機動戦士ガンダム虹の軌跡   作:シルヴァ・バレト

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50:罰

 宇宙世紀0089.7.22 トリントン基地内で内乱。第00特務試験MS隊追撃派が擁護派と衝突。

 

 

 間が悪い、というのはこういう時に使う言葉だろう。

 

 今にもその場で撃ちあいが始まりそうな空気。それを止めたのが俺だということ。

 

 火に油を注ぐような行動である。無論、俺は追撃派に捕まり、地下の牢屋へ連れていかれ―――

 

 

「ぐあっ!!」

 

「立てよ。てめぇらのせいで俺たちの仲間は死んだんだ」

 

「……ぐっ……」

 

 思うように立ち上がれずにいると、髪を引っ張られ、強引に視線を合わせられる。

 

「どうだ?俺たちを裏切った気分は。最高か?」

 

「……………すまなかっ―――ぐっ!!」

 

 言葉さえも遮られ、間断なく殴られ続ける。

 

 痛みよりも、俺たちの部隊がしたことを悔やんで。

 

「てめぇに謝られるつもりはねぇぞ。謝る前に殺してやる」

 

「………」

 

 殴られている間、こんなことが昔にもあったことを思い出した。

 

 研究所での対応も、こんな感じだった。

 

 抜けだしたらどこかの骨が折れるまで殴られ続けたっけ。

 

「はぁ……はぁ……!さ、さすが……強化人間だな…」

 

「………」

 

 肩で息する兵士を、ただ見つめることしか出来ない。

 

 抵抗する気が起きなかった。こういう扱いを受けるのを知っていたから。

 

 それでも、彼らはもっと辛い思いをしている。

 

 仲間を殺された。それは、耐えられない事だから。

 

「どうした?抵抗してみろよ。昔みたいに殴ってみろよ!!どうせ最初から裏切るつもりだったんだろう?」

 

「………ち…ちがうさ……裏切るつもりなんか……」

 

「じゃあなんで攻撃してきた!?なぜ仲間を殺した!?」

 

「………」

 

 返す言葉が見当たらない。

 

 俺は攻撃していないどころか、その場にいなかったのだ。当然だろう。

 

「……な、なんで黙るんだよ」

 

「……気に……しないでくれ」

 

「ちっ……。お前、いつから道夜みたいな反応するようになったんだよ。つまらねぇじゃねえか」

 

「………」

 

 言葉を返せずにいると、男は大きく伸びをした後

 

「まあでも、てめぇにはまだたっぷりと地獄を見せてやるよ。なあ?ムゲン」

 

 

 それから、どれくらい殴られたのだろう。

 

 男は満足したのか、牢屋に鍵をしてからどこかへと行ってしまった。

 

 左腕が折れてる。……瞼が重い。

 

「………っ」

 

 折れた腕を右腕で撫でる。

 

 体を起こし、折れた腕を赤いリボンで固定し、簡易的な治療を取った。

 

「……痛いな……」

 

 身体を再び床につけると、自然と睡魔がやってきて、俺を深淵へと誘った。

 

 

 夢を見た。

 

 ひどく、悲しく、辛い夢。

 

 道夜が、ユーリが、ファングが殺される夢。

 

 アウロラを守ってリナが死ぬ夢。

 

 リリーが泣きながら助けを求めながら死んでいく夢。

 

 クロノードが苦しみながら死ぬ夢。

 

 カカサが誰かに刺されて死ぬ夢。

 

 そうして最後に残った俺は、一人歩いている。

 

 そんな夢だった。

 

 救いも希望もない、夢。

 

 負の連鎖は終わらない。

 

 地獄は地獄を呼び、そして絶望へと昇華する。

 

 目が覚めれば再び誰かに殴られて、痛みを感じながら再び眠りにつく。

 

 それの繰り返し。

 

 

 どんな事されても、抵抗できなかった。

 

 

 それだけ、彼らも傷ついている。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 それならば、俺が……背負うべきなのかもしれない。

 

 

 痛みと苦悩が混ざり合い、再び堕ちる。

 

 

「起きろ」

 

 その言葉で地獄から引き上げられる。引き上げられた場所も地獄だが。

 

「………」

 

「だいぶくたびれてきたな。こちらとしては気分がいいよ」

 

 疲れからか出てこない声を何とか振り絞って発する。

 

「……満足……したか?」

 

「いいや?まだだ。まだ仲間の分は終わってない」

 

「……そう、か……。すまなかった…―――がはっ!」

 

 腹へ一撃。立ってられないほどの苦痛。

 

「あ……ぐぁ……は………」

 

 膝をつき、痛みに意識が持っていかれそうになる。

 

 その姿を見て嬉しそうに男は言う。

 

「やっとその姿が見れたぜ。最高だぜ。一方的に殴れるってのはな!」

 

「…………」

 

「その面が前から嫌いだったんだよ!!!そうやって余裕を持った顔が!!!」

 

 何発も顔へ打ち込まれる拳。

 

「う……ぅ……」

 

 途中意識が何度も飛びかけた。それでも保っていられたのは、仲間が犯した罪を俺が背負わなければならないと思ったからだろう。

 

 右の瞼が開かない。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「なんで………」

 

「ぐっ!!」

 

「なんで裏切ったんだよ!!!」

 

「ぐはっ…!!」

 

「俺は…!!信じてたのに!!!」

 

「ぐぐっ……!!」

 

 一撃一撃から、その男の悲しみが伝わってくる。

 

 それに対して何も言葉を返してあげられないことに、誤解だということも出来ない自分の無力さを恨むしかない。

 

「なんでだよぉおおおお!!!」

 

「………がっ…は……!」

 

 その強烈な一撃は、一発で俺の意識を飛ばした。

 

 倒れる最中、その男の涙が、俺の血が、鮮明に目に焼き付いたまま、深淵へと誘われるがままに堕ちていった。

 

 

 もう何日経ったのかも覚えていない。

 

 こんな気持ちになったのはいつぶりだろう。

 

 研究所の時と比べれば何とも無いが、ただ、この虚しさだけは、昔よりもひどく感じた。

 

 俺の部隊が背負った【罪】に対する【罰】ならば、それはそれでいいのかもしれない。

 

 地下へと降りてくる足音が聞こえる。

 

 一つ……二つ。二人か。

 

 今日もいつも通り殴られるかと思っていた。

 

 だが、俺の予想は裏切られ……。

 

「入れ」

 

「………!」

 

 背後から蹴りを入れられ体勢を崩す女性。

 

 霞む目を何とか開いて確認すると、地面に伏していたのはマヤだった。

 

「マ………ヤ………」

 

「そこで大人しくしてろよ。あとでたっぷり遊んでやるぜ」

 

「………」

 

 マヤは動じず、静かに兵士を睨みつけている。

 

「……ちっ」

 

 兵士は小さく舌打ちをした後、階段を昇っていった。

 

「……どう……して―――」

 

「……」

 

 マヤは口に人差し指を当て、小さく笑った後、メモに何かを書き出す。

 

 少しして紙を破り、こちらへと差し出した。

 

『あなたが心配だった。皆心配してる。皆の代わりに私が見に来た。』

 

 と書いてある。

 

「……すまない。この通りどうしようもない状況さ」

 

『気にする必要はない。私達はあなたを助けることが出来なかった。』

 

「…………マヤ」

 

 マヤは、ポケットから小袋を取り出しこちらへと渡してくれた。

 

「これは……?」

 

 彼女は、開ければ分かる、というような表情でこちらを見た。

 

 恐る恐る開けると、中にあったのは小さいブロック状のクッキー。

 

 食料だ。何日ぶりの食事になるだろうか。クッキーを口に入れると、ほんのりとした甘さがたまらなく美味しく感じる。

 

「……美味しいな。こんなに美味しい飯は久しぶりだよ」

 

 微笑むと、彼女はニッコリと笑い返してくれた。

 

 久々の食事は俺の脳を活性化させ、再び生きる気力を吹き込んでくれた。

 

「ありがとうマヤ。……さて、そろそろ動くか」

 

「………?」

 

 不思議そうな顔をするマヤ。

 

「ああ。そろそろ、ここを抜けださないとな、って」

 

 すると彼女はニヤリと笑った後、メモを差し出す。

 

『私もただ普通に捕まったわけじゃない。もう手は打ってる。』

 

「え………」

 

 

「うわぁああああ!?」

 

 彼女の言葉に驚いている瞬間、叫び声と共に階段から兵士が転げ落ちてくる。

 

「なんだ……!?」

 

「なんだと言われたら、そりゃあ俺たちに決まってるだろ?」

 

 牢屋の前に立ったのはジャックさんたち擁護派のメンバーだった。

 

「皆……!?」

 

「ったく。世話かけすぎなんだよ、バカ」

 

「とか言ってますけど、ムゲンさんがいない間、アルマさんが一番心配してましたよ」

 

「う、うるせえ!!ジャック!さっさと鍵開けろ!!」

 

 恥ずかしさを隠すように彼女はジャックに叫ぶ。

 

「あー。わかってるって……っと。これだな」

 

 牢屋の鍵が外され、ゆっくりと扉が開く。

 

「………よし……行こう」

 

 左腕を抑えながら、牢屋を抜け出す。

 

 しかし、抜け出せたはいいものの、いつ兵士が来るかがわからない。

 

 階段は一つしかない。運が悪ければ鉢合わせしてしまう。

 

「よっしゃ。急ごうぜ」

 

 小さな声でジャックさんが言う。

 

 

 その時は運がよく、なんとかバレずに逃げることができたが、追手がいつ来るかは分からない。

 

 とりあえず一度彼らの隠れ家に身を隠し、これからどうするかを決めることになった。

 

 一方の俺は、隠れ家につくや否や、ベッドに寝かされて横になって話を聞いていた。

 

「さて、どうすっか」

 

「………どうするも何も、逃げるしか……」

 

 思えば彼らに事の内容を説明していなかったのを思い出す。

 

「……皆。聞いてくれ」

 

 体を起こし、皆のほうを向く。

 

「どした?ムゲン」

 

「実は、話していないことがある」

 

「話していない事?」

 

 それから、俺は事の内容、そして、トリントン基地を攻撃するに至った理由を説明した。

 

「………なるほど」

 

「で、ムゲンたちの部隊は攻撃してきたってことか……」

 

「ああ」

 

「それで?これからどうする?」

 

「………まずは、基地にいる兵士の誤解を解く事からだ」

 

「誤解を?」

 

「そうだ。俺たちの信頼は、そんな簡単に消されていいはずがない。繋がりは……断ち切らせはしない」

 

「……ムゲン」

 

 全員が黙り込む。その静寂を切り開いたのは俊太郎だった。

 

「そうですね。俺も手伝います!」

 

「俊太郎…」

 

「ムゲンさんの気持ちは良くわかりました。俺も力になれますか?」

 

「………もちろんだ」

 

「そりゃあいいな!俺も手伝ってやるぜ!」

 

 続いてジャックさんが

 

「繋がり……か。お前って、ほんとバカだよな」

 

「アルマさん……」

 

「バカだけど、まあ手伝ってもいいかもな」

 

「……!」

 

 彼女は照れながら目を逸らしながら呟いた。

 

 肩をトントンと叩かれる。

 

「……マヤ…?」

 

「手伝うよ。私も。」

 

 皆の気持ちが心に染みた。

 

「ありがとう……。皆!」

 

 

 次の日、俺たちは分かれて行動することになった。

 

 俺はジャックさんと行動し、彼らの誤解を解く事に集中した。

 

「………ムゲン!?どこに行ったかと思えば……ここにいたか」

 

 兵士の一人がこちらを睨みつける。

 

「…話を聞いてほしい」

 

「ああ!?裏切り者の言葉なんか―――」

 

「まあ、いいじゃないか」

 

「てめぇ!裏切りを庇うってのか!?」

 

「話くらい、聞いてやれよ。コイツの目、マジだろ?」

 

 ジャックの真剣な眼差しが兵士たちを黙らせた。

 

 俺は、言葉を続けた。

 

「基地の攻撃は誤解だ。俺たちの部隊が故意に行ったことではない」

 

「何?そんなわけ―――」

 

「本当だ。話を聞いてほしい」

 

「……」

 

 彼らの沈黙が続く。俺は静かに口を開いて続きを説明する。

 

「グロリアスが基地に着艦した後、見知らぬ兵士たちが俺たちの艦を乗っ取った。人質は幼い子供と部隊長だ」

 

「射殺する意思がある証明としてリナ・ハートライトとリリー・クリーヴズを射撃しようとした」

 

「それを庇いダイチ・トクナガが負傷。リナ・ハートライトは隙を見てなんとか艦を抜け出し保護された」

 

「人質を取られてしまっては彼らの要求に従うしかない。……だから、攻撃した」

 

「………そして、今彼らがしていること、それは俺たちの名を騙り、罪もない一般市民から金を奪うという行為」

 

「この基地を、俺たちの部隊が傷つけたことは否定もしないし、申し訳ないと思っている。それでも、分かってくれ」

 

「俺は……何もしてあげられなかった。どちらにも……」

 

 その場にいた全員が、地面を向いて目を伏せた。

 

「………仲間は許してほしい。俺は、どんなことをされたって構わない。君たちの仲間を傷つけたことは変わらないのだから」

 

「………そういうことだったか」

 

 兵士の一人が呟いた。

 

「え……」

 

「どうりで不自然だったわけだ」

 

「どういうことだ?」

 

「だって、あの時、お前は出撃してこなかった。しかも、MSを攻撃したのは()()M()S()だけだった。本当ならニュータイプだって出撃するであろう場面でだ」

 

「………」

 

「俺、信じてみようと思う。ムゲン・クロスフォードを」

 

「……ありがとう……!!」

 

 その兵士の言葉を皮切りに、次々と賛同の声が上がる。

 

「あのムゲン・クロスフォードが頭を下げたんだ。俺も信じるわ」

 

「俺も……信じてもいいかもな」

 

 歓声が上がる中、その情景を見たジャックさんが

 

「案外、簡単だな」

 

 俺は、素直にジャックさんに感謝した。

 

「ジャックさんのおかげですよ」

 

「俺は何もしてないがな?」

 

「いえ。あなたの真剣な眼差しのおかげです」

 

「へっ……そう言われると照れるじゃないか―――ムゲン!あぶねえ!!」

 

「なっ!?」

 

 瞬間、俺の前へジャックさんが立ちふさがり、手を広げた。

 

 銃声が響き渡る。

 

 その音で、さっきまでの歓声が一瞬にして消えた。

 

「ぐ……ムゲンは……やらせねぇ………」

 

「ジャックさん!!」

 

 彼は震える手で銃を取り出し構える。彼の背中で何も見えない。

 

「へ………へへ……俺は昔……凄腕のスナイパー……だったのさ」

 

「喋っちゃダメだ!すぐに体を―――」

 

「いけねぇなぁ…。ムゲン」

 

「え!?」

 

 彼はこちらをチラッと見て、二っと笑って見せた。

 

「敵が……居なくなるまでが………戦争……だろ。だからさ………」

 

「一発で仕留めないとなぁ!!!!」

 

 その言葉と共にジャックさんが一射。すれ違うように相手からの一射。

 

 それが、ジャックさんの左目を貫いた。

 

 反動で後ろへ倒れるところを、支える。

 

「ジャックさん!!ジャック!!!」

 

「………へへ……見な。俺の……射撃は……左目が無くても……百発百中……だ」

 

「もう、何も言わないでいい!!俺が……俺の甘さが…!油断が……!俺のせいで……!!!」

 

「お前は……甘ちゃんだからな。……その甘さで、人が傷つくかもしんねえ……」

 

「その甘さで自分が死ぬかもしんねえ……。けどよ、それでもよ……」

 

 彼は血で染まった左手で俺の頬を撫でる。

 

「それが…………お前の……()()()()なんだよ」

 

「だから………俺は、お前を守ったんだ。…お前の甘さに毒されちまってな……」

 

「…悪くねえ……死に方かもな」

 

「お、俺は………!!」

 

「責任……感じるなよ?これは……俺が行動した【()】なんだから」

 

「ジャック!!!」

 

「……悪いな。後を任せる羽目になって」

 

「…い、いいんだ。俺は……俺が…後は何とかするから!」

 

「…助かるぜ……。これなら……俺も安心して……逝けるな」

 

「もう一度………アルマを……からかいたかったぜ」

 

「……まったく、ほどほどにしないと手が出るんじゃないかい?」

 

「ははは。そうだな。……また……いつか………な」

 

 彼は静かに目を閉じ、眠るように息を引き取った。

 

 彼は微笑んでいた。彼を看取り、静かに立ち上がり呟く。

 

「……ジャック。あんたの【罰】…俺が受け継いだ」

 

 その場にいた誰もが、彼の突然の死に衝撃を受け、その行動を称賛し、悼んだ。

 

 それから、皆のおかげで第00特務試験MS隊の誤解は晴れ、再びトリントンの基地での信頼を取り戻すことができた。

 

 だが、失ったものは、取り戻せない。

 

 

「……3人とも、聞いてほしい」

 

「どうしました?」

 

「なんだよ。さっきからテンション低いな」

 

「……ジャックが……死んだ」

 

「え………」

 

 アルマさんの驚いた表情を初めて見た気がする。

 

「………どうして……」

 

「俺の甘さだ……。彼が庇ってくれた」

 

「くっ……うう……!!!」

 

 俊太郎は地面を殴りながら泣いた。

 

 それは、自分の無力を呪うように。

 

「なんで………あのおっさん……。畜生!!!」

 

 叫びながら空を仰ぐアルマさんの瞳には涙があふれていた。

 

「…………っ」

 

 マヤも、静かに涙を流し、彼の死を悲しんだ。

 

 泣きたい気分にもなった。それでも、泣かなかったのは、きっと彼の【罰】を一生背負っていく意志の表れだったのかもしれない。

 

 

 その夜、俺は久々に【彼】と再会した。

 

「………久しいな。ムゲン」

 

「ああ。久しぶりだな。道夜」

 

 カカサの話を聞いた道夜も、トリントンへと戻ってきていた。

 

「…状況はどうだ?」

 

「まあ、誤解はなんとか解けたかな」

 

「そうか。流石だな」

 

 彼からの言葉は、今の俺には追い打ちのようなものだった。

 

 大切な何かを失っても、手にするものなのか……?

 

「お前のせいじゃないさ」

 

「道夜……?」

 

「話は聞いてる。お前を庇って誰かが死んだんだろう?」

 

「………ああ」

 

「お前のせいじゃない。お前は前を向け。それが死んだ奴への償いだ」

 

「………ああ。前を向くことが、前へ進むことが俺のできる償いだ。……だが、あれは俺のせいだ」

 

「ムゲン……」

 

「俺のせいだからこそ、彼の【罰】を背負って前へ進む。それが彼への償いであり、俺への【罰】だ」

 

 俺の【罰】はきっと、【()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()】なのかもしれない。

 

 そして、数々の【罪】を重ねた俺を救ってくれた人たちに【()()()】いかなければならない。

 

「甘さも、俺の弱さも、罪だ。だが、それでも俺は前へ進む。この両手で出来る事なんか限られてるから」

 

「……お前は会うたびに成長しているな」

 

「そんなことないさ。俺は、まだ変われていない」

 

「……皆そうさ。俺も、ユーリも、リナもな」

 

「…世の中上手くいかないもんだな」

 

「……まったくだな」

 

 彼と共に月を見上げた。そして静かに時間は過ぎていく。

 

 

50 完

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