宇宙世紀0089.6.10 第00特務試験MS隊に、新型MSと連邦軍最高評議会からの手紙を受領。
俺は、格納庫へと呼び出され、訳が分からずに、格納庫へと向かった。
「で、俺に何かあるのか…?」
「ああ。だから呼んだんだ」
ファングは、少しだけ表情が暗い。なんだか、昔にもこんなことがあった気がする。
「まさか、また研究所に行ってくれとでも?」
「………いや、研究所ではない…」
「…おいおい…。どこか行かなきゃならないのか?」
正直困った話だ。リリーの面倒も見なければならないのに…。
「…今度はアジア方面軍防衛大隊の傘下である「第66特殊戦闘小隊」というところに一時的に行ってほしいとさ」
「………なんで。今、リリーの先生やってるから、異動なんか無理だぞ?」
「いや、それでもだ」
「…おいおい。そりゃあないぞ、ファング」
「ま、俺も同じ気分だよ…」
ファングは頭を軽く掻きながら言った。
「……行ってくれないか…?」
「……リリーが……」
するとファングは、俺を見ながら小さく笑った。
「お前、そこまで心配性だったか?」
「違う……。ただ、リリーはまだなじめていないと思って…」
「はは。それは、否定はしない。だが、たまには先生がいないっていうのもアリなんじゃないか?」
「………はぁ……。分かったよ。ただし、リリーには何も言わないでおいてくれよ?」
こうしていても埒が明かない。
「ああ。分かっているさ」
「だが、異動するにしたって、俺には機体がないぞ。前線指揮なら絶対にやらないからな」
とか、無理な注文でもすれば異動しないで済むかな。とか思って言ったつもりが。
「そう言うと思ってさ。……おらっ!」
ファングは後ろにある布を取り払う。
布が宙を舞い、その奥から姿を現す真っ白いMS。
ジムとも、エゥーゴで作られたネモとも違う顔。これは完全な新型だと悟った。
「RGM-89[F]ジェガン。こいつの戦闘データの収集も兼ねて、アジア戦線に行ってきてくれ」
「………」
まさか、本当にMSが出てくるとは……。これじゃあ断れない。
「…わかった。やろう。それで、期間は?」
「そうだな、1,2ヶ月くらいだな」
「…また長い戦いになりそうだ」
「そう言うなよ。久々のMSだぞ?」
「……ま、そうなんだけどさ」
機体を見上げながら、俺は少しだけ心を躍らせていた。
食堂でコーヒーを飲んでいると、俺の周りに、リリーや、兵士たちが集まってくる。
「先生…………」
「リリー?どうした」
「……っ!」
リリーは涙を流しながら抱き着いてくる。
「お、おい!?どうした!?リリー…?」
「……ムゲンさん。すいません……リリーちゃんに、異動の話を聞かれてしまって……」
なるほど。まあ、いつかは言わなければならないことだったが…。
「うぅ……!せんせぇ……行かないで…」
「リリー。大丈夫。すぐ帰ってくるから」
「いや……。怖い……」
「それは嘘だな?」
「っ……」
「ムゲンさん!さすがにそれは……!」
「いいや。リリー自身が知ってるさ。もう大丈夫。そうだろ?」
「うぅ………」
リリーは、俺の胸に顔を埋めながら、小さくうなずいた。
「……リリー。怖くない。もう二度と会えないわけじゃないだろう?たったの2ヶ月さ」
「うぅ………」
リリーはどこか納得がいかない様子だった。
「ムゲンさん………」
全員が心配そうな顔をしている。なんだか、懐かしいな。
「……お前たちまでそんな顔をするな。ここは食堂だぞ?」
「ですけど……」
「はははっ!懐かしいな。昔、俺が研究所に行くことになった日も、こんな感じだった」
「あれは本当につらかったんですよ!?」
「だが、今は笑って流せる話だろう?だって……」
俺は、微笑みながら言った。
「俺は生きているんだから」
そのあと、ユーリが来てくれたおかげで、全員はなんとか立ち直ってくれた。
この時ばかりはユーリに感謝だな。
気づけば俺は、リナの部屋の前へとたどり着いていた。
「……あ……」
意識はしてなかった。だが、どっちみち彼女にも伝えなきゃならないこと。
俺は、ノックした後、扉を開く。
「…………」
「リナ……?」
彼女は、アウロラと共にベッドで静かに眠っていた。
俺は、静かに地面に腰を下ろす。
「………」
ゆったりとした時間が、俺の心を安心させてくれる。
ふと、彼女の寝顔を見つめてみた。
「…………そっくりだ」
アウロラと彼女の寝顔。そっくりだった。アウロラが成長すれば、きっとリナみたいになるのだろう。
楽しみだ。……本当に。
しばらく見つめ続けていると、彼女は、ゆっくりと目を開ける。
「…………あっ…!?」
「しっー。静かに。アウロラが起きちゃうぞ?」
「あ……ご、ごめん。ムゲン、いつからいたの……?」
彼女はアウロラを起こさないようにゆっくりと体を起こす。
「そうだね。リナとアウロラの寝顔をゆっくりと見ることができたくらいかな?」
「…………意地悪…」
リナが頬を膨らませながら言う。
「そう言うなよ。寝てたから、起こすのもなって思ってただけなんだよ」
「……そ。なら、許してあげる」
「……あ、あぁ…」
「それで、何の用だったの?」
「ああ、俺、しばらく艦を空けることになったんだ」
「あ………。そっか。行っちゃうんだ……」
「ああ。まあ、2ヶ月くらいだから、すぐさ」
「ほんと、あなたは忙しいね。……私だって寂しいんだけどな……」
そう言いながら、上目遣いでこちらを見てくる。こんなことされたら、どう対応すればいいか分からないじゃないか。
「悪い。帰ったら、ゆっくり過ごそう。それで許してくれ。な?」
「………はぁ……。いいよ。わかった」
少しだけ気まずい雰囲気。話題を変えなければ。
「あ、そういえば、新型が来たんだけど………」
「RGM-89[F]…。名前はジェガン」
「………」
返す言葉が見つからない。流石はリナだ。
「見たよ。最近正式採用した型とは違うから、たぶん初期生産の試作機ってところかな」
「詳しくは分からないんだが、ジェガンは…強いのか?」
そう聞くと、リナは目を輝かせながら言葉を返す。
「強いも何も!最近量産され始めたばかりの機体の試作機だよ!?弱いわけないじゃない!!」
「……そ、そうか…」
「見たところ、バックパック以外は正規品と同じみたいだし、かなりいいスペックなんじゃないかな!」
そうだ。俺はこのリナが見たかったんだ。目を輝かせて、子供みたいにはしゃぐ彼女が。
「……なんだけど……。って、ムゲン、聞いてる?」
「えっ…。あ、ああ……なんだったっけ?」
まずい。見とれていた。
「もう!しっかりしてよ!あの子は、ジムⅢのバックパックだから、既製品よりスラスターの効率は悪いけど、機動力はこっちのほうが上だね」
「………なるほど…。まあ、その話はまた今度……。な?」
「………そうね。あー!もう一度見たくなってきたなぁ!」
「…そういえば、リナ」
「うん?」
「最後の1機、どんなプランを考えているんだ?」
「あ、聞きたい?」
リナは再び目を輝かせ、俺に聞いてくる。
「ああ。聞きたい」
個人的にも、この話は聞きたかった。
「とりあえず、型式とか名前はまだ考えてない」
「それで、コンセプトとしては、『近距離での戦闘に特化し、機動性を限界まで引き上げた機体』っていうコンセプトと」
「と……って、ほかにもあるのか?」
「あるよ!もう一つは、『防御力を重視し、白兵戦の武装を豊富に装備した機体』だね」
「なるほど………。つまり、前者は、『高機動型の近接機』で、後者は『重装甲かつ多種に渡る武装を持つ近接機』ってことか」
「そういうこと。ムゲンに合ったコンセプトで考えているから、近接かなって思って」
「なるほど……」
「一応、もう一つ考えているんだけど」
「うん……?」
「これは、ムゲンには合うかわからないけど、『中距離および遠距離からなる武装を搭載し、拠点制圧および、大多数の敵機殲滅を目的とした重装型』っていうのがある」
「……なるほど」
「ふふっ!聞いてるだけでワクワクしない?」
リナの言う通り、何故だかワクワクする。理由は分からないけれど。
例えるなら、プラモデルを1から作り始めるあの感じ。
「ああ。ワクワクするな…」
「でしょ?……ムゲンも、頑張るみたいだし、私も頑張らなきゃ……!」
「…ああ。お互い、頑張ろうな」
リナに手を差し出す。すると彼女は、飛び切りの笑顔で
「うん!」
そう言って俺に抱き着いてきた。
「うおっ!?」
「えへへ……。少しだけ、いいよね?」
「……。ああ。少しだけ……」
リナは、幸せそうだった。俺も――――
「………幸せだ……」
「え……?」
心の声が漏れていたようだ。
でも、いい。
「幸せだよ。リナと、アウロラといれて」
本当の事だから。
「……私もだよ。幸せ」
俺と彼女は見つめあった。そして、なんだか可笑しくなって、二人で笑った。
それから、俺はリリーから甲板に呼び出しを受けた。
なんでも、二人っきりで話をしたいらしい。
甲板へと出ると、涼しい風が俺の前を通り過ぎて行った。
「………」
昨日は雨だった。心地の良い風と、丁度いい陽射し。
……この感じ、好きだ。
「……先生……」
「リリー……?」
振り向くと、走ってきたのだろうか、リリーが肩で息をしながら俺の前に立っていた。
「………せんせい……っ!」
彼女は急に抱き着いてきて
「り、リリー……?」
俺は、困惑するしかなかった。
「どうしたんだい?」
「………離れたくない…。行かないで」
「……」
俺は、彼女の頭を優しく撫でる。
「ぁ…………」
「大丈夫。すぐ帰ってくるから」
「……でも……」
「……リリー」
俺は、彼女を見つめる。
「君は強い子だから。皆を守ってあげてほしい。出来るかい?」
「………やだ」
「え………」
衝撃だった。リリーが拒否したのだ。……悲しいわけじゃない。けれど、何故だろう。複雑だ。
「先生がいないなら………」
彼らをまだ、家族と認めていないのだろうか……。
やっぱり、俺がいなくなったら……。
でも、ダメだ。このままではダメなんだ。
「リリー。お願いだ。俺の代わりに、皆を守ってくれ」
「お願い……?」
「ああ。会話もしなくていい。だから、戦いになったら、守ってあげてほしい。彼らが君を守ったように」
「………!」
リリーには思い出したくない記憶だろう。
前の戦闘、リリーの目の前で仲間が死んだ。
彼は、彼女を【希望】と言って死んでいった。
分かっているはずなんだ。彼女も。
「……うぅ……」
どうしても考えがまとまらない彼女を見て、俺は一つの提案をする。
「分かった。それじゃあこうしよう」
「………?」
「俺と、戦おう」
「え……!?」
リリーは驚いていた。当然だろうか。
「戦って、リリーが勝ったら、俺はこの艦でリリーの先生を続ける」
「私が負けたら……?」
「俺は、アジア戦線に行く。そしてリリーは、2ヶ月間この艦を守ってほしい」
「…………」
少しの間リリーは考えた後、口を開く。
「先生を……倒せば、いてくれるんだよね。なら………やる!」
「……分かった。だが、こっちも本気で行かせてもらうよ」
「……うん」
そのことをファングに伝えると、渋々ながら彼は承諾してくれた。
そして、リリーとの戦闘は、2日後に行われることになった。
そして約束の2日後。
俺は、ジェガンに乗り込み、荒野へと出る。
今日は特に多くの観戦もあって、少しだけ緊張する。
しかし、戦闘が始まればそんなこと気になりはしないが。
[先生……]
彼女は、俺の前へと立ちふさがる。
今は、互いが敵同士。
いや……。先生と生徒か……。
「……よし、リリー。本気で行かせてもらう…!!」
今は口調も優しくする必要はない。戦いは…戦いだ。
サーベルを引き抜いて一気に間合いを詰める。
[……!]
サーベルとサーベルが激しくぶつかり合い火花を散らす。
間合いを取りながら、ビームライフルで牽制。
続けて、シールドミサイルで相手の位置を誘導。
すかさずサーベルで斬りに行く……が。
リリーはそれを受け止め、さらに空いた右腕でビームライフルを放つ。
受け止めているサーベルを蹴り飛ばし、その勢いで宙返り。
「今だ……!!」
宙返り中にスラスターを起動。機体が相手を正面へ捉えた瞬間、一気に詰め寄る。
[うっ……!!]
サーベルでビームライフルを切り落とし、怯んだ隙に左腕を切り落とす。
「これで――――っ!?」
振り上げようとした右腕が、何かに撃ち貫かれた。
[…ま、まだ………終わってない…!]
「ファンネルか…!だが、まだ!」
一度間合いを取りつつ、シールドミサイルを放つ。
ミサイルはリリーへ迫るが、そのたびにファンネルがリリーへの攻撃を阻む。
「…すごいな。リリー…。ここまで強いとは思わなかった」
[……先生も……強いから……]
「そりゃ、嬉しいね。…なら、もっと強いところを見せないと……なぁ!!!」
シールドミサイルを放ちながら一気に突っ込む。
それをファンネルが遮ったところを見逃さない。
シールドを相手へ投げつける。
右腕でシールドを吹き飛ばすリリー。
「…今だ…!」
すばやくサーベルを引き抜いて、リリーの正面へ。
[……!]
相手の対応が一歩遅れた。だが、ファンネルは彼女の脳波を読んで射撃してくる。
上からの射撃。ならば……!
俺は機体を動かしジャンプ。
続けて弧を描くように回転しながらファンネルごとジムの左肩へ切りつけた。
ファンネルが1基撃墜され、その爆風で攻撃の位置が少しだけずれる。
しかし、それも予測済み。
相手を足払い。
それをジャンプで回避するリリー。
「………」
素早く相手の懐へ。サーベルを右から左へと薙ぎ払い。
リリーも合わせるようにサーベルを左から右へと薙ぎ払う。
互いにぶつかるサーベル。
打ち合い、互いに隙ができる。
もう一度仕掛ける。
チャンスは、相手が態勢を立て直す一瞬の隙。
そのためにこちらが早く反応しなければならない。
3、2、1………。来る!
その刹那、リリーの機体に一瞬だが立て直すための隙が生じた。
「今だぁああ!!!」
サーベルを逆手に持ち替えて切り抜けようとする……が
[ふふ……。危なかった……!]
その一撃を読んでいたかのように、リリーがサーベルで受け止めていた。
「くっ……!!」
[先生。私の………勝ち]
背後から伝わる、3つの殺気。ファンネルだろう。
だが、ここであきらめるわけにはいかない。
「それは………どうかな?」
そうだろう!ジェガン!!!
俺はジャンプし、ジムを足場に宙返り。
宙返り中に、正面からファンネルを捉える。
今度は…逃がさない。
素早く横薙ぎに。
まとめて3基のファンネルを撃墜する。
その爆風が、ジェガンとジムを包み込む。
チャンスは今しかない。
スラスターを起動し、爆風の中を突き進む。
「リリー!!」
[ど………どこから………!]
爆風をすり抜け、ジムの背後へ。
「俺は………!」
[後ろ……!!!]
[そこだぁああ……!!「ここだあぁああああ!!!」]
ジムが振り返る。互いのビームサーベルが火花を散らしながら何度目かの衝突。
「くっ……!まだだ……!」
[私は………!]
「リリー……!?」
リリーのサーベルの出力が上がっているのが分かる。
[先生と……ずっと一緒に………居たいからぁああああああ!!!!!]
彼女の機体から、とてつもない圧力と共に、微かに【虹の光】が見えた。
その姿に唖然として、力が抜けた。
サーベルが吹き飛ばされる。
「…………負けた……のか」
悔しさよりも、リリーから伝わる暖かさを感じていた。
「……」
さっき見た【
凄く小さい光で、俺たち以外には見れなかったかもしれない。
けれど、俺はこれで本当に確信した。
リリーは………本当にニュータイプなんだと。
兵器ではなく、純粋な気持ちによって生み出されたその小さい【光】。
それは、グレイやゼロでもない。そして、ミラージュが見せた光でもない。
本当の気持ちなんだ。その光は、確かに俺の胸の中で、心の中で温もりを持っている。
「……暖かい…」
[先生!]
その声は今まで聞いた中でも一番の
「リリー………」
[…私の勝ち、だよね?]
「…………。ああ。君の勝ちだ」
負けたことよりも、嬉しかった気持ちのほうが強かった。
言葉にできないけれど、だが、嬉しいんだ。
こうして、俺とリリーの決闘は、リリーの勝利によって幕を閉じた。
負けた以上に、得たことのほうが大きかったのは確かだ。
これで俺はアジア前線には行かなくて済む……。と思っていたのだが。
「ま、ダメだよな……」
「ああ。リリーには、どう言ったらいいだろう」
「……素直に言ってあげればいいさ。どうせ避けられない」
ファングは、うーん、と唸って悩んだ後、俺の肩に手を置き
「任せた」
「任せたって……おい!?そりゃあないぞ!?」
「ははは!それじゃ!」
ファングは笑いながらブリッジから逃げ出した。
「………はぁ…」
仕方がない。リリーにも、伝えなければならないのだ。
これじゃあリリーが戦った意味がないのだが…。
なんて言ってあげればいいだろう。
そんなことを悩みながら、俺はリリーの元へと向かった。
リリーは甲板にいた。俺を待っているかのように、彼女は静かに待っている。
「……リリー」
「先生。待ってた…」
リリーは笑顔で俺を迎えた。その笑顔を見ると、どうしても打ち明けにくくて。
「あ、ああ……。えっと……。飲み物……飲むか?」
そう言って、俺は彼女にココアを差し出す。
「わぁ…。ありがとう……先生…」
「………」
しばらくの沈黙。リリーは、ただ静かに待っている。
俺から何かを言ってもらうためだけに。
俺は、意を決して彼女に打ち明けようと口を開く。
「なあ、リリー……」
「なに……?」
「実は………な…俺――――」
「行くんだよね……?」
知っていたかのように、彼女は言葉を遮った。
「………ごめん。君を無駄に戦わせてしまった…。本当にごめん…」
俺は、彼女に頭を下げた。
「………頭……あげて。先生……」
リリーは静かにそう言って、俺の肩に手を置く。
「………」
顔を上げると、彼女は微笑んでいた。
「先生……。分かってるよ。……私のためだけに上層部って所の命令は破れないことくらい」
「………リリー…」
「わがまま………言っちゃってごめんなさい。……でも…。これでスッキリしたから」
「え………?」
「初めてだから……。『
「リリー……君は……!」
「寂しいけど……。先生との約束、守るから」
「リリー…」
「皆……守るよ。だから………っ!……だから……っ!」
リリーは泣きながら、言葉をつづけた。
「もう一つだけ…っ!も、もう一つだけ……『わがまま』を……いいですか?」
「なんだい……?」
彼女の涙を拭きながら笑顔で答える。
「………ぎゅーって……してほしい……」
「……」
「や、やっぱり……ダメ……かな」
俺は、微笑みながら言葉を返す。
「ああ。分かった」
俺は彼女に両手を広げ
「さあ、おいで」
一言だけ言った。
リリーは俺に近づき、胸に顔を埋めた。
「……せんせいっ…!うぅ……!!うわぁあああああん!!!!」
堪えられなくなったのだろう。子供のように泣いている彼女を、俺は優しく撫でる。
「……よく頑張った。今は、泣いていい」
「うん…っ!…うんっ…!!!」
「君は強い子だから。先生が保証するよ。でも、辛かったよね」
「だから、いっぱい泣いていい。泣いた分だけ、人は強くなれるから」
「……うぅっ…!!ぐすっ!!」
「リリー…。ありがとう。君は、俺たち大人の【希望】だ……」
「わたしっ……。そんなのっ…興味ない……っ」
「ああ。そうだな。でも、覚えておいてくれ。…俺は、君から微かだけれど【虹の光】を見たんだ」
「………ぐすっ…」
「今までで感じた彼らのモノより、ずっと純粋で、優しく、暖かかったんだ」
「……君は、隣人さえも愛することのできる【ニュータイプ】だ」
「………しらない…っ……」
「今は、知らなくてもいい。でも、いつかはそれを理解しなきゃいけない時が来ることも、覚えておいて」
「………」
「今は、好きなだけ泣いて、好きなだけ甘えればいい」
「うん………」
それから、どれくらい経っただろうか、彼女はゆっくりと俺から離れ、涙を拭いた。
「……もういいのかい?」
「うん」
「……分かった」
「先生」
「なんだい?」
「……頑張るね。それで、先生が帰って来た時には、皆と仲良くなって、【先生】じゃなくて、一人の【家族】として迎えられるように……」
「せ、先生の事……。【ムゲン】って呼べるように…。頑張るからっ!!」
リリーは顔を真っ赤にさせながら叫んだ。
「……ああ。楽しみにしているよ。それなら、一つだけ【おまじない】をしてあげよう」
「おまじない………?」
「これはリナにかした事ないけど、特別だからね?」
俺は彼女の顔に近づき、頬にキスをした。
「…………!!!!」
「……さ、これで大丈夫。きっとうまくできるさ」
「…………は、はい!!」
彼女は元気よく頷いて、俺に笑顔を見せてくれる。
寂しさは無い。リリーも、前を向いてくれた。
それなら、俺がすべきことはもう決まっている。
……リリー。後は任せたぞ。
俺は、機体に乗り込み、輸送機へと歩き出す。
目指すは新たな戦場。【アジア戦線】。
彼女の覚悟、その期待に応えるためにも。
さあ行こうジェガン。
俺たちには、俺たちの役目がある。
41 完
お待ちかねの新型MS、ジェガンの設定です。
機体名 ジェガン(初期試作型)
正式名称 JEGAN
型式番号 RGM-89[F]
生産形態 試作機
所属 地球連邦軍
全高 20.4m
頭頂高 19.0m
本体重量 21.3t
全備重量 46.3t
出力 1,870kw
推力 20,300kg×4
総推力 81,200kg
センサー 14,200m
有効半径
武装 ビームライフル
ビームサーベルx2
シールド(2連装ミサイルランチャーx2)
搭乗者 ムゲン・クロスフォード
機体解説
連邦次期主力量産機であるジェガンの正式採用前に1機だけ造られた試作型MS。
頭部には固定式のメインカメラ、額部には長距離用センサーを採用。
上半身にはガンダムMk-IIの影響があり、バックパックは、ジムⅢのバックパックを採用している。
上部左右には可動式のバーニアアームを備え、グリプス戦役時の高機動機に匹敵する加速性と機動性を発揮する。
同時に燃料搭載量も多く、補給時には基部ごと交換することで迅速な戦線復帰を可能としている。
また、胸部の排熱ダクトは小型化され、耐弾性が向上した。コクピットの操縦システムには球状操縦桿「アーム・レイカー」を採用。
機体の一部は、まだ完成されてない段階で組み立てられたため、塗装もまともに出来ていない。
そのため、機体カラーは白い色となっている。
ビームサーベルは、バックパックの端にサーベルラックを左右に1基ずつ装備。
出力を調整することで、斬撃に適した扁平な刀身と、突きに適した細身の刀身に切り替えることができる。サーベルラックには急速充填用のキャパシターが内蔵されている。
これによって、状況に合わせての対応ができる。
ビームライフルは取り回しを考慮し、他機種よりも短銃身化されている。射程が短い反面速射性に優れ、銃身上部のセンサーを併用することで混戦時の命中精度を高めている。
シールドにはウェポンラックを兼用しており、2連装式のミサイルを左右に内蔵する。表面に耐ビームコーティングが施されており、ビーム兵器の攻撃に対して一定の耐性を持っている。
本機は、一時的に、アジア戦線への異動を命令されたムゲン・クロスフォード中尉に配備され、ムゲンはこれを駆り、戦うことになる。