機動戦士ガンダム虹の軌跡   作:シルヴァ・バレト

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宇宙世紀0095、新章突入となります。

これから起きる新たな戦い、そして、ムゲンに新たな可能性が……?

いまいち本調子ではないため、少々短いですが、楽しんでいただけたら幸いです。

全体を通して、戦闘の描写が少ないかもしれません。

それでは、機動戦士ガンダム虹の軌跡新章―After the war 0095―をお楽しみください!


―After the war 0095―
61:謎の男


 宇宙世紀0095.5 あれから二年。俺たちは、連邦軍として仕事をし、家に帰れば孤児院の経営。そんな繰り返しの生活をしていた。

 

 嫌ではないし、むしろ充実している。

 

 前の大戦から二年もの月日を経ても、世界は変わらず、むしろ連邦は増長した。

 

 そして、ジオン残党を少しずつ倒していくという日々が続いたある日、俺とリナ、そしてエトワールはファングに呼び出されたのであった。

 

 

「急に呼び出してすまないな」

 

 司令室に入るとファングは早々にそう言った。

 

 赤い髪を後ろにまとめ、赤い瞳は力強さを感じる。

 

 彼は昔からそれほど変わらず、カッコいい。

 

「気にすることじゃないよ。それで、用って言うのは?」

 

「ああ、それはリナが来たら話そう」

 

「……どうして私まで」

 

 仏頂面でエトワールは言う。

 

「まあまあ、良いじゃないか。別に叱られるわけじゃないんだし」

 

「あなたは少しは真面目にしたらどうですか。本当、昔から変わってないんですから」

 

 そう言って、彼は俺を見ながら溜息を吐く。

 

 薄い青の髪が揺れ、細い目に細い眉が彼の凛々しさを際立たせた。

 

 どうしてこの部隊には美形な奴が多いんだろう。

 

「ははは、ごめんね」

 

「………まったく」

 

 少しした後、司令室の扉が開き、失礼しますの一言と共に女性が入ってくる。

 

「来たか、リナ」

 

 ファングはゆっくり立ち上がり、彼女を見た。

 

「はい。少し整備のほうが遅れてしまって」

 

「ああ、構わないさ。さて、それじゃあ説明するか」

 

 ファングは俺たちを見た後、一拍開けて口を開く。

 

「俺たち先日から対応しているジオン残党は知っているな?」

 

「ええ。第二次ネオ・ジオン抗争後、地上に残ったジオンの再興を掲げて連邦にしつこく攻撃してきている人たちですよね?」

 

 ファングは頷いて続ける。

 

「そうだ。その残党のアジトと思わしき場所へ攻撃を仕掛ける事になった。そこで、俺たち第00特務試験MS隊もこの作戦に参加することになったんだ」

 

 ということは、そのメンバーとして俺たちが選ばれたのだろうか?

 

 その言葉を発する前に、リナが言う。

 

「じゃあ、そのメンバーとして私たちを……?」

 

 ファングは首を横に振ると

 

「いいや。逆だ」

 

「逆……ですか?」

 

「お前たちにはこの基地で留守を頼みたいんだ」

 

「留守番…ですか」

 

「ああ。本来ならムゲンを連れてくのもいいんだが、毎度毎度彼ばかりではと思ってな。だから、今ここにいるメンバー以外でジオンのアジトを叩く」

 

「そうですか。かしこまりました」

 

 エトワールは静かに頷く。

 

「ムゲンは、何かあるか?」

 

 ファングは俺を見て聞いてくる。俺は首を横に振って答えた。

 

「いいや、特にないよ。無事に帰ってきてくれよ」

 

 すると、ファングはふっと笑って

 

「何言ってるんだ、お前の上官だぞ。当たり前だ」

 

「ああ、それとだ、一応、予備のジェガンをここに残しておく、いざという時はそれを使ってくれ」

 

「俺が使っていいのか?」

 

「お前以外にいるのか?エトワール"は"機体を大事に使うからな」

 

 その言葉でリナとエトワールが肩を震わせくすくすと笑う。な、なんかムカつくな……。

 

「エトワールはってどういうことだよ!俺だって好きでそういう風になってるわけじゃないんだよ!?」

 

「ははは!分かってるさ。ま、そういうことだ。後は頼むぞ。それじゃ、解散だ」

 

 ファングとの会話を終え、司令室を後にする。

 

 

「ムゲン」

 

 リナの声で振り返リ彼女を見た。長い銀の髪を帽子の中に入れ、作業着を着ている。瞳には二年前と違い、強い決意を秘め、それでいて優しさを感じる雰囲気。

 

 これが今の彼女。トクナガさんが亡くなって、整備長という立場をしながら、アウロラの面倒、さらに孤児院の経営を手伝ってくれて、本当に頭が上がらない。

 

「リナ、どうした?」

 

「ううん。ちょっとだけ、話したいなって」

 

「ああ、構わないよ」

 

 俺は彼女に微笑む。すると彼女の表情がぱあっと明るくなった。

 

「じゃあ、そこのベンチでコーヒーでも飲みながら話そっか」

 

 頷いて、俺たちはベンチに腰を掛ける。

 

「……話って言うのは?」

 

 リナはコーヒーを両手で持ち、ゆらゆらと揺れる黒い水面を見つめながら小さく言った。

 

「ううん。二人っきりで話したかっただけなんだ」

 

「……そっか」

 

「うん」

 

 沈黙。それから、ふと何かを思い出したかのように彼女は口を開く。

 

「そういえば、少し悩んでいることがあるんだ」

 

「どんなことだい?」

 

「ムゲンのために造るって言った機体……。大分形には出来てきてるんだ。でもね、何て言うのかな、机上の空論っていうかさ…」

 

「…何をそんなに悩んでいるんだい?」

 

「……難しいんだけどね、簡単に言えば、ムゲンの理想の機体を追求していくと、機体のフレームに負荷がかかりすぎて耐えられないの」

 

「ジェガンのフレームでも?」

 

「ムーバブルフレームじゃダメ。たぶん、この先もっと技術が発展する。だから、その時代でも戦える機体を造りたいから」

 

「…そうか……。ありがとうな、俺のために」

 

「べ、別に……」

 

 俺は彼女に微笑んだ。すると、彼女は少しだけ顔を赤くして、そっぽを向いてコーヒーを飲む。

 

「…それにしても、ジェガンが使ってるフレームじゃダメなのか…それ以上の物ってあるのか?」

 

 リナはうーん、と考えた後

 

「無いわけじゃないけど……この部隊ではきっと支給されることのない素材だから……無理かな」

 

「素材?機体じゃないのか?」

 

「うん。"サイコフレーム"っていうモノなんだけどね」

 

「何だ、それ」

 

「言うと思った」

 

 リナはふふっと笑った後、俺に説明してくれる。

 

「サイコフレームって言うのは、パイロットの脳波を感知するコンピューター・チップを金属粒子なみのレベルで封じ込めた新素材の事だね」

 

「……どういうことだ?」

 

「簡単に言えば、リリーちゃんが使ってるファンネル、あれはサイコミュって言うんだけどさ、あれって、かなり大きいんだ」

 

「搭載するスペースが大きいって事か」

 

「うん。そのサイコミュを小さくしたものとでも考えてくれればいいよ。そんなに難しく考えないでいい」

 

「それで、そのサイコフレームを搭載するとどんな効果があるんだ?」

 

「そうだなあ、機体の性能が格段に上がって、強度もある程度高くなるかな。何より、ムゲンが求める高機動を実現できるかな」

 

「それは凄いな」

 

「でも……」

 

 リナは少しだけ暗い表情を見せる。俺は彼女の顔を覗き込んで、続きを待った。

 

「……たぶん、あなたの体が持つかどうか……」

 

「そんなに凄いのか」

 

「うん。たぶん、ジェガンの数倍の力を出せるはず。ただ、その分パイロットへ掛かるGもかなりのものだけど」

 

「………もし、俺がそれを望んだら、君は造るかい?」

 

「え……?」

 

「それを俺が望んだら、俺の最後の機体を、君は造ってくれるかい?」

 

「…そ、そりゃあ…造ってあげたいけど……。私だって名前だけしか聞いたことないし、一般の技師に配れる代物じゃないから………」

 

「…そっか。…確かにそうだな」

 

 二人でうーん、と悩み、お互い顔を見合わせる。

 

 なんだかおかしくて、二人で声を上げて笑った。

 

 ひとしきり笑いあった後、リナは言う。

 

「……こうやって二人っきりなんて、随分久々だね」

 

「ああ、そうだね」

 

「いつまでこうやってお話しできるかな」

 

 俺は彼女に微笑みながら答える。

 

「君が望むのなら、いつまでも」

 

 リナは少しだけ顔を赤くして

 

「……ははは、なんか、恥ずかしいね」

 

「そうかな。俺は別に」

 

「まったく、これだからあなたって人は…」

 

「なんだよ」

 

「別に」

 

 それとなくそこに彼女が居るだけで安心できる。ただ、近くにいてくれるだけで。

 

 今は、それで幸せだ。

 

 リナはコーヒーを飲み干し、立ち上がって言う。

 

「それじゃ、そろそろ仕事に戻るね」

 

「ああ、何かあったら言ってくれ。手伝うよ」

 

「ありがと!行ってくるね!」

 

 そう言った後、彼女は小さく手を振って格納庫へと向かっていった。

 

 彼女の背を見送った後、俺は残っている資料を片付けるために自室へと戻った。

 

 

 

 資料を片付けた後、時間を見てみれば夕方の5時。普段よりも2時間くらい早く終わったな。

 

 一息ついた後、俺は格納庫へと足を向けた。

 

 格納庫は普段と違って静かで、リナを含めた数人の整備兵が掃除をしていた。

 

「あ、ムゲンさん!」

 

 一人の整備兵がこちらに気づいて声を上げる。すると、リナはこちらを向いて叫ぶ。

 

「あ、ムゲン!ごめんね、もうちょっとで終わるからー!」

 

 俺は周りを見渡して見る。丁度、箒があるのを見つけ、手に取って整備兵たちに近づいた。

 

「どうしたんです?ムゲンさん」

 

「いや、手伝おうと思ってね」

 

 すると、リナは

 

「い、いやいや、大丈夫だよ。これくらい、私達でも…」

 

 俺は首を横に振って答える。

 

「いいや、皆も早く帰りたいだろうし、俺も手伝うよ」

 

「そっか、ありがとね」

 

「気にしないでいいさ」

 

 そのあと、俺たちは黙々と掃除をし、30分で格納庫をきっちり掃除した。

 

「ふー……。今日はこれで終わり。ありがとね」

 

「ああ。大丈夫さ、良い運動になったよ」

 

 リナは整備兵たちに向き直って言う。

 

「それじゃ、今日はお終い。あがっていいよ」

 

 その言葉を聞いて、整備兵たちはそれぞれ頭を下げて帰っていった。

 

 普段俺に見せる事は無い、リナの表情。かつての整備長であったトクナガさんのような頼もしさが、彼女から伝わった。

 

 ふう、と一息はいた後、リナは振り返って笑顔で言う。

 

「さ、帰ろっか」

 

「……ああ」

 

 基地とグロリアスの事をエトワールに任せ、俺たちは家路へとついた。

 

 とりあえず、エトワールが居れば何とかなる。MSの操縦もうまいし、人との関係も良い。そんな彼だからこそ、任せるに値できる。

 

 

「……あれ……?」

 

 丘を登っているときにリナが声を上げる。

 

「どうした?」

 

「家の前で、誰か…いる」

 

「え?」

 

 目を凝らすと、確かに俺たちの家の前に人影があった。こんな時間に……まさか…?

 

「声かけてみよう」

 

「え……う、うん」

 

 俺は人影へと足を向かわせる。そして、その人物の背後まで来ると声をかけた。

 

「あの」

 

「はい?」

 

 振り返ったその人物は、白髪が所々生えていて、大体5,60代くらいの男性だった。

 

「ここに、何の用ですか」

 

 男性は俺を見つめると、大きく頷いて口を開いた。

 

「君が、ムゲン・クロスフォード君だね」

 

 俺は驚いて言葉を返す。

 

「な、なんで俺の名前を……?」

 

「君を、"()()()()()()()()()()"だ」

 

「どういうことです」

 

 男性は、空を見上げて考えた後、俺のほうを向いて言う。

 

「それは、明日、君たちのいる基地で話そう。邪魔をして悪かった。それではね」

 

 そう言って、男性は丘を降りて行った。

 

 それを見送った後、リナが近づいてきて

 

「ムゲン……あの人は…」

 

 俺は首を横に振るしか出来なかった。

 

 

 その日は彼の言葉であまり眠ることが出来なかった。

 

 "昔から知っている"その言葉が、俺の頭から離れない。

 

 一体、彼は俺の何を知っているのだろう。そして、どこで出会ったのだろうか……。

 

 過去の記憶をたどっても、あの人の姿が出てこない。

 

 ただ、モヤモヤとした感覚が残ったまま……。

 

 そして、時間は過ぎていく。

 

 俺は、このモヤモヤを残したまま基地へと足を運んだ。

 

 

 

61 完




新章突入です。というわけで今回登場したキャラ

名前:ムゲン・クロスフォード

年齢:31

性別:男

主な搭乗MS:ジェガン(予備機)

階級:少尉

説明

第00特務試験MS隊に所属するパイロット。

一年戦争、グリプス戦役、第二次ネオ・ジオン抗争を生き残っており、部隊と彼の名の知名度は高い。

大切な友の死を乗り越え、時代を見届ける覚悟を決めた彼に、待っているものとは。


名前:エトワール・ブランシャール

年齢:31

性別:男

主な搭乗MS:ガンキャノン(特殊兵装型)

階級:少尉

説明

第二次ネオ・ジオン抗争後、第00特務試験MS隊で戦い続ける事を心で決め、傭兵業から足を洗った。

そして、ある人物の出会いが、彼を大きな戦いへ巻き込んでいく。

余談だが、前よりも他人と関わる時間が増えたとか。


名前:リナ・ハートライト

年齢:31

性別:男

階級:技術少尉

説明

第二次ネオ・ジオン抗争にて殉職した"ダイチ・トクナガ"に代わり第00特務試験MS隊の整備長を務める女性。

前よりも何か強い決意を秘めている。

彼女が造ろうとしている新型の案が煮詰まっており、悩んでいる。
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