時代はU.C.0088~U.C.0089までの話になります。
宇宙世紀0088 ティターンズというものが滅んでも、連邦の一部は腐っている。
どうして……戦いは消えないんだ…。フィアさん……【虹】を見るのは…無理そうだ。
道夜とエトワールは、二人で傭兵業をして渡り歩いているらしい。彼らも忙しそうだ…。
俺は再び地球連邦に組み込まれた第00特務試験MS隊として戦う日々を繰り返していた。
そんなある日のこと…。
俺は、地球連邦最高評議会に
彼らの意図が読めないが、渋々俺は従うことにした。
「いいかムゲン。何かあったらすぐに帰ってくるんだ」
「ああ。わかっている。奴らが何を考えているかは知らないが、何かあればすぐ連絡する…」
「……気をつけろよ。少し嫌な予感がする」
「俺もだ……」
するとファングは肩をすくめて言う。
「ニュータイプの勘か?」
「冗談はよしてくれ。俺はニュータイプじゃない。それを言ったらファングこそニュータイプだろう?」
「……そんなの名前だけ独り歩きしているさ」
「…そんなもんだよ」
それから少しした後、輸送機がこちらへ降りてくる。
「ムゲン・クロスフォード中尉だな」
「……ああ」
「では、こちらへ」
俺は輸送機に乗り込む。
なんだろうな…こんな気持ちは久々だ…。過去のアレを思い出してしまう。
どれくらい移動したことか、輸送機が動かなくなる。どうやら着いたようだ。
「降りろ」
「……」
俺はゆっくりと降りた。
輸送機から出ると、既にそこは施設の中。どうやら外は見せたくないらしい。
「一ついいか?」
「…なんだ」
「帰りも送ってくれるんだろうな?」
「…無駄なことをしなければ、そのまま返してやる」
と、案外素直。それが余計に嫌な感じだった。
「………」
大きな扉。それがゆっくりと開かれる。
その中は暗く、モニターの光が、微かに【
「………」
ゆっくりと足を運ぶ。そして、尋問台のようなところへ立たされた。
「ムゲン・クロスフォード中尉だな」
「………ああ」
「私は、地球連邦軍最高評議会議長……。ベルベット・バーネット。階級は大将だ。少しの間よろしく頼む」
「……それで、俺に何の用だ?」
彼は不敵に笑った後、言葉を続けた。
「単刀直入に言おう。君が乗っているガンダム・ピクシーを…私達に引き渡せ」
「………理由は」
「今後のより良い世界のため……。とでも言っておこう」
「それで引き渡すと思うか…?」
「ふっ。まあ、そうだろうな」
「…」
「君は、ガンダム・ピクシーという機体とは縁があるように見える」
「かつて、スレイヴ・レイス隊で見た、フレッド・リーバー軍曹のピクシーから…」
「君の部隊の整備兵が作った2機のピクシー。その2機には君が搭乗している」
「な、何故それを…!?」
驚きだった。誰にも言っていないはず……。ましてやリッパーさんの事も……。
「名前は、【ミラージュ】と【エッジ】……。最初に作られたのは、宇宙空間でも戦闘ができるようにバックパックの変更に加え、ビームライフルを搭載する【ミラージュ】」
「そして、【ミラージュ】はア・バオア・クー攻防戦にて、Xフィールドを攻略。ジオンの大型MAである【ムゲンギア】を撃墜」
「……!!!」
何故そこまで……。いや、だいたいは調べていたのだろう。評議会の議長だ。できなくはないはず。
「さらにはシゼル・クライン大佐が駆る【ハデス・ジャッジメント】との戦闘の果て、大破した」
「………」
「【エッジ】はデラーズ紛争から君が搭乗している機体。より近接戦闘に特化した仕上がりになっている」
「さらには、リナ・ハートライト技術中尉が作った、君でしか動かせない刀【キジンマルクニシゲ】を装備」
「さすがに、これには驚いたよ。まさか、あんな時代遅れの機体が、【ガンダムMK-0】までもを倒すとは……。そして、パイロットは無事生還…」
「結局、お前は何が言いたい?俺の過去の話を俺にする意味があるとは思えない」
彼はそれを聞いて、笑う。そして周りにいるであろう彼らも笑った。
「………」
「ああ。君の武勇伝を話すために呼んだのではないさ。もちろん、ね」
彼は不敵に笑う。
「私は、君の機体に興味が湧いてきたんだ」
「へえ」
「時代遅れの機体で、グリプス戦役まで戦うことのできた理由」
「……」
「君にももちろん興味はあるが、私はそういう非人道的なのは苦手でね。機体を調べたいのだよ」
「断ると言ったら?」
「そんな権利は無いのだよ?」
俺の背中に銃が押し付けられる。
「……知ってるはずだ、強化人間に銃は効かない」
「ああ。だが、君は断れないと思うがね?まあ、【ソレ】はあくまでも脅しだ」
「……」
「君は【家族】を盾にとっても効かないからね…。だが、【
彼は不敵に笑う。その彼女を俺が知っていながら…。
「……リナの事か……!?」
「フフフ…。君の唯一弱いところは、そこしかないからな。致し方なく、ね。断れば彼女の命は保証できない。それに……お腹の子もな」
「貴様………!!!」
堪えきれず、机を叩く。
「君が素直に承諾してくれれば、何も手は出さんよ。私は紳士でね。礼を払うものには私もそれに見合う礼を払わせてもらうつもりだ」
「何が……紳士だ…。ただの脅迫じゃないか!」
「いいや?これは命令だよ。軍の評議会からの…ね」
「くっ……!!」
「どのみち、君は選ぶ権利なんてないのだよ。君は、【モルモット】なのだからね」
「………」
「さあ、どうするのだ?機体を渡すか、彼女を殺すか!」
「……わかった。ピクシーを引き渡す……。だから、リナだけは……やめてくれ……」
彼女の命を取られては……。俺に拒否する権利などなかった。
「ふふふ。賢明な判断だ。では、君はこの引き渡し場所へ機体を持ってきてくれ。いいな?君が持ってくるんだ」
「……ああ」
「では、また会おう。ムゲン・クロスフォード」
俺は、背後で控えていた兵士に連れられ、部屋を出た。
そして、俺はちゃんとグロリアスへ生きて帰ることができた。
「ムゲン、おかえり」
「ああ。ファング、全員をブリッジに。少し話したいことがある」
「……わかった。すぐ集める。リナはどうする?」
「彼女も頼む。リナにも…知ってもらわなければならない」
「ああ。先に行っててくれ。俺もすぐに行く」
ファングは走って彼らのとこへ向かった。
それから10分後、全員がブリッジへ集まる。
「で?ムゲン中尉、なんの話だ」
「……」
全員がいることを確認した後、俺は口を開く。
「先ほど、俺は連邦軍最高評議会に呼ばれ、話を聞いてきた」
「彼らの要件は、ガンダム・ピクシーエッジの引き渡し」
「ピクシーの!?なんで……」
「彼らが言う感じからして、リナの作った機体を調べて、それを新たな兵器に運用するか……。実験かのどちらかだ」
「……俺は、リナを盾にとられた。……ピクシーとリナ、どちらかの選択…。俺はリナを取った」
「ムゲン……」
「だが、奴らに簡単に引き渡すつもりはない。俺の愛機だし、何より…。ここでこいつを失わせるわけにはいかないからな」
「お前、どうするんだ……?」
ファングは心配そうだ。
「いや、特に考えているわけではないんだ。だが、一応みんなにも伝えておこうと思ってな」
「なるほど……。引き渡し場所へは…お前だけで?」
「ああ。誰かが来ているのに感付けば、リナが危ない……」
「……わかった。しばらくの間、リナを厳重に警護。グロリアスを引き渡しポイントから10kmまで近づける」
「……ファング…」
「構わないな?」
「…リナは……」
「いいよ。私も、覚悟できてるから。だから、ピクシーを……お願い」
彼女は微笑んだ。
「ユーリ、戦艦のカタパルトで機体を固定。実弾射撃でムゲンを援護だ」
「ええ。わかりました。ムゲンさん、それ終わったらビッグ生チョコ………」
「1本だけにしてくれよ……?」
「もちろんですよ!……無事で帰ってきてください」
「ああ」
「全員聞いてくれ!」
ファングが叫ぶ。
「ムゲンに何かあれば、すぐに回収できるように動く!艦長、戦艦は任せる!俺もガンダムで出撃できるように準備する」
「了解だ。グロリアス!座標ポイント10km付近まで移動!!」
「ムゲン。何があるかわからない。気をつけろよ……」
「ああ。ここまでお膳立てされたんだ。うまくやるさ」
俺は、格納庫へ急ぐ。
「ムゲン!!」
野太い声。振り向くと、整備長のトクナガさんがいた。
「行くのか?」
「……ええ。ピクシーを出します」
「あいよ。お前らぁ!!!01小隊長機出撃準備だ!!!ハッチ開け!!!」
トクナガさんが叫ぶ。
「あ、トクナガさん」
「ん?どした?」
「……リナを……頼みます」
「…ああ、お前がいない間、俺がしっかり守っておく」
「……はい」
俺は機体に乗り込む。システムを起動。
「相棒……。俺は、お前を簡単に引き渡したりしない」
俺がすべきこと、それをやるだけだ
[ムゲン隊長。ハッチオープンしました。いつでもどうぞ]
「了解した。ムゲン・クロスフォード、ピクシー……、出る!!!!」
戦艦を出て、指定されたポイントへ。
「………」
だんだんと機体と輸送機が見えてくる。
だが、何かが違った。
機体の数が多い……?それに、あの白とグレーのザク……。
「……!!!ファング!!ジオンだ!!!ハメられた!!!」
[何っ!?全機出撃!!!間に合わせろ!!ユーリ、狙撃を!!]
そういうことか……。俺たちが邪魔だったんだ……。
それなら、迷うことはない。
彼らを……恐怖で怯えさせてやる。
「行くぞ、ピクシー。敵は……6機!!」
ダガーを引き抜く。
3機が迫る。
1機を蹴り飛ばし、吹き飛ぶ。
続けて背後の敵を1機ダガーで貫く。さらに、素早く敵に差し込んだダガーを引き抜く。
「はぁああ!!!!」
さらにもう1機を足払いで転ばせ、コックピットへダガーを突き立てた。
怯えた1機。逃がさない。
「でぇやぁあああ!!!」
ダガーを全力で振り下ろす。
ドムのような敵が真っ二つに。
「さあ。来い!!!」
2機がひるまず突っ込んでくる。
1機にダガーを投げつける。コックピットに突き刺さり、膝をついた。
左腕を鞘へ。そして、刀を持つ。
金属が擦れる音と共に、火花を散らし、敵の胴体を切り落とす。……が。
その反撃で、その1機から左腕を切り落とされた。
「くっ……!?」
[ムゲン!背後だ!!]
「何っ!?ぐぁっ!!!」
背後からの攻撃に対処できず、直撃を食らう。
続けて左から…。そして、右から。衝撃で機内でも破片が飛び散る。
それが、俺の腕に傷をつける。
「ぐっ……!!」
ピクシーの右肩が破壊される。
持っていた刀を落とす。
「くっ……」
左足から電流が。うまく歩けない。
だが……まだ…。
刀を持ち直す。なんとか、フラフラになりながら態勢を立て直した。
「……おわって………ない……」
[ザザッ………ゲン……ザッ………か!?]
無線機も故障した。
フラフラのピクシーを囲む敵…。
斬りに行く。しかし、そのブレブレの刀は空を裂いた。
「……くっ…!!」
左からの攻撃。直撃。
バランスをなんとか保とうとする。
そして、反撃に刀を横薙ぎに。
1機が避けきれず倒すことが出来たが…。
右からの攻撃。当然よけれるはずもなく…。
衝撃で頭を打った。
破片が左腕に突き刺さり、貫通する。
「がっ……!!ぐがぁあああ!!!」
凄まじい痛み。意識が………。
[ここで眠れ!!永遠にな!!!]
「くっ……」
正面からの攻撃。なんとか刀でガードする態勢に。
ザクのサーベルと刀が鍔迫りあう。力が……負けている…。
そして、その鍔迫り合いを勝利したのは…ザクだった。
刀が………折れた。
その一撃は貫通し、コックピットのハッチを切り裂いた。
ピクシーも膝をつく。もう……。立てない…。
「はぁ…………………。はぁ……………」
機体からはアラートと電流の音……。動かねば……。機体が………。
そして、機体を光が包む。
強烈な痛みと共に、俺は気づくと外へ投げ出されていた。
全身に力が入らない……。腕も……足も………。呼吸がしにくい……。
なんとか、視線をやると……。ピクシーは………ツインアイの瞳は右目が破壊されており、ガンダムというには
右足は無くなって、左足はなんとかその原型をとどめているものの、まともに動きはしない。
両腕は無くなり、ほぼダルマのようだ。
俺も……ピクシーも……限界だった。
「……………」
声が出ない。痛みで気を失いそうなほどだ……。
[始末できたか?]
[ええ……。ですが、パイロットは生きていますよ…?]
[構わん。どうせこのまま死ぬ。これで俺の計画もすすむ……。フフフ……]
[そして私はかつて一年戦争、デラーズ紛争、グリプス戦役を生き残ったエースパイロットを殺した英雄として崇められる……]
[では、私はこれで……]
どこかで話し声が聞こえる……。俺の事を話しているのか………。
[………ムゲン・クロスフォード……。かつての名は…もう消えたな]
[だが、これでいい。ネズミを一匹消しただけの事。……あとは残りを消せばいい]
…………だめだ……。もう………動かない…。
例えるなら、壊れた人形のように。
俺は、捨てられたように。ピクシーと共に倒れていた。
目が………見えなくなってくる………。
目は開いているのに……そんなのあるんだな……。
「ムゲン!!しっかりするんだ!!!」
声は……ハッキリと聞こえた……。だが……見えないんだ……。もう……何も……。
「…………うぐっ!!うわぁああああああ!!!!逝くなぁああああ!!!!!」
俺の意識は………そこで途絶えた。
もう…目覚めることもないだろう…………。
『ムゲン』
………ここは……?
『ムゲン。起きろって』
『………誰だ…?』
『私が分からないか……?』
目の前には、フィアさんがいた…。
『随分派手にやられたな?私もびっくりしたよ……』
彼女は苦笑しながら言う。
『俺は………どうなってるんですか……?』
『ああ……。正直、今のお前は不安定だ。生きれるか、このまま死ぬかも…わからない状態』
『………俺は……どうすれば……?』
『それを聞くのか?一度体験しているだろう……?』
『覚えてないですよ……』
『……まあいい。強いて言うなら、自分で【生きたい】と願うことだろうな』
『願う……』
『そうだ。願い続けるんだ…。無論、それで確実に戻れるかは分からないが…』
『随分適当ですね……』
『適当にもなるさ。ここはお前の世界なんだから』
『俺の……?どういうことです?』
『難しく言えば、お前の脳波がお前に見せている幻覚……とでも言えばいいか?』
『……』
彼女はなんとなく察して言葉を返してくれた。
『要は、お前の精神だ』
『俺の精神……?』
『ああ。ここは、お前の精神の中。お前の背中を押して消えていった人たちは、今もお前の【
彼女は俺の手を引く。そして
『周りを見ろ。ここには、お前を助けた仲間や、家族の言葉が…。君が失った大切な人がいる』
『私は見た。かつて敵であった、あのニュータイプの少年のために泣いたお前を』
『………』
『お前は、人の心を見て、そして自分の価値を決めた。だからこそ今ここにいる』
『……』
俺は確かに見た。ゼロが、俺の心に残した言葉を…。
『ニュータイプがさ…………地球に住む人を…………人類を……信じなくて………どうするの……さ……』
彼はただ、信じたかっただけなんだ。人類を…。だから、自らの目で見て……彼は戦う敵を決めていた。
『お前がかつて死ぬほど恨んだ彼でさえ、お前は最後の最後、受け止めようとした』
『シゼル…………』
『…だから…そんな世界が来ることを俺は望んじゃあいない!!そして…今はお前を殺すことが…一番なんだ!!!!』
『なら……受け止める…!』
『何!?』
『お前のその縛られた心を…!俺が全部受け止める!!』
彼は……誰にも手を差し伸べてもらえなかっただけなんだ。ずっと一人で背負って…。ずっと一人で苦しんでいた。
『お前は、数々の言葉に影響された。それは、夢を語る少年の言葉から……』
『………グレイ……』
『とめないでくれ!!!僕は…いや…これが僕の覚悟だ!!!ムゲン…僕の夢は…託したよ!!』
彼は……記憶がなかった俺に、優しく手を差し伸べてくれて、楽しそうに夢を語っていた。
『…僕には夢があります…』
『どんな…?』
『30特別遊撃部隊の皆のように、ジオンも連邦も関係なく皆が幸せになって欲しい…そんな夢があるんです』
『…』
『きっと…皆まだ気づいてないだけなんです。ジオンだからとか、連邦だからって言うのに縛られて、単純なことに目が行かないだけなんです』
『いつか…連邦もジオンも分け隔てなく手をつなぎあう時が来れば…その時こそが、本当の幸せなんだって思います』
『それはきっと、長くて遠い道のりかもしれない。けど、それでもそんな世界が来てくれることを、僕は夢見てるんです』
今でも忘れはしない……。彼の意志は……俺が引き継いだのだから。
『人として、軍人としての役割を全うした人から………』
『イーサン………』
『……ムゲン隊長。あんたは…きっと、これからもつらい思いをするだろう』
『けどな、その時、そばにいてくれる家族を……仲間を……』
『…ああ……守って見せる……』
『ああ。…期待してるぜ?』
………彼との約束は忘れない。彼は、俺を変えるきっかけを、そして最後は…一人の軍人としての役目を果たした。
俺の………人生の……先輩だ。
『そして、お前は、私からも何かを見た。だろう?』
『フィアさんから………』
『私は。いや、私たちはすでに血で手を染めてしまっている……。どんなに願っても、どんなに祈っても、昔も、そして、これからも……』
『人に恨まれなければならない……。仕方のない事だ。人は、光になれる。だが、人は何かのために犠牲をいとわない闇にもなれる』
軍人である彼女だからこそ、言える。重みが伝わってきたんだ……。命を奪うことへの恐怖や……悲しみ。
『………私は、いつでもお前のそばにいる。その、腕に巻いたリボンが…お前と私を【繋いでる】』
『目を開け…。そして、前を向け。ムゲン・クロスフォード!お前は……私の最高の弟だ…!!』
フィアさんと出会って、俺は背中を押されたんだ。優しく……。きっと、姉というのがいるのなら、こんな感じだったろうな……。
『怖がるな。お前は覚悟を決めている。さあ。行くぞ』
この言葉が、あの時の俺から恐怖を取り去ってくれた…。
『お前の中で、答えはもう出ているはずだ』
『……』
俺は彼女のほうを見た。その時の彼女は、とてもやさしく微笑んでいた。
『お前は、最初は私情で軍に入ったかもしれない』
『運良く生き残っていただけかもしれない』
『お前を変えたのは、確かに私たちの存在もあるかもしれない』
『だが、何より……。お前が、お前自身が見てきたものから、お前はお前であることを選んだ。自分で【選択】したんだ』
『今のお前は、皆の意志を【
『私はどこかで……お前がニュータイプなんじゃないかと思っていたのかもしれない』
『そんな……。俺はそんな……』
『知っているさ。お前の能力が消されてしまったことも。だが……』
『でも、何故だか、お前を信じたくなってしまうんだ……』
『………フィアさん…』
『その理由が何なのかは分からない。だが……何故かお前から…そうしたくなる雰囲気を感じるんだ』
彼女は、俺の肩に手を当て、言う。
『大丈夫。私は死んでない。いつか目覚める。だから、今はお前とは一緒に行けない』
『だから、先に行っててくれ。私もすぐ【戻る】さ。だから、【生きろ】』
『………はい』
俺は最初から……意志は決まっていたようだ。
ただ、彼女や…彼らから励ましてもらいたかっただけなのかもしれない…。
でもこれで……。今は……【お別れ】だ。
『信じてるぞ……。目覚めかけのニュータイプ。私に……【虹】を見せてくれ』
「………いつか……必ず……果たします。さよなら………姉さん」
俺はゆっくりと……そして、確実に……歩いていく。
光が包み込む…。
体の痛みが辛い。しかし、それでも……心は暖かった。
「………」
相変わらず声が出せない。
とりあえずなんとか目覚めたことを伝えないと……。
体を強引に起こしてみる。滅茶苦茶な痛み。
つられて声が出る。
「うぐっぅ…!!!あぁああ!!!」
喉が痛い…。
「むっ!?ムゲン君!?生きているのか!?私が分かるか…?」
俺はゆっくり首を縦に振った。
「おお!よかった……!!!だが、無理に動いてはいけない。いいね?ゆっくりしているんだ」
「…………おれは…ごほっ!!……どうなってる………?」
「そうだな、両腕、両足が折れていて、肺に破片が刺さっていたから除去した。とりあえずは問題はない」
「………そうか……ごほっ!!げほっ!!!」
喋ると苦しい。…風邪ひいた時よりひどい感じ……。
「無理に話さないで。せっかく傷が閉じたんだ。また開いては困るだろう?」
「………はい…」
「それにしても……よく無事だった。機体ごと爆散したって聞いてさすがに助からないと思っていたよ……」
それはたぶん、俺が改造されて、驚異的な回復力を持っていたからなのだろう。
この時ばかりは俺自身が改造されたことを素直に喜べた。
「………」
ピクシー…………。そういえば、彼女はこのことを知っているのだろうか……。
「あ………の………。リ………ナ………は……?」
「ああ。彼女ね。今回はみんなが君の事に関しては遠征に行ったと伝えている。ピクシーとそのまま」
「…………そ………う…」
「……どれくらい………寝てました………?」
「ああ…。だいたい………2か月だな」
「そんなに……」
「ああ。なんとか喋っても大丈夫なくらいにはなっているが、まだ治りかけだからね。無理はしないように」
「……はい」
「……それにしても、この生命力……やはり強化人……いや、すまない」
「いえ。いいんです。今回だけは自分のこの回復力を素直に喜べますよ」
苦笑すると、彼は少しだけ暗い顔をした後
「……………ゆっくり休むといい」
それだけを言った。
「…はい」
それから、俺は静かに目を瞑った。
1,2時間くらいして、ユーリが入ってくる。
「おや?ムゲンさんがイキテルー」
「………心配してくれよ…」
「なんて、冗談ですよ。良かったです生きていて」
「………すまなかったな」
「ええ。こまりましたよ、ここ2か月、私の財布……ゲフンゲフン。がいなくて困ってたんですから」
「………」
やはりお菓子目当てなのか……。
とか、考えていたら、俺の頬に冷たいペットボトルが当てられた。
「つめたっ!?……あっ!?い、いてて………」
のけぞろうとするが、体に痛みが走った。
「……大丈夫ですか…?まったく、大げさですねえ…。喉乾いてるんじゃないかと思って、水買ってきましたよ」
「あ、ああ………ありがとう…」
ニヤニヤしている彼女から水を受け取る。
「ええ。これもおいしいお菓子のためです。それじゃ」
そう言ってスキップしながら病室を出て行った。
「………」
「水くらいなら、もう飲んでもいいさ。構わんよ」
察した彼は、俺に許可をくれた。
俺は久々の水を飲む。
冷たくて、喉の渇きが癒された。
「…おいしい………」
「ははは。さすがに2か月ぶりだからね。だが、ゆっくり飲むんだよ」
「…はい…」
俺はそのあと、ゆっくり水を堪能した。
それから5か月経った。俺は、病室から出ても良いという許可をもらい、久々に艦内を歩いた。
体はもう完全に治りきって、動きたくて仕方がないくらい。
真っ先に向かったのは、彼女の部屋。
ノックする前に息を整えて…。よし。
コンコンとノックする。
「はい……?」
その声の後に扉が開く。
俺の顔を見た彼女は驚いている。
「……ひ、久しぶり……リナ」
「ムゲン!!!」
彼女は俺に抱き着いた。
「………」
暖かかった。ずっとこうしていたいくらいだ……。
「見ないうちに……随分大きくなったな…。お腹」
見たら、随分彼女のお腹は大きくなっている。あとどれくらいなんだろう……。
「……うん。もう少しなんだって」
「…そうか。楽しみだ……」
なんとか、彼女が一番つらい時の前に間に合って良かった。傍にいてあげられないのは辛いから…。
「ムゲン、遠征はもういいの……?」
「ああ。今日帰ってきたんだ…」
「そっか。とりあえず入って」
彼女は俺を部屋へ勧めた。
俺は彼女をベッドに腰かけさせるのを手伝う。
「そ、そんな……気を遣わなくていいんだよ?」
「いや。……そういうわけにはいかないさ」
「ありがと……」
彼女は笑った。その笑顔につられて、俺は笑顔になった。
「あ、そうだ。子供なんだけどさ」
「ん?」
「えっとね、女の子なんだって!」
女の子。可愛い笑顔が見れそうだ…。リナに似るのか、俺に似るのか…。俺としてはリナに似てもらったほうが嬉しいんだが。
「……そっか。じゃあ、名前は【アウロラ】になるのかな…」
「うん。あなたと……私の子」
な、なんかその言葉を聞くと、凄い緊張してしまうのだけど………。
「あ、ああ……」
「ふふっ……。うれしいなあ……」
「俺も、しばらくは休暇を貰えるから、一緒に過ごそう…」
「ほんと!?じゃあ……近くにいてね?」
「あぁ。一人にしない」
彼女は、幸せそうだった。俺にできることをやる。今はそれで……。それだけでいいんだ。
37 完
キャラ設定です。少々長いですがお付き合いください。
名前:ムゲン・クロスフォード(U.C.0088~U.C.0089)
年齢:24~25
性別:男
主な搭乗MS:ガンダム・ピクシーエッジプラス
階級:中尉
説明
第00特務試験MS隊の第一小隊隊長を務めるパイロット。
持ち前の戦闘センスに磨きがかかり、さらに、軍人としての見解と、個人の見解をわけるようになった。
最近では、ニュータイプの能力が復活しかけているのではないかと言われるほど勘が鋭くなっている。
ある作戦中に、敵と戦闘中、敗北し、ピクシーと共に爆散するが、一命は取り留めた。
これも、強化人間である証なのだろうか。それならば……とても悲しいものだ。
名前:ファング・クラウド(U.C.0088~U.C.0089)
年齢:23~31
性別:男
主な搭乗MS:FAシルバーライト
階級:大尉~少佐
説明
第00特務試験MS隊の部隊長を務める人物。
グリプス戦役終戦後は、再び連邦軍の傘下に組み込まれ戦っていくことになる。
誰よりも家族を愛し、その重さを背負いながら戦っている。
個性的なメンバーを率いる統率性を持ち合わせており、人からの人望も厚い。
名前:フユミネ(U.C.0088~U.C.0089)
年齢:32~40
性別:男
主な搭乗MS:ジム・コマンド・フルシールド
階級:中尉~大尉
説明
グリプス戦役終戦後も、第00特務試験MS隊のメンバーの一人として戦う男。
最近では、暇な時間があると、新兵に戦闘の指導を行ったりと、部隊での裏の行動にも尽力してくれている。
MSの操縦技術もかなりの腕であり、主に偵察や防衛の任務に優れる。
名前:ユーリ(U.C.0088~U.C.0089)
年齢:26~27
性別:女
主な搭乗MS:λガンダム
階級:中尉
説明
第00特務試験MS隊の第三小隊隊員のパイロット。
遠距離の事に関しては、この部隊で右に出るものはいないと言われるほどの狙撃の名手。
たとえセンサーの範囲外でも、きっちり的の中心に当てられるという驚異のセンスを持っている。
現在は、サイン:code スナイパーの名称を変えたλ(ラムダ)ガンダムに搭乗し、戦っている。
名前:リナ・ハートライト(U.C.0088~U.C.0089)
年齢:24~25
性別:女
階級:技術少尉
説明
第00特務試験MS隊に所属している整備兵。
現在は、子供のために産休中。自室や食堂でのんびりと生活している。
それに関しては全員が了承しており、良く皆から気を遣われたりしている。
ムゲンが戦闘の末に昏睡状態の事を知らない。これは、部隊の全員が彼女の身を案じて黙っていたからである。
なので、ムゲンはしばらくの間遠征へ向かったと伝えられている。
機体名 λガンダム
正式名称 Sign Code Sniper λ
型式番号 RXG-001[λ]
生産形態 試作機
所属 第00特務試験MS隊
全高 17.65m
頭頂高 17.60m
本体重量 32.0t
全備重量 40.7t
出力 1,850kW
推力 18,600kg×4
総推力: 74,800kg / 74,400kg
センサー 18,000m
有効半径
武装 専用ビームライフル
ボックスタイプビームサーベル
サインスナイパーライフル
クレイ・バズーカ
搭乗者 ユーリ
機体解説
ティターンズを脱退し、エゥーゴに加入したユーリ少尉が駆った遠距離型スナイパーMS。
中距離及び遠距離支援を得意とする。
武装や外観はまったく変わっていないが、カラーリングが一新されており
グリプス戦役時のカラーはロールアウトしたばかりだったため、全身がグレーに塗装されいたが
終戦後、カラーが紫を基調に、白と赤を各部位にアクセントとして塗装されている。
本機は、後のラプラス戦争までユーリの愛機として活躍する。
なお、名称は第00特務試験MS隊に復帰した彼女自身が付けた名前。
[ラムダ]はギリシア文字で数値は30と言われている。
明らかに悪そうなキャラのベルベットさんの説明です。
名前:ベルベット・バーネット(U.C.0088~U.C.0089)
年齢:25~26
性別:男
階級:大将
説明
地球連邦軍最高評議会の議長を務める人物。かつては最前線での指揮もしていた。
利己的な性格で、他を蹴落としてでも上へ上り詰めるという実力主義。
しかし、人を従える事に長けるカリスマ性を持つため、多数の人々から尊敬されている。
第00特務試験MS隊に所属する全員の情報、さらには過去の戦争の情報をすべて知っているように喋る。
内に野心を秘めたる男。