機動戦士ガンダム虹の軌跡   作:シルヴァ・バレト

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アジア前線編
42:第66特殊戦闘小隊


 宇宙世紀0089.6.15 ムゲン・クロスフォードおよび、ジェガン搭載輸送機、アジア方面軍防衛大隊傘下、「第66特殊戦闘小隊」交戦地域上空に到着。

 

 

[ムゲン中尉、上空に到着。行けますか?]

 

「問題ない。いつでも行ける」

 

 システムをチェックしながら、軽く言葉を返す。

 

[了解。ハッチオープン!]

 

 足元に広がる密林地帯。どうして俺は配属初日にこんな登場の仕方をしなければならない……?

 

[コントロールをそちらへ譲渡。自分のタイミングでどうぞ!]

 

「了解した。ムゲン・クロスフォード、ジェガン、行くぞ!!」

 

 機体を掴んでいるアームを外し、輸送機から飛び出す。

 

 

 

 下からくるGが凄いかと思ったが、それほどGが来るわけでもなく、しかし、それでいて凄い速さで空を降りていくジェガン。

 

「この程度のGなら……」

 

 足元に見える残党のザク。

 

「……照準……」

 

 照準を合わせ、トリガーを引く。

 

「そこだっ!!」

 

 ビームが銃身から放たれ、その一射が的確に敵を頭上から撃ち抜いた。

 

 射撃にもブレがなく、当てやすく感じる。

 

 それとほぼ同時に地面へと着地。

 

 轟音と共に、着地した地面がえぐれる。

 

 

 

 態勢を立て直し、立ち上がる。空を見上げると、まだ俺を乗せていた輸送機が飛んでいる。

 

 念のために無線でも送っておくか。

 

「こちらムゲン。無事着陸した」

 

 輸送機のパイロットに無線を送る。

 

[了解です。それでは、ご武運を]

 

 そうして通信が途切れる。

 

「……」

 

 辺りを見回すが、今のところ敵影らしきものは見当たらない。

 

「今のうちに連邦軍の拠点に動いておくか……」

 

 機体を動かし、予定の位置へと移動する。

 

 

 

 しばらく歩いていると、正面からレーダーの反応。

 

 それと共に、モニターに映る1機のジム。

 

「……こちら、第00特務試験MS隊所属、ムゲン・クロスフォード。そちら、所属は?」

 

[第66特殊戦闘小隊って聞いたことないっすか?俺はそこの一人。あんたがムゲンちゃんっしょ?]

 

「………」

 

 なんだこのチャラそうな声は。

 

「ああ」

 

[んじゃ、ついてきて]

 

 そう言うと、ジムは背を向けて歩き出した。

 

 俺は、彼の背を追いついていく。

 

 

 

 しばらく歩くと、密林地帯を抜け、ある程度の大きさを持つ野営地にたどり着く。

 

 ある程度と言っても、MSを格納する場所は無いし、簡易的なテントのみだが。

 

 俺は機体から降り、テント近くまで歩いた。

 

「よっ!ムゲンちゃん!」

 

 背後からの声。先ほど通信で聞いた声と同じ。

 

 振り返ると、そこにいたのは短髪の髪を金に染めた青年が立っていた。

 

 目の色は青色で、顔は、まあ誰が見ても文句のつけられないくらいカッコいいだろう。

 

 年齢はたぶん10代後半か20代前半と言ったところだろうか。

 

「君がさっきジムで先導してくれた人か」

 

「そそ。俺はカイル。カイル・ホプキンズ。よろしくぅ!ムゲンちゃん!」

 

 そう言って彼は手を差し出してくる。

 

「あ、ああ。ムゲン・クロスフォードだ。よろしく」

 

 答えた後、彼の手を握った。

 

 手を離した後、彼は俺をテントの中へと案内する。

 

 俺は、それに従ってゆっくりと歩き出した。

 

 

 

 テントの中は、簡素で、最低限の椅子と机、そして小さいコンロ。それ以外は荷物程度しか置いていない。

 

「んじゃ、すぐにアイツらにも連絡するから。しばし待たれよ」

 

「……分かった」

 

 俺は近くにある椅子に腰かける。

 

「あーもしもし?うん。オレオレ。例の人来たから来てくんね?」

 

 最近の若者って感じがして嫌いではないが…。こんな彼が軍人とは…。

 

「そそ。分かってるって。あ?マジ?行く行く!夜っしょ?」

 

 何の話をしているんだ……?

 

「あー!マジか!チョー楽しみだわ!うん。てか、来て話したほうがよくね?うん。じゃ、待ってるし」

 

 彼は喋り終わると、無線機を机に置いて、俺に目線を送る。

 

 それからしばらく考えた後、俺に口を開いた。

 

「ムゲンちゃんさ」

 

「な、なんだい……?」

 

 彼は俺の近くに顔を寄せ、ひそひそと話す。

 

「今夜、近くの街に合コンいかね?」

 

「…………」

 

 呆れて言葉が出なかった。なんと返せばいいのやら…。暫く考えた後、俺は口を開く。

 

「…嬉しい誘いだけど、うちの嫁に怒られそうだから遠慮しておくよ」

 

 苦笑しながら返すと、彼は『こんな奴に嫁がいるなんて』という顔をして、俺から離れた。

 

 そして、何を思ったのか再び顔を近づけ

 

「あ、でも、行ける時いつでも声かけてちょ」

 

「……あ、ああ。……わかったよ」

 

 少し引き気味の俺に構わず、彼はニコニコと笑っていた。

 

 面白いヤツだな。とか、心で思った。

 

 

 

 しばらくして、二人の青年が入ってくる。

 

 一人は銀色の髪が肩あたりまで伸びている青年。目の色はルビーのような色をしている。

 

 顔は普通にカッコいい部類に入るだろう。

 

 もう一人は黒髪の青年。目の色も黒で、唯一彼はアジア系の顔つき。

 

 それなりにカッコいい。ただ、少しだけ目つきが悪く見えるのは、彼が少しだけ細目だからだろうか。

 

 黒髪の青年は、カイルを見るなり、すぐに視線をそらした。

 

 それに気づいたカイルは、青年に向かって言う。

 

「おっ!零次ちゃーん!元気してた?」

 

 零次と言われる青年は、鬱陶しそうに彼に言葉を返す。

 

「それなりに元気だよ。……何度も言ってるが、ちゃん付けをやめろ!」

 

「えっ?じゃ、なんて言えばいいし。「ただの零次君」とでも言えばいい?」

 

 挑発するように彼は言った。それに腹を立てた零次は

 

「なんだと!ふざけるなよ!!俺にはれっきとした朱雀 零次って名前があるんだよ!!!」

 

「あぁー。ごめんごめん。でもさ、捻りがないと面白くないっしょ?だから、「ただの零次君」でいいっしょ」

 

「お前……!!!」

 

 今にも殴り掛かりそうな彼を見て、銀髪の青年が叫ぶ。

 

「二人とも!もういい加減にしろ!!新しい隊長を前に何を考えてるんだ!!!」

 

「そうは言うけどさ……。わかったよ……」

 

 振り上げた拳を降ろし、ふてくさる零次という青年。

 

「あいあい。で、なんだっけ?」

 

 銀髪の青年はため息を吐いた後、俺に向き直り、言った。

 

「着任早々にこんな光景を見せてしまって申し訳ない。私は、第66特殊戦闘小隊所属のガイ・イシュフィール。こっちの二人はカイルと零次」

 

 そう言って、彼らを指さしていく。

 

「ムゲンちゃん。さっきぶりっしょ。ま、これから仲良くしてちょ」

 

 カイルは笑顔で言った。

 

「ああ。よろしく頼むよ」

 

「朱雀 零次です。……よろしく」

 

 零次は俺をチラッと見ながら言う。

 

「よろしく。零次君」

 

「………」

 

 言葉を返さず、彼は別のほうを見た。

 

「まあ、こんなメンバーですが、仲良くしてあげてください。隊長」

 

 さっきから「隊長」と呼ばれていることに、俺は違和感を覚えた。

 

 俺は、ただ異動して来ただけで、隊長になるとは言われてなかったんだが。

 

「…気になったんだけれど……」

 

「はい?」

 

「俺………隊長なのか?」

 

「はい。そう聞いていますが…?今日着任してくる方は、私達の隊長になる方だと」

 

「………」

 

 衝撃だった。俺は、ずっとここで過ごさねばならないのか……?

 

「あ、でも安心してください。2ヶ月の間だけという話も聞いていますので」

 

 衝撃から一変、安心に変わった。良かった。

 

 しかし、そこで良からぬことを言うカイル。

 

「まーでも、2ヶ月ここで生き残れたらの話っしょ」

 

「…え……」

 

「ムゲンちゃんをビビらせるつもりないけどさ。先に言っておいたほうがいいっしょ?ガイ」

 

「……そうだな」

 

 彼は、真面目な表情で言葉をつづけた。

 

「彼の言う通り、ここで2ヶ月間生き残れれば帰れるという話は本当ですよ」

 

「……」

 

「特にこの私たちの部隊は、常に最前線で戦っていますから。昨日生きていた隊長さえ……」

 

「生きていた……?」

 

「ええ。昨日、残党の攻撃で機体ごと………」

 

 彼は、少し悲しそうな顔をする。

 

「そうか……」

 

 また、とんでもない所へ異動させられたもんだ。

 

「なんで死ななければならなかったんだ…。隊長は悪くないのに……!」

 

 零次が悔しそうに机を叩く。

 

「まー。そういう場所だし。戦争だから仕方ないっしょ」

 

「戦争だから仕方ないで済むのかよ!?人が……!人が死ぬことが仕方ないだと!?」

 

「そう言ってんじゃん。俺たちに何が出来るし。人を殺してこいと命令された俺たちに。どうすることも出来ないっしょ」

 

「………くそっ!!!」

 

 彼らの気持ちも、痛いほどわかる。零次が言いたい、【戦争で人が死ぬことが仕方ないで済むのか】ということも。

 

 カイルが言う、【戦争だから仕方ない】という言葉も。

 

 それでも、【戦争だから仕方ない】。この一言で片付いてしまうこの世の中は、きっと狂っているんだ。

 

「二人とも、もういい。…そういう場所です。隊長。いえ、ムゲン・クロスフォードさん」

 

「………」

 

「皆、明日生きているかすら分からない。物資だって、最低限しか渡されない。こんな状況を、2ヶ月生き残れたら運がいいですよ」

 

「………そうか」

 

「怖気づいたなら帰ってもいいんじゃね?ま、帰りの輸送機なんか来ないだろうけど」

 

「カイル!」

 

 ガイがカイルを諫める。俺は、正直驚いていた。

 

 たった3人で、ずっと戦ってきていたのだから。

 

「いや、いい」

 

 俺は、彼の言葉を制止し、言葉をつづけた。

 

「確かに怖いけれど、今ここで帰ったら、家族に怒られてしまうからね」

 

「………」

 

 全員が驚いた表情でこちらを見る。

 

「それに、そんな話をされては、君たちを見捨てる事なんかできなくなった」

 

「隊長……」

 

 

 この小隊は、俺たちと同じ。

 

 常に最前線で戦わされ、ロクな支援もない。

 

 疲弊したって、手を差し伸べてくれる人など存在しない。

 

 だから、俺たちは部隊の中で家族と呼びあい支えあってきた。

 

 彼らも、それは同じだ。

 

 なら……俺がすべきことは決まっている。

 

 

「本日より、第66特殊戦闘小隊の全指揮権は、俺が持つ」

 

「俺が隊長になった以上、ある一つの命令だけ守ってくれればいい。それ以外は何をしたって構わない」

 

「命令……?」

 

「俺たちは……家族だ。家族である以上、互いに助け合え。それだけ。それだけを守ってほしい」

 

「…………」

 

 全員が呆気にとられている。そのあと、カイルは笑いながら言った。

 

「オーケーオーケー。そんだけね。ははは!!!こんな指揮官見たことないっしょ!!」

 

「じゃ、隊長。俺、街で合コンしてくる。なんかあったら電話して。もしかしたら出るからさ」

 

 スキップしながらカイルはテントを後にした。

 

「………すいません、私は機体の整備に行きます。それでは」

 

 ガイは、小さくお辞儀した後、テントを出ていく。

 

 

「………ふう…」

 

 俺は、椅子に腰を下ろし、溜息を吐いた。

 

「ムゲン……隊長」

 

「うん?」

 

 見ると、零次は俺を静かに見つめていた。

 

「どうしたんだい?」

 

「えっと……。よろしくお願いします」

 

「……ああ。よろしく。さっきも言っただろう?」

 

「あ、そうだったね。……はは……」

 

 彼は、笑いながら言った。その笑顔を見て、俺もつられて笑った。

 

「ありがとうございます。その…家族って言ってくれて」

 

「引かないのか?会って早々に家族って言う俺に」

 

「引かないですよ。単純に嬉しかったですし」

 

「……そうか。それは良かった」

 

 彼は、満足した顔をしていた。

 

「ムゲン……隊長は、家族は……?」

 

 隊長、と言うのに慣れていないのだろうか。俺は、微笑みながら、彼に言葉を返す。

 

「言いにくいなら、ムゲンでいいよ。それで、家族だっけ?」

 

「…そっちがいいなら。……わかりました。ムゲンに家族は……いるのですか?」

 

「…そうだな。いるよ」

 

「……そうですか」

 

「ああ。前まで、本当の家族と呼べるものは無かったけれど、最近、本当の家族が出来たんだ」

 

「え?」

 

「そうだな。少し、長くなるけれど、いいかい?」

 

「はい。ムゲンの話、聞きたいです」

 

 彼は、大きく頷く。

 

 俺は、深呼吸した後、言葉を繋いだ。

 

「……一年戦争っていう戦争があったのは、知ってるかな?」

 

「知ってます。ジオンと連邦の戦いの始まりとなった戦争ですよね」

 

「そうだ。開戦の一日前の話。つまり、もう10年も前の話だよ」

 

 10年……気が付けば、こんなに遠いところまで歩いてきたんだな。

 

 たまには、記憶を思い出すのもいいな。

 

「俺は、両親がいて、普通に暮らす15才の少年だった」

 

「けれど、ある日、両親は、俺の目の前でジオンの兵士に殺された」

 

「そんな……!」

 

「理由はね、俺の両親はMSの研究者だったんだ。だから、殺された」

 

「そんな理由で……」

 

「ああ。最初は、ジオンを恨んで連邦軍に入隊したんだ。15の時にね」

 

「……」

 

「それから、今も所属している第00特務試験MS隊に入った。名前くらいは知ってるかな?」

 

「ええ。連邦でその名前を知らない人はいない。常に最前線で戦う特殊部隊の筆頭のような存在」

 

「……そ、そこまで大層なことはしてない。続けるけれど、うちの部隊長が口癖のように言うが今でもずっと記憶に残っているよ」

 

「どんな言葉?」

 

「『俺たちは家族だ』」

 

「……さっきの…」

 

「ああ。あの言葉は、彼からの受け売りさ。……あの言葉に、俺は救われた」

 

「俺だけじゃない。あの部隊全員が救われたんだ」

 

「全員が……」

 

「今はいないが、研究所で改造され、孤独を歩いていた少年が、今では心を開き、傭兵となって、人々を助けている」

 

「もう一人は、賢く、狙撃の腕もあるのに、問題だらけの少女が、今では、人を指導する立ち位置にいたり」

 

「傭兵であった彼を、家族と言って手を差し伸べていたり。そんな彼は、手を差し伸べた部隊長に信頼を置いて戦っている」

 

「整備兵で、家族を失った彼女にも、家族だと、笑って。背中を支えていた。そんな彼女は、今も整備兵として、家族を、自分のできることをして頑張っている」

 

「……俺も……そうだ」

 

「ムゲンも?」

 

「ああ。家族がいなかった俺に、家族だと。そう言って手を差し伸べてくれた」

 

「そのミームに、俺も遺伝したのさ。気が付けば、皆が俺の周りにいてくれて、俺は傍にいた彼らを助けようと」

 

「だから、俺にとって、あの場所は、本当に帰るべき家なんだ」

 

「この小隊の隊長は俺だ。それなら、ここも、俺の家。そして、ここに住む君たちは、俺の家族」

 

「………」

 

「単純に、過去の俺は、家族しかすがれるものがなくて、形がないとも、理想だけで戦っているとも言われた」

 

「でも、今は…。違うんだ。俺も、人を支え、背を押す側になったんだ」

 

「と、言うと……?」

 

 俺は少し照れ臭がりながら言葉をつづけた。

 

「ん?……ま、まあ……そうだね。俺にも……子供が出来たのさ」

 

「ええ!?子供いたんですか!?」

 

「ああ。……今は、リ……いや、妻と共に家にいるよ」

 

「凄いなぁ……。俺なんか……」

 

 零次は、少しだけ悲しそうな顔をした。

 

「うん?」

 

「……俺にも、家族がいたんです。それに、愛する人も」

 

「……いた、か……」

 

「けれど、俺を育ててくれた姉ちゃんは、俺の目の前で殺された」

 

「……」

 

「蒼花………いや、俺の彼女は、今も俺の帰りを待ってるんです」

 

「蒼花……と言うのか」

 

「ええ。彼女が待っているから、早く戦争なんか終わらせて帰りたい」

 

「そうだな。………なんで、戦争なんかあるんだろうな」

 

 俺は天井を見つめながら、小さく呟く。

 

「分からない。けれど、いつか終わると信じて……」

 

「違う」

 

 俺は彼の言葉を遮った。

 

「え……?」

 

「終わると信じるだけではダメだ。終わらせるために行動しなければ」

 

「行動……」

 

「……その行動は、決して正しいとは限らない。それでも、戦わなければならないんだ」

 

「………」

 

 その時、外からの爆音。音からするに敵襲。

 

「……敵か…!行くぞ、零次!」

 

「は、はい!!」

 

 俺は急いでテントを飛び出し、機体に乗り込んだ。

 

 

 いつか来る戦争がない世界。

 

 それはまだ遠い夢のような話かもしれない。

 

 だが、それでも……。そんな夢物語を実現するために、俺は、俺にできることを。俺にしかできない事をするんだ。

 

 

「ムゲン・クロスフォード、ジェガン、行くぞ!!!」

 

 俺は一足先に機体を動かし、出撃する。

 

 レーダーを確認後、3人に連絡を送る。

 

「カイル、ガイ、零次!敵だ!手を貸してくれ!!」

 

 連絡を終える。そして、正面を向く。

 

 正面から迫る敵を前に、俺は堂々と立ちふさがった。

 

 

 

 ビームサーベルを引き抜き、斬りかかる。

 

 相手は俺の一振りを回避。しかし、回避した地点へタイミングよく、弾丸が撃ち込まれ、足が貫かれた。

 

 そこを逃がさず、出力を調整し、サーベルをナイフ状にしてコックピットを貫く。ガイの援護だ。

 

 背後から迫る1機に、振り向きながらビームライフルを撃ち込む。

 

 ビームは背後の敵に直撃し、態勢を崩す。

 

 そこを逃さずサーベルで胴体を真っ二つにした。

 

「……次は…。っ!正面3機!」

 

[了解。前に行くっしょ?オレも行くし]

 

 カイルと共に前進。

 

 右手でビームライフルを放ち、隙を見せた敵を左手のサーベルでコックピットを貫く。

 

 実際に戦ってみると、新型がどれほどすごいのかが身に染みた。

 

 今までついてこれなかった速度に対応できる。

 

 自らの手足のように動かせるというのは少し言い過ぎかもしれないが。

 

 これが量産機なのかと疑ってしまうほどには優秀な機体だ。……確かにこれならリナが喜んで話す理由も納得がいく。

 

 1機のザクが間合いを詰め、ヒートホークで斬りかかってくる。

 

 相手の振り上げた腕を掴み、受け流す。

 

 態勢を崩したザクの胴体を、サーベルで切り落とした。

 

 背後からの殺気。対応に一歩遅れる。

 

[俺が逃がすわけないっしょ。落ちな!]

 

 背後から迫る敵をカイルがビームライフルで撃ち抜いていた。

 

「ありがとう。助かったよ」

 

[まだ来るっしょ?残りも片付けるし]

 

「……その必要は無さそうだ」

 

[なんで?]

 

 

[俺は……ここだぁああああ!!!]

 

 ザクの背後からジムがサーベルを振り上げる。

 

 サーベルは宙に弧を描きながら、ザクを両断した。

 

[あー。零次ね。なるほど]

 

「……敵機沈黙を確認。よし、帰還しよう」

 

 俺たちは、多数の敵に対して4機で対応し、全滅させた。

 

 背を向け、野営地へ戻ろうとしたとき、レーダーに1機、機体の反応。

 

「敵だ!!」

 

 振り返ると、こちらにまっすぐと進んでくる1機のザク。

 

 あのザクには見覚えがあった。

 

 俺とピクシーがトドメを刺された相手…。その姿はそれと酷似している。

 

 ザクは、俺の機体以外には目もくれず、ひたすらにこちらへと進んでくる。

 

「くっ……!!」

 

 サーベルを引き抜き、ザクと相対した。

 

 ザクは、俺の正面まで来ると立ち止まり、周囲を確認し始める。

 

[何やってるか知らないけど、隙ありっしょ!]

 

 カイルがサーベルを引き抜いてザクへと斬りかかった。これは、まずい…!

 

「カイ―――」

 

[え………]

 

 声をかける間もなく、気づいた時にはカイルの機体は宙を舞い、俺たちは困惑するほかなかった。

 

「カイル!?」

 

[なんだったんだ……今のは……]

 

 この場にいる全員が唖然とし、それをやってのけたザクを見据える。

 

[…………お前たちは……敵か?]

 

 ザクから聞こえた声には、人の温もりというのを感じられなかった。

 

 だが、それでも、人のような声であるのは間違いない。

 

[……オレは、試作型AI[John(ヨハネ)]。お前たちは敵か?]

 

 John……ヨハネと呼ぶそのAIは、機械であるにもかかわらず、俺たちに問いかける。『敵なのか』と。

 

 全員が、唖然として言葉が出ない。それは俺も例外ではなく、俺も驚いていた。

 

[オレは、お前たち人間が敵であるかどうかを見極める必要性がある]

 

「……何故だ…?」

 

 何とか声を振り絞って返す。

 

 AIと会話をしたことなど過去にも今にも一度だけしかなかった。…あれは会話ではないだろうが。

 

[人類は、間違いを犯しすぎているからだ]

 

「間違い……?」

 

[戦争。差別。自然破壊……。挙げたらキリがない。それだけの事を人類は犯している]

 

「……だったら、俺たちは【敵】になるのではないか?」

 

[そう。そのはずだ。しかし、オレが人類が敵かどうか見極めるのには理由がある]

 

[理由………?]

 

 黙っていたガイが口を挟む。

 

[理由は、オレ自身がそれを見たわけではないからだ。【百聞は一見に如かず】という言葉をオレは知っている]

 

[いくら言葉で言われようとも、オレ自身の目で見ない限りは、オレは人類を【敵】とは認識できない]

 

「賢いんだな。そうプログラムされたのか?」

 

 少し皮肉を混ぜて彼に言う。

 

[いいや。こんな言葉をオレはプログラムしてもらってはいない。オレの【()()】で言っているだけだ]

 

[随分と良くできているAIだな…。本当に人間と喋っているように感じる]

 

 ガイは素直にそれを言っている。確かに良くできているとは思うが、相手がAIと思えば余計に恐怖を覚えるのはなぜだろう。

 

[光栄だ。しかし、オレは戦闘用に造られたAI。オレは【失敗作】だ]

 

「失敗作……?」

 

[お前たちがそこまでを知る権利はない。………今回はこれでお別れだ。また会おう]

 

[ま、まて!!!まだ話は……!]

 

 ガイが制止するも、ザクは言葉を無視するかのように反転し、森林の中へと消えていった。

 

「なんだったんだ……?」

 

 それが何にしろ、あの時戦っていたら、まず勝ち目はなかったと思う。

 

 理由が何なのかは分からないが……。俺の勘がそう告げていたんだ。

 

 

 

 野営地に戻り、全員を集めて、俺は先ほどのAIの話をすることにした。

 

「まさか……AIと戦う日が来るなんて……」

 

 零次は驚きを隠せず、口を開いた。

 

「それはみんな同じっしょ。今まであんな奴見たことないんだし。機体も新型っぽくね?」

 

「いや。あの機体はザクⅢ。第一次ネオ・ジオン抗争で量産された機体だ。だが、AIを搭載したザクⅢなんて聞いたことがない」

 

 カイルとガイは互いに言葉を交わす。

 

 そんな彼らを横目に、俺は一つの事に考えを巡らせていた。

 

「………何故……攻撃をしてこなかった……?敵かどうかを見極めるため……?」

 

 気が付けば心の声が漏れ出していた。

 

 我に返ると、全員がこちらを見つめて、不思議そうにしている。

 

「あ、すまない……」

 

 俺は恥ずかしくなって俯いた。

 

 それを見たカイルが

 

「ぷっ……!!ははは!!!おっもしれぇ!!!ははは!!!」

 

 大笑いされた。なんで笑われたのか理解できない。

 

 すると、それにつられた二人まで笑い出す。

 

「お、おい!?お前ら!なんなんだ!?」

 

「ははっ!!!す、すいません。たいちょ……ふふ…!なんか、見てて可笑しくなっちゃって」

 

「くっ…ふふ……。ははは!」

 

 零次までもが笑っている。

 

 俺だけ置いて行かれている気持ちが半端ないんですけれど……。

 

「いやー。ムゲンちゃんさ、おっもしろいわ!」

 

「なんで」

 

 細目でカイルを見る。

 

「だってさ、突然独り言のように『何故……攻撃をしてこなかった……?敵かどうかを見極めるため……?』って…!!ははは!!チョー真面目じゃん!!」

 

「ま、真面目で悪いか!?」

 

 なんか、少しだけ俺の声にまねようとしていたのは気のせいじゃないはずだ。

 

 カイルならやりかねない。

 

「ふふ…。でも、その真面目さは大事だぞ。カイルも少しは見習うんだな」

 

「ガイちゃんそりゃないっしょ!俺は今のままでじゅーぶん幸せだし?」

 

「そういうことじゃ……。はぁ……もう、いい」

 

 まるでいつもこんな感じだと言わんばかりに、ガイはため息をついた。

 

「へへっ。んで?ムゲンちゃんは、何を悩んでるのさ」

 

 さっきまでふざけていた奴が、急にまじめな態度に変わる。……なんか見たことあるような…。

 

 気を取り直して、彼に俺が考えていたことを打ち明ける。

 

「AIが対話するためだけにこちらに迫ったりはしないだろう?だから、何故攻撃してこなかったのかって思ってね」

 

「確かに気にはするけども、けど」

 

「…けど?」

 

「俺たちは人間じゃん?だから、AIの気持なんか分かるわけないっしょ?」

 

「……まあ、そうだが………」

 

「分からないことを考え続けたって、答えは出ないっしょ。そういう時は別の事を考えるのが一番っしょ」

 

 別の事。例えば何を考えればいいだろう。AIがどうやって機体を操っていたか、とかだろうか。

 

 そんな俺の顔を見て、カイルは静かに首を横に振った後

 

「違う。そーゆーのじゃなくて、もっと、【()()()()()()()()()()】とか、あるっしょ?あ、ムゲンちゃん妻子いるんだっけ?」

 

「………ま、まあそうだね……」

 

 カイルの願望というヤツだろうか。…さっきの例えは。

 

「じゃあ、妻と子供の事でも考えてればいいんじゃね?」

 

「……」

 

「どのみち、いつかは分かることっしょ。今考えて出ないなら、向こうがまた出てくれることを祈るしかなくね?」

 

「そう、だな……」

 

「さて、俺は街にでも行ってくるわ。なんかあったら連絡よろしくぅ!」

 

 軽く手を振ってカイルはテントから出て行った。

 

「………」

 

 俺は席を立ち、テントを出ようとする。

 

「隊長。どこへ?」

 

「ああ、少し機体を見てくるよ」

 

「了解です。お気をつけて」

 

「ありがとう」

 

 

 

 テントを出て、機体へと足を運ぶ。

 

 野営地なので、格納庫が無い分、機体も探しやすい。

 

 ただ、その欠点として、向こうもこちらをみつけやすいのは確かだが。

 

 なので、基本的に野営地にいる場合は機体を屈ませておくように言い聞かせている……のだが。

 

「…カイルの奴、また屈ませていないじゃないか……」

 

 と、このように言うことを聞かずにジムを棒立ちにさせている奴もいたりする。

 

 俺の機体の前へと辿り着く。機体は静かに佇んでいて。

 

 まだ新しいボディ、それは先ほどの戦闘で少しだけ汚れている。

 

 それでも、ソイツは凛と強く。

 

 見ているだけで、こちらにも勇気が湧いてくる。

 

「……なあ、ジェガン。…お前には分かるか?アイツの意図が……」

 

 こうやって機体に声をかける奴、他人から見れば、頭のおかしな奴と思われるかもしれない。

 

 けれど、何故か、聞いたら返ってくる気がした。気がするだけで、本来はそんなことありえない。

 

 ジェガンは静かに俺を見つめ続ける。

 

「2ヶ月か……」

 

 俺はジェガンに背を向け、座り込む。

 

 リナやリリーには『短い。すぐ帰ってくる』なんて言ったけれど、俺自身、2ヶ月は随分長いと感じる。

 

 悲しませたくはないからすぐ帰ると言ったのに、何故だろう。自分には嘘を付けなかった。

 

 ……少しだけ、寂しく感じる。

 

「………あ」

 

 ふと、思い出して、左のポケットに手を入れる。やっぱり、あった。

 

 ポケットの中で、それを掴むと、取り出して見つめる。

 

 赤い色の長めのリボン。このリボンで、彼女はいつもこれで髪を束ねてたっけ。

 

 ……フィアさん。思い出すと、胸が苦しくなる。

 

 彼女は、まだ目を覚ましていないのだろうか。

 

 お見舞いに行く機会もなくて、会えていないけれど。

 

 ……まあ、彼らがいるから大丈夫か。

 

 俺は、リボンを左腕に巻いて、きつく縛った。

 

 こうして、腕に巻いていると、寂しさが少しだけ和らぐ。

 

「……いけないいけない。こういう時だからこそ、俺が弱気ではダメじゃないか」

 

 俺は、自分自身に喝を入れ、立ち上がる。

 

「リナやリリー、家族が待ってるんだ。俺も、俺のやるべきことをしないとな…。でなきゃ、【みんな】に怒られちまう」

 

「AIが何を考えていようと、俺には俺のすべきことがある。奴がまた現れて、敵とみなしたなら……」

 

 今度は躊躇う必要などない。

 

 だが、どこか引っかかっていた。

 

 彼の【失敗作】という言葉が、頭から離れることが出来ずにいる。

 

「……失敗……」

 

 AIを作った人物をがそれを言ったのか、それとも、彼自身がそう思っているのかは分からない。

 

 だが、前者だとするなら……。それは、悲しい事だ。

 

 彼が何を成功と考えているかもわからない。だが、【失敗作】と言っているとするなら、ほかに【()()()()A()I()】がいるのではないだろうか。

 

 何を以って【失敗】とみなすのか。それはだれにも分からない。けれど、一つだけ分かることもある。

 

『いくら言葉で言われようとも、オレ自身の目で見ない限りは、オレは人類を【敵】とは認識できない』

 

『いいや。こんな言葉をオレはプログラムしてもらってはいない。オレの【意志】で言っているだけだ』

 

 感情を持つAI……。なら、人と分かり合うことだって………。

 

 全て憶測にすぎないが、そういう可能性だってあると思う。いや、俺はそう信じたい。

 

 ……AIに人の心の暖かさを……。

 

 

「ムゲン?」

 

 俺を現実へと引き戻したのは、零次の声。

 

「……あ、零次。どうしたんだい?」

 

「あ、いえ…。ボーっと立っていたので、どうしたのかな…と」

 

「…ああ。何でもないよ」

 

「そうですか。…少し、街に出ませんか?」

 

「どうして?」

 

「今日の食料だったりを買わないといけないので、よければどうですか?」

 

「……わかった」

 

 俺は頷いて、彼の後を追った。

 

 

 

 野営地から5㎞くらい離れた場所に、街はあった。それほど大きいわけではないが、人々が暮らすには十分であろう。

 

 車を街の手前で泊めて、俺たちは街へと歩き出した。

 

 街は人々で賑わっている。時間は既に16時。

 

 思えばこんな賑わった街に出るのは久々だ。

 

 グロリアスにいたころは、買い出しはそれほどしていなかったし。

 

 こんなことも体験できたのだから、異動させられたのもそれほど悪くない。…と思える。

 

 街は、戦いが起きているとは思えないほど平和だった。

 

 いや、本当はこうあるべきだ。

 

 戦いがそれを変えた。

 

 ……だが、俺は軍人で、こんな平和な場所を、今までにも潰してきたのかと思うと、心が痛む。

 

 守るために戦っているのに、その戦いで、多くの人が死に、平和は崩される。

 

 …俺たちは、つくづく矛盾だらけの道を歩いているのだな。

 

 けれど、それに後悔はしていない。

 

 だからこそ、今ここに立っていられるのだから。

 

 それから気分を変えて、零次と共に食料や必要な備品を買い集めた。

 

 1時間の買い物を経て、俺たちは野営地へと帰る。

 

 カイルも連れて帰ろうと言ったのだが、零次は頑なにそれを拒否。

 

 仕方なく二人で帰ることになった。

 

 帰りの車で、俺は零次と話をした。

 

 

 

「ムゲン」

 

「なんだい?」

 

「こんなこと、聞くのもなんですけど」

 

「うん?」

 

「両親は………どんな感じだったんですか?」

 

「どんな感じ……か。そうだな、優しかったのは覚えているよ」

 

 母は、俺が辛い時、常に傍にいてくれて、優しく撫でてくれた。

 

 その手の温もりを、今も忘れていない。

 

 父は、俺の憧れだった。どんな時も凛としていて、だれよりも物事に対して熱中する性格だったから、MSの研究も熱中してやっていたんだろうな。

 

 そんな背中を見て育ったから、俺も無意識のうちに父のようになりたいと思っているのかもしれない。

 

 俺が困った時、父は一緒に考えてくれた。

 

 俺が何かを成し遂げたとき、誰よりも喜んでくれた。

 

 そして、俺が危機を迎えたとき、父は、誰よりも先に俺を守ってくれた。

 

 思い出すと、悲しくなる。

 

「………父も、母も。俺にとっては大事な家族だった。それだけは変わらない」

 

「……ムゲン」

 

 悲しくても、これは現実だ。父や母が守ろうとしたのは研究データだけじゃない。

 

 唯一の息子、俺をも守ろうとした。

 

 だから、彼らは死んだ。

 

 ……それだけなんだ。

 

「かつて、母が言った言葉があってね」

 

「どんな……言葉なんですか?」

 

「『人生に間違いなんてものは何一つ無い。どんな道が示されようとも、どんな道が出来ていようとも、結局はその判断を下すのは自分自身』だと」

 

「………間違いは…ない…」

 

 零次は、その言葉をゆっくりと咀嚼(そしゃく)して、考えている様子だった。

 

 俺も、昔はそんな反応だっただろう。

 

 だが、今は……そんな母さんの言葉も分かる。

 

 そして、その言葉に付け加えることがあることも。

 

「『だから、自分を信じて前に進め』……」

 

「え?」

 

「あ、すまない。母の残した言葉に、俺なりに言葉を付け加えてみたんだ」

 

「人生に間違いなんか無い。道を決めるのは自分自身だから。だから、自分の思うがままに、自分を信じて前に進めばいい。俺は、やっとそれを理解できた」

 

「………」

 

「あ、ごめんな!軽く聞き流す程度でいい。……でも、少しだけ覚えておいてほしいんだ」

 

「……」

 

「人は、間違っていたとしても、自分のために、自分の守るべきモノのために戦う」

 

「でもいつか、【戦う】ではなく、守るべきもののために【()()()()()】という日が来るかもしれない」

 

「………分かり……合う」

 

「ああ。元はみんな同じ人間だ。宇宙に出る前は、地球に90億もの人類がいたのだから」

 

「だから、分かり合える日だって来るさ。…俺は、そのために、今を戦っている」

 

「すごい……ですね」

 

「そんなことないさ。君は似ているんだ。……昔の俺に」

 

「ムゲンに……ですか?」

 

「そうさ。何て言うのかな、純粋で、成すべきことを、思ったことを成す。そんな雰囲気を感じる」

 

「でも…俺には……」

 

 彼の続ける言葉は、大体予想が付いた。

 

「まだ、そんな力がない。……ってところかな?」

 

「えっ………」

 

 まるで自分の心を読まれたかのような反応をする零次。

 

「力がないなら、学べばいい。色んな人から、言葉を、知識を学ぶんだ」

 

「学ぶ……」

 

「君の過去を俺は知らない。けれど、君にもいつか、立ち止まってしまう時が来るかもしれない」

 

「でも、その時、そばにいてくれる家族を、仲間を守れるように。君自身が強くなるんだ」

 

「………強く」

 

「戦いだけじゃなく、心も。人から学び、そしてそれを活かす。そうやって歴史というバトンを繋いで人は生きるんだ」

 

「俺は、【彼ら】から、そう学んだ」

 

「………」

 

 彼は、少しだけ考えた後。

 

「頑張って………みます」

 

 彼は、静かにそう言った。

 

 

 

 それから、俺たちはテントで夕食を済ませた後、偵察へと向かうことになった。

 

 全員が機体に乗り込み、俺の目の前へと並ぶ。

 

 偵察の部隊は、零次と、彼が指揮する偵察部隊。俺を含めて5機。

 

「行くぞ」

 

 森林地帯へと機体を動かす。

 

 偵察を行うには理由があった。

 

 着任当日、この付近のマップを確認したとき、一部の地域の森林が全て伐採されていた。

 

 それが少しだけ怪しく感じた。

 

 しばらく進んでいくと、目標の森林が伐採されている地点へと辿り着く。

 

 そこで見た景色に、俺たちは言葉を失ってしまった。

 

「こいつは……!!」

 

[な、なんだ……アレ……!!]

 

 森林からでも分かる、その巨大な要塞は、静かに佇んでいる。

 

 これで納得がいった。この地点を中心に森林が伐採された理由も。

 

「あれは……ジオンか…」

 

 周囲を見ると、要塞を守るかのように、歩哨として数機のザクが配備されている。

 

「………よし、一度後退する」

 

 ある程度状況を把握した後、俺たちは野営地へと戻った。

 

 

 

 テントの中に全員を集め、偵察で起きたことを説明する。

 

 その場にいた全員が騒めき出す。

 

 これでは収拾がつかなくなる。

 

「落ち着いてくれ!今から、これからの対応について話させてもらう!」

 

 俺の一声で、全員が静かになった。……こういう時だけは隊長でよかったと思える。

 

「偵察部隊によって発見された、ジオンの要塞と思われるものだが、現時点では不明なことが多い。しかし、同時に倒さねばならない事もハッキリしている」

 

「そこでだが、しばらくの間、要塞攻略のために、戦力を温存し、ジオンからの攻撃被害を最小限に食い止める」

 

「そして、戦力が十分になった時、要塞攻略作戦を決行しようと思う。皆。しばらくの間、辛いのを承知で、我慢してくれ!」

 

 全員が頷く。

 

「よし、じゃあ解散していい。皆、ゆっくり休んでくれ」

 

 その言葉で全員がテントから出て行った。

 

 

 

「……ふぅ…。一日でこんなに色んなことがあるとは……」

 

 着任早々、ここまで忙しいとは思わなかった。

 

 メンバーとかの問題じゃなく、未知のAIだったり、巨大な要塞だったり。

 

 考え出したら、どっと疲れが出た。

 

「……寝るか…」

 

 俺は、地面に敷いてある小さい布団に包まって眠りについた。

 

 

42 完




キャラ設定です


名前:ガイ・イシュフィール

年齢:23

性別:男

主な搭乗MS:ジムスナイパー

階級:中尉

説明

地球連邦アジア方面軍防衛小隊である、「第66特殊戦闘小隊」の一人。

小隊の中で最年長であり、全員を率いるリーダー的立ち位置にいる。

毎回喧嘩をしているカイルとレイジの仲裁をしているのも彼。

銀髪で、肩くらいまでかかる程度に髪が伸びている。目の色は赤色。

主に中距離と遠距離を担当し、敵を味方正面に誘導させたりをする。


名前:カイル・ホプキンズ

年齢:20

性別:男

主な搭乗MS:ジムⅡ

階級:少尉

説明

地球連邦アジア方面軍防衛小隊である、「第66特殊戦闘小隊」の一人。

チャラチャラした見た目のように、口調もチャラい。言ってしまえば年相応。

短髪の髪を金に染めている。目の色は青。

近接戦闘に重きを置いた戦いをし、隊列を乱してでも前へ出ようとする。


名前:朱雀 零次

年齢:19

性別:男

主な搭乗MS:ジムⅡ

階級:少尉

説明

地球連邦アジア方面軍防衛小隊である、「第66特殊戦闘小隊」の一人。

連邦軍に入隊するまでは、日本で暮らしていた。

熱く、仲間想いな性格であるが、意外と短気で、メンバーの一人であるカイルとは顔を合わせるたびに喧嘩をしている。

短髪の黒髪。目の色は黒。口調は、目上や上司には丁寧に接するが、心を許すと砕けた口調に変わる。

戦闘面では、敵の奇襲を得意とし、背後からの挟撃などの作戦は、この小隊の中では彼だけが遂行できる任務と言ってもいい。
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