とある魔術と科学の情報操作《インフォメーション・オペレート》 作:新名樺太守
―――翌7月21日。
ここは、名医
そこに久遠隆盛はいた。二次災害で葬られてはいたが・・・
「大丈夫かい?」
「いえ、全く。寧ろ、見舞いに来て入院期間を伸ばすまで怒られるとか」
「あはは、愛されてるね?」
「(てめぇの目は節穴か。あれは全自動殺戮マシーンだろ)」
全自動殺戮マシーン。またの名を
「ところで君の右腕のことなんだけどね?」
隆盛は自分の
「運んできた人がちゃんと右腕も持ってきてくれればこういうことにはならなかったんだけど、流石に僕にも無いものは治せないんだよ」
「いや、これだけしてもらえれば十分だ。礼を言う」
そんな時、マナーモードになっていた隆盛のケータイが揺れた。
「ここって出ても?」
「ここは防音防電磁波の個室だからね。大丈夫だよ?」
「んじゃ失礼」
ピッ
隆盛は通話ボタンを押した。
「どーした佐天さん」
「あ!久遠先輩!あの、白井さんが!えと、私が
「すまんが佐天さん。もうちっと意味の分かるように日本語を勉強してから話してくれないか?つーかまず落ち着け。深呼吸だ、深呼吸」
かなり焦っているのか、テンパっているのか、佐天の話しはゴチャゴチャしてて意味が通じていなかった。ケータイからは佐天が言われたと通りに深呼吸をしているのか、息を吸う音と吐く音が聞こえていた。
「落ち着いたか?」
「は、はい!」
「んで、状況を説明して」
「はい。実は、とある学生が
今度は非常に分かりやすかった。日本語だ。
「ん、分かった。今からそこに行く。何処だ?」
「はい。場所は―――」
そして、通話は終わった。
「行くのかね?」
「あぁ。そのまま退院だ」
「もう、何を言っても無駄そうだね。分かった。でも、何かあったらちゃんと来るんだよ?」
「さぁな」
___既存
___座標(***,***,***)に
次の瞬間にはいなかった。
「やれやれ。最近の若者は血気盛んだね?」
カエル顔の医者の呟きだけが木霊した。
とある解体工事の決まっていた廃墟ビル内でのこと。
「足音は・・・聞こえない」
それは只の油断でしかなかった。
「まだ一階にいると思っていますのね・・・」
「見ぃつけた」
ゴフッ!!
痛々しい音を鳴らして黒子は吹っ飛んだ。
「ここは俺たちの溜り場の一つで、中のコトは隅々まで知ってんのよ。それに・・・よく響く」
ヒュゥン!
黒子はこれ以上追撃を掛けられたら堪らないと思い、また一つ上の階に
その追い込まれた様子を見て、
鬼ごっこ・・・と、称すには少々性質タチの悪い鬼ごっこも、段々と階を上がるにつれて、既に負傷している黒子の体力も限界に近づいてきた。そして、屋上を抜いた最上階である五階まで追い詰められた黒子。
鬼ごっこは終わりだと言わんばかりに蹴りを入れようとしたとき、振り上げられていたその脚を
「あぁん?なんだテメェ・・・」
「第18学区風紀委員会本部所属、学園都市超能力者序列第2位」
「せ、先輩・・・ですの?」
もう一撃を食らうだろうと身構えていた黒子が、弱弱しく顔を上げる。
「それから、てめェが今蹴ろうとしていた奴の先輩。久遠隆盛だ」
それまでは、
「人様オレの大事な後輩に手ェ出してンじゃねェぞ!三下がァ!!」
「はん!テメェもコイツと同じようにくたばりやがれ!!」
掴まっている方の脚を力ずくで解放させ、今度は逆の脚で隆盛に攻撃をしかけた。が、
「なっ!?」
右の
「
「だけど、それがわかったところで」
「てめェの負けだ」
「あぁん?」
「第2位オレを怒らせた時点で、てめェの負けは確定だ。三下」
___既存
「知るかよ!!」
ボキィ!!!
蹴りを入れたはずの自身の脚がありえない方向に曲がったのを最後に、激痛と恐怖によりその
―――7月24日。
ここ数日、久遠隆盛はIndex-Librorum-Prohibitorum。通称、
そして、この日も『アイテム』の女子4人組とのファミレス一席、“朝から晩まで占領パーティ”なるものに出席しなくてはならなかった。つまり、久遠隆盛は、他の
「・・・っていうことだったんですよ!って、皆さん超聞いてますか?」
「結局、隆盛の奢りのサバ缶が最高って訳よ」
「何言ってんのよ。シャケ弁でしょうが」
「(いやいや、鯖の味噌煮くらい自分で作れよ。シャケ弁は・・・千歳川からでもとってくるか?)」
「・・・北北西から信号が来てる」
ファミレスで駄弁っている『アイテム』の面々は好きなように各々ぐーたらしていた。
「久遠さん!」
「ん?何だ最愛」
「今度、
「あぁ・・・いいけど」
ガッツポーズの最愛。クエスチョンマークの隆盛。そして、
「大丈夫だよ、くどう。私はそんなくどうを応援している」
最愛のB,C級映画趣味に付き合わされる隆盛を哀れんでいる滝壺がいた。
ピロピロピロピロリ~♪
「・・・オレか」
隆盛の電話だった。
ピッ
「はい、もしも」
『先輩ですの?実は佐天さんが、
「結局、オレは何処に迎えばいいんだ?」
最近の若者は、テンパると説明が下手になるのか。どうも本題までに時間が掛かりそうな勢いだったから、隆盛はズバッと切り込んだ。その横で、フレンダは「それ!私の口癖!」的なことを叫んでいるが、今は気にしない。
『第10学区にある原子力実験炉の近く・・・とまで言えばよろしいですの?』
「分かった。んで、そこの状況は?」
『
「今から行く」
ピッ
「と、いう訳だから、ちょっくら出掛けてくる。金は置いとく」
___既存
___座標(***,***,***)に転送テレポート
残された『アイテム』の面々が何かを言う時間を与えることもなく、その場から消えていた。
場所は変わって、第10学区原子力実験炉前。
そこで、世にも珍しい
ビリビリッ!!
電撃を放つ御坂。それを“一度”に複数の能力を使って対抗する木山。
「どうした?複数の能力を同時に発動させることは出来ないと踏んでいたのか?」
「そうね。少なくとも私の知っている
「なるほど。1万人の脳と超能力者とはいえ脳の数が1人分では、差が出たか」
そう呟くと、自分が巻き込まれるのも構わずに能力を使い続ける。その能力によって道路は崩れ、木山も御坂も下に落ちた。
しかし、
この状況からして、木山春生が使った能力であると思われた、道路の崩壊は御坂の救援・・・もとい、侮辱された隆盛の八つ当たりに近い攻撃だったのだ。
そんな時、隆盛の声だけがその場に響いた。
「おい、木山とやら。
「アンタ一体何処にいんのよっ!?」
ヒュゥン!
「それに対してお前は、
しかしどうやら、プッツンとキレている様子でもない。
「だが体内に直接
「
「・・・そうか」
「あぁそうだ。それにしても1万人もの脳をジャックしてまで、一体何がしたかったんだ?元AIM拡散力場制御実験の研究者さん?いや・・・」
問われる木山の顔が強ばる。
「暴走能力の法則解析用誘爆実験の元研究員・・・の方が正しいか」
今日の風は少々強い・・・
久遠隆盛、御坂美琴、木山春生がいるその場所では沈黙が続いていた。そのきっかけとなるのは、当然さっき隆盛の言ったあの台詞である。
『暴走能力の法則解析用誘爆実験』
これは研究内容はAIM拡散力場制御実験と称して、被験者のAIM拡散力場を刺激し暴走の条件を探る為の実験であった。AIM拡散力場制御実験だとしか知らされていなかった現在の
ちなみにこれは、隆盛の所属している『アイテム』のチームメイト、滝壺理后の能力である
「何故君がそれを知っている」
「おっと、余計な詮索は命取りだぜ木山春生。何、オレの知り合いよりちょっぴりだけ深い関係にある奴の中にその“暴走能力の法則解析用誘爆実験”で得られた恩恵を受けている奴がたまたまいたっつーだけの話だ」
「(暗部・・・か)」
今のボヤかされた話を聞いただけで、木山はある程度、隆盛の立場を理解したようである。しかし隆盛は、そのことを分かっているようで、木山の目が若干開かれたことに気がついても特に気にした様子はない。
この2人の話に全くついてこられていないのが、この場のもう1人の
___既存
___
『おい、御坂。声を出すなよ』
御坂は突然脳内に流れた隆盛の声に体がピクリと反応したが、声を上げることはなかった。
『オレは今、お前の脳内に直接
『分かったわ』
それだけの会話を済ませると、動いた。
___現在、
___既存
ヒュゥン!
「なっ」
木山の背後に回った隆盛は、そのまま、
___現在、
___既存
羽交い締めにし、
「御坂!」
「分かってるわよ!」
___現在、
___既存
一緒に直接放電した。
バリバリバリバリ!!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「な、何だったのよ・・・今の」
「観られたのか・・・」
「木山春生の記憶の一部が、さっきの電撃を放った際の電気がオレや御坂、それから木山春生の間に回線を作って見えたんだろ。っていうか、オレも発電系能力者になれるんだから、お前の助けいらなかったよな」
「うっさいわよ」
「つーか御坂。お前発電系能力の
「・・・・・・いいからアンタは黙ってなさい!!」
ビリビリビリ!!
「はん!残念だったな。オレは今、10億Vまで対応可能だ」
「なら!その10億Vより強い電圧なら無理ってことよね?」
「何なら、ベクトル操作に能力を変えて戦ってやろうか?」
「上等よ!!」
物凄いインパクトの情報(記憶)を見たはずなのに、途中から只の喧嘩となり、不毛な争いが勃発しようとしたとき。
ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
木山の制御下ではなくなった
幻想御手レベルアッパー事件の重要参考人、木山春生との戦闘を一通り終えた隆盛と御坂は、もうこれで一連の事件の結末は見たと云わんばかりに、
「た、胎児?」
「
ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「「なっ!?」」
今度の咆哮は、衝撃波まで出した。御坂は、それにより飛んでくる瓦礫から身を守るようにして、磁力を操りバリアを形成した。
「っておい!オレも入れろよ!?」
「自分で何とかしなさい!アンタ
「んな理不尽な」
そうは言いながらも、能力を変更して対処する隆盛。
___現在、
___既存
「
などと言いつつ、ちゃっかり
それを受けた胎児(以降、
「・・・って、今度は攻撃して来ないのか」
「どうやら無闇矢鱈に攻撃してるだけみたいね」
「みたいだな。つーか、こいつホントに1万の脳みそが結集された物ブツなのか?」
そんな会話をしていると、
「御坂は、木山春生の確保を。オレは上行って
そうとだけ言い残すと、能力を
ヒュゥン!
「わわ、久遠さん!?どうしたんですか?」
「初春。お前、木山春生から何か預かってないか?」
隆盛がそう問うと、初春は「どうしてそれを・・・」と、かなり驚いた表情をしている。
「あぁ。木山春生の根っこは、『良き先生』だった。なら、学生たちをあのまま昏睡状態にしておく訳がない。となると、さっきまで一緒にいたお前に渡した可能性が高い」
「なるほど」
「んで?その使用方法は分かんのか?」
「は、はい!」
「んじゃ、任せた」
ヒュゥン!
隆盛は嵐の様に去っていく。
ガガガガガガガガガッ!!!!!
学園都市製の
ガガガガガガガガガッ!!!!!
とにかく、撃つ。撃つ。撃つ。
ガガガガガガガガガッ!!!!!パスッ
そうして、弾切れ。
「い、いやぁ・・・」
先端に目玉のついた触手のようなものが、女性
「こ、こ、こ、来ないでぇ!!」
ヒュゥン!
ボワァ!!
「何だ?助けに来なかったほうが良かったのか?」
「あ、ありがとうございますぅ・・・って、あなた誰!?学生がこんな所に何でいるのっ!」
「
「ちょ、ちょっとあなた何処に!」
「あれは化け物よ!怪獣よ!?大体戦闘そういうのは、
隆盛は、悠然と
「舐めるなよ、
確かに隆盛の言う通り、足はガタガタと震えていた。
「で、でも」
「それによ。やっぱ怪獣映画っつーのは」
ゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!
隆盛の左腕全体を覆うようにして、さっきのライトセーバー状だったものが、既に建物の柱くらいにまで膨張していた。
「
隆盛の左腕から放たれた摂氏8万度の
「すごいな・・・・・・これが
科学者、木山春生が呟く。
「そうよ。アレがその第2位。つっても、アイツが
超能力者、御坂美琴が答える。
「あれじゃあ、まさに化け物だな」
「(
2人は暫く立ち尽くすことになった。
一方の隆盛に取り残された『アイテム』は、と言うと・・・。
『この夏にオープンした 学園都市最大規模の室内プール ウォーター・パークでは ――――――――――』
「はぁ-・・・プールかぁ。結局さそんなもん出来ても、私らには関係ないのよね」
フレンダが、店内に流れる放送を聞いて愚痴っていた。
「何も好き好んで、人でごった返したとこ、行く必要もないでしょ」
「プールの方から信号が来ています・・・・・・」
「というか、何処行ってもこの時期、人がいることには超変わりないんですが」
それを聞いていた麦野、滝壺、最愛もその話題に乗っかる。すると麦野が、そういえば・・・みたいな口調で話し出す。
「そういや第3学区にプライベートプール借りっ放しだったから・・・ヒマなら行くか?」
「ホントに!?行く行く!」
「それじゃあ、久遠さんも超呼んで「わー麦野愛してるー!!」・・・・・・」
台詞を途中でぶった切ったフレンダを睨みつける最愛。しかしフレンダは、そんなことに気付きもせずに騒いで、麦野に「暑いからくっつくな」とか言われている。
という一コマがあったりした。