IS―地這い鴉の答え   作:ゲバラ

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 先ずは、感想を頂いた
“oota”さん    に感謝の意を


Mission11

 君達にはあるだろうか。

あまり物事に熱中するあまりに、己が常軌を(いっ)した域に迷い込んでいた経験は。

大概(たいがい)は白い目で見られるようになる要因の一つだが、

〚……それでこれか……〛

今がその状況だ。

 休日の学園、生徒の大半が外出に心躍らせる頃、1125号室は荷物でごった返していた。

ヴィクトルの得たセキュリティコンサルタントの地位は武装の持ち込みの全面的に許可させるため、彼は学園に来る際に使用を諦めた装備品のそれそれを全て取り寄せたのだ。

「君は外に行かないのか?」

「特に予定は無い。むしろお前は良かったのか?」

数分前、彼は男子二人、主に一夏に外出を誘われていた。

ヴィクトルがどう回答したかは言わずもがなではあるが。

「これは“仕事”の一環だからな、しょうがない」

 ……多少嬉しそうに聞こえるがな

言った彼の表情は(うかが)い知れない。

その顔はヘルメット・サングラス・防塵布、のように表現できる装備に覆われていた。

「よし、ちょっと見ていてくれ」

「……おぉ!」

ヴィクトルが操作を加えると、彼の身体が目元を除いて透過した。

消えた訳では無く結構な“揺らぎ”が見えるが、それでもかなり発見しにい事に変わり無い。

「迷彩と言うのは場所、特にバイオーム(生物群系)に合わせる事が出来れば圧倒的なステルス性能を得る訳だが、此処(学園)は言わばm単位でバイオームが変化する地域と表現して良い」

故に、

「出来る限り隠密性を高める際“合った地域”での効果は迷彩に負けるが、

 環境変化が大きい地域ではこのオーメルサイエンス製ステルス装備が効力を発する」

「お前、制服だったよな……?」

「あぁ、これが最大の利点だ。身体の各所に装備した小型装置が対象を認識して、認識範囲をその材質に関わらず透過する。従来品では専用の装備が必須だったが、これなら解除して一般市民に紛れ込む事も可能になる。確かに激しい運動をすれば再認識が必要だが――」

「相変わらず、こう言う事に関しては饒舌だな」

「あ、いや……済まない」

「怒ってはいないんだが」

「後は、その、この装備については秘匿して欲しい」

「分かった」

 ……とはいえ、もう少し友達付き合いが良くても良いよな

 何処とは知らない一夏の事を思う箒である。

 

      ●

 

 学園郊外、静かな休日が過ぎゆくそこで男三人が額を寄せる。

〚――よし、一本勝負だな?〛

〚後で文句無しだぞ〛

〚そいつは俺の台詞だっ!〛

彼らが向かうのはテレビ画面、分割されたそれには航空機が描かれている。

そして勝負に掛けられたのは今日の昼食、支払うのはこのゲームの敗者だ。

〚悪いな一夏、アレックス。伊達でこのハードを持ってる訳じゃあ無いんだぜ〛

言って、赤毛の少年五反田弾(ごたんだ だん)が一夏の後ろについた。

〚早いな。まぁ、二位になれば何とか、か〛

〚? らしくないな一夏、やっぱ環境が変わればなんとやら、か?

 ほぼ全員女子か。良い思いしてんだろうなぁ〛

〚出来てねぇよ〛

確かに、ここ最近の一夏はアレックスの訓練について行くのがやっとの状態だ。

学業と訓練以外に目を向ける暇も無い。

〚嘘を()くな嘘を! お前のメール見ているだけでも、楽園じゃないか。招待券無ぇの?〛

〚無ぇよバカ、しゃべってる暇ないぜ――!〛

一夏は機体を45度バンク、傾いたままに上方宙返りして弾とすれ違う。

〚シャンデルだと! マジか!?〛

 ……超リアル指向で現実のマニューバが再現出来るとは言え、それゆえの難しさでブレイク一つ出来ればかなり強い部類なんだぞ!

〚じゃ、後は頼んだ〛

〚俺は落とし役かよ〛

今度はアレックスが弾の後ろについた。

〚ブレイクに関しちゃ負けられないな!〛

〚回避に自信って何だよ……〛

後ろにつかれた時に行うは勿論回避。

弾は不規則な旋回を繰り返すが。

〚切り返しが甘い、簡単に追いつけるなぁ〛

〚ハイ・ロー・ヨー・ヨーか? お前ら上手過ぎだろぉ!〛

〚ISと動き方が似てるからな、どう動けば良いか大体分かるんだよ〛

 ……リアル経験値かよ……!

〚くっ、振り切れない! 被弾した!? 被弾し――〛

〚先ずは一機〛

 〚ノォォォウ! 俺のエフェクター代があぁぁ!〛

元本職パイロット相手には分が悪い、弾の健闘むなしく落された。

〚後どれ位持つかねぇ――〛

〚そう簡単に終われるかよ!〛

一夏がロー・ヨー・ヨーで接近する。

〚よし、上取った!〛

〚へぇ、なかなか……ついて来な〛

〚此処でも訓練か? やってやるぜ……!〛

 仰角でシザーズを繰り返すアレックスに一夏が喰らい付く。

ロック出来ないが、しかし振り切られない状態が続く。

 ……ここで切られるときついな

たかがゲーム、されどゲームと言った所か。一夏の全力は何処にでも向く。

〚おぉぉ!〛

今度は切り返し、下方に向く。

〚こっ、これは……なんだこれ〛

〚ダン、見とけよ。ヴァーティカルローリングシザースだ〛

 ……なるほど、解らん

垂直下降中にバレルロールするシザーズは曲芸飛行でも難度の高い技術だ。

 と、

〚兄ぃ、ご飯どうする――一夏さん!?〛

〚あ、蘭――ってヤベ!〛

機体は垂直に下降している。

〚っと、自爆かな〛

アレックスがベクタード・スラストで地表ギリギリを駆ける。

一夏が対応出来たか、それは言うまでも無い。

〚自爆落ちは最下位だろう? フゥッフッフ〛

〚俺が昼持ちかよー。っじゃなくて久しぶり、邪魔してる〛

ドアを蹴り開けた少女が動きを止める、家の中と言う事もあってか、衣服がラフ過ぎる。

そこに気付いた彼女は咄嗟に扉の向こうに下がる。

〚い、いやぁ、あの……来、来てたんですか?〛

なんだか声も変わった様な気がする。

〚あぁ、ちょっと外出。家の様子見に来たついでに寄ってみた〛

〚そうですかぁ……〛

〚蘭、お前なぁノックくらいしろよ、恥知らずな女だと――〛

〚まぁ兄妹はそんなもんだろ、よそよそしくされるよか良いんじゃないか?〛

アレックスがフォローを入れる。

〚アレックス・ストレイドだ。一夏の同級生な〛

〚あ、五反田蘭(ごたんだ らん)です〛

〚器量の良い()じゃあねぇか、五年後が楽しみだ〛

〚今じゃないのかよ〛

〚まだ青い盛りだあな。リリウムも五年後はイイ女になってて――おっと、いや、それより一夏、何処に連れてってくれるんだ?〛

〚ゑ!? いや、そのぉ……あ! 今日は五反田食堂でどうかな、蘭の作ったの食べたいなってさ〛

〚へぇっ!? あ、あの、ハイ! 頑張ります!〛

〚ちぇっ、(たっか)い料理買わせようと――〛

〚兄ぃは黙ってて!!〛

〚ハ、ハイ……〛

 

      ●

 

 五年後にはイイ女、リリウム・ウォルコットも他の生徒と同様に外出していた。

〚――ね? 良いトコ紹介してあげるよ?〛

 ……何が目的なんでしょうか、この男達は

〚はっきり言って迷惑ですわ、お引き取り頂けません?〛

〚まぁまぁ、こっちの方はもうなんにも無いよ? ちょっとした親切心さ〛

同行するセシリアが不快感を露わにするが彼らは一向に去る気が無い。

一人で来るならば“その心意気や()し”とでもして丁重にお断りする所だが、

昨今のナンパは二人でチームを組む辺り、タチが悪い。

 ……女々しい、それに引き換え……

学園は押し並べて人格のまともな人間が多くて助かる。

慕っていたリンクス(ヴィクトル)も来て彼女としては嬉しい限りだろう。

リリウムは学園の良さを再確認した、

 ……っと、そんな事を考えている場合では無かったですね

考えるものの、打開策が浮かばない。

〚それにぃ、実際解って無いだろ? こう言う時は黙って聞いてりゃぁ――〛

〚全く、礼儀の一つも知らないとは。行きましょう御姉様〛

最早無視すべきと判断する、のだが

〚ちょっとちょっと、こんな親切な紳士にシカト決め込むのかよ、あんまり舐めてると――〛

「オーウ、ウォルコットじゃあねぇか!」

 鶴の一声ならぬ、馬鹿デカイ一声が路上に響いた。

リリウムが振り向いた先には予想通り、声通りの大男がいた。

 ……ナイスタイミング、利用しましょうか

[ヴァオーさん、少し話を合わせて下さい。“ダーリン”?]

取ってつけた様に発した単語でヴァオーが状況を察した。

「早口にいってりゃ大丈夫だよな、オウオウ兄ちゃん最近どうよ?」

勿論、早口にスラング混じりな二人の会話を優男(やさお)達が理解出来る訳が無い。

〚おい、今“ダーリン”て言ってたような……?〛

〚不味いのに手出しちまったかな〛

「若き女王サマに目を付けるたぁ良い度胸してるな、一杯驕るぜ!」

言ってヴァオーは彼らに近づく。

ダーリンと呼ばれた大男が大声(一般的には、だが)を出して寄って来るとすれば、考えられるのは一つ。

〚さ、サーセンしたぁぁぁ!〛

[……効果テキメンの様ですわね、もうあんなに遠くに……]

[有難うございます、ヴァオーさん]

「良いって事よ、“昔のよしみ”だ気にすんな」

[?]

[あちらの事は口外しないと決めたじゃないですか……]

リンクス達の慣例法の様な物だ。

あちらを示唆(しさ)する事は無暗に口外すべきでないと、早くにコンセンサスが取られたのだ。

「オ? そうだったか、わりぃわりぃ。でだ、此処に居るって事は、来るんだろ?」

[はい、営業中ですか?]

仲良くやって来たイギリス姉妹だが、その理由は一致していない。

リリウムの目的は先の一件に関する情報を、そしてセシリアは、

 ……ようやく解って来た、この違和感には何らかの理由が有る筈ですわ

彼女が感じる違和感、リリウムらの奇妙なネットワークと従来から一足跳びしている機体構想、

何よりもこれまで彼らの強さが発見されなかった状況。

注意深く考えると、リリウム達は“理想的過ぎる”のだ。

セシリアは確かめるため、あわよくば彼らから学び取るため、その歩を進める。

 ……貴方達は、何者なんですの……?

 

      ●

 

 「何処の誰かと思ってたけれど、やっぱり貴方だったのね?」

あまり明るくない部屋だ。プロジェクターが用意され、現在は白い壁を映すのみであり、

「笑う門には緑の悪魔か。GAは功に焦ったか?」

「残念、今は一応フリーよ。

 そう言う貴方こそオーメルに肩入れして無い様だけど、オッツダルヴァ?」

「フン、元よりあれに従う気など無いな。メイ・グリンフィールド」

あちら側の面々が顔を揃えている。

「今回のミッションプランについては、我々“有澤(ありさわ)重工”が主動する」

言ったのは壮年の日本人だ。

有澤隆文(ありさわ たかふみ)、何故今になって貴様が出てくる」

「確かに、有澤重工は実弾系で量産可能な技術レベル。

 こちら側では完全にトップに立つ三強の一つなんだから何もせずとも利益が入る筈……」

「我々とて戦力の消耗は避けたい、こちらの日本は戦争に良いイメージが無い事もある」

だが、

「やらねばならん。予想道理だが、紛争は当該地域だけでは収まらんらしい」

 最近、妙な兵器の供給が確認されている。

それ自体は通常の携行兵器だが、一つ問題が確認されていた。

「見た目では分からないが、一定量使用すると自壊(じかい)する仕組みになっていた。

 当初は粗悪品を売りつけるグリーンカラーだと思っていたが……その銃、新品に自壊装置をわざわざ取りつけて販売されている」

この時点で、金目当ての犯行でない事がわかる。

「更に、取引相手のほとんどがマグリヴの下部に当たるクルザ系の民兵。

 マグリブに害なす意図ありと見ている」

「それで? こちらに何をさせたいんだ」

早くしろ、とまでにオッツダルヴァが促す。

「既に相手の輸送地点と考えられるキャンプと飛行場が判明している。

 我々が叩けばそれで終わるが、出来れば元から潰したい」

「こちらに喧嘩を売ったらどうなるか、示すには良い機会、って事ね?」

 目的は敵飛行データの奪取、そのためには当該地域へ人的戦力の投入が必須だが、

的確なパーツは現在別の作戦に出ている。

 ……彼、だろうな

オッツ、ではなくテルミドールの記憶に一件ヒットした。

「その人物に確認は取ったか?」

「いや、だが恐らく――」

「先ず確認してみろ、貴様らなら簡単な筈だ」

 実の所、テルミドールは一刻も早くORCAと接触したかった。

「ほぉ? 何か思う所でもあるのか」

「……私は不備のある作戦で死にたくないだけだ」

「フン、そう言う事にして置いてやる。対象に確認を取ってみよう」

この男が“企業側”である事をテルミドールは忘れていた。

「確定していない要素は排除して考える。人的戦力は国連の面々に任せる」

「と言うと?」

企業は表向きには国連軍と協力関係にあるため、事前にリークして両方面作戦を展開する。

表で有澤の機甲部隊と傭兵が、裏から特殊部隊が攻撃及び潜入をする。

「傭兵には状況を理解している人員が不可欠、()って君達に依頼を出した訳だ」

「いつもとさして変わり無い感じね。ロザリィさんも良いでしょ?」

「えぇ、アタシも競争相手が減って良い感じだし」

「独立傭兵“メリーゲート”、本作戦を受諾します」

傭兵メイ・グリンフィールド、オペレータのフランが応じた。

「“ステイシス”もこの依頼を受諾する、運んでくれるな? ファットマン」

「当たり前だろうよ」

「で、有澤隆文。目星を付けていた人間とは?」

オッツタルヴァのオペレータ、マグノリアが問いに隆文が応える。

「――ヴィクトル・グラズノフ」

 

      ●

 

 「実は、マグリブの方もきな臭くなって来ている」

[予想に過ぎませんが、動きを見た印象では両者とも国家では無い気がしますが……。

 あ、御姉様“ASパフェ”なんていかがですか?]

[な、なんて物騒なネーミングですの……]

ビッグボックスである。駅中央から少し離れているためか、雰囲気に惚れ込んだ常連の他に客をあまり見ないのが特徴であるこの喫茶店でリリウムは腰をおろしていた。

[それで、その……メルツェルさんとリリウムはまだ把握していない敵対勢力があると?]

「メルツェルで構わない。だが、未知の勢力の存在には頷けないな。

 むしろ、何処かの裏面である可能性が高い」

[まさか、何故裏切るような真似をする必要が?]

リリウムが(あん)に指し示すのは企業連内の裏切りである。

「彼らが“恒久的平和と協調ある繁栄”なんて掲げた所で何の信頼にもならない。

 君も分かっているだろう、私達や老人(企業)の汚さくらいは」

結局は己の利害が彼ら企業の判断基準、何も高尚(こうしょう)な事など無い。

「慎重に確認する必要があるだろう、先ずは学園の方だ」

 

      ●

 

 [……先ず、ISの技術を保有しているかで絞り込める]

時計は25時を指している。日本の方は10時頃になるのだろうか。

『一つ、聞きたい事が有る』

画面に表示されるエンブレム“蜥蜴”の向こう側に居るであろう男が言う。

『企業連、いや、BFFは自身を証明できるか?』

 ……手痛い所だな

王小龍は続きを促す様に黙った。

『現在、企業連としてまとまってる企業群だが、グループとして固まっているのが現状。

 そしてこちらの技術レベルに合致するGA・BFF・有澤が台頭、

 つまりは旧GAグループが連合内で台頭している。

 政治主導はオーメルからBFFに変わった。』

マグリヴ支援もそう言う事なのだろう、と彼は付け加える。

『更にこの専用機、私にとっては使いやすいが明らかに現行とは異なる設計だ。何より』

何より、

『何故BFFが所有している』

 ……これに嘘を吐いた所で警戒が強くなるだけか

小龍が心内(こころうち)で嘆息する。

[答えよう]

 企業連、正確には我々(BFF)の独占状態だが“例の博士”とのコネクションがある。

[お前のコアは467機の一つではない。新品だ]

そのための契約に掛かる困難を彼は思い出す。

[近く、更にもう一機送れる]

『リリウムに? 私の存在意義が揺らぐな』

[任務は継続して貰う]

 ……貴様の護衛対象はリリウムだけでないのだからな

[話を戻そう。確かに可能かどうかで言えばクリアと見ても良い――]

 

      ●

 

 [――ですが“もし”BFFが学園に攻撃するとしたら、ヴィクトルさんは迎撃に出ません。

  あの局面で彼が反旗を(ひるがえ)せば確実に学園は落ちていた筈です]

 ……なんで(ヴィクトル)の事は下の名で呼ぶのだろう

無難に紅茶を選んだセシリアがリリウムを見つつ、カップを傾ける。

「いつでも落とせる、とそんな示威(しい)にも見えるがな……。

 確かに、効率の悪さはBFFが忌避(きひ)する事象の一つだったな」

[妥当な所で行けば、他の国家とはなりませんの?]

「フム、それにしては目的が不鮮明だな……学園の破壊にどんな政治的思想があるのか……」

[マグリブ共同戦線の様な思想集団と見るのが自然ですね]

「元から存在する企業と見る事が出来るか。その線なら多少は候補がある」

[お聞かせ下さい]

リリウムは即答した。

「先ずIS専門企業だが、この可能性は薄いだろうな。

強いて挙げるならばフランスの“デュノア社”」

[IS製品シェアにおいては第三位の大企業ですわね]

「だが新型の開発に難航している。このままいけば競争に振り落とされるだろうな」

[他国のデータ、機体の奪取と考えられなくもありませんね]

 

      ●

 

 [……言っては見たが、リスクが割に合わんな]

それ以前に攻撃に利用した無人機を商売道具にすれば良い。

此処(学園)が落ちたとすれば、どうなるんだ?』

 ……あぁ、そう言う事か

彼の一言で、小龍の思考が繋がった。

[ISの完全な戦力化が目的やも知れん]

『あれが軍事力として利用され、ISの存在を象徴する施設が落ちたとなれば……』

[ISを軍事的抑止力として利用する恰好の口実になる]

ISを兵器として編入する事で最大の利を得るのは通常戦力が豊富で()つある程度の開発技術を持ち合わせている国家だ。その最有力候補は、

『……アメリカか』

[シリウスアーキテクツ、軍需とは異なる事を表すために分化しているが、

 アメリカ最大の経済規模を持つ総合軍事企業体“シリウスエズゼクティブス”の一員だ。

 政府との密接な繋がりを()って米国のIS研究を一手に引き受けているな]

『アメリカはISの軍事利用化を望んでいる……?』

[現在は新型の開発に当たっている所だろう]

『たしかイスラエルとの共同、そちら(イスラエル)はEGFとオーメルの勢力圏だったな』

[主にACの自動化の研究をしている企業……よりは研究所だ、

 今回の事を起こすに十分な技術力は有る。

 EGFのみでは足りない資源供給をシリウスが補ったとすれば道理も立つ]

『……出来過ぎているな。他犯偽装に使われている可能性もある』

[オーメルの得意技じゃないか]

自分で言いながら、その可能性は否定している。

[政治権力が足りていない今、オーメルが行動する事は絶対に無いだろうがな]

 『まぁ、あの程度なら何機来ても此方で対処できる。マグリブの方が気がかりだ』

[“何故こんなにも長引くのか”だな?

 こちらの戦争は少し作りが異なる事も挙げられるが、もっと分かり易い理由が一つある]

 

      ●

 

 「――“ヴェニデ”だ。名を聞いた事は?」

[いえ、御姉様はいかがですか?]

[わたくしもありませんわ]

「知っている方がおかしい情報でもあるがね……」

 南米地域の武器密輸カルテルが原型、犯罪組織上がりの勢力がヴェニデである。

「現在の行動範囲は中南米、それとアフリカの中央以南。

 しかし、実際の勢力範囲は分かっていない。所謂(いわゆる)“裏側”呼ばれる者達だ。

 マグリブ周辺及びムスリム系の北アフリカはイクバールが確保しているために手を出せない。

 いや、出せなかったのだろう。

 今、某国での活動が確認されている」

[商機は逃さぬ、と言う事でしょうか]

「恐らくは、だな。実体も目的も分からない、彼らはマグリブにも将軍にも武器を流している」

 一息つく。

「こんなところだ。解らない事は多い」

[そうですか……]

 ……切り出すなら、今かしら

セシリアが目的のために言葉を発する。

[あの、少しよろしくて?]

「何かなMs.オルコット」

[いえ、わたくしもセシリアで構いません。

 貴方達は……リリウムもですけど、その……]

彼女は迷った。なんだか聞いてはいけない様な、そんな感覚にセシリアは襲われた。

「“何者か”だね。勘の鋭いお嬢さんだ、聞きたいかい?」

[は――]

「本当に? それがどんな結果を引き起こしても?」

[ぅ……]

「少し、もう少しだけ考えて欲しい。

 それでも意思が変わらなかったら、一人で此処に来ると良い」

[……分かりましたわ]

 

 二人が帰り、静かになった店内でメルツェルは未だに動かなかった。

「メルツェル」

「……ジュリアスか」

影に隠れるように居たジュリアスが声を掛けた。

「どう思う、彼女(セシリア)を」

「将来有望な生徒だな。それ以上は何も」

「少しな……」

 ……予感がする。セシリア・オルコット……彼女はやがて大きくなる

彼の予感が当たるのはまだ先の事である。

 




The・政治回、勢力回って感じでした。

セシリアはシリアスルートの香りが漂って来ましたね。
メルツェルの感じ取った予感は一体……まぁ胸では無、おや誰か来たようd(ry

 この勢力のごちゃごちゃ感が俺はかなり好み。
まとめ回やら設定回が欲しければ早めにどうぞ。
言われない限りは作るつもり無いです。
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