機動戦士ガンダム虹の軌跡   作:シルヴァ・バレト

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29:A New generation

 宇宙世紀0087.01.20

 

 ティターンズ、グリプスにて試作機、RX-178ガンダムMk-Ⅱをロールアウト

 

 0087.02.30

 

 エゥーゴ、MSA-099をロールアウト

 

 0087.03.02

 

 エゥーゴ、開発スタッフの家族であるカミーユ・ビダンの協力のもと、サイド7のグリーンノア1より試作MS、RX-178ガンダムMk-Ⅱ3機を強奪。

 

 ティターンズ、人質作戦でエゥーゴから試作機3機を奪い返す。エマ・シーン、人質作戦の反感から、カミーユ・ビダン、フランクリン・ビダンと共にRX-178ガンダムMk-Ⅱにより脱走。

 

(これにより再度RX-178ガンダムMk-Ⅱはエゥーゴの手に)。以後、カミーユ・ビダンはエゥーゴに参加する。

 

 ティターンズとエゥーゴによる「グリプス戦争」勃発

 

 

 

 俺はエゥーゴに参加し、小さな作戦などを手助けした。

 

 今は、エゥーゴの旗艦であるアーガマに身を寄せている。

 

 カミーユ・ビダンという少年が、今格納庫にいると聞いて、格納庫へと足を向けていたところだ。

 

 グロリアスとは違うものの、どうしていつも戦艦の中はここまで広くて迷路なんだ……。

 

 格納庫へつくと、丁度例の少年とすれ違いそうになる。

 

「あ、君、いいかい?」

 

「なんです?」

 

「カミーユ・ビダン君か…?」

 

「だったら何なんですか」

 

「…いや、初めてだから、会っておこうと思ってね。俺はムゲン・クロスフォード中尉だ。よろしく」

 

 手を差し出す。彼は少し考えた後、握手してくれた。

 

「…君が…ガンダムのパイロットなわけか…」

 

 ガンダムMk-2を見ながら言う。

 

「僕は、パイロットになったつもりはありません。軍人になることだって、考えたこともないです」

 

「……。そうか…。まあ当たり前だ」

 

「……あなたは、なんでエゥーゴに…?」

 

「お、俺か?俺は………」

 

 言葉を詰まらせた。しばらくの沈黙。

 

 

「カミーユ君!!少しいいだろうか!!」

 

 クワトロ大尉がカミーユを叫ぶ。

 

「ああ、はい!今行きますって!」

 

「それじゃ、ムゲン中尉。これで……」

 

「ああ、時間を割いてすまなかったね」

 

「いいえ。構いません」

 

 そう言って彼は俺に背を向け歩き始めた。

 

 

 

 時間があるので、自販機でコーヒーを買って飲むことにした。

 

「……ふぅ…」

 

 椅子に腰を下ろし、コーヒーを一口。

 

「よっ!青年!」

 

 バシッと背中を叩かれる。そして、思わずコーヒーを吹き出してしまう。

 

「ぶっ…!!」

 

「あ……。す、すまん……」

 

「い、いえ……。制服は汚れていませんから…」

 

 振り返り、苦笑いした。

 

 彼女はフィア・アッシュベリー大尉。エゥーゴのパイロットであり、クロノードの…妻だ。

 

 29には見えないほど美人。腰くらいまであるであろう髪を、一つのリボンで束ねて、ポニーテールのように結んでいる。

 

「本当か?どれ……」

 

「いや……だ、だいじょうぶですから……」

 

 彼女が触れようとする。俺は首を振りながら、後ろへ下がった。

 

「……ん?そうか。まあ……ならいい」

 

 彼女は手を引き、腕を組んだ。

 

「また考え事か?ムゲン」

 

「……いえ、そういうわけではないですよ」

 

「私からはそう見えたけど?」

 

「……それは気にしすぎですよ、フィアさん…」

 

「そうか?……気にしすぎか…。いやはやクロノードにも良く言われるんだ…」

 

「…ははは……。ところで、娘さんは……?」

 

「……ああ、ルナか…。あの子は今クロノードに任せているよ」

 

 この人には子供がいる。まだ4才くらいの女の子。名前はルナ。ルナ・グレイスと呼ぶのか、それともルナ・アッシュベリーと呼ぶのか…どっちなんだろうか……。

 

「いいんですか?そんなに適当で……」

 

「適当ではない。ちゃんとエサ……じゃなくて……ご飯もあげているし…、ちゃんと可愛がってもいる…」

 

「……いや、そういうことじゃ…」

 

「ふふふ…。冗談だ。そろそろ会いに行ってあげないとな…。クロノードだと、少し頼りないし…な?」

 

「……随分と信頼されてないんですね……」

 

 すると、彼女は笑いながら言った。

 

「いいや。これは例えさ…。彼の事は信頼もしているし、愛してもいる」

 

 見ていて羨ましかった。…見ているこっちが恥ずかしくなるほど…。

 

「ん?なんで君が赤くなっている?風邪でも引いたか?」

 

「……そうみたいです。看病してくださいよ」

 

 と、冗談交じりに言ってみる。

 

「バカ言え。そんなつもりないだろうに」

 

「はははっ!冗談ですよ。そんなことしたらクロノードに嫉妬されちゃいますしね?」

 

「違いないな。ふふふ……」

 

「だがまあ、本当にそうなったときは、看病くらいしてやるさ」

 

「…ええ。楽しみです」

 

 そのあと、少しの間二人で笑いあった。

 

 

 

 そのあと、廊下を歩いていると、彼の部屋なのだろうか。カミーユは走ってその部屋に閉じこもってしまった。

 

 部屋の前を通り過ぎると、彼の悲しそうな声が聞こえてきた。

 

「………」

 

 たしか、2度の戦いで父と母を失ってしまったらしい。……戦争というのはつくづく…。

 

 ……俺は彼を慰めようと思い、部屋をノックした。

 

「……なんです?」

 

「カミーユ君。少しいいかい?」

 

 彼は、ドアを開くと、俺を自分の部屋へと招き入れた。

 

「……話は聞いたよ…。両親のことも…」

 

「………」

 

「あ、いや、気を悪くしないでくれ。それを言いに来たんじゃない」

 

「……いいんです…」

 

「まだ、さっきの話が終わってないと思ってね」

 

「……確か、何故エゥーゴに入ったか…でしたね」

 

「ああ。理由は…たぶん、今の君に言っても理解はしてくれないだろう」

 

「…なんだと!」

 

「…君の気持ちも痛いほどわかる」

 

「僕の何がわかるんですか!!目の前で両親を2度も殺された僕に、何かを言える人なんか…!!」

 

「…俺も両親を目の前で殺された」

 

「えっ…?」

 

「当時はまだ一年戦争が始まる前の事だ。俺は、サイド2生まれでね、当時もまだそこで生活していたよ」

 

「サイド2って……」

 

「ああ。一年戦争の発端となったコロニーだ……。忌まわしい記憶さ」

 

 俺は、少しずつ思い出しながら口を開いた。

 

「……当時俺は15の民間人だった。戦争なんか、自分に関係ないと思っていた」

 

「俺の両親は君と似ていてね、MSの開発や研究をしていた人物だった」

 

「…だから狙われたんだろう。両親は、俺をクローゼットへと押し込んだ直後に殺された」

 

「それから、死んだ両親を何度も何度も銃で撃っていたよ」

 

「……なんて(むご)い…」

 

「ああ。それ以降、俺はジオンを恨んだ。恨んでも恨み切れない。そんな憎しみにとらわれ続けて連邦軍へと入った」

 

「戦い続けた。……でも、戦っているうちに、だんだんと()()()()()が変わってきたんだ」

 

「モノの見方…?」

 

「ああ。なんと言えばいいのだろう。……そう、戦いに連邦もジオンも関係ない。互いに殺しあって、結局は何もなくなる…」

 

「失って、失わせて……その繰り返しだ。戦争なんて」

 

「………悲しいモノの見方ですね」

 

「ああ……。自分でもそう思うよ」

 

「……だから…俺は二度とそれを繰り返したくはないんだ」

 

「立派ですね、大人の綺麗事って」

 

「……立派なわけじゃない。ただの自己満足だ。でも、その自己満足で、人を救うことができるなら、幸せじゃないだろうか?」

 

「僕にはわかりません。戦争をする人の気持なんか、知りはしませんよ」

 

「そう、だな……。君は正しい…。その正しさこそが、未来を変えられるんだろうな」

 

「僕はそういうのに興味はありません」

 

「まあまあ、大人の話はそれとなく聞いておいて損は無いぞ」

 

「……」

 

「俺がエゥーゴに入った理由は、ティターンズの暴走を止めるためだ」

 

「彼らがしていることは、過去にジオンがやっていたことと同じだ」

 

「……」

 

「だから、俺は……戦う。戦うしか…能がない…からね。ああ、すまない。君を励ますために来たのに、昔の話をしてしまったね…」

 

「いえ、いいんです。あなたみたいな人もいると、僕も分かりましたから」

 

「……カミーユ君。人は、人それぞれ、人の考えはそれはもう十人十色、色々あるだろう」

 

「君は、自分が正しいと思うことすればいい」

 

「僕の正しいこと……」

 

「ただし。行動には常に責任が伴うということも、忘れないように」

 

「わかってます」

 

「ならいい。君は賢い。これからに期待しているよ」

 

「は、はい…ありがとうございます…」

 

「……それじゃ、邪魔をしたね…」

 

「…ムゲン中尉」

 

 席を立ち、部屋を出ようとしたとき、彼に止められる。

 

「うん?」

 

「ありがとうございました」

 

「いや、俺は何もしてないさ。ただ、自分の過去を話しただけだよ」

 

「それでも、少しだけ気分が晴れました」

 

「…それなら、よかったよ」

 

 俺は彼の部屋を後にした。

 

 

 

「…………」

 

 ふと、【彼女】を思いだした。あの時別れてから、連絡も取れていない。

 

 それを言えば、俺の仲間たちは元気なのだろうか……。

 

「どうした?ムゲン」

 

 振り返ると、クロノードが小さい女の子を抱いてこちらを心配そうに見つめている。

 

「ああ…。クロノード…。なんでもないさ」

 

「嘘を言え。お前の顔に[()()()()()()()()]って書いてあるぞ?」

 

「う……」

 

 俺はつくづく、顔に出るようだ……。それを知ったのも最近のことだが……。

 

「で?言ってみ?何悩んでるんだ?」

 

「いや、悩む理由なんかさ……」

 

「ああ。彼らのことか……。寂しいか?」

 

「そりゃあ、ね。けど、もう迷ってられないさ」

 

「そういうことだ。どちらが間違っているなんて、もう関係ない」

 

「……俺たちは、もうそんな領域には立ってない」

 

「……戦争……か…」

 

「ああ。私情だけで戦争が終わるなら、明日にでも終わるだろう?そういうことだ」

 

「…そんな、楽な時代が来るといいんだけどね…」

 

「来るさ。信じてりゃあ……」

 

「…だね…。だったら、俺は…彼らとも…」

 

「…おいおい、まさか、会えないとか思ってるのか…?」

 

「えっ……?」

 

「そんな気持ちじゃあ、会えないかもしれんが。お前が信じ続けたら、会えるかもしれない」

 

「……まだ、分からない……。俺は…」

 

「何怯えているんだ……?」

 

「えっ?お、怯えてなんか……」

 

「ほれ、まただ」

 

 彼は、自らの顔を指差した後、俺に指を向けた。……また顔に出てるって言うのか…。

 

「うぅ……」

 

「まあ、お前にも()()が出てきたってことだな」

 

「変化…?」

 

「ああ。新しい価値観や、感情、思想……まあもろもろだな」

 

「……」

 

「彼らと戦うのは怖いか?」

 

「……恐怖は無い…。ただ…………」

 

 それから、俺は言葉が出なかった。なんともいえない気持ちが、俺を埋め尽くす。

 

「……。そうだな。俺から言えることは一つだ」

 

「……お前は、俺にとっては家族の一員だ。お前の背中には、常に仲間がいて、お前を支えてくれる」

 

「……俺は、そういう存在になれたらと……思っている。だから、迷ったら、遠慮するなよ?」

 

「ありがとう……クロノード」

 

「気にするな」

 

 彼は肩をすくめながら軽く笑った。

 

 

「むげんー。やっほー」

 

 少女がいっぱいの笑顔で俺に挨拶した。

 

 ……俺にしか出来ないことは……まだたくさんありそうだな……。

 

「や、やっほー……ルナちゃん」

 

「ルナ、やっほーじゃない。『こんにちは』だろう?まったく……。誰がこんな言葉を………。ん……?」

 

 何かをふと思った彼は、彼女を降ろした。

 

「どうした?」

 

「……すまん、ルナの面倒を頼む。ちょっとカカサに用事が出来てしまってな」

 

 ………なんとなく察した。俺は頷いて承諾。しばらくの間ルナちゃんと話しをすることになった。

 

「ルナちゃん、こんにちは」

 

「やっほー。むげんー」

 

「……こんにちは。だよ」

 

 彼女に微笑みながら言う。すると、彼女は、俺の言葉を学び、言葉を返した。

 

「こんにちは。むげん」

 

「そう。よく出来たね。えらいよ」

 

 俺は彼女を優しく撫でた。彼女は幸せそうに目を瞑る。その姿が……【彼女】に見えて、泣きそうになった。

 

「むげんー。えらいよー」

 

 彼女は、その短い手で、俺の頬を優しく触れた。なんとなく、察してくれてこんなことをしてくれたのだろうか……。

 

 いいや、そんなことは無いだろう……。たぶん……。

 

「……ありがとう。ルナちゃん」

 

「うん!」

 

 

 それから、しばらくして、クロノードが帰ってくる。

 

 カカサとみっちり話をしたそうだ。

 

 

 

「サラミス級の受領。これはメンバー分けが難しそうですなあ」

 

 アーガマの艦長、ヘンケンがうなり声を上げながら悩んでいる。

 

「……私がサラミスのメンバーを選んでよいだろうか。ヘンケン艦長」

 

「……ううむ…。フィア君。なら、君にあの艦を任せよう」

 

「了解した。それでは、メンバーは私が集めておく。それではな」

 

 彼女は淡々と言ったあと、ブリッジを後にした。

 

「……ヘンケン艦長。君は、彼女に任せてもよいと…?」

 

 エゥーゴの創設者ブレックス・フォーラ准将は言う。

 

「ええ。彼女はかつてジオンで【恐怖の大隊長】と云われた人物です。信じてもよいかと……」

 

「……君が言うのなら、間違いは無いだろう。では、後は任せよう」

 

「ええ」

 

 

 

 それから、俺は旧型のサラミスのメンバーとして選ばれることとなった。

 

 

29 完




名前:クロノード・グレイス(エゥーゴ)

年齢:30

性別:男

主な搭乗MS:プロトタイプザクⅢ(ホワイトカラー)

階級:大尉

説明

一年戦争、デラーズ紛争を無事生還し、そのカリスマ性によって、ジオンでは噂されていたパイロット。現在はエゥーゴに所属している。

隊長気質で真面目。そして、冗談が通じない堅物である。

しかし、カカサとは、仲が良く、いつも仕事の邪魔をされては、勝手に一人で腹を立てている。

だが、持ち前の人を惹きつける力で、部隊からの信頼は誰よりも厚いかもしれない。

フィアとは、デラーズ紛争との仲で、お互い愛し合っており、デラーズ紛争終戦後には、式を挙げ、子供まで出来ている。立派な父親になるため、日々努力しているとか。


名前:フィア・アッシュベリー(エゥーゴ)

年齢:29

性別:女

主な搭乗MS:プロトタイプザクⅢ

階級:大尉

説明

一年戦争、デラーズ紛争を生き残った元ジオン軍パイロット。

過去に大隊長になり、戦闘指揮した経験がある。

豪快な戦略と、大胆な行動で、常に相手をかく乱させる。非常に頭が切れる人物。

性格は、年齢さながらの豪快さと、経験によるもので、姉御肌気質な女性。

あまり自分のことは話そうとはしないが、仲間たちの良き理解者となってくれている。

クロノード・グレイスの妻であり、子供も一人いる。母親である。

左利きで、髪をポニーテールのように結んでいる。

髪色は黒。瞳はディープブルー。

帰還後はよく食堂でコーヒーを飲んでいる。
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