彼の言う言葉通り、戦いは無くならないだろう、だがそれでも、人々は信じていく。
未来という、可能性を、いつか来る戦いをせずとも分かり合える世界を信じて。
ここに、ムゲン・クロスフォードとそれに関わるものたちの"その後"を示し、
この物語の幕を閉じる。
燃え盛る市民街を抜け、地下の施設へと辿り着く。
静かに銃を抜き、廊下を歩く。
恨みもあったが、私も、彼が本当に悪なのか、それは分からないと思う。
でも、だからこそ、この決着は、つけなければいけない。
崩れ行く施設の中で、その男は待っていた。
「…………ベルベット・バーネット」
「何故、来た。ここに」
私は銃を構え、彼に言った。
「あなたに、伝えたいことがあってここに来ました」
「……伝えたいことだと?」
「そうです。……私は、あなたに
「礼……だと…?」
「あなたが取った行動のおかげで、私の家族、皆の進むべき世界は変わってしまった。ですが、私は感謝しています」
「………何故…」
「あなたが行動しなければ、この道を歩くことは出来なかった。あなたがいなければ、私はずっと独りだった」
「…俺は……お前とお前の両親を離れ離れにした張本人だぞ…?お前は……」
「……多くの人と出会い、多くの事を知れたこの道を歩めたのは、貴方が私を両親と離れさせたからです」
「だからこそ、お礼を言いたい。……私の人生を変えてくれて、ありがとう」
「っ………!」
「私は、貴方を"
「世界があなたを否定しても、私はあなたを赦す。世界を教えてくれたあなたを」
「…………そんな事を言われたのは、生まれて初めてだ………」
「ですが、貴方が私の仲間にしてきたこと、多くの罪のない人々への行為、それは許されることではありません。だから、けじめをつけましょう、ベルベット」
「…好きにするがいいさ。どのみち、"もう遅い"」
「それはどういうことです」
彼はにやりと笑い、言い放つ。
「ニヒリティは…俺の手を離れたのさ。…後は、アイツの好きに動くだろう」
「……!」
「どうなるだろうなぁ……?
「…………良いんです。もう、貴方は罪を重ねなくて。……だから……おやすみなさい、ベルベット・バーネット」
私は、静かに銃の引き金を引いた。
地面に倒れる彼に呟く。
「……止めましょう、貴方のために。……人は死んでまで、罪を重ねる必要はないですから」
この時、私にとっての戦いに、一つの区切りがついた。
宇宙に輝く虹とニヒリティを優しく抱く翼の生えたガンダムを見て、私はそう確信した。
宇宙の声、そして彼の温もりを感じながら。
「……ムゲンさん、あなたは……」
彼が、私と両親を繋いでくれた。
だから、今度は私が……
「ムゲンさん、こんな事で……リナさんに笑われますよ!!!早く目を覚まして!!!」
誰も、こんな結果は望んではいない。私も、道夜様も…!!
だから、彼はまたここに戻ってくる義務がある。
私も、彼も……まだ、全てを見届けてはいないのだから。
私の期待通り、彼はちゃんと目覚め、リナさんの元へと戻ってくれた。
……それでいいんです。
…それから私は、軍人で居続ける事を選んだ。
もう、ムゲンさんや道夜様と同じ道を歩めなくとも、私が出来る事をしていくと、心に決めたから。
そして私は、第00MS遊撃部隊へと名を変えた部隊で、副隊長として戦っていくことになる。
……けれど、その話はまた別のお話。
私の役目は、ここまで。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その虹は、アクシズを押し返した時と同じ光。
暖かく、優しい光だった。
でも、それを発している人は、先生で……
先生がこのままどこか遠くへと言ってしまう気がして………
ただ一心不乱に叫んだ。
「先生ぇ……!!逝っちゃやだよ……!!!先生ぇ!!!!」
私を独りじゃないと言ってくれた、かけがえのない人が、消えていきそうで
「お願い……ネティクス!!!先生を……!!先生を繋いで…!!!」
でも、ガンダムは応えてくれない。
まるで、その景色に
「動いて!!動いてよ!!!!先生が…!!先生が!!!!」
[リリー]
フェネクスが優しくネティクスを包み込み、言った。
[大丈夫、あの人は必ず帰ってくる。そう約束してくれた]
「でも………」
[信じよう、あの人を]
「……………うん」
大丈夫………どんな時でも、先生は私を助けに来てくれた。
大丈夫だって言い続けてくれた。
だから、今度は私が待たなきゃ…。
大丈夫って言い続けなきゃ…。
先生………リナさんが待ってるよ……。
手を組み、目を瞑って想う。
先生が無事であることを。
信じる事も、戦いだから…。
声が――聞こえた――
[……帰ろう……家に……]
「先生!!」
私は先生を手のひらへ乗せ、コックピットに入れた。
「……リリー……」
「先生!おかえり……!本当に…!!」
「……ああ。ただいま」
この時、私には違和感を感じた。先生が、前と違う事、その違和感に。
でも、その違和感は、地球へと戻って確信へと変わる。
「………先生……今、なんて……」
先生は頭を掻きながら言う。
「…ニュータイプとしての能力が無くなったらしいんだ」
普通は在り得ない事だ。でも、あの時、あの場所で起こったことなら、不思議と納得がいく気がした。
何て言えばいいかわからないけど、私はなんだか悲しくなった。
「そうなんだ……。先生は…私とは一緒じゃなくなったんだ…」
「違うよ、リリー。俺もリリーも人間さ。何一つ違う所なんてない。唯一違うとすれば、それは男か女かってことくらいさ」
先生はあの時と同じ笑みを浮かべそう言った。
「……」
リナさんも言っていた
『リリーちゃんもそう。何一つ、私達と違う所なんてない。ニュータイプが特別なら、それはきっと、皆の希望の光となるための力なんだよ』
…なら、今度は先生に代わって私が"
「……先生」
「ん?どうした?」
「…私、先生みたいにうまくできるか分からないけど、頑張ってみる。私は、私なりのやり方で、皆の希望の光になって見せるから!」
「………リリー」
先生は私を優しく撫でると
「本当に……成長したな、リリー」
「……ぜんぶ、先生のおかげ……。ジェームスと再び出会えたのも、私がこうして前を向けるのも…全部」
「違うよリリー。俺は手助けをしただけ、全て君が行動した結果なんだ。君が行動したから、君が変わり、ジェームスと出会えた」
「………先生……」
「行こう、ファングから話があるらしいから」
先に歩き出す先生。私もあわてて彼へとついていく。
大丈夫、もう先生が居なくても、私は、"
「先生!待ってよー!!」
虹が見せてくれた奇跡は、私にとって変わるきっかけだったのかもしれない。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
格納庫の中で、彼の無事を祈った。
モニターでとらえたその映像を見て、直感的に私は、ムゲンがどこかへ行ってしまうんじゃないかと感じた。
何故だかは分からない。でも、アクシズの時と同じ光が、ムゲンから発せられていたからなのか、そう感じてしまった。
「………神さま……お願い、最後のお願いだから……!ムゲンともう一度……会わせてください…!」
ただただ目を瞑りながら祈る。
私は戦うことは出来ないから……、こんなことしか出来ないけれど……。
でも、もし彼が帰ってきたなら、誰よりも上手に彼を受け止める。
それが私の役目。彼を受け止める事が、私の最後の役目。
「ムゲン」
「大丈夫だよね、貴方はいつも、どんな時だって私の所へ帰ってきてくれたもんね。……だから今度も必ず…」
私は信じてる。彼を……、そして、私が造ったガンダムを。
レゾナンスならきっと、彼を連れ戻してくれる。
彼は、ちゃんと戻ってきてくれた。
怪我一つなく、私の前へ。
ネティクスから降りてくる彼を見て、私は涙が零れた。
格納庫では歓声が上がっている中、彼は私に気づいてこちらへと歩いてくる。
「リナ」
そう言って、彼は私を抱き寄せ
「ただいま」
受け止めようと思っていたのに、逆に抱きしめられてしまって……。ああ……私は…。
私は、出来る限り精一杯の笑顔で、彼に返す。
「……おかえり……ムゲン」
涙で濡れた顔で、きっとムゲンには複雑な表情にとらえられたかも……。
地球へ戻った後、ムゲンのニュータイプとしての能力と驚異的な回復能力が失われていることが発覚した。
みんな驚いていたけど、たぶん、エヴァとレゾナンスが持って行ってくれたんだと思う。
もう、これからは、彼は戦うことは無いのだから。
虹が起こした奇跡は、ムゲンから余分なものを消してくれた。
丘に風が吹き、抜けていく。
久々の自宅、私は、ムゲンを待っていた。
一緒に家に入るために。
外はもう真っ暗で、夜空に星が瞬いている。
そして、ゆっくりとムゲンが歩いてくる。
「遅いよ!ムゲン!!」
久々の帰宅で、とてもワクワクしているからか、彼にそう言った。
「ああ、ごめんごめん。………なあ、リナ」
「どうしたの?」
彼は歩みを止めると、私の前へ立ち、膝をつく。
「ど、どど……どうしたの!?」
慌てる私に、ムゲンは何度も深呼吸してから、ポケットから小さな箱を取り出した。
「……アウロラが生まれてから、本当の家族にはなったよね。けど…これがまだだった」
ムゲンが箱を開くと、そこにあったのは小さな指輪。
…私が憧れた、結婚指輪。……え…?
「え……っと…。リナ……いいや、リナ・ハートライト。……お、俺と……結婚してくれ」
「え…………」
あまりに突然な事でどう答えて良いのか分からなくなる。
でも、返さないと。私が本当に望んでいたことを。
「……うん、ずっと……ずーっと待ってたよ…」
「それじゃあ……」
私は頷きながら答えた。
「わ、私なんかで……よければ。よろしくお願いします」
その言葉を聞くと、ムゲンは立ち上がって私を抱いて言う。
「お前じゃなきゃダメなんだ。………リナ、ずっと俺の後をついてきてくれてありがとう。…これからは、"一緒に歩いて行こう"」
「……!!」
その言葉で、私は理解した。
私はやっと、"
お母さん、私今……とても幸せです。
私、生まれてよかったよ、お母さん。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
グロリアスの帰還報告を聞いて、やっと、俺は心から安堵することが出来た。
クロノード、見てるか、アイツは見届けたぞ。戦いの果てを。
「………ふっ……。やっと……終わったな」
フィアが隣に並び、小さく呟く。
「ああ………。これで、戦いは終わるさ。…たぶんな」
「形はどうあれ、ラプラスの箱も開かれた。…後は、若い人たちが変えていくさ」
「……そうだな。…なら、俺もフィアも終わりにするか」
フィアは肩を竦め言う。
「バカ、私の戦いはまだ終わらないさ。あの子が立派に成長するまでは、な」
俺は小さく笑って
「……そうだったな」
フィアは、あの戦いの後、学校の教師として、仕事を始めた。
担当する科目は、"
実際に戦って来た者だからこそ、伝えられることもある。
だから、俺は許可を出した。
一方の俺は、相も変わらず商会の仕事をする日々が続いていた。
戦争は一区切りついても、街の修復や、各地での火種の消火など、まだまだやることは沢山ある。
……俺も、まだまだ休めなさそうだ、クロノード。
ルナは、変わらず医者を目指している。
クロノードと出会って、少し変わったとすれば、その目標が父ではなく、皆へと変わったこと。
アイツと会ったことが、あの子にとって変わるきっかけだったのなら、俺たちが強引に縛り付けていたのかもしれない。
クロノードの死というものに、誰よりも執着していたのは俺たちだったのかもしれない。
「……ねえ、カカサおじさん」
ルナが机のほうを向きながら言う。
「ん?どうした」
「実はさ、私ね、父が亡くなってたこと、知ってたんだよ」
「え……?」
「でも、あの時会った父も、私が知っている父と同じ"感覚"だった」
「だから、本当に、天国から私に真実を伝えるために来てくれたのかも。そう思うんだ」
「…………何故、黙っていたんだい」
ルナは手を止め、俺を見て言う。
「皆が悲しそうにしたからだよ。ムゲンおじさんも、カカサおじさんも、お母さんも。だから、知らないふりをし続けてた」
「だって、皆が悲しむことは、私だって望んでないもん」
「………そうか……」
「でも、嬉しかったよ」
「え…?」
ルナは笑顔で俺に言う。
「私を想ってくれて、黙っててくれたんだもん。カカサおじさんには感謝しきれないよ。学校まで作ってもらって」
俺は首を横に振りながら
「俺は、クロノードと約束しただけだ。俺なりに世界を見届けるってさ。皆のための灯台を作る。それが、俺の見届ける形」
「……立派だよ、カカサおじさん」
……何だか泣きそうになった。その真剣な瞳が、クロノードそっくりで。
「…………ああ」
気づけば、俺は休暇を取り、ある場所へと向かっていた。
ニューヤークの、少し小高い丘。
そこで眠るあるやつに会うために。
辿り着いたころには、既に外は真っ暗で、今日は綺麗な満月が空に昇っていた。
丘の上にぽつんと建つ墓に背を向け座る。
「……よお、相棒。とりあえず、俺の中で一区切りついたから、会いに来た」
丘を過ぎていく風が、近くに育った木の葉を揺らす。
「お前は……元気してるかよ。………ムゲンも、戦いの果てを見届けたぜ、やっぱり、お前が認めた男なだけあるよな」
「……俺も、俺なりに頑張ってんだ。……でも、アイツよりも過酷な道だわ。……疲れるよ、代わってほしいくらいな」
月が、墓を照らす。
背中に温かさを感じる。
ああ………分かってるよ、相棒。
……俺たちに言葉はいらない。
そこにいる、そうだろ、クロノード。
虹は、俺に奇跡を見せてくれた。
人を信じる事を、そして、大切な相棒を。
「もう少し、頑張ってみるわ」
墓に白い花を置き、軽く手を振って、別れる。
今度は、本当に全てを見届けてから、彼と会おう。
――全てを超えた、その先で
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ファングに集められた俺たちは、全員がファングの言葉を待っている。
彼は見回すと、声を上げた。
「……本日付で、第00特務試験MS隊は、全ての任を解かれ、解体されることになった」
「……なんだって……」
ざわざわと声が上がる。
「上層部の意向だ。新たに宇宙世紀100年を迎えるにあたり、新たに部隊を編成しなおす必要があるらしい」
「…そこで、俺は新しい部隊を預けられることになった。部隊名は"第00MS遊撃隊"。各地の争いの火種となる存在を未然に潰す、そのために設立された部隊だ」
「だが、俺は、この部隊の部隊長にはならない。……もし、お前たちが戦い続ける意思があるのなら、誰かやってみないか、部隊長を」
誰も手をあげるものなどいなかった。当然だろう、ファングほどのカリスマを持ち合わせる人物などなかなかいない。
だが、その中、一人の女性が手を挙げた。
「私、やりましょうか?」
「ユーリ……!?」
俺の隣に立つその女性が言った。
「ファングさんにはそれなりにお世話になりましたし?まあ、誰も上げないなら、私が、と思いまして」
「……いいのか、ユーリ。かなり過酷だが」
ファングが問うとユーリはにっこり微笑み言う。
「ええ、問題ないですよ。私も、私なりに頑張ってみますんで」
その瞳は、決意に溢れていた。何かを覚悟しているような…そんな目。
そして、第00特務試験MS隊は解体。それと同時に、リナと俺は除隊となった。
フユミネは全ての役目を終えたと言って、翌日にはトリントンを後にした。
後日、孤児院の前で、俺とリナの結婚式が行われた。
こんな服を着る日が来るとは思わなかった。
白いスーツを着て、鏡の前へ立つ。
「似合ってるな、ムゲン」
道夜が背後から茶化してくる。
「……似合ってるかなぁ……」
自分ではあまり納得いかない。
「……似合ってる。間違いない」
俺の肩に手を置き微笑む道夜。
「なら、いいさ」
「ついに結婚か、ムゲン、リナと仲良くな」
「なんだよ、急に。……まあ、分かってるよ」
「ああ。そうだな、当然の事だったな」
先に俺は道夜に指示された位置で立って待つ。その隣で、道夜も静かに待った。
エトワールが、オルガンの代わりのピアノを弾き始めると、背後からリナとファングが歩いてくる。
リナは、純白のドレスを身に纏い、何というんだろう………すごく、綺麗だ。
そして、俺の隣に立つと、ファングは俺たち二人の前へ立ち
「ごほん。……これより、新郎、ムゲン・クロスフォードと、新婦、リナ・ハートライトの結婚式を挙げる」
「早速だが、誓いの言葉を」
俺はリナのほうを向き、口を開く。
「……リナ、君と出会って、もう17年という時間が経った。その間、よく俺についてきてくれたね」
「多くの戦いを超えて、俺たち二人は、アウロラという子供にも恵まれた。時に傷つけあって、お互い、ボロボロになった時もあった」
「けれど、君は、ずっと俺を愛してくれた。だから、これからも、ずっと一緒に歩んでほしい」
「リナ、もう一度言うよ。……俺と、結婚してください」
それを受けて、リナは一拍置いた後
「ムゲン、私は、貴方と出会って愛し合ってから、こんなにも長い時が過ぎていたなんて思いもしなかったよ。だって、貴方と居る時はどんな時よりも代えがたいものだったから」
「お母さんを喪って、閉ざされた未来を開いてくれたムゲン、貴方には感謝してもしきれない。苦しい時もあったし、本当にあなたを恨んだ時もあった」
「けれど、今は、貴方が此処に居てくれて、本当に嬉しい。私でよければ、よろしくお願いします」
俺とリナは手を取り、皆のほうを向いて言う。
「私達は、私たちは、本日お集り頂きました皆様の励ましや祝福のおかげで、今日この場所に立つことができました」
「お互いをいたわり尊敬し、笑顔に満ちた家庭を築けるようふたりで努力していくことを皆様の前で誓います」
ファングのほうを向き直ると、ファングは涙を流していた。
「……大きく…なったな……お前たち……」
「ファング……」
「……道夜、頼む」
道夜は頷き、ファングへと指輪を渡す。
そして、リナはユーリへ手袋とブーケを渡した。
「さあ、ムゲン。お前の手で」
頷き、ファングから指輪を受け取る。
そして、リナの左手の薬指へと指輪を通す。
「…では、今度はリナが」
リナも頷き、俺の左手の薬指へと指輪を通した。
二人が指輪をはめるのを確認すると、ファングは
「じゃあ、二人とも、誓いのキスを」
「………なあ、ファング……」
「ん?どうした」
流石に人前でするのには抵抗があった…。
「や、やらなきゃダメかな……」
「んー……。ダメだな」
ばっさり切り捨てられる。
分かったよ……、やればいいんだろ!!!
俺だって男だ、やってやるさ!!
俺は、リナを見つめる。
リナも、かなり緊張しているようで、ガチガチに身体が固まっている。
「分かるよ、リナ。俺も同じ気持ちだ」
心臓がバクバクと鳴る。今には破裂しそうだ。
「……わ、私……どんな戦場もムゲンと一緒だと怖くなかったけど………、こ、こ、これ……それ以上に緊張してるかも」
「ああ……。俺もだ…」
皆、その時を待っている。…待っているのは分かるんだが………。ええい!!!
俺は彼女を抱き寄せると、唇にキスをした。
「んっ!!…………ふふ…」
あぁ……恥ずかしい…。凄い見られてるし……。
リナは地味にうれしそうだし……。
もう色々な感情が混ざって、俺でも訳が分からない。
しばらくして、俺はゆっくりとリナから離れる。
すると、ファングが高らかに宣言した。
「おめでとう!これでお前たち二人は本当の家族になった!!本当に…おめでとう!!!」
皆から歓声が上がる。
それから、カカサが用意したカメラで、全員と記念撮影をして、夜更けまでパーティーが行われた。
子供たちも幸せそうで、なにより、リナも幸せそうだった。
誰もが寝静まったその丘で、俺は月を見上げていた。
「………」
「まだ寝ないのか。せっかくの初夜だぞ」
道夜が静かに横に座りながら言う。
「……眠れなくてね。…道夜はどうしたんだい」
「いや、そろそろここを発とうと思ってな」
「そうか、道夜も部隊には残らないんだっけ」
「ああ。………お前も知ってるだろうが、俺にも時間は残されてないからな」
「……悲しいな。俺なんかよりも、道夜の強化人間としての力を奪ってくれればよかったのに」
道夜はふっと笑って
「無茶を言うな。お前のガンダムは神じゃない。あのガンダムがしたのは、お前の未来への背中を押しただけだ」
「………」
「でも、俺は後悔してない。この道でなければ、きっとお前たちとは出会えなかった」
「道夜………」
「なーに、二人で話してるんですかぁ?辛気臭いですよー?」
俺と道夜の肩を掴んでユーリが割って入る。
「ユーリ…!?君も寝てなかったのか!?」
「……はぁ……まったく…」
「ええ。……あ、そういえば、随分久々ですねえ、3人でゆっくり話すなんて」
「……そういえばそうだな。……あれからもう17年か……、お互い、歳を取ったな」
「そうだね。………長かったよ、ここまで来るのに」
「そうですかね?私は結構早いと思いましたけど」
「…まあ、感じ方はそれぞれだろう」
「それにしても、ついにムゲンさんも結婚しましたねえ…」
ユーリが空を見上げながら言う。
「…そ、そうだね」
「……そういえば、これからは皆それぞれ別のほうへと進む事になるんですよね」
思えばそうだ。ユーリは新たな部隊の部隊長となり、道夜はきっと一人で……。
皆、みんな変わっていく。仕方のない事だけど、少しだけ寂しいと思う。
『申し遅れました、私はユーリと言います、そしてこっちの弄り…ゲフンゲフン』
『…八雲道夜だ…』
部隊に来て、初めて声をかけてくれた二人が、彼らだった。
『俺は、ムゲン・クロスフォード。よろしく』
『えぇ、よろしく、ムゴンさん』
『…よろしく』
それからもう17年。本当に彼らとは長い付き合いになった。
「………思えば俺も、お前たちとこんなに長い付き合いになるとは思ってなかった」
「それは私もですよ」
「……俺は、お前たちと出会えて本当に幸せだったぞ」
「何ですか急に。気持ち悪いですね」
「………そういう気分なだけだ。後気持ち悪くは無いだろ」
「ヘケケ」
「なんだその笑い方。お前こそ人の事言えないぞ」
「……やっぱり、ユーリと道夜も変わらないね」
二人を見てそう思った。
この二人だけは、きっと変わらない。
道夜はゆっくり立ち上がり空を見上げ、口を開く。
「昔、こう言ったのを覚えているか、ムゲン」
「ん?」
「"俺は信じてる。人が、ニュータイプが世界をいい方へ変えていってくれると"って」
「ああ、覚えているよ。二人で甲板で話したよね」
「…俺は最近、こう思うんだ。ニュータイプではなく、人間一人一人が自分が成すべきと思ったことを成せば、世界は変わっていけると」
「……そうだね。人が…人間だけが未来を作れる。だから、きっと皆がすべきことをすれば、世界は変わるよ」
「………来るといいな、そんな時代が」
「来ますよ、絶対に」
ユーリは立ち上がりそう言った。
「ユーリ……?」
「私達が歩んできた道は、それは見せられない所も沢山ありますし、言葉にしきれない事も沢山あります。けど、その軌跡を語り継いでいけば、きっと……」
「…そうだね、信じよう、これからの時代の人々を、若き力を」
三人で見上げた空には、沢山の星が輝いていた。
道夜は俺たちのほうを見て言う。
「…………そろそろ、俺は寝るとする。お前たちも早く寝ろよ?」
「ああ、おやすみ」
背を向け去っていく道夜の背中を見ながら、俺は叫ぶ。
「道夜!!」
「…どうした。"俺は此処に居るぞ"」
手を上げそう言った。
「…………ああ、また……明日な」
止めることは出来なかった。何故だか。……もう、会えないかもしれないのに。
「ああ、
道夜はゆっくりと丘を降りて行った。
「…………」
「さて、私も寝ますかね。……それじゃ、ムゲンさん、おやすみなさい」
「ああ。お休み」
三人が別々の道へと歩いていく。
それは、これからの事を意味しているようにも見えた。
翌日、道夜とリファーストは、トリントン基地から姿を消した。
それから、二度とその二人の姿を見る者はいない。
快晴の空を見上げながら、アウロラと話をしていた。
「ねえ、パパ」
「うん?どうしたの?」
「私、将来の夢、決まったの!」
「お、どんなことがしたいのかな?」
「私、
天使のような笑顔で、その少女は言う。
「……そうか、良いんじゃないかな。でも、パパやママのお話は、アウロラが思っている以上に辛いことも苦しい事もあるんだよ?」
「うん!でも、全部書いて、皆に知ってもらうんだ!こんな人が生きてるんだって!」
「…………そっか」
アウロラは少し考えた後、俺に問う。
「ねえ!パパ!!」
「ん?どうした?」
「私の名前の意味って何なの?」
「アウロラの名前の意味?…ああ、教えてあげるよ」
ワクワクしながら俺の答えを待つ少女。
その姿は、かつて俺が恋をした少女そっくりの表情をしていた。
ああ、そうだ、この子は
世界をまんべんなく照らすことのできる虹。
「君の名前の意味はね、虹って意味なんだ」
「虹……?」
「虹は、どんな位置からも見ることができるだろう?そして、その輝きは、心を癒してくれる」
「君には、どんな人にも平等に光となって欲しい。だからアウロラと名付けたんだよ」
アウロラはゆっくり俺の言葉を理解すると、笑顔で言った。
「そっか!私は虹なんだ!!パパ!いい名前を付けてくれてありがとう!!」
空を見上げれば、そこには七色に輝く虹が掛かっていた。
そうだいつだって、俺たちを、この虹が照らしてくれている。
忘れはしない、俺が歩んだ道を――
この、"虹の軌跡"を。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
分厚い本を閉じ、窓から抜けてくる風を感じる。
あの日も、今日と同じような涼しい風が吹いていた。
………あの夜、私は今までに見たことのない虹を見た。
その光を発する人が、父さんだったと理解できた。
理由は分からない。けれど、その一瞬の出来事で、私は父さんの過去を知った。
9歳の私には理解できない事もあったけど、今思い出せば、理解出来る事ばかり。
……だからこそ、本にした。
時代に埋もれ、消えていく命を、戦うという事で語り継ぐのではなく、
完成までにはとても時間が掛かった。最初の頃は文字もまともに書けなくて、よく母さんに注意されたっけ
きっと、本を手にして読んだ人の大半は、作り話だと、そう言うだろう。
それなら、それでもいい。ただ、こんな人がいたんだと、理解してくれればそれで。
世界はあれから変わっていった。けれど、戦争自体は無くなることは無かった。
…悲しい事だけど、父さんたちがしてきたことに、ちゃんと意味はある。そう信じたい。
椅子から立ち上がり、軽く本を撫でてから外へ出る。
外は既に夜で、見上げれば綺麗な月が輝いていた。
月から視線を外し、星を見ようとした。
その時、幼いころに見た同じ虹が輝いているのを見つけ、私は驚いた。
父さんや母さん、私が歩んできた歴史は、宇宙世紀の中の一部に過ぎない。
けれど、それでも、その中で必死に生きて、戦い続けてきた人がいる。
そんな人々を語り継いでいくことが、私の戦い。
そう思わせてくれた虹を――
だから私は、この本の
"虹の軌跡"と
機動戦士ガンダム虹の軌跡 終
お疲れ様でした。これにて機動戦士ガンダム虹の軌跡は完結となります。
ハーメルンに投降したのが2年前なんですが、物語を書き始めたのが4,5年前なので、随分と昔になりますね。本編のみで74話、外伝を含めれば97話…随分書いたと自分でも思います。そしてなにより、完結できたことが嬉しいです。
休止していた時もあったので、後半かなりグズグズな文章だったとは思いますが見ていただきとても嬉しく思います。
ムゲン達はこれからも宇宙世紀を生きていくのでしょうが、彼の戦いを記したこの小説はここまでとさせていただきます。次の作品を書くにしても、もう彼らを使うことは無い……と信じたいですね。
と、まあ雑談が過ぎましたが、ここまで見続けてくださった読者の方、本当にお疲れ様でした。見苦しい文章や表現もあったかと思います、それでも皆様の見てくれた記録と、感想が何よりの励みになったことは間違いありません。
今後、投降するかはまだ分かりませんが、また投稿を始めたら是非、見てやってください。
それでは、ここまでお付き合いしていただき本当にありがとうございました。
長くなりましたがこれにてあとがきを終わりにさせていただきます。