機動戦士ガンダム虹の軌跡   作:シルヴァ・バレト

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少女は多くの人々との出会いと別れを繰り返し、逞しく成長を遂げた。

その始まりは、一人の少年の言葉からだった。

そして今、かつて少女を救った少年は、孤独で、誰にも助けてもらえないでいる。

――今度は、私が。

決意を秘めた少女もまた、最後の戦場へと駆けていく。


72:決着―真実―

「みんなの心は一つだ。行こうぜ、ムゲン。決着を付けに」

 

「…ああ。生き残って、帰ろう。過去を伝えるだけじゃなく、俺たちを待ってくれている人たちのために」

 

 私は頷き、格納庫へと足を向ける。

 

 

 私が今ここにいる理由、それは、彼に本当の真実を私の言葉で伝えるため。

 

 先生が、先生にしかできない事があるように、これは、私にしか出来ない事。

 

 かつて、命を救ってくれたあの人を、今度は私が救う。

 

「………だから」

 

 ガンダムを見上げ呟く。

 

「だから、ネティクス、私に力を貸してね」

 

 沢山のモノを託された。

 

 数え切れないほどの人から、託された。

 

 ネティクスも、その一つ。

 

 彼を救えるかもしれないたった一つの希望。

 

 彼女は……リナさんはそう言ってくれた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 その日、ジムを無くした私に、リナさんは問う。

 

「リリーちゃんは、どうして戦い続けるの?」

 

 問いに、迷うことなく言葉を返す。

 

「救いたい人がいるからです。……前の戦闘で出てきた金のガンダムのパイロット……。ジェームスは……ずっと孤独だった。だから……」

 

「………そっか。貴女も、ムゲンと同じなんだね」

 

「え………?」

 

「大切な人の為に、今出来る事をしたい。ムゲンもそんな人だから」

 

「……先生は、特別ですよ」

 

 リナさんは首を横に振って言う。

 

「そうかな、私はそうは思わないよ」

 

「どうして…」

 

「だって、仲間じゃない。私にとっては本当の家族だし、貴女にとってはかけがえのない先生。そんな彼が、どうして特別って思えるの?」

 

「だって…先生はニュータイプで……どんな時も自分一人で抱え込もうとして……」

 

「そうだよ。誰よりも先へと進んで、自分で全て解決しようとして……でも、それが彼なんだよ。誰よりも人間らしいと私は思う」

 

「……」

 

 リナさんは私の肩に手を置いて言う。

 

「リリーちゃんもそう。何一つ、私達と違う所なんてない。ニュータイプが特別なら、それはきっと、皆の希望の光となるための力なんだよ」

 

「皆の……」

 

 リナさんは頷く。

 

「宇宙は何もない。黒い世界が広がるだけだから。その世界を先導するための存在、それがニュータイプだと私は思う」

 

「そして、ニュータイプは、誰にでも優しく、誰とでも分かり合う心を忘れない人。きっと、貴女にもできる、大切な人を想う事」

 

「リナさん……」

 

「……私はここで整備やMSを造ることしか出来ないけど、貴女は違う。……その手で人を守る力がある。…だから…」

 

 そう言ってリナさんは布を思いっきり引っ張り、私の前へある機体を見せる。

 

「…これ……は…」

 

「私が…ううん、ムゲンが託された"もう一つ"の機体。それを使って、リリーちゃんのためのガンダムを造った」

 

「……ガン……ダム……」

 

 私の前にいるその巨人は、ただ一人のパイロット、主を求め待っていた。

 

 両翼をたたみ、ただその時を……。

 

「この子の基になった子は、"歴史の裏で眠り続ける存在"。決して表に出る事は無かった機体を基にしているの」

 

「名を、"N()T()-()X()"。ネティクスってみんな呼んでいたらしいよ」

 

「…ネティクス………」

 

「貴女が救いたいと言ったガンダム、あの機体と同じ力が、この子にもある。だから、今度こそ、その子を救ってあげて」

 

「リナさん……でも、私は…」

 

「この子を造るのは私にしかできない事。でも、この子を使って大切な人を救うことは、貴女にしか出来ない。……貴女に託すよ、ガンダムを」

 

「………」

 

 ガンダムに乗り込み、システムを起動させていく。

 

 どれもこれもジムとは違って、ファンネルも、また別のモノへと変わっていた。

 

「………ガンダム……」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「…行こう、ネティクス」

 

 託してくれた人の想いを乗せて、私は、戦う。

 

「…リリー・クリーヴズ、ネティクス、出撃します!!」

 

 カタパルトから射出され、宇宙へと翼を広げたガンダムが舞う。

 

 胸に手を当て目を瞑る。

 

 そうしたら感じた。先生を、支えてくれる皆を。

 

 だから、安心できた。

 

「……今行くよ、ジェームス」

 

 恨みだけが、憎しみだけが全てじゃない。

 

 誰でもない、私の言葉で――

 

 

 レーダーにとらえる1機のMS。

 

 お互いに理解した、それが誰なのかを。

 

「…フィン・ファンネル!!」

 

 頭の中で想像して、それをそのまま反映させる。

 

 ネティクスなら、それをしてくれる。

 

 それを受け、金の一角獣は攻撃を避けながら接近。

 

 私のジムを焼いた武器を構え、放つ。

 

 あの時は怖かった、でも…今は!!

 

「大丈夫……皆が居るから!!」

 

 ビームライフルを構え、放つ。

 

 ビームがぶつかり合い、爆発。

 

 煙から抜け出し、金の一角獣は頭部バルカンを放ちながらサーベルを振りぬく。

 

 サーベルを抜いて、それに応戦する。

 

 ぶつかり合った武器は火花を散らして、宇宙へと降り注ぐ。

 

[またお前か…!!何度俺の邪魔をするんだ!!!]

 

 ジェームスの憎しみがこもった声。私は邪魔かもしれない……でも、伝えなきゃいけない。

 

「邪魔だって言われたって構わない……!でも、私はあなたに伝える事があるから…!!」

 

[黙れよ……!!あの男に……ムゲンに会わせろ!!!]

 

「……嫌だよ。私を見てよ…!!私は、あなたに助けてもらったリリーなんだよ…!」

 

[お前がリリーであるはずがない……!!リリーは死んだんだ!!!俺の目の前で!!!]

 

「違うよ!!私は生きてる!誰でもない、あなたが救ってくれたから!!」

 

[まだ言うのか…!!俺の友達を騙るなよ……!!!]

 

 腹部を蹴られ、機体が吹き飛ぶ。

 

 態勢を立て直し、ファンネルを射出。

 

 それを回避しながらビームマグナムを構え、ファンネルへと放つ。

 

 1基のファンネルが焼かれ、爆発。

 

「ぐぅっ……!!騙ってない……!私は……本物だよ!!!」

 

[認められるかよ……そんな事がさぁ!!!]

 

「あなたが認めなくたって、私は生きている!!そして、沢山の人から救ってもらった!!」

 

 ビームライフルを構え、発射。

 

 それをシールドで防御し、反撃と言わんばかりに肩部に備えられた翼からビームが放たれる。

 

 咄嗟にファンネルでシールドを形成し、攻撃をかき消す。

 

[お前も…ニュータイプだって言うのか…!?くそっ……どれだけ俺を……!]

 

「ジェームス!聞いてよ!!」

 

[お前じゃ勝てないって言いたいのかよ…!!お前じゃ救えないって言いたいのかよ!!俺を………!!]

 

「違う!ジェームス!!!」

 

 金の機体から黒い燐光が放たれ、私の心を抉った。

 

「ジェームス……!!あなたは……!!」

 

[俺に………俺に話しかけるなぁあああああ!!!!うぁああああ!!!全部俺の敵だぁああああ!!!]

 

「ジェームス!!!」

 

 

 金の一角獣を黒い燐光が包み込み、そして翼がその燐光を吹き飛ばすと、現れたのはあの時と同じ憎悪を放つガンダム。

 

「………うぅっ……!この……感覚は……!」

 

 耐えるのですら精一杯のこの憎悪。

 

 ジェームスは……たった一人で……。

 

 誰かが受け止めなきゃ……。

 

 でも……

 

「怖い……」

 

 ゆっくりと近づくフェネクス。

 

 そして、フェネクスが手を私に伸ばすと、握りつぶした。

 

 瞬間、背後からファンネルの攻撃。

 

 肩が貫かれる。そのたびに恐怖が心を支配していく。

 

「っ……ぁあ…!!」

 

[…………]

 

「ジェームス………」

 

 霞む目で、ただ彼を見る事しか……もう、私は……

 

 彼にはもう、声は届かない。

 

 ………先生……リナさん……ごめんなさい……。

 

 ビームマグナムをコックピットの前で構える。

 

「………ジェームス……私……」

 

 光が収束して……

 

 私は……

 

 静かに目を瞑る。全てを諦めて。

 

 …もう、何も……

 

 

[情けないな、その程度で諦めるなど]

 

「……っ…!」

 

 機体の中に響く声が、私を目覚めさせる。

 

「誰……?」

 

[……アイツに…ムゲン・クロスフォードに頼まれただけだ]

 

 目の前を見ると、フェネクスに立ち向かう、紫の機体が居た。

 

「……先生に……?」

 

[(しゃく)だが……お前を助けなければならない気がした。…そして、俺の目の前にいるこの機体のパイロットが…アイツの言ってたやつか]

 

「……」

 

 紫の機体が押し切り、ガンダムの腹部を蹴り飛ばす。

 

 それをシールドで防御し、間合いを取る。

 

[戦う意思が無いのに、何故戦う。何故戦場に来た]

 

 そのMSがこちらを見て問う。

 

[お前は何故、此処に居る。答えろ]

 

「…私は………」

 

「私は……あの人を……ジェームスに伝えたい……。独りじゃない事を……支えてくれる人がいたことを…」

 

 その人の顔を私は知らない。でも、その人は確かに私に()()()()()()

 

[ならば、成せ。それがお前の戦う意味ならば]

 

「……!」

 

[俺には、答えなど見いだせない。だが、お前は違う。見るべき世界、伝えるべきことがある。ならば、それを成せ]

 

[どれほど否定されようとも、どれほど痛みを受けようと。前を見ろ、そして前へ行け。振り返る必要などない]

 

「………」

 

[それが、"現在を生きる人間がすべき事"だ]

 

「あなたは一体……」

 

[………アイツと同じ、"過去の人間"だ。………行くぞ、ハデス!!!]

 

 紫の機体から赤い光が溢れ出す。でも、その光は、憎しみや、悲しみとは程遠い、"命の熱"を感じた。

 

 サーベルを引き抜いて一気に突っ込む。

 

[そのためにもまずはコイツを目覚めさせないとな……!!!]

 

 大きく振りかぶり、鍔迫り合いを誘発させる。

 

 私もビームライフルを構え

 

「……私も――」

 

[必要ない]

 

「え……」

 

[見ておけ、戦うという事を]

 

 鍔迫り合いの中、紫の機体が素早く宙返りし、サーベルを蹴り上げる。

 

 そして、宇宙へ舞うサーベルを持ち直し、一気に振り降ろして金のガンダムの左腕を両断した。

 

[その程度か、"現在のガンダム"の力は]

 

[あの男は、強かった。どんなときであろうと諦めず、俺に真正面からぶつかってきた]

 

「………」

 

[…俺も感じていた。アイツと俺が似ていることを。だが、認めなかった。認めてしまえばそこで俺の意志が折れてしまう気がしたからだ]

 

[その強情さが、アイツと"分かり合うこと"を妨げていたのなら………]

 

[こいつも同じだ……。全てを否定する強情さが、皆との繋がりを妨げる]

 

 反撃と言わんばかりにフェネクスがサーベルで頭部を切り捨てる。

 

[ぐっ……!!確かに、アイツの言う通りだ……!お前は…俺に似ている…。だがな…!!!]

 

 紫の機体が回し蹴りをフェネクスの腹部へと。

 

 それを防御するように右腕のシールドを構える。

 

[人間、同じなんてものは無い!!だから、俺は…俺だ!!!そしてお前は…!!!]

 

 素早くサーベルを抜いてシールドを両断。

 

[お前はなんだ!!!自らに手を差し伸べるものさえ跳ね除け、そのマシーンに呑まれ、それでいいのか!!!]

 

[……知った風な……事を…!!!]

 

 紫の機体のパイロットの人がふっと笑い、言う。

 

[喋れるじゃないか。……ならば問う!!お前は…何がしたい!!!恨みを晴らせればそれでいいか!]

 

[そうだ!!俺は…ムゲン・クロスフォードを…!!!]

 

 互いに間合いを取り、再びサーベルがぶつかり合う。

 

[時に感情は……人の視界までもを消してしまうものでな…!!]

 

[だからこそ、感情さえなければ戦争は無いと、あの男に言った。…だが、その時あの男はこう返したんだ]

 

[俺の知らない世界を、ジオンも連邦も関係なく手を取り合える日が来ると。彼はそう言った]

 

[それが……!!なんだ!!!そんなものは来ない!!]

 

[何故わかる?どうしてそうなる。………ますますお前が俺に見えてきて仕方がない]

 

[くっ……!!バカにしてるのか!?]

 

[…視野を広く持て、そして恨みだけに耳を、目を感性を奪われるな!]

 

[うるさい……!!!お前は……お前は…!!俺の敵だぁああああ!!!!]

 

 フェネクスが手を握ると、ファンネルが舞い、紫の機体へと迫る。

 

「危ない…!!! ……ネティクス!!お願い!あの人を……撃たないで!!!」

 

 首を振り叫ぶ。すると、ファンネルは直前で停止し、私の元へと戻ってくる。

 

[………そうか……これが――]

 

瞬間、目の前で紫の機体がビームに呑まれる。

 

「あぁっ……!!!」

 

横切ったビーム、そしてそこに居たのは赤いガンダム。

 

[…私の邪魔をしすぎだな、シゼル・クライン。お前はここまでだ]

 

 ビームの後に残るボロボロの機体。

 

[……………笑わせるな、ベルベット]

 

「……!」

 

 その機体から溢れるように赤く燃えるような熱が機体を包む。

 

[ほお、まだ生きていたか。ならば]

 

 再びビームライフルを構える。

 

[……感謝しているぞ、ベルベット。俺は、やっと見つけたんだ……。"俺が()()()()()()()が"……!!!]

 

[ふん、ならば死ぬがいい!!]

 

[……ただでは死なん………!!!]

 

 ボロボロの機体が赤い機体へと突っ込んでいく。

 

「な、なにを…!!!」

 

[…………見ておけ、命は………重いものなんだと。……………今思えば、アイツの両親を殺したことも………後悔していたのかもしれんな]

 

[無駄な事を!!]

 

 ビームを何発も放たれ、ボロボロの機体を貫くも、その機体は動じずに赤い機体へと突っ込んでいく。

 

[な……なんだ!?何故落ちない!?]

 

[………お前には……一生分からない…。この、命の熱も、優しさも。……俺は今、満たされている。だから、恐れは…無い!!]

 

 ボロボロの機体が赤い機体に組み付く。

 

[こいつ……!!!]

 

[…まさか…()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。ふっ…運命というのはつくづく……]

 

 ボロボロの機体が光を放つと、赤い機体を飲み込み、爆発する。

 

 

 

「そん、な……私は……」

 

 

 声が響く。

 

『………ムゲンの言っていることがやっと理解できた』

 

「はっ……!!ど、どこに…!」

 

『俺も変われるんだな……。"こっち"に来てやっとわかった。……あったんだな、ジオンも連邦もない……そんな世界が……』

 

『だが、この世界が此処にたどり着くまで、どれほどの時間が掛かるだろう……。―聞け、若き力』

 

 流れ込んでくる温かい命の熱。自然と涙が零れてくる。

 

『お前は"火"だ。とても微かな、今にも消えそうな火だ。だが、その火はお前だけじゃない、ムゲンも、目の前にいる男もそうだ』

 

「………せんせいも……」

 

『その火が集まり、大きな力を生み出す。……いずれ、時間が経てば皆が火を持つ時代が来る。……そうか……これが…』

 

 その人は何かを理解したようで、優しく微笑む姿が頭に浮かんだ。

 

『大丈夫だ、お前たちならば……、お前たちのような"火"が居る限り、世界は少しずつ変わっていく。………若き力よ……いいや』

 

『"ニュータイプ"よ、どうか、俺たちが知らない世界を――』

 

 その言葉を最後に、温もりは消えていった。

 

「………あぁ……!行かないで…!!」

 

 涙が前を邪魔をする。手を伸ばしても、もうその人は……

 

 でも、確かに残ったものもある。

 

 

 

[う………ぁ………。俺は………何を………]

 

「…ジェームス……」

 

[……あの人は……!あの人はどこへ……!!]

 

 金のガンダムが手を伸ばし叫ぶ。

 

 私は、私が成すべきことを……。そうですよね。

 

 私は、金のガンダムの……フェネクスの手を取って言う。

 

「……あの人は、全てを教えてくれた。私達がやることも、倒すべき敵も」

 

[……リ……リー……]

 

「…私達は、変わらなきゃ、変われなかった、あの人の為にも」

 

[本当は………分かっていた……。でも、それを理解したくなかった。君が生きていることを認めたら…俺は何のために戦っているか分からなくなったから……]

 

「もう、いいんだよ、ジェームス」

 

 ネティクスが、フェネクスを優しく包み込み、そしてファンネルが2機のガンダムを囲み、フィールドを展開する。

 

 その中で、2機のガンダムから優しい虹の光が放たれた。

 

 それに共鳴するように、フェネクスのサイコフレームが"黒から緑"へと昇華する。

 

[ああ………。俺は……君に何てことを……。いいや、君だけじゃない、ムゲンさんにもなんてことをしてしまったんだ……]

 

「…事実は変えられないけど、でも、これからは違うでしょ?……今ここから、もう一度やり直せばいい。私達は現在を生きる人間だから」

 

[………リリー……ありがとう…。俺は君に救われた……]

 

 私は首を横に振り、言う。

 

「いいんだよ、だって、私に世界を見せてくれたのはあなたなんだから。だから、今度は私があなたが知らない世界を見せてあげるからね」

 

[…………温かい……こんなにも……宇宙は……人は…]

 

「うん…。皆……この温もりを知るべきなんだよ…。あなたも、私も……現在を生きる皆が感じるべきモノなんだよ」

 

[……ああ]

 

「…そのためにもまずは、すべきことがある」

 

 

 

 爆発から抜け出した赤いガンダムは無傷同然で私達の前へと現れる。

 

[……ふん、くだらない事を…!!そんな熱がいくらあろうと…!!]

 

 背を向けこの場を離れようとする機体へ叫ぶ。

 

「………待って…!!!」

 

[……なんだ?]

 

「許せない………。命を……命は……そんなに軽いものじゃないのに!!」

 

 その男は不敵に笑いながら返す。

 

[なら、どうする]

 

「……貴方を……討つ!!!」

 

 赤い機体の前に立ちふさがりビームライフルを構える。

 

[…いいだろう、相手になってやる]

 

「ファンネル!!!」

 

 片手を上へ上げる。宇宙へファンネルが舞い、赤い機体へと迫る。

 

[小賢しい真似を!!]

 

 ファンネルの射撃を回避しながらこちらへ突っ込み、サーベルを振るう。

 

 それに合わせサーベルを抜いて応戦した。

 

「くっ……!!」

 

 ぶつかり合い、火花を散らす。

 

 私はもう、誰も傷つけさせない……。大切な人も、目の前の命も!!

 

「だから……!!!ネティクス!!!」

 

 言葉に呼応してファンネルが射撃。赤い機体は間合いを取って射撃を回避する。

 

[その想いがあろうと、世界は変わらんと言っている!!]

 

 再びサーベルとサーベルが激しくぶつかり合い火花を散らす。

 

 間合いを取りながら、ビームライフルで牽制。

 

 続けて、シールドミサイルで相手の位置を誘導。

 

 すかさずサーベルで斬りに行く……が。

 

 赤い機体はそれを受け止め、さらに空いた右腕でビームライフルを放つ。

 

 受け止めているサーベルを蹴り飛ばし、その勢いで宙返り。

 

「それでも……!!」

 

 宙返り中にスラスターを起動。機体が相手を正面へ捉えた瞬間、一気に詰め寄る。

 

[ちっ!!!こいつ!!!]

 

 サーベルでビームライフルを切り落とし、怯んだ隙に左腕を切り落とす。

 

「これで――――っ!?」

 

 振り上げようとした右腕が、何かに撃ち貫かれた。

 

[残念だが、リリー、君はここまでだ。もう一度研究所へ送ってやろう]

 

「っ……!!」

 

 周りを複数の機体が囲む。その感覚は、あの時、施設で感じたものそのものだった。

 

 暴力的で、恐怖を感じる……。私は……。

 

 その手がネティクスに触れようとする。

 

 恐怖で手が動かない……。

 

 誰か………。助けて……。

 

[大丈夫、今度はもう、君を独りにはしないから]

 

 触れようとしていた手は、一瞬で焼かれ、目の前で爆散する。

 

「ジェームス………」

 

 フェネクスのサイコフレームが強く輝く。その光を見ているうちに、私の中で消えかけていた炎が蘇ってくる。

 

[………今度こそ、二人で……、終わらせるんだ!!犠牲になってしまった、施設を抜け出すことのできなかった子供たちのためにも!!]

 

「………分かってる、分かってるよジェームス。私達はもう、独りじゃない!!皆が、皆が背中を支えてくれている!!」

 

[そうだ、この熱が、胸に残るこの感覚が、世界を変えるんだ!!]

 

 二機のガンダムから発せられる虹の光。その光が周囲の機体を包み込む。

 

[くっ……!この熱がいくらあろうと……!!世界は変わろうとしなかった!!]

 

「そうやって答えを急ぐから……!!!」

 

[急がねばならないだろう!人は所詮生きて100年ぽっちだ、だから急ぐのは当然だろう!!]

 

[何故、一人で全て片付けようとする!人は、一人だけじゃ生きていけないのに!!]

 

[変わろうとしなかった人間が居るからだ!!だから私が変える!!]

 

「それは……違う!!!」

 

 ファンネルが私の想いを受け取り動く。それを赤いガンダムが回避していく。

 

 そこを的確にフェネクスがビームマグナムを放ち射撃。

 

[未来は…明日を信じるものだけが造れるものだろ!!!]

 

[信じていなかったお前が言う事かよ!!!]

 

 赤いガンダムが回避するも、あまりの威力に足に傷をつける。

 

[確かに信じれなかったさ!けれど、お前のいう事よりは世界は信じることが出来る!!]

 

「今は確かに、変わってないかもしれない。けれど、10年後、100年後にはきっと、皆が分かり合える世界が来るって信じたい!!」

 

[信じてどうなる!!どう変わる!!所詮言葉だけで、世界は動きはしない!行動を見せてさえ変わらなかったんだぞ!?]

 

[…それでも……!]

 

 フェネクスがビームマグナムを投げ、トンファーで切りかかる。

 

 合わせるように私もサーベルで切りかかった。

 

 赤いガンダムはそれを両手で受け、対応する。

 

[ぐっ……!!]

 

[それでも、変わるって信じたいんだ!俺たちは……!!!]

 

「私達は……!!!」

 

 

[「明日を信じてる!!!」]

 

 

 二機の攻撃を弾いて、間合いを取る。

 

[ぐっ…………!たかが2機のガンダムごときに……!!]

 

 赤いガンダムは背を向け離脱していく。

 

[待て!!!]

 

「……ジェームス、いいよ今は。……次こそ、彼を討とう」

 

 私は彼を制止すると、フェネクスはこちらを向いて言う。

 

[………分かった]

 

「…とりあえず、先生の所へ行かなきゃ。……たぶん、あっちも決着はついたはずだから」

 

[…………気まずいな……]

 

「大丈夫だよ、先生も分かってくれるから」

 

[……そうだといいけど……]

 

 私は目を瞑り、先生の感覚を探る。

 

 この宇宙に光る、結晶体のような感覚――

 

 

「……居た…」

 

[……行こう、リリー。本当の決着を付けに]

 

「うん」

 

 私は胸に手を当て頷く。

 

 

「……ありがとう、名も知らないパイロットさん。……私は、世界を照らす火になってみせるから…!」

 

 どうか、この世界のどこかで見ていてほしい。

 

 

 私達の生きる世界を。

 

 

 

72 完




ついにここまできてしまいました。
次回、ベルベットとムゲンとの決着の時。

話数的には来週の話で終了となるので、年内には作品が完結という事になります。
多くは語りません、どうかその目で、最後を見届けてください。

来週は虹の軌跡上・下を公開し、作品の完結とさせていただきます。
それでは皆さん、最後までよろしくお願いします。
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