THE WHEEL OF FATE IS TURNING 作:まどるちぇ
「……ここは?」
クソ忌々しい声が脳裏に響いたかと思うと、気が付けば異様な空間にいた。
異様、というと少し語弊がありますね。
なんというべきか……普通。そう、普通なんですよね。
6畳一間のワンルーム。真ん中には丸い卓袱台に座布団が2枚。カグツチによくある建物や家具。そしてそこに座る私。
「あ〜〜……はい?」
認識はできる。置いてあるものがなんなのかも分かる。けれど、それらが何故自分の周りに……いや、自分が何故ここにいるのかが分からない。
コツン
姿勢を変えようと手を床につこうとすると、何かに当たった。分厚い書類だった。
「諜報部からの資料ですかね?どれどれ……『IS学園募集要項』『IS基礎教本』『IS学園校則』……?」
このIS学園というのが次の潜入先か何かなのですかね?とりあえず本部に連絡しませんと。
コンコンコン
立ち上がるが早いか、ドアをノックする音。
諜報部の方でしょうか?それとも、大家さん?
「はい?どなたです?」
ドアを開けると、スーツ姿の女性が立っていました。凛として気の強そうに吊り上がった目尻。どうやら冗談や無駄口を嫌いそうなタイプの方ですね。諜報部では見ない顔ですので、大家さんでしょうか?
「迎えに上がった。行くぞ」
「はい?迎えって……」
「まだ準備を終えてなかったのか?伝えた時間通りに来たと思うが?」
何やら睨まれてしまいました。会話から察するに、この時間にこの女性と待ち合わせしていたみたいですね。全く身に覚えがありませんが。
「すみません。すぐに準備しますのでもう少々お待ち下さい」
とりあえずこの場を丸く収め、状況を理解する時間を作りませんと。
「1分だけ待ってやろう。早くしろよ、ハザマ=クヴァル」
スーツ姿の女性はそれだけ言うとドアを閉めました。足音が聞こえないところからドアの前で待つつもりなのでしょうか。とりあえず荷物を集めてるっぽい物音を立てつつ状況を整理してみますか。
•自分は境界に落とされた。
•気が付いたらここにいた。
•IS学園というものに関係する資料が手元にあった。
•スーツ姿の女性と会う約束をしていた。
•自分は何故かハザマ=クヴァルと呼ばれている。
……なるほど。つまりはこういうことですか。
IS学園に入学して何かしらを調査してくるという世界に飛ばされた。事象干渉か、レリウス大佐の世界間転移装置のようなもので。
あの女性はIS学園の職員なのでしょう。諜報部と繋がりがあるかは怪しいですが、とりあえず彼女に連れて行って貰うとしましょうか。
「1分だ」
「お待たせしました」
分厚い資料を小脇に抱え、玄関を出る。
「……貴様、鞄は無いのか?」
「ええ。私手荷物はあまり持たない主義ですので」
「まあいい。後で学園指定のサブバッグをくれてやる。以降はそれを使え」
「かしこまりました。ええと……すみません。お名前をお伺いしても?」
送迎の車に乗りながら、名前を訊いてみる。信じられないものを見るような顔をしているところから、既に自己紹介は終えていたのでしょうね。顔が怖いですねえ。
「……次はない。織斑 千冬だ。二度と忘れないことを薦めておくぞ」
「オリムラ・チフユ……ええ。覚えました。よろしくお願いしますね、チフユさん」
色々と情報を得ながら当たり障りのない会話を交わす。ぽつぽつと話す内に目的地に到着した。
「ここがIS学園だ。今日から約3年間、ここが学び舎であり生活の場だ。私は寮長と風紀委員会の顧問を務めている。あまり騒ぎを起こさないように。と言っても、難しいだろうがな」
「え?それはどういう…………」
チュドーン
凄まじい爆発音と共に空気が震える。事件ですかね?
「はぁ。あの莫迦共が」
チフユさんがため息を吐いてこめかみに指を当てる。どうやらこれが日常のようです。
「後は一人で大丈夫ですので、チフユさんは解決に行っては?」
「そうだな。いや、ちょうどいい。着いてこいクヴァル」
その名で呼ばれるのは初めてなので慣れませんね。そして事件現場に連行される。面倒事は避けたいのですが……。
「死ねー!一夏ー!」
「お待ちなさい一夏さーん!」
鳴り響く轟音に混じり、少女の甲高い声が耳に入る。誰かを追いかけているようです。あの少年ですかね?
「
ドライブを発動させ、ウロボロスを少年目掛けて放つ。しかしウロボロスは手から離れた瞬間にボロボロと崩れ落ちた。
「…………」
「アレが貴様と同じ世界で唯一の男性のIS操縦者だった織斑一夏だ」
幸い、チフユさんには見られませんでしたか。この世界には魔素が足りてないのでしょうか?
「オリムラ……ということはチフユさんの?」
チフユさんが重々しく頷く。どうやら弟さんのようですね。そしてチフユさんの言葉を聞く限り、私が世界で2人目の男性IS操縦者。つまり他は女性ということになりますか。あの騒がしいのが何人も……想像しただけでも平和が恋しくなります。
「愚弟が世話をかけるかも知れん。教師として指導するが、目の届かぬところは姉としてよろしく頼む」
「致し方ありませんね。しかし、何故あんなに追われているのです?彼、何か悪いことでもしたんですか?」
「気にするな。その内慣れる」
答えになっていないような。しかし慣れるしか選択肢はなさそうですね。
「分かりました」
「それと、学校では織斑先生と呼べ。特別扱いするつもりはない」
「ええ。かしこまりました。織斑先生」
その後、騒いでいる3人を織斑先生が頭部を素手で掴み、騒動は終了した。