IS―地這い鴉の答え   作:ゲバラ

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先ずは感想を頂いた
“oota”さん
“(´作`)(空牙刹那”さん  に感謝の意を

言語表現
《》――フランス語
【】――ドイツ語
 そろそろ使える「」が少なくなってきた……

 設定の再確認と練り直しをしておりました。
よくよく調べると、やはりISのトンデモ兵器っぷりがわかりますね。
先ずは本編どうぞ


Mission13

 

 

 行動には、常に効果と代償(結果)がが付きまとう物だ。我々はいつも二者の天秤を見(さだ)めて行動する。

 だが、時として天秤を考慮してはいけない時だってある。

 例えば、今にも始まる死合(しあ)いを止める時や公の場で銃を扱う時なんかだが、残念ながら今では無かったようだ。

「……あの、その、えっと……」

 スミカが()(たま)れぬ心持ちで立つのを余所に、銃を下げた二人が言葉を重ねる。

(たわむ)れが過ぎたな、アンジェ」

 それにしても、

「外見は全くの別人か。私も初見だな」

「やはりか。多少の情報が有ると思ったんだが……」

喫茶店(ビックボックス)を紹介しよう。我々の後続に当たる者がいる」

「後続? あぁ、スミカに聞いたよ、“レイレナードの亡霊”か。随分暴れたそうじゃないか」

「まぁ……多少はな。ともあれ、その身体の情報に関しては期待しないべきだが……」

「状況は私が一番理解出来ている――15年振りだ、身の上話でもしようじゃないか」

「――その前に」

部屋に立ち入る影が一つ。

「そう、その前にだ。弁明の一つでもしてくれるんだろうな?」

 千冬だった。腕を組んでドアの上に立つ姿は、怒りを通り越して呆れているようだ。

「「霞先生の犯行です」」

「以上です。スミカさん、ではまた」

「ヴィクトル! デュノア、お前も裏切るのか!?」

「イヤー、ボクゼンゼンワカラナイナー」

「キュウニトビラヲウチヌクナンテ、ビックリダナー」

「ホゥ? これはこれは霞先生でしたか」

「イヤ、あのぅ、織斑先生……? これには訳が――」

 

      ●

 

 応急処置として、扉の代わりに板を置いた1125号室で昔話が始まる。

「何処から話せば?」

「“こちら”には何時から、確か15年前と言ったか?」

「この身体でフランスに生まれ、15年になる。

 脳は肉体の一部らしいな。子供の内はこの記憶が定かでは無かった」

「思考が自身の自我を認識できなかったと、そう言う事か?」

「そういう意味で言えば私の誕生はこの体が物心ついた頃になるな」

「では、それ以前の人格は?」

「それは……有る、私と“彼女”はこの身体に同居している状態だ。

 二重人格とはまた違うものだが」

「彼女?」

 男子として入学した事実に反する矛盾だ。とすると、

「あぁ、そうか。ほら――」

「解ったアンジェ、だからその手は戻せ」

 ベルトに手を掛けていたアンジェを制する。

「流石に性別も変わっていた訳では無いか」

「まぁ、な」

 だが、

「その……つまりはだ。

 恐らく私は“彼女”の人生を横取りしたも同然なんだ。

 であればせめて、この少女“シャルロット・デュノア”として私は生きたいと、そう思っている」

 言った彼女を一瞥して、ヴィクトルは懐の煙草に手を伸ばした。

「楽に生きようとは出来んか。昔と変わらないなアンジェ。

 と言う事は、シャルロットとして此処に来ているのだろう。

 やはりデュノア社と関連か?」

「全く身勝手な話だ」

 シャルロットの出自は母子家庭であった。最愛の母が亡くなるまでの話だが。

 その後、黒服がやって来るのにそう時間は掛からなかった。己が(めかけ)の子で有る事もその時知った。

「予想は出来ていたよ。母の仕事には合わない生計が、な」

 言った彼女の表情は無意識に暗さを得ていく。

「シャルロットの方は、(こた)える所が有るだろうな」

「いや、この子は強い子だ……本当に」

 シャルロットは動揺を見せたが、ものの数日のみだった。

「それからの私は、シャルロットの“心のお友達”から“戦う時の自分”になったさ」

「荒事の担当はお前と言う事か。とすると、一人でデュノアとやり合って来たと」

 ……全くとんでも無い奴だ

「――スミカさんも、僕だっています」

「此方がシャルロットか」

「あ、はいヴィクトル、さん」

「呼び捨てて良い。それで?」

「僕達はデュノア社、正確には父親に当たる人物の命令で此処に。

 目的は本物の男性パイロットに加わりデュノアの広告塔になる事と彼らの機体データを盗む事。

 最悪の場合は……ハニートラップに」

「一企業人が大真面目な顔でそれを提案する場に立ち合ってみたいものだ。

 これからの計画は?」

「え? 僕はそれを実行するしか……」

「まさか甘んじると言うのか?」

「それは(ちが)――」

「だが対応策は何も無し、か。これではアンジェが浮かばれんな」

「なんっ」

「僕()と言ったか? 違うな、命令にただ従順に従う選択をしたのはお前()()ただ一人だ」

「-―――」

「それに、他に選択肢は無かったと言う言い方だな。

 どうしようも無ければ悲しんで(しか)るべし。悲劇のヒロインを演じて良いと?」

「――ぁ」

発する言葉に彼が止まる。

 ……さて、石玉どちらか

琴線に触れる所を焚き付けられた少女に思慮の余裕が有る訳も無く、感情を爆発させた。

「じゃあどうしろっていうのさ! 僕だってこんなひどい選択、したくも無かった!

 でもヒーローの振りしたって僕は結局、非力な個人でしかないんだ!」

 その顔には雫が一筋。

「もうこれしか無かったんです……抗いたくても、デュノアは大き過ぎる」

「だが、彼らは庇護者に成り得ない。従ったところで、使い潰されるだけだ」

「それでも、僕にはデュノア以外にコネクションが無い。使われている方がまだ……」

「力なら、在る」

「――はっ?」

 急に投げ入れられた言葉に、シャルロットがヴィクトルを見返した。

「力が有るならば、戦うか?」

「ク……うん、やるさ……!」

 土台無理な話である事はシャルロットも解っている。だがこうまで言われて引き下がる程(さと)い――諦観(ていかん)した――人間でも無かった。

 聞いた方の彼は押し黙ったままだった。そして、顔に出したのは鉄血の傭兵らしくも無い、笑みだった。

「フム、現状を考察するだけの頭とその程度では曲がらん根性が在るらしい。

 これなら心配あるまい」

「――な? この子は強い」

「アンジェ。試していた、と解っていたか」

「そうでなければ、私が代わりに殴っているさ」

 演技の練習でもしなければ、とヴィクトルは思う。

「今度はお前の話を聞かせてくれ。こっちには何時から?」

「五年前だ。南米北部、ベネズエラだったか――」

 と、昔話が始まる所なのだが、

『Pipipipi』

「電話、だな」

 出所はヴィクトルの荷物、真っ黒なスマートフォンが(みずか)らを主張している。

『私だ』

(ワン)大人(ターレン)、定期報告を欠かした憶えは在りませんが」

『あぁ、急ぎの案件だ。私としては不本意だが、依頼だ』

 細かい事はその端末に送信する、短く言い残して小龍は電話を切った。声色に出す程、彼は不満らしい。あの男に指図出来る人物が居る事に驚きだ。今度は即座に受信した依頼を確認する。

 

   急ぎの依頼だ、ヴィクトル・グラスノフ

 

   依頼主は企業連・有澤重工

   目的は、北アフリカの所属不明施設に対する

   潜入、及び破壊工作だ

 

   有澤の機械化戦力が正面から攻撃を掛ける

   反対方向から入り、情報を手に入れてくれ

   所属・目的・敵輸送機の目的地、取る物はお前の判断に任せる

 

   十分に情報を得た後は、状況を離脱

   後はこちらで処理する

 

   敵戦力は人的戦力が大半だが、少数の5m級が配備中

   他にも未確認な戦力の情報が入っている

 

   何にせよ

   確定要素が少ない、用心するに越したことはあるまい

 

   事前に国連側に情報をリークしている

   特殊部隊と協同で事に当たってくれ

   正規の訓練を受けている、足手まといにはならんだろう

 

   以上だ

 

   久しぶりの戦場だ、お前の力を見せてくれ

 

「依頼か?」

「それも急ぎだ」

 夜だと言うのに、彼は千冬を捜しに行ってしまった。

――いつもあんな人、なの?

《まぁ、依頼には誠実な奴だからな》

――これからどうすればいいのかな

《これからどうするか考えよう。あいつにも言われたしな》

――うん、そうだね……

 

   ●

 

 そして次の日。今朝(けさ)早くにヴィクトルは出発した。

千冬は最初こそ渋ったが、彼は生徒である以前に傭兵である。彼女にはどうしようも無かった。

 と、言う訳で今日は大事なお知らせが二つになった。

〚グラズノフ君はこれから少しの間、お仕事で欠席します。

 代わり、と言う訳ではありませんが新しいお友達が二組に転入します。

 皆さん一年生同士仲良くしてくださいね?〛

〚はーい〛

[御姉様、今度はどちらの方でしょうか]

[残念ですが何も。わたくし達の系統では無いようですわね]

「今度はドイツからだとさ」

[そうですの、って随分耳が早いこと……]

[イェルネフェルトさんが半職員状態ですからね]

「と言う事は、デュノアも知っていたのか?」

「うんそうだよ、篠ノ之さん」

「箒で構わないさ」

近くもない席で会話が展開する間に扉がノックされた。

〚来たか……どうぞ〛

〚失礼します〛

 入って来たのが例の転入生だろう。

小柄で長い銀髪、パーツの整った顔、美しい(くれない)の右眼、隠すつもりも無い左眼のHMD(Head Mounted Display)や、傷の無く白い肌は人形や機械の(たぐい)を彷彿させる。

〚教官、ご挨拶に上がりました〛

〚ここでは織斑先生と呼べ〛

〚ハッ、織斑教か……先生〛

〚よろしい。自己紹介でもしたらどうだ〛

〚ハッ。ラウラ・ボーデヴィッヒだ〛

 言ったきり、少女は言葉を発さなかった。

〚自己紹介、だな〛

〚そう、ですわね〛

〚軍属の経歴が有るのでしょうか〛

〚無駄な事は話さんと、ここじゃ階級もないしな〛

〚ム、貴様が……!〛

 ラウラは軍服風に改造した制服の軍靴(ぐんか)を鳴らし、歩み寄る先には一夏がいた。

辿り着くが早いか、彼女は右手を左から振り抜く。

〚ツゥ、なかなか痛い、裏打ちだ〛

 速度とリーチを兼ねた、伸ばした指での振り抜きは彼の頬で無く右の手首を捉えた。

 彼は右手で止めたラウラの手を取った、形としては握手になる。

〚これからよろしくな〛

 言った彼の眼は、怒りも驚きも無くただ疲れているようだ。

 ……昨日の練習はきつかったなぁ、水くれたフィオナさんの顔が忘れらんねぇ

〚クッ……私は認めないぞ、織斑一夏〛

 言いたい事は言ったらしく、ラウラは教室に戻って行った。

「訓練、ちときつくやり過ぎたか?」

〚ふぁーあ、眠いな〛

 

      ●

 

 北アフリカの大地に男が四人、観光するには少し大きめの荷を持って降り立った。

『諸君、これから48時間の潜伏期間の後に作戦開始だ』

「ゴースト了解」

『それと、企業の側からこちらの作戦に一人派遣されている。水先案内人ってヤツだ。そこではアラビア語とベクール語しか通じないから彼に頼る事になるだろう、名はアーロン』

「分かりました」

「アーロンだって? なんでロシア人がアフリカの水先案内なんてするんだ」

「サーティそりゃあ、アー……ん?」

 疑問を吐露(とろ)した男をサーティ(30)と呼んだスキンヘッドの男が言葉を(つぐ)んだ。

「案内人がクルザ側でもベク側でもあってはならないだろう、それに」

 それに、

クライアント(企業連)はこの事態を重く見ている。

 この国を拠点に大量の武器が周辺国に流れていて……、

 細かい事はスーク(市場)まで行ってからにしよう、ここは監視所が近い」

 四人の前に立つ青年が言って歩き出す。まだ日は昇ったばかりだ。

 

      ●

 

 東緯135度、ヴィクトルから九時間程の時差がある日本。

今日も変わる事無く一夏はISアリーナに足を運んでいた。

〚こう、ズバァっと行ってからガキンドカーンて感じでどうだ?〛

 初手で近接戦に持ち込み、その後はブレードを使わずに打撃戦の手数で押し込む。最近接での戦いに精通した箒は刀の取り回しを重視した提案した。

〚何となく分かんない? 感覚で合わせるのよ、感覚〛

 戦いは相手が居ないと話にならない。先ずは敵の動きをよく読み、感覚で合わせる事が最善だと鈴は言う。

〚防御の時は右半身を斜め上、前方へ5度。回避の時は後方へ20度ですわ〛

 セシリアについては、指示の真意が良く分からない。

〚まぁ、言いたい事は解らんでも無いが……〛

〚坐学より実践の方が早いよなぁ?〛

一夏としてはアレックスに同意する。

『じゃあ、僕と手合わせしてくれるかな、白式と戦ってみたいんだ』

〚お、シャルルか、解った〛

 不毛な戦術談議に飽きて来た一夏は二つ返事でシャルルに答える。

〚見て見て、織斑君とデュノア君がやるみたいよ!〛

〚わぁ、デュノア君の専用機ってラファールリヴァイブよね?〛

〚フランスの第二世代型IS!〛

 やはり専用機は目立つ、特に一夏は真っ白でシャルルはオレンジだからより一層だ。

〚じゃ、行くぜ!〛

《来い!》

 話は少しずれるが、戦闘時のシャルルにはとても奇妙な事が起こる、戦っている時は“二人が一つ”になると言えばいいのだろう。

 開始早々に白式の姿が目の前から消えた。

 ……えっ?

――落ちつけ、動きは直線的だから十分予測できる

シャルルは目端(めはし)に白を捉えた。成程(なるほど)爆発的な加速が有るが挙動(きょどう)は複雑ではない。

――行くぞ

 ……うん!

左腕の物理盾はそのまま、右腕にアサルトライフルをコールした。

 両手で構え、左を前にした立膝(たちひざ)の精密射撃に移行する。

〚あれじゃすぐに斬られちゃうんじゃ……?〛

〚いや、あの銃は“そういう系統”のやつだ〛

 シャルルがARを発射する。

 そして確かに、鈴の憂慮(ゆうりょ)は外れてシャルルがすぐさま料理される事は無かった。

〚!? アレックスのより重い!〛

《高重量のハーフジャケットだからな!》

 アサルトライフルの使用弾丸は“ハーフメタルジャケット(半包衝撃弾)”を大型にしたものでISに於いて主流のフルメタルジャケットと異なり運動エネルギーが対象に残って相手の運動能力を落とす。

 シャルルはQBの合間を狙ってFCS込みの射撃を一夏に叩き込む。

 ……これじゃあマズイ

 このまま攻めあぐねていれば料理されるのは一夏の方。多少のダメージは無視して押しこむのがこの白式の本質だ。

〚やるしかねぇな!〛

 これから待ち受ける重力に覚悟を決め、QBを乱発した上で物理刀の突撃を敢行(かんこう)する一夏に対し、シャルルは右腕のアサルトライフルをパージ、己の身を一夏に向かって真っ直ぐ進めた。

 ……!? マジか!

 まさか軌道(きどう)を読まれるとは思っていない一夏はたじろくが、時間が無い。

 上段から雪片を振り下ろす。

《ッ》

 既に太刀筋を見切ったシャルルが振るうのは左腕の物理シールド。振り下ろされる大型刀に対し、さらに(ふところ)に入り、シールドの端を引っ掛けるようにして左から押す。

《この程度で筋が揺れるとは甘いね!》

 更に刀を押しこみ左の半身に、勢い余って地面を切る雪片の背を右手で掴んで更に押しこむ。

 刃が地面を深く嚙んだ上にISで抑えられていれば白式でも簡単に抜けない。

〚クッ……!?〛

 前を向くとラファールの左腕が見える。

《オォッ!》

 顔面狙いのシールドバッシュが高速で一夏を捉えた。

顎にヒットして、彼は雪片を取りこぼし後方に吹っ飛ぶ。

「良いバックアッパーだな、綺麗に飛んでやがる……」

 安全な位置まで移動したアレックスが嘆息を零して言った。視線の先には顎を上に向けて吹っ飛ぶ一夏が居る。

《ッハ……アレ?》

 仰向けに倒れた彼が一向に動かない。

 ……マズい、やり過ぎたかな

「タイム、ターイム。一夏の様子をちょっと()るぞ」

 ISを展開したアレックスが途中停止を掛ける。

「あぁ、これは軽い脳震盪(のうしんとう)だな、SEはまだあるみたいだが隅に持っていく。

 シャルルは手伝ってくれ」

「う、うん」

 気を失ったからと言ってISの展開が解かれる訳ではない。二人掛かりで一夏を運ぶ。

「良い体捌(たいさば)きだった。まるで――」

 ……まるでアンジェだ、その見切りと刀に向かう度胸はな

「まぁ、流石に初心者のこいつ(一夏)には厳しかったろうな」

「その、ごめん。此処までする気は……」

「よくある事だから気にすんな、手合わせなんだしあいつも覚悟してんだろ」

 

      ●

 

 「アメリカ人の調子はどうだ?」

「彼らはゴースト分隊と名乗っている。精鋭と言われるだけの能力は有りそうだ」

「フン、精々(せいぜい)良く働いて貰うとしよう」

不遜(ふそん)な言葉には関心せんな、マクシミリアン」

「気を付けよう。それでゴーストにはどんな情報を?」

 この場にゴースト分隊の姿は見えない。

 スークをひしめく雑踏(ざっとう)の数は多く、歩く二人に密談をしている様子は無い。別に大声で話した所で周囲に英語を解する者は居まい。

「内容自体に機密性は少ない、推測が可能な物ばかりだ。

 そう、例えば……作戦理由は武器市場汚染の清浄化とした」

「周辺国にも影響が出ているとすれば彼らの腑にも落ちるか」

「兵士は優秀であればそれほど、作戦の本質を見極めようとするからな」

存外(ぞんがい)に指揮官向きかも知れんな」

「私がか? 冗談は()してくれ」

「どうだか……」

「そちらの経過はどうだ」

「ORCA復帰の方か? それなら――」

「必要な情報は既に渡した、後は君に任せる。今は目の前に在る問題の対処だ」

「あぁ、情報はどれ程持っている」

「ここに来るまで、ほぼゼロだ」

「では最初から行こう、昔の通り省略はしない」

 “商品”の輸送経路は空輸だが、民間機も飛行場に紛れ込ませているため、使用する航路は確定出来ていない。

 予想される戦力はジャンクタイプの5m級AC・車載機関銃・人的戦力で、整備の回りや錬度はいずれも低い。

 飛行場――中間拠点の方がより正しい――に対する物資の収支が合わないため、武装を備蓄している可能性が高い。

「他の二勢力を含む敵性即応戦力の到着までの時間は一時間ある。そこが今回のリミットだろうな」

「先に通信塔を潰せばどうなる?」

「君達に先行させては陽動の意味が無いと思うが?」

「やるだけの価値はあると思うな、ゴーストチームの先行侵入作戦を提案する」

「何かあるのか? 君にしては慎重さを欠いているな」

「良いか、マクシミリアン」

 ヴィクトルは通りの生薬商の前に止まる。

〔店主、ミントティー(緑茶)の葉を、六人分だ〕

「? 何が言いたい?」

「先日の事だ。“火薬庫”が襲撃を受けた」

「例の学園か、酔狂(すいきょう)(やから)もいるな」

「内部侵入を受けても、まだ酔狂と言えるか?」

「…………」

「テルミドール、此処でジョーカーを(えん)ずるのは我々だけでは無い。もっと厄介な事になる」

〔ミントは?〕

此処(こちら)(かぜ)に合わせよう〕

「道は未だに遠し、か」

「そのくせ時間は無い。次のカードを切る、良いな? 旅団長」

「イノベーションプログラムだな、解った。

 こちらも継戦能力と冗長性の無さに辟易(へきえき)していた所だ」

「当たらなければなんとやらもそうは続かんな」

「全くだ」

()りはいい〕

 彼は桁の一つ多い紙幣を渡して布袋を受け取る。

「メルツェルの見立てはどうだ」

「そのまま居てくれ、オッツタルヴァとしての地位を作り上げておくのが良い、と。私もそう思う」

「簡単に言う。誰がやると思っているんだか」

「すまんな、私も彼も実用主義者なんだ。

 使える物は何でも使うべきだろう?」

 言ってテルミドールに茶を渡したヴィクトルは雑踏に消えて行く。

 後、ゴーストチームの先行侵入が決まった。

 

      ●

 

 [ハァ、アンビエントのお披露目がこうなるとは……]

 リリウムの嘆息(たんそく)は宙に霧散(むさん)した。

彼女はアリーナの中空に位置し、通信状態にも無いため、それも当り前と言える。

「軍人の大抵(たいてい)プラグマティスト(実用主義者)の筈だが、この喧嘩早(けんかっぱや)さは(むし)テロリスト(暴力主義者)の思考回路だな。

 感情の制御出来てますかぁお嬢さん?」

リリウムがBFF製高精度ENライフルを向ける先、アリーナがカタパルトの先端には白と黒のISが二機。

【英語がオフィシャルランゲージだと思うな、アメリカ人め】

〚残念、俺はアンクロサムじゃなくてトルキッシュだ〛

 黒いIS、ドイツ製第三世代型“Schwarzer Regen(シュヴァルツェア・レーゲン)”の真後ろからライフルを向けるアレックスが翻訳機能も駆使し、肉声で会話をする。

 (さかのぼ)る事、十数秒。軍人少女ラウラ・ボーデヴィッヒの一方的な射撃行為に即応したのはアンジェ・アレックス・リリウムの三名。

一夏に向かって放たれたレールカノンの一撃にアンジェが物理シールドで対応、シールドエネルギーによって速度を削った弾体を傾斜防御で弾く。同時にISを展開したリリウムは空中に身を置き、ラウラの意識が遮蔽の無い彼女へ向いた時にはアレックスが素早く裏を取っていた。

 そして現在、遅れて反応したセシリアがレ―ゲンの周囲にビットを回すが、展開しきる前にラウラがISを解除した。

感付(かんづ)かれたか〛

 教師の目を察知したのだろう。ラウラは一夏を(にら)んでピットへと消えた。

「あの子と何かあったの?」

 シャルルが一夏に(いぶか)しげな眼を向けるも、当人に心当たりは無い。

[まぁ! リリウム貴方、遂に専用機を頂きましたの!]

 流石は姉と言った所か。セシリアが即行でリリウムの元へ向かう。

「今度はNEXTフレームか」

[えぇ、ヴィクトルさんと違ってフレームの換装を行いませんので]

 中量二脚型、無機質さがBFFらしさを強調しているリリウムの全装甲式機体“アンビエント”から答えが返る。

〚ったく、やる気がゲンナリだ。俺は帰るぞ〛

〚そーね、アタシも甘い物が欲しい気分だわ〛

 鈴の同意を持って、今回の練習はお開きとなった。

 

 




 Mission13でした。
 前書きにあった通り、正直に言いますと自分が勢力図を把握しきれなくなってたので話の整理をしていました。
 いけませんね、「企業連のスタンスは○○だけどオーメル的には△△だよな、でもオッツダルヴァが□□だし……」とかやってるうちに設定の書き溜めが世界史のノートみたいになってました。
 丁度良かったので技術的なアプローチからの世界観考察もしようかと整理している内に幾カ月、なんとか(無理やり?)投稿に漕ぎ着けました。
 認識の齟齬が起きんように設定・構想を簡単に書いと……こうと思ったんですが長くなりそうなんで活動報告に投下していきます。
 では次回をお楽しみに
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