THE WHEEL OF FATE IS TURNING 作:まどるちぇ
「えー、という訳で。今日から皆さんと一緒に学ばせていただきます。諜報部の……じゃなくて、ただのハザマ=クヴァルと申します。以後、お見知り置きを」
なんやかんやあって転入手続きを済ませた後、1年2組に入れられる。
さっきの一夏さんとやらは1組なんだとか。どうせなら一緒のクラスが良いのですが、1つのクラスに例外を2つ抱えさせるのも酷だとか。特に反論もないですし、いいのですけど。
「キャー!イケメーン!」
「何々!?男がISに乗る条件はイケメンなのー!?」
「背高ーい!線細ーい!」
「一夏君と違ってミステリアスでクールな魅力ムンムンだわ!」
突然の高周波に耳を塞ぐ。この年頃の女性というのはこんなのばっかりなんでしょうか。そんな生き物がウジャウジャいる空間で生活……ため息を止める薬を作ってもらいたいくらいですね。ココノエ博士はいないでしょうが。
「み、皆さん静かに……お静かに」
担任の……
気弱そうで自身のない感じ。あまり教師には向いてなさそうですが。
三國先生は涙目になりながら生徒達を鎮めようと試みる。
しかし生徒達は一向に鎮まらない。
「すみません。僕のせいで」
申し訳ないので申し訳なさそうに謝っておきましょう。
こうして乱痴気騒ぎのホームルームは終わり、三國先生もげっそりとした様子で教室を出て行った。
ちなみに私の席は一番後ろ。この身長なら仕方ありませんか。席に着くと餌に群がる豚のように女生徒が集まってくる。
「クヴァル君ってどこの国の人?血液型は?その髪って地毛?」
「彼女とかいるの?寮の番号教えて!」
「ちょっと!抜け駆けはご法度よ!」
「一夏君との絡みの為に取材をば……」
「いや、その……」
あ〜〜……消し去りたい。イザナミさん、もう一度蒼を貰ってもいいですか?
鬱陶しさもここまで極まると清々しいですね。
敬意すら湧いてきます。全く、お仕事が終わったら特別手当をいただきませんと。
そう言えば、諜報部からのコンタクトがありませんね。てっきり私と同じく生徒か、教師に紛れ込んでいるものと思っていましたが。
いや。これだけ注目を浴びる中では流石に無理ですか。教室に入る前に接触……も、織斑先生に連れられて不可能。来るなら私が1人になった時、ですか。
1人になれると良いのですが……。
☆☆☆
「……」
色めき立つ女子の中で、凰鈴音は静かにその男を見据えていた。
ハザマ=クヴァル
確かにスラリとしていて背も高く、顔も美形。客観的に見れば一夏より女受けしそうなタイプかも知れない。
しかし、鈴音の胸中にはそうした色気のある感情は消え失せていた。
(隙がない……)
ハザマは突っ立っているだけ。それだけなのに、自分が見ている前面は勿論、もし裏に回り込んで最速の一撃を打ち込もうとシミュレートしても、碌に命中するイメージが見えてこない。
鈴音にはハザマが、一瞬実体を持たぬ幻影のように映る。鈴音の額から人知れず汗が伝い落ちた。
☆☆☆
はい。無理ですね。まるで珍獣扱いじゃないですか。廊下を歩けば大名行列。授業中は視線の雨霰。プライベートという概念が存在しない世界なんですかね?
「よお。君が転校生?」
放課後。廊下を出るとすぐに話しかけられる。
声の主は……一夏さんですか。男の声がこんなに嬉しい日が来るなんて。
「織斑一夏さんですね。私ハザマ=クヴァルと申します。以後、お見知り置きを」
とりあえず一礼。多分かなり歳下なんでしょうが、ここでは同い年ですし。
というか、私この集団で浮いてないのが不思議ですね。いや浮いてますが。レリウス大佐には感謝しておきませんと。
「あ、これはどうもご丁寧に」
つられて一夏も礼を返す。
「これからよろしくお願いします」
「おう!俺のことは一夏でいいぜ。だから俺もハザマって呼んでいいか?2人しかいない男同士、仲良くしようぜ」
いきなり距離を近付けてくる一夏さん。とても爽やかな笑顔ですね。本能的に踏みつけたくなっちゃいます。
「ええ。ですが、一夏さんと呼ばせてください。こっちの方がしっくりくるので」
「そっか。俺もなんとなくそんな気がするしいいぜ。これから皆とトレーニングに行くんだけど、ハザマもどうだ?」
トレーニング?ああ、ISとやらのですか。
暇潰しに教本を読んでおいたのでISというものがどういうものか凡そは把握できました。ユニットや礼装のようなものなのでしょう。それを使いこなす為の訓練、というわけですか。
皆というのは一夏さんの後ろにいる方々ですかね。当然ですが、全員女性。ムツキ大佐が見たら血涙を流しそうな光景ですね。
「そうですね。手続き自体は終わったのですが、私まだ疲れが残っているようなので今日は見学させていただけませんか?」
「そっか。悪い気付かなくて。じゃあアリーナの観客席で待っててくれよ」
「うぉっほん!一夏、そろそろ自己紹介くらいさせてくれないか?」
一夏さんの一番近くにいた黒髪の女生徒が咳払いをして会話に割り込む。
侍、という感じですかね?愚直で誠実で、からかい甲斐がありそうです。
「あ、ああ悪い。ハザマ、俺のクラスメイト達だ」
「篠ノ之箒。一夏の幼馴染だ」
黒髪の少女、箒さんはそれだけ言ってぺこりと頭を下げる。無口な方ですね。
「私はイギリスの代表候補生セシリア・オルコットですわ!当然ご存知なのでしょう?」
続いて金髪碧眼の女生徒が踏ん反り返るように胸を張って自己紹介をする。
この2人、中々対比的で面白いですね。
「ええ。ご存知ですよ。ええと、シチリアさん?」
「セ・シ・リ・ア・で・す・わ!」
「嫌だなぁ軽い冗談じゃないですか。そんなに怒らないでくださいよ」
「全く……」
「あの〜、僕らもいいかな?」
セシリアさんとそんな漫才を繰り広げていると、別の金髪の方がおずおずと手を挙げました。威風堂々としたセシリアさんとは逆に控えめな雰囲気を感じます。
「シャルロット・デュノアです。よろしくね」
「……ラウラ・ボーデヴィッヒ」
セミロングの金髪、シャルロットさんと気付いたら側にいた銀髪の少女が名乗った。
眼帯。銀髪。なんだか第十三素体を彷彿とさせなくもない風貌ですね。
「よろしくお願いします。いやはや一夏さん大人気ですねえ。こんな絶世の美少女に囲まれるなんて。まるで物語の主人公みたいです」
「ああ!みんないい奴だから一緒に仲良くしてくれよな!そう言えば2組には俺の幼馴染もいるんだ」
「ようやく私の出番?全く、幼馴染なら最初に紹介しなさいよね馬鹿一夏!」
今度は私の背後から小柄な少女が。腕組みをして私と一夏さんの間に立つ。
「凰鈴音よ!中国の代表候補生で一夏の幼馴染!同じクラスのよしみで仲良くしたげるわ!」
「ああ。私に熱烈な視線を送ってくださっていた方ですね。どうも」
「んなっ!?」
「へぇ〜、鈴ってハザマみたいなのがタイプなのか?」
「応援しているぞ鈴」
「鈴さん、末永くお幸せに」
「鈴、一夏のことは僕たちに任せてね」
「む。鈴よ。嫁の嫁候補の分際で浮気とは感心せんな」
一夏さんの腰巾着達が口々に私と鳳さんをくっつけてこようとします。なるほど。恋のライバルは少ない方がいいということですか。この年頃でも女性というのは怖いですね。
「ッ〜〜〜〜!アンタ達後で覚えておきなさいよ!それからハザマ!私、アンタみたいなの全ッ然タイプじゃないから!」
「それは良かった。私も生憎と子供っぽい方はどちらかと言うと好みではないので」
「ムッキー!どいつもこいつもー!」
「はっはっは!元気だなぁ鈴は」
「アンタのせいでしょがっ!」
凰さんは綺麗な飛び蹴りを一夏さんの鳩尾へクリーンヒットさせました。おお痛そう。
「立ち話もこれくらいにして、皆さん訓練へ行かれた方が良いのでは?」
約1名立っていられない者も出てきたことですし。
「あ、ああ……そうだな。また後でなハザマ」
「アンタ達も今日は覚悟してなさいよ。今宵の甲龍は血に飢えているわ」
「面白い。望むところだ」
こうして口々にコントを繰り広げながら一夏御一行はアリーナへと向かっていった。
やれやれ。私もトシですかねえ?あのテンションについていけないとは。
気を取り直してアリーナの観客席へ向かうことにしますか。場所分かりませんが。
二組なのでみくに先生です