THE WHEEL OF FATE IS TURNING 作:まどるちぇ
と思いながら書きました
「お、ハザマ。来たのか」
控室に行くと一夏さんが休憩していました。3連戦もしていれば疲れて当然ですね。
「ええ。皆様の闘いぶりを見ていたらウズウズして居ても立っても居られなくなってしまいましてね」
「へえ。そういうタイプには見えなかったけど、ハザマも案外好戦的なんだな。今は箒とラウラがやってるから、終わったら混ぜて貰えよ」
控室のモニターでは2人が激しくぶつかり合っている様が伺えます。どちらも生半可な実力ではないようですね。よく分かりませんが。
「どちらも素晴らしい腕前ですね」
「だよな。流石はドイツの代表候補生と剣道全国大会優勝者だぜ」
代表候補生……確か各国代表のIS操縦者が集まる大会、モンド・グロッソの出場選手の候補でしたっけ?なるほどお強い訳だ。それに。
「ラウラさん、でしたっけ?彼女、軍人では?」
「ああ。よく分かったな。ラウラは現役のドイツ軍だ。確か少佐だったっけな?」
ほう。私より階級が上ではありませんか。今度から上官として接するべきですかね。
「あれ程の鋭い動きは相当に過酷な訓練を積んでいる人にしかできませんから。それに、真面目そうだ」
「まあな。ちふ…織斑先生が元上官だったから先生の言うことは絶対!って感じだ」
なんだか想像に難くない光景ですね。真面目な人程からかい甲斐があるというものです。
などと雑談を繰り広げていると、どうやらひと段落ついたようですね。2人が距離を取って会話をしている。
「さて、では行ってきますね」
一夏さんに手を振って別れ、アリーナ入場口へ向かう。
コツコツと靴底を鳴らし揚々と入場口へ入ると、シャルロット・デュノアさんが待ち構えていました。巧妙に隠された警戒心を含んだ眼差しでこちらを見る。
「あ、ハザマだ。今日は見学だったんじゃないの?」
「そうするつもりだったのですがねえ。皆さんの訓練を見ているとこう……身体が疼きまして」
「へえ。そういう風には見えないけどね」
なんだかさっきも同じようなリアクションを聞いたような。
「どなたか私と対戦していただけますか?あ、肩慣らし程度なのでそこまで激しい動きはしませんのでご心配なく」
「じゃあ僕とやろっか。ちょうど次やる予定だったから。ちょっと待っててね」
シャルロットさんはそう言うと箒さん達に連絡を取って了承を得てくれたようです。
「じゃあお願いね、ラウラ」
強い警戒を乗せた言葉を最後に通信を終え、こちらに振り返る。
「それじゃあ入ろっか。ISの展開くらいは……できるよね?馬鹿にし過ぎ?」
「ええっと……はい。なんとか」
手首のチェーンに意識を向けて展開を念じると、チェーンが光る粒子になって私の身体を覆い、やがてその
「これは……何というか、ゴツゴツしていて動きにくそうですね」
「そう?むしろ他の機体に比べるとシャープで機動力特化な印象だけど……」
牙蛇は両腕と両脚にプロテクターが付いており、胴体は……ウロボロスの鎖帷子?というか、3本だけ巻き付けられている。これは、防御に期待できるようなできないような……。
腰には2本のナイフ。とても落ち着きますね。
「蛇……がモチーフなのかな?毒々しくは無いけどちょっと怖いね」
「牙蛇という名ですし、仕方ないでしょう。さ、お待たせしました。行きましょうか」
シャルロットさんを促し、アリーナへ。
☆☆☆
「それじゃあ、行くよ!」
開始の合図と共にシャルロットさんがマシンガンを取り出し、引き金を引いた。
雨霰の弾丸が一斉に襲いかかる。
『
胴に繋がっていたウロボロスを取り出し、鎖を重ねて目の前に盾を作る。キンキンと金属音を上げて銃弾は全て弾かれる。
「やるね!これはどう?」
シャルロットさんはマシンガンをライフルに持ち替え、撃つ。牙盾は強力な一撃にその形を崩し穴を空ける。
『次が来る。避けろ』
スラスターを吹かして円週のように横に回り込む。シャルロットさんがライフルの次弾装填の為に一瞬隙を見せる。
「そこです!」
ウロボロスを飛ばし、ライフルの銃身に噛み付かせる。
「!?鎖の先端に蛇が!」
「蓬閃・壱!」
ウロボロスを引き戻し、その勢いを利用して高速で接近する。
「速っ!」
「それっ!」
ウロボロスの顎を離し、引き戻し際にナイフを引き抜いて思い切り斬りつける。
「くぅ!やるね!」
「それ!ザックリ!」
ウロボロスを引き戻した手でもう片方のナイフを取り出し、斬る。
「おっと!」
しかし二の太刀は躱され、再び距離を取られた。
「すごい戦闘スタイルだね。まさか武器を狙われるなんて」
「変わっていますか?まあ、私がいた所でもこんな戦い方をする方はいらっしゃいませんでしたが」
「遠距離は今の手持ちだとちょっと不利かもね。それじゃあこれはどう?」
シャルロットさんは片手剣とミドルシールドに換装する。しかし次々と武器が出て来ますね。手持ち、ということは他にいくつか持っていると見ていい。さて、面倒ですね。さっさと終わらせてしまいましょうか。
「それっ!」
ウロボロスを飛ばすが、今度は躱される。
「今度はそっちが隙ありだ!」
シャルロットさんが盾を構えて直線的に接近する。
かかりましたね。
「蛇刹……」
ウロボロスを捨てるように手放し、四肢のプロテクターにエネルギーを溜める。
「なっ!そんな簡単に!」
急ブレーキを掛け、こちらを警戒する。放ったウロボロスは粒子となって空気に溶けた。
「来ないのならこちらから行きますよ!」
身体を前に倒し、滑るようにシャルロットさんの懐に潜り込む。
「やあっ!」
間合いに入ったところで剣を振り下ろす。しかし遅い。何より剣筋が手練れのソレに比べれば余りにお粗末ですね。サブウエポンなのでしょう。
容易く躱し、片脚をスラスターの噴出と共に勢いよく蹴り上げた。
「牙衝脚!」
碧色のエネルギーを纏った蹴りが盾ごとシャルロットさんの身体を押し上げる。
「うわぁっ!」
「まだまだ!」
ウロボロスを上空に投げ、盾に噛み付かせる。
「蓬閃・弐!」
「くっ!そこ!」
盾を換装させて消す瞬間に片手剣で直突きを放つ。
しかし。
「こっちこっち!」
「!?読まれて……」
先刻の最短で引き戻すウロボロスと違い、大きく弧を描いて旋回する軌道で接近する。剣のタイミングを外し、隙だらけの状態になったところで接近。両手のナイフで容赦なく斬りつける。
「ザックリ!ヨイショ!ほらほら次はこれを」
『あんま調子乗んな。回避だ』
「やあっ!」
「!?おおっと!」
ナイフで斬られている間、シャルロットさんは防戦一方だった訳ではなかったようですね。
盾から換装したパイルバンカーを構え、連撃が止むと同時に撃ち出した。
咄嗟に体を捻って回避。間に合わず脇腹に強烈な衝撃が叩き込まれた。
「いつつ……痛い?」
痛い?痛覚がある?痛みを感じる?魔導書であるこの私が?
「もう一発!」
痛みに混乱している私にシャルロットさんはこれまた容赦なくパイルバンカーを連射する。
痛い。とても痛い。釘を重機で撃ち込まれているような鋭く重い痛み。
痛み……なんとも懐かしい気さえしますね。
実際、釜の中ではどれ程の時を過ごしたか……っと、そもそも彼処は時という概念が。
『ごちゃごちゃ考えてんじゃねえよ。ったく、相変わらず戦闘中だってのによく回る頭だ』
蜂の巣になる前に離脱し、距離を取って両手を挙げる。
「こ、降参!降参です!参りました〜!」
「あら……案外あっけないね」
「いやぁお強いお強い。途中までは手加減して下さっていたのですか?」
「むぅ……馬鹿にしてるでしょ?」
私が拍手するとシャルロットさんは頰を膨らませる。
「いやいや。こちらは手の内を全く明かさない状態で闘ったのですから、ある程度はリードして当然ですよ。最後は純粋にISでの戦闘経験の差が勝敗を分けたんでしょう」
「いけしゃあしゃあって感じだなぁ。話してると咎める気も起きないよ。まあいいや。んじゃ、取り敢えずこのくらいにしよっか」
日が傾いていたのもあり、戦闘を終了してアリーナを出た。
☆☆☆
食堂
「いやぁハザマ強かったな!初めてでシャルにあそこまで食い下がるなんて!」
一夏さんが席に着くなり切り出してきました。
「あまり装甲が無かったのでほぼいつも通り手足を動かせましたからね。私の戦法も教えていませんでしたし」
味玉ラーメンの玉子を眺めながら適当に返答する。褐色のゆで卵というのは中々珍しいですね。どのような味なのでしょう。
「ははっ!味玉見すぎだってハザマ。そんなに気になるのか?」
「ええ。ゆで卵は好物なのですが、色の付いたモノは初めて見るので」
「食ってみろよ!美味いぞ!半熟な感じだけど大丈夫か?」
「ゆで卵ならば硬くても緩くても好きですよ」
おお!これは美味しい。まろやかな黄身と淡泊な白身に塩味のよく効いた醤油の味付けがアクセントになって……これは、ハマる!
「よっぽど気に入ったんだな。口角めっちゃ上がってるぜ?」
「おや、すみません。本当に美味しかったものでつい」
今後は足繁く通うことになりそうですね。