機動戦士ガンダム虹の軌跡   作:シルヴァ・バレト

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33:Tears of the moon

 宇宙世紀0087.05.22

 

 エゥーゴのMS部隊とカラバのアウドムラ、ケネディ・ポートへ

 

 0087.06.08

 

 MRX-009サイコ・ガンダム、ムラサメ研究所で試作1号機ロールアウト。

 

 ティターンズ、ルナツー宙域にグリプス2、旧ア・バオア・クーを移動。ゼダンの門完成

 

 0087.06.29

 

 ティターンズ、ホンコンシティを襲撃

 

 0087.07.08

 

 アウドムラ、ホンコンを出航

 

 0087.08.10

 

 ティターンズ、アポロ作戦発動。月のフォン・ブラウン市を襲撃し、一時的にこれを占拠する。

 

 俺たちは、エゥーゴ本隊と合流した第00特務試験MS隊に再び加入した。もちろん、カカサやクロノード、フィアさんも一緒だ。

 

 今度こそ……仲間と共に…!

 

 

 

「よし、新しい仲間も増えたことだし、皆!聞いてくれ!!」

 

 一斉に視線がファングに集まる。

 

「俺たちは、かつての家族と共に再び歩けることを素直に喜んでいる!!」

 

「だって、寂しかったろ?」

 

 俺を見ながら彼は言う。

 

「……ああ」

 

「だろう!俺も同じだ!それに、新しい家族も増えたしな?」

 

「……。しばらくの間は世話になる。よろしく頼む」

 

 彼女たちにとっては少し複雑な気分だろう。今まで戦ってきた敵だったのだし、当然と言えば当然だ。

 

 フィアさんは少し表情が硬かった。

 

「さて、作戦までは少し時間があるから、各自自由行動だ!時間になったら放送を送る。以上!解散!」

 

 その言葉で全員が持ち場に戻っていく。

 

 

 

 俺は、ファングを追いかけ、声をかけた。

 

「ファング」

 

「うん?どうした?ムゲン」

 

「あ、いや……。どうしてエゥーゴに……?」

 

「……そうだな。考えてみた結果ということだな」

 

「……というと…?」

 

「…お前の言うことも理解はしていた。だから、俺も俺なりに考えていたんだ」

 

「あの時、お前と戦った時、真っ先にフィアはお前を助けた。そして言ったんだ」

 

「『私の部下を、黙ってやらせるわけにはいかないんでな』って。その言葉を聞いて、少し考えることがあったんだ」

 

「なんていうか、お前を慕う人は俺たち以外にもいるってことを……な」

 

「ファング……」

 

「ああ。勘違いするな?別にそれが結論ってわけじゃない」

 

「俺はただ、待っていた。与えられた任務を遂行するのに、いつも家族を(はかり)にかけて」

 

「ファングが俺たちに気を遣ってくれているのは皆知っている」

 

「……それが余計に俺を苦しくさせたのさ」

 

「…」

 

「そして、行きついた」

 

「【()()()()()()()()()()()()()()】ってな」

 

「…逃げる…」

 

「ああ。奴らに背を向ける事、それは軍人としてあり得ないし、反逆で追われることになる。それだったらいっそ、エゥーゴで戦ってティターンズを潰したほうがいいと思ったんだ」

 

「だから、逃げてきた」

 

「……【()()()】か……」

 

「ああ。逃げることが悪いわけじゃないだろう?」

 

「そうなのだろうか……?」

 

「そうとも。問題は、逃げた後、どうすればいいかを考えることだ」

 

「……」

 

「よく言うだろう?逃げるのは恥だが役に立つってな」

 

「……そんな事言う人いるのか…」

 

「ああ。よくユーリが言ってる」

 

「えぇ……」

 

 あいつらしいと思った。

 

「まあ、つらかったら逃げることだって必要だ。逃げ場がないと溜め込まなければならないからな」

 

「だから、俺はお前を怒りもしないし、(とが)めもしない。結局は、互いのモノの見方が違っただけなんだからな」

 

「………ファング…」

 

「俺は……皆を斬ったことを後悔していた……」

 

「そうだろうな。俺もショックだった。でも、それも悪い事じゃない」

 

「……?」

 

「ムゲン。何事も経験だろ?」

 

「……経験…」

 

「知らなかったら、それを経験して知識に変える。それだけだ」

 

「お互い、まだ知らなかっただけだ。後悔して、辛い思いをして、そして人は強くなる。だろ?」

 

「………そうかもしれないな…」

 

「さてと、改めて言わせてもらう」

 

「……」

 

「おかえり、ムゲン。お前の家へようこそ」

 

「ああ……。ただいま」

 

 俺は、ファングと握手した。

 

 

 

 そのあと、俺は食堂へと足を向けた。きっと、アイツがいるだろうと思いながら。

 

「あ、わかりますー?私もそういうの嫌いじゃないですよー?」

 

 にぎやかな声…。誰と話しているんだろうか……。

 

 こっそりのぞくと、フィアさんとユーリが話していた。うわ……。嫌な組み合わせだ……。

 

「あっはは!!最高!!いやー。道夜の事は弄ってなかったから、面白い話が聞けていいなあ!」

 

「それで………」

 

 なんだか、入らないほうが安全だと思った。

 

 俺はバレないように食堂を通り過ぎる。

 

 

 

「りーなー!」

 

「なあに?」

 

「しあわせー?」

 

「……うん。幸せだよ」

 

「しあわせー!しあわせー!」

 

 廊下を歩いていると、備え付けのソファに腰かけたリナが、ルナちゃんと話していた。

 

「おや、ルナちゃんじゃないか」

 

「あ!むげんだー!!」

 

 リナから降りると、彼女は少しおぼつかない足取りで俺のところまで来ると。

 

「だっこー!」

 

「………ははは……。わかったよ」

 

 彼女を抱き上げる。……なんか……視線が痛いんですけど。

 

「どうしたの?ムゲン」

 

「いや、少し暇だったから、散歩してたんだよ」

 

 そう言いながらソファに腰かける。

 

「そっか。この子こと知ってるの?」

 

「ああ。知らないはずないだろう?だってフィアさんと」

 

 言葉をつづけようとしたとき、思わぬ伏兵がそれを遮った。……そのタイミングがまずかった…。

 

「むげんのー!」

 

「え!?いや!違う!クロノードの子だ!!………リナ……?」

 

「……へぇ……」

 

 やばい……。これは本当にヤバイ……。

 

「いや!違うよ!この子はクロノードとフィアさんの子供だから!!」

 

「……本当…?」

 

 視線が怖いです。リナさん。

 

「ああ。本当だ。暇なときとかは、よく面倒見てたんだ。そしたら、懐かれちゃってね……」

 

「あははー!むげんーむげんー!」

 

「……まあいいや。信じてあげる」

 

「……助かったぁ……」

 

 心から安堵した。正直、どんな戦闘よりも怖い…。

 

「ルナちゃん」

 

「なあに?」

 

「私の名前、言える?」

 

「うん!!りな!」

 

「そう。いい子ね」

 

 そう言って彼女はルナちゃんの頭を撫でる。

 

「……なあ、リナ」

 

「うん?」

 

「……俺さ、やっぱり孤児院……作りたい」

 

「……そう」

 

「この子を見ていると、なおさら強く思うんだ」

 

「本当なら、子供だって祝福されて生まれてくるんだから……。両親がいないことは……辛すぎる」

 

「……うん。親がいるって…素晴らしい事だから」

 

「戦争が全て奪うなら、少しでも失ったものを救ってあげたい……」

 

「わかるよ。ムゲンの気持ち」

 

「……いつ作れるかはわからない。それでも、必ず……作る」

 

「一緒に頑張ろう!私も協力するよ!」

 

「…ありがとう」

 

 俺は彼女を見つめた。

 

 互いに見つめあっていると、ルナちゃんが笑いながら言った。

 

「むげんとりな、なかよしー!らぶらぶー!」

 

「……ら、らぶらぶ……」

 

 そんな事言われたらすこし、意識してしまうじゃないか……。

 

 彼女はそれに対して。

 

「うん。ムゲンと私はラブラブだよ」

 

「り、リナ!?」

 

「違うの……?」

 

「い、いや……違わないが……うぅん……」

 

 俺はただそっぽを向くしかできなかった。

 

「ムーゲンっ!」

 

「な、なんだよ………。っ………!!」

 

 振り向いた途端、彼女は俺にキスした。

 

「………」

 

 顔が熱くなる。

 

「……ふふ」

 

 離れると、彼女は照れながら小さく笑った。

 

「………」

 

「ムゲン、顔真っ赤だよ?」

 

「あははー!むげんかおまっかー!」

 

「…う、うるさい…!そんなことされたら恥ずかしいじゃないか……」

 

「照れたムゲンも私は好きだよ……」

 

「くっ……。なんかリナ……本当に変わったな……」

 

「そりゃそうだよ。私、もう待たないって言ったでしょ?」

 

「……そりゃあ…言ったけど…」

 

「だから、ちょっと強気になってみた……。どう、かな……?」

 

「いや、どうって………」

 

 これ以上恥ずかしくて言えない……。

 

 ああ、顔が燃えそうだ……。

 

 1対1ならまだ言えるかもしれないが……。

 

「……ダメ……だったかな……」

 

 しょぼくれる彼女を見て、慌てて口を開く。

 

「だ、駄目なわけない!そ、その……そんなリナも………好きだよ……」

 

 恥ずかしい……。死にそうだ……。

 

 

「おお!言った言った!!」

 

 突然の背後からの声。心臓が止まりそうになった。

 

「……!?」

 

「あ、ままー!!」

 

 彼女は硬直した俺の腕からするりと抜け、彼女の元へと歩いていく。

 

「ふふふ。ムゲン、聞いたぞー?」

 

「あ…………。ど、どうも……。それじゃ……おれは…」

 

「だーめ」

 

「うっ……」

 

 立ち上がろうとしたとき、彼女が肩を押さえつけ、強引に座らせた。

 

「ちゃんと彼女のそばにいてやらないとな?ふふふ……。『好きだよ……』だって。ピュアだなぁ……ふふふ」

 

「…う、ぅ…うるさいですよ…!!な、なんでここに!?さっきまでユーリと話をしてたじゃないですか」

 

「ええ。してますよ?話してたら、ムゲンさんが突然告白してるシーンだったもので、ちょっと観察を……?」

 

 彼女の後ろからヒョコっと顔を出すユーリ。ああ……なんでこう間が悪いんだ……。

 

「うぅ……」

 

「ふふふ……あはは!!ムゲン面白い!!お腹痛いお腹痛い!!あははは!!!」

 

 リナまで笑ってるし………。

 

「わ、笑うなぁ!は、恥ずかしかったんだぞ!?」

 

「ははは!ご、ごめんごめん。なんか、そのやり取り見てたら可笑しくって……。ふふふ…」

 

「……お、お前まで……」

 

「フフフ。彼女は私たち側の人に染まったのだよ。ムゲン君」

 

「そまったのだー!」

 

 ルナちゃんまで……。

 

 

「苦労しているな。ムゲン」

 

 そこへ一筋の救いの光。道夜とクロノードが立ち止まった。

 

 俺は目線で『たすけて』と送った。

 

「悪いな、少し用事があるから、それからなら……」

 

「クロノード、さっきの話だが……」

 

「ああ……」

 

 そう言って歩き出す。

 

 あ………。駄目なんですね……。そうなんですね……。

 

「さ、ムゲン。ゆっくり話でもしようか。な?」

 

「うぇーん………たすけてぇ………」

 

 肩を掴まれ、俺は強引に食堂まで連れていかれた。

 

 

 それから?聞かないでくれ……。

 

 

 

 ゲッソリしながら部屋に戻る。

 

 ここを抜けた時と変わらない。

 

 ぐしゃぐしゃの掛布団に、全員が写っている写真。何もかも昔のまま。

 

 だが、部屋自体は汚れ一つなかった。

 

 ……掃除していてくれたのか………。

 

 なんだか、最近泣く機会が多い……。

 

 俺はずっと一人で背負っていたのかもしれない。

 

【彼】を失って、そして背を押された。なのに…昔と全く……。

 

「変わってない……」

 

 周りはこんなにも……。俺を想ってくれていたのに……。

 

「くっ……。ぅう…!!」

 

「………」

 

 でも、後悔はしていない。俺が成すべきと思ったことをして、そして結局対立してしまった。

 

 だが、それもこの前までの事。今はもう、皆いる。

 

 一人で背負うこともなく。皆で一緒に歩ける。

 

 かつて家族と言ってくれた二人の人が、今同じ場所で、同じ目的のために戦っている。

 

 そう、ジオンと連邦が手を取り合って………。

 

 

 

 グレイ……。君の夢に、一歩だけ近づいた気がする。

 

 

 

 それから、グロリアスは、フォン・ブラウン市奪還の作戦に参加することになった。

 

「さて、これより作戦を説明するぜ。我が第00特務試験MS隊は、フォン・ブラウン市の奪還を支援。続けて、周囲のティターンズを掃討する。むしろ後者が俺たちのメインだ」

 

「……小隊を分ける。第一小隊、ムゲン。お前が隊長を引き受けてくれ」

 

「俺が………?」

 

「ああ。かつてのように…。俺たちの道を切り拓いてくれ」

 

「………いいのか……?みんな……」

 

 振り返ると、そこには皆がいた。もう……一人で背負うことはない。

 

「ムゲンなら、妥当な判断だろう?期待しているぞ、相棒」

 

「道夜……」

 

「ま、困ってるように見えたら援護しますんで、ちゃっちゃと殺ってきてください」

 

「ユーリ…」

 

「まあ、当然だろうな…。お前は元小隊長。その名を汚すなよ……?」

 

「フユミネ……」

 

「さぁ、ムゲン。お前ならその役目を果たせると信じているぞ?もちろん、支援は任せておけ」

 

「フィアさん…」

 

「……お前の腕なら心配ないさ。お前に命を預けるぞ?隊長」

 

「く、クロノード……」

 

「まぁなんにせよ、俺たちが出会うことができたのは、互いを知った君がいたおかげさ。その、誰からも信頼される君にこそ、それが相応しいよ。ムゲン」

 

「カカサまで……」

 

 俺は、涙が……止まらなかった。

 

「……みんな……。ありがとう……。…わかった。俺が……道を切り拓こう……。それが、俺にしかできない事だから」

 

「よし、決まりだ。第一小隊と、第二小隊に分かれ、後はグロリアスの護衛。第一、第二で敵の掃討を行う。メンバーは……ムゲン、お前が選べ」

 

「俺が……?」

 

「ああ。お前が、俺たちを引っ張ってみろ」

 

「………わかった」

 

 俺は、もう一人じゃない。今度こそ……。

 

「ファングは第二小隊の隊長を。クロノード、道夜はファングと共に。フユミネ、君もファングと」

 

「了解だ。第一小隊隊長。第二は俺に任せておけ!」

 

「うむ。お前の判断に従おう」

 

「……お前の代わりに、俺が彼らを守る。任せておけ」

 

「…了解した。そちらは任せるぞ」

 

 

 

「フィアさん、ユーリ、カカサは俺と来てくれ…」

 

「あいよ。今回は焼き鳥3本で引き受けちゃうぜ?あ、でもやっぱり6本………」

 

「私を選んでくれるなんて、うれしいねえ…。じゃ、ご期待に応えないとな?」

 

「へーい。任せておいてくださいよー」

 

「残りのみんなはグロリアスの護衛と、常に状況把握を」

 

 

 彼らに指示を出した後、俺はみんなに向き直る。

 

「俺は……もう、一人じゃない。いや、最初から一人じゃなかった……。でも、ただひたすら一人で無茶して……」

 

「でも、俺はその道を…。歩んできた道を後悔していない!」

 

「俺は今、仲間と共にある。そして、俺たちはみんな……。家族だ…」

 

「家族でなくても……。そう思ってなくてもいい。一つだけ命令がある」

 

「いや……。願いかな……」

 

「皆………生きろ!!!生きて、明日を見よう。明日のことはそれからでいい」

 

「だから、絶対に生きて帰ろう。この【家】へ」

 

「「「「「「「了解!!!」」」」」」」

 

 

 

 俺たちは、格納庫へと向かう。

 

「………さあ。行こう。ピクシー」

 

 修復されたピクシーを見上げ、乗り込む。

 

 システムを起動していく。

 

[ムゲン]

 

「リナか。どうした?」

 

[私は戦場には出られない。けれど、私にしかできない事をする。だから、ムゲン。無事に帰ってきて……]

 

「………ああ。お前をもう……一人にはしない」

 

[………ありがとう。……愛してるよ、ムゲン]

 

「………出撃する」

 

 彼女との無線を切り、カタパルトへ。

 

「ムゲン・クロスフォード、ピクシーエッジプラス、行くぞ!!!!」

 

 

 

 戦闘宙域へと向かうと、エゥーゴ本隊はすでに戦闘中。

 

 俺たちは、これ以上月へ向かわせないため、ティターンズの艦隊を攻撃する。

 

「第一、第二に告ぐ!これより、ティターンズ艦隊に攻撃を開始する!!生きるぞ…!!」

 

「第二、散開し、敵を背後から!!」

 

「こちらが正面で叩く!旗艦を潰してきてくれ!」

 

[こちらファング。了解した。時間を稼いでくれ]

 

 それからファング率いる第二小隊は艦隊の後方へと回り込んでいった。

 

「よし、第一小隊、仕掛けるぞ!!」

 

[わかりました。支援射撃開始します]

 

 ユーリはその場で機体を固定。照準を合わせ始める。

 

「ユーリ、きっつい一撃を戦艦に頼む!!」

 

[えー……。面倒です…]

 

「………わかった。生チョコシリアルバーおごるから……」

 

[えー……。ビッグ生チョコシリアルバー二本なら考えてもいいですけど……]

 

「わ、わかった……。それでいいから、頼む」

 

[あ、言いましたね?男に二言は無いですよ?さて……。よく見えますねぇ……。指揮官の間抜けな顔もバッチリ見えますね…]

 

「よし、フィアさんとカカサは俺と出てきた敵MSを抑える!戦艦はユーリに任せてある!」

 

[では、始めるか。無茶はするなよ?ムゲンもカカサも]

 

[もちのロンってね!あ、そういえばこの前麻雀ってのやってさー。それが………]

 

 

 

 レーダーを確認。さっそく登場してきた。敵の数はおおよそ15……。

 

 かなりの大多数だが…。そんなもの、もう微塵も怖くはない。

 

 ピクシーのスラスターを起動。1機に詰め寄りながらナイフを投げる。

 

 シールドでガード。盾にナイフが突き刺さる。

 

 それにより、敵の機体に隙が生じる。

 

「カカサ!」

 

[あいよっと!!!]

 

 背後に忍び寄ったカカサがブレードでコックピットを貫き、続けざまに、背後へ迫る1機をショットガンで振り返らずに撃ち抜いた。

 

[さぁ。来な!!]

 

 左、2機。

 

「フィアさん!」

 

[任せておけ!狙いは外さん…!!!]

 

 バズーカが頭部へ着弾。続けてビームライフルでコックピットを貫き、貫いたビームは、背後にいた1機をも貫く。

 

[まだだ。もっと来い!!]

 

 右、3機。

 

 俺は、振り向き、ナイフを投げる。

 

 敵は素早く反応し、ナイフを弾く。

 

 その隙を見逃さない。

 

 ダガーを引き抜き、隙ができた1機を胴体から真っ二つに切り裂く。

 

 続けて、ダガーを投げ、もう1機のコックピットに突き刺さる。

 

 最後に正面に立つ1機にスモークバルカンを放ち、頭部に着弾させた。

 

 刀を静かに抜き、煙がかかった敵へと一直線。

 

「逃がさない…!沈め!!!」

 

 コックピットを貫き、首を切り落とす。

 

 そして、左手で鞘を持ち、刀を納刀。チャキンと、金属の音が鞘と(つば)の間で小さく鳴った。

 

「さあ、俺が相手だ!!」

 

 俺たちは三方向へと分かれ、的確に、しかし素早く敵を落としていく。

 

[ムゲンさーん]

 

「なんだ?ユーリ」

 

[戦艦3隻沈めましたけど?]

 

「は、早くないか!?」

 

 あれから6分程度しか経ってない……。やはり、狙撃の腕は一流だ……。

 

[よし、ならMSの勢いも収まるはずだ、一気に片を付けるぞ!]

 

「了解!!」

 

 間合いを詰め、1機の首を切り落とす。続けて、両腕。そして、最後にコックピットを焼いた。

 

 背後へ迫る殺気を感じ、宙返りしながら相手の背後へ回る。

 

 そして、ナイフでコックピットを貫通させる。

 

「こっちは……大丈夫か…」

 

 目の前に広がる、MSの首や……腕、焼かれた胴体が宙を舞う。

 

「こちらムゲン。こっちは……――――っ!!!」

 

 この嫌な感じ……。あの時の感覚…。殺気のような……。執念のような……。

 

 殺気を感じる方向からビームが飛ぶ。

 

 右、左、左、続けて真下。数秒後に真上……。あれ……?撃ってくる場所が……。

 

「……っ!そこか!!」

 

 マシンガンを構え、ビームを撃ってくるであろう場所へ射撃。

 

 そして、小さい爆発が見えた。

 

「……やっぱり…!」

 

[へえ……。僕のファンネルが見えたんだ……。すごいね。ニュータイプでもないのに]

 

 そして、それを操る主が姿を現す。

 

「やはり…お前か!ゼロ……ゼロ・オブリビオン!!」

 

[僕を覚えていてくれたのかい!?うれしいなあ……。僕も君の名前を知ってるよ。ムゲン・クロスフォード]

 

「っ……!」

 

[あぁ。君は会えば会うほど強くなる……。うぅん。素晴らしいよ……]

 

「無駄口を……!!!」

 

 ダガーを引き抜き、迫る。

 

[二度も僕に同じことをさせるのかい?]

 

「それは……どうかな!」

 

 ダガーを投げつける。奴の腕で弾き飛ばされる。

 

「今だ!ユーリ!撃ち抜けぇ!!!」

 

 叫びと共に一射。奴の右腕を撃ち抜いた。

 

[くっ…!?やってくれるね……!!]

 

「お前に二度は……ない!」

 

[ふふふ……。まさか僕が本当にその攻撃が分からないとでも……?]

 

「な、なんだと…?!」

 

[君の思考は浅はかだ。所詮、その程度……。フフフ……]

 

 不敵な笑みが聞こえる……。寒気がする……。

 

[僕にはわかるんだよ。君の行動一つ一つが……手に取るようにね…?]

 

「お前は……いったいなんなんだ!?」

 

[僕かい……?僕はね、【()()()()()】。本物のニュータイプ。あのアムロ・レイをも超えた存在だ!]

 

「……アムロ・レイを……超えるニュータイプ……」

 

[フフフ……。さあ、君が泣き喚くさま……見たいなぁ。いいや、やっぱりいっその事壊してしまおうか?]

 

「な、なにを………」

 

 彼の言葉には狂気的な何かを感じる。こ、こわ………。そう思った瞬間だった。

 

[そいつの言葉に耳を貸すな!ムゲン!!]

 

「…!!!」

 

 フィアさんだった。彼女は、彼が放つビームを避けながら一気に間合いを詰める。

 

[お前も、誰も死なせん!!私も、死なん!!!]

 

[僕にその機体で勝てると!?このMK-0に!!]

 

[知らないな!機体が何だというんだ?]

 

[フフフ……。君にも地獄を見せてあげるよ……。彼のように壊してあげる]

 

[……生憎(あいにく)、私はそういう治療は間に合ってるんだ。受けるなら、お前自身が受けるんだな!!]

 

 ガンダムを蹴り飛ばす。そして、ビームライフルを放つ。

 

 続けてバズーカ。

 

[ムゲン!お前には、仲間が付いている!!何一つ怖くはない!!恐怖なら、私も、カカサも!ユーリもみんなで背負う!!]

 

「フィアさん……」

 

[だから、お前はまっすぐ前を向け。男だろう?リナのために、ここで止まるわけにはいかないだろう?]

 

「………。ああ。そうだ…」

 

 恐怖を感じる。それでも、もう……。今なら……。

 

[カカサ!]

 

[そこだぁ!!!]

 

 カカサの敵が回避するのを見越した攻撃。

 

 それに合わせ、フィアさんがビームライフルを放つ。続けて、ユーリが相手の動く位置を予測した射撃で、相手の行動範囲を狭める。

 

[そんな攻撃が……!ファン……]

 

「そこぉ!!!!」

 

 頭部にスモークバルカンを発射。すかさず間合いを詰める。

 

[くっ!見えない…!]

 

「………」

 

 俺は目を瞑った。相手に悟られず。ただ、静かに正面に立つ。

 

 相手が攻撃を予測してくるニュータイプならば、予測させない動きをすればいい。

 

[死にたいようだね?!ファンネル!!!]

 

 ファンネルが取り囲む。

 

[ムゲン!だめだ!!]

 

 構えは一瞬。それこそ、0,1秒くらいの速さ。

 

 やれるかはわからない。だが、失敗すれば……。

 

 やるしかない。

 

[ムゲンさん!っ!!!ああっもう!!!照準が定まらない!!!]

 

[くそっ!!ムゲン!!諦めるってのかよ!?]

 

 諦めないさ。みんな生きて……。生きて…。帰る!!

 

 煙が消えるその一瞬。

 

 腕が電流を走らせながら、動く。

 

 頼む、速く。もっと………速く!

 

 刀を掴む。鞘を触る。

 

 火花を散らしながら刀が走る。弧を描く。

 

「うおおぉおおおおお!!!!」

 

 その一閃は、敵が予測する速さを超えた。

 

 そして、ガンダムの左腕を切り落とす。そして、鞘に戻す。この間0,2秒。

 

[っ……!!!僕に……傷を……?!]

 

「これで止めだ!」

 

 再び、構える。

 

 きっと相手は予測する。刀を振ってくると…、だが、こいつはそれだけが取り柄じゃない。

 

[死ね!!ムゲン!!!]

 

 構えるふりをしながら、鞘の赤い部分に触れる。

 

 刀はそのままの勢いで吹っ飛び、奴のコックピットの直撃する。

 

 思わず機体が吹っ飛んだ。

 

[がぁっ!ムゲン……!!素晴らしい……!!だが、終わりだ……]

 

 吹き飛びながら、不敵に笑った。

 

 ファンネルが一斉にピクシーを襲う。

 

「うぐぅうぅう!!!!」

 

 衝撃が走る。コックピットが焼かれ、ぎりぎりを掠める。

 

 吹き飛んだ破片が俺の左腕に傷をつけ、さらに体へ突き刺さる。運悪く、左胸……。

 

「か………はっ……」

 

[ムゲン!!!]

 

[おいおい、マジかよ!ムゲン!]

 

[ムゲンさん!?]

 

 彼らが集まってくる。

 

「………か、った……な……。みんな………」

 

[ふざけるな!ここで死ぬつもりか!?]

 

[そうですよ!お菓子買ってくれるんじゃないんですか!?]

 

 ダメだ……。(まぶた)が………重いんだ……。

 

[目を覚ませよ!こんなところで死ぬんじゃねぇ!!!ふざけんな!!!お前には、まだやることがあるだろ!!!!]

 

「…………すま……ん……」

 

[おい!コックピットを!!]

 

[今やってる!!!]

 

[グロリアス!聞こえますか!?ムゲンさんが…!ムゲンさんが…!!!]

 

 く……そ………。ここで……死ねないのに………。

 

[おい!ムゲンの機体をこいつに掴ませろ!!]

 

[道夜!?]

 

[可変状態なら、2,3分かからん!急げ!!!]

 

[あ、ああ…!!]

 

[ムゲン、死ぬんじゃない!お前はまだ生きるんだ!!お前は私の弟だろう!?こんなところで……!駄目だ……!!!逝くな!!!!!]

 

 みんなが………きえてく…………。

 

[救護班を!格納庫です!急いでください!!ふざけている場合ではないんです!!!]

 

[全機、道夜機を援護!やらせるなよ!!!]

 

[くそっ!俺がいてやれれば…!ムゲン…!頼む!死ぬな……!!!]

 

[ファング、敵の数が……!まずいぞ…!!]

 

[分かってる!でも、ムゲンを見捨てるものか!!俺たちの家族を見捨ててどうする!!]

 

[なんとか、努力はする……!!!]

 

[ムゲン。お前が今消えたら、誰がリナを抱きしめるんだ……!!ダメだ…!死ぬんじゃない!俺よりも先に……逝くな!!]

 

 目が……開かない。次第に………体に力が入らなくなる……。

 

 そうか……。これが死ぬってことなんだ………。

 

 

 

 誰かに抱き上げられ、担架(たんか)に乗せられる。

 

 それが誰かも……今はわからないけれど…。

 

「ムゲン!!いやぁああああ!!駄目だよ!!ムゲン!!!!」

 

 り………な………。

 

 ごめん…………。やくそく……守れなかった……。無事帰ってこれなかった………。お前のそばに……いてやれそうにない………。ごめん…。

 

 そこから、俺の意識は……途切れた…。

 

 

33 完

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