「エミリー…お前は死んだはずじゃあ……」
「違うよ!!生きてた!!パパのおかげで!!!」
「……はは……そうか……そうかあ…!!」
「大きく…なったな……」
「パパ………会いたかった…ずっと探してた」
イーサンはエミリーを抱き寄せる。そんな彼の瞳からは大粒の涙がこぼれている。
「パパだ……ずっと…探してた…」
「ああ……お前が死んだと思って…俺は…俺は…!!!」
「こんなに近くにお前がいたのに、どうして…!どうして気づかなかったんだ…!!」
「パパぁああ!!」
[ムゲン!もう限界だ!!!早く離脱を!!]
「ああ!!!待ってくれ!!!」
「イーサン、離脱だ!!」
「……駄目だ。それはできない」
「何故!?やっと会えたんだぞ!?娘に!!」
「それでもだ。俺は…軍人だ」
「そんな…!!そんなことってさぁ!!!」
「理解出来はしないさ。お前は…優しい男だからな」
イーサンは俺の頬を優しくなでた。今まで見たどんな人より父の……父の面影を持っていた。
「駄目だ…駄目だよ…!!こんな別れ…あっていいはずがないだろ!!!!」
「目の前にやっと…やっと再会できた娘がいるんだぞ!!?」
「わかってる!!!」
「だからこそ、俺は…俺の務めを果たさなきゃあいけない…」
「イーサン…」
「頼む…。ムゲン・クロスフォード。これは…俺にしかできない事なんだ」
「……お、お前ってやつは…」
「エミリー…いいかい。ムゲンと共に、家へ帰るんだ」
「やだ!!もう離れたくない!!!」
「俺だって寂しいさ。けれどな……隊長の言う通り、お前にしかできない事がまだあるはずだ」
「…パパ……」
「だから…お前はまだこっちに来ちゃだめだ…」
「…うぅ…ぐすっ……」
「…隊長。最後の…頼みを聞いてくれないか」
「……なんだ」
「この…世界で一番愛おしいバカな娘を……家へ……返してやってくれ……」
「……いい…のか……?」
「ああ…。もう、覚悟は決めてある」
「……わかった。行こう。エミリー」
「いやだ!!絶対にはなれない!!!」
「エミリー!!!」
「っ!!!」
この言葉を言うのがこれほど苦しいと思ったことはない。それでも……
「彼は……軍人だ。彼の……最後の任務を…遂行させてやってくれ……」
「……うぅ……」
「エミリー。泣くんじゃない。君は強くて優しい子だよ」
「……パパ…」
「随分と母さんに似てきたな。これなら、きっと幸せな家庭を築くことができるだろうさ」
そう言って彼は、泣きながら彼女を撫でた。
「…うぅ…」
「さぁ。時間だ…そろそろ行かないと…わかるね?」
「……うん……」
「そうだ。この写真。持っていけ」
「…これは……」
「お前の母さんの写真だ。どうだ…?お前に似て美人だろう?」
「うん…!うん!!」
「……ムゲン隊長。あんたは…きっと、これからもつらい思いをするだろう」
「けどな、その時、そばにいてくれる家族を……仲間を……」
「…ああ……守って見せる……」
「ああ。…期待してるぜ?」
「……離脱する…!」
俺はエミリーをコックピットに入れ、急いでその場から離れる。
「嫌ぁあああ!!!パパぁあ!!!パパぁあああ!!!!!」
つらかった。胸が引き裂かれそうだ。家族の別れが…こんなに悲しいものであってはいけない…。
戦争が…戦争が家族の形を変えた。
「うっ……ぐっ…」
「うぅう。…うわあああああ!!!!!」
背後で爆音が聞こえた。きっと…彼が役目を果たしたのだろう。
グロリアスへ戻ると、全員が俺たちの帰還を待っていた。
「ムゲン…良く帰ったな…」
「………ああ」
俺は無線を開き、言った。
[全員、聞いてくれ。この戦いで、イーサン・マクラウド中尉が
[彼は……立派な軍人だった。そして、それ以上に………くっ…!!それ以上に……!]
胸が詰まる。悲しい。人の死を…何度も見ているはずなのに…。
[それ以上に、彼は一人の人間として立派であった!!!]
[それをここに称え、彼の命が無事天へ召されるよう……全機!!!!
俺は涙を流しながら銃を天へ掲げた。
宇宙世紀0083.11.13 00:34:38 連邦軍の阻止作戦失敗でコロニーが北米大陸の穀倉地帯に落着。公式発表では事故とされる。
第00特務試験MS隊第一小隊所属、イーサン・マクラウド中尉、戦死
01:05 アクシズ先遣艦隊、転進
01:19 アナベル・ガトー少佐、戦死
0083.11.23
一連のデラーズ紛争に絡んだ軍事裁判開廷。エイパー・シナプス大佐に死刑、コウ・ウラキ少尉に懲役刑1年の即時判決が下る
0083.12.03
AE、フォン・ブラウン支社のオサリバン常務、死亡
0083.12.04
ジャミトフ・ハイマン准将の提唱により、ティターンズが結成。旧公国軍残党狩活発化
0084.03.10
デラーズ紛争によるコロニー落下の真相とガンダム開発計画(RX-78GP01(fb)、RX-78GP02A、RX-78GP03(S))
一連のデラーズ紛争が公式記録より抹消。これにより、コウ・ウラキ少尉の罪状消滅。関係者への賞罰も消滅
「……本当に行ってしまうのか?」
「ええ……。パパ……父と会えた。それだけで、私の役目は終わったんです」
「……軍を辞めたって、ここにいればいいのに…」
「それはできません。家族に迷惑をかけるわけにはいかないですから」
「……だが…」
「ムゲンさん。私は、父の勇姿を見届けました…」
「だから、今度は私が、のちに伝えるべきことを探さなければいけないんです」
「…かつて…父が…わたしに教えてくれたように……」
「……俺も……彼からは沢山のことを教わった。……彼は…君のお父さんは…素晴らしい人だった…」
「私もそう思います。だから、わたしも、父のように強く生きてみます」
「……そうか。なら、止めないさ。…元気でな…エミリー」
「はい」
彼女は最後にニッと微笑むと、沈む夕日へ消えていった。
「行ったのか…」
「…ああ。見送りたかったか?第三小隊隊長として」
「いいや。そういうわけじゃない」
「……イーサン。彼は立派な軍人だった」
「そうだな。だが、お前は託された」
「え…?」
「彼の意志を継いで、これからもっと先へと歩いていくんだ」
「………そうだな」
「そういえば…まだ、していなかったな」
「ん?」
彼は手を差し出し言った。
「おかえり、相棒」
「……なんか…照れるな」
俺は手を差し出し、握手した。
「ただいま……相棒」
こうして、後にデラーズ紛争と呼ばれる戦いは終結した。
しかし、それによって生まれた【ティターンズ】がムゲンたちに新たな戦いを呼び込むのであった。
28 デラーズ紛争編 完