IS―地這い鴉の答え   作:ゲバラ

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ゲバラです。
感想ありがとうございます。


Mission16

 

 

 黒煙が上がり、爆発が熱砂を更に焦がす。苛烈(かれつ)さを増していく戦場を遠くに置いて、ACが一機。

「あ゛――づい――」

 グリーンの重量二脚がぽつんと立つ脇、機体の影になっている所にメイがいた。

「どうにかなんないかなぁ」

 彼女はジャケットを下に敷き、タンクトップ姿で寝転がる。

「ちょっと涼しい、訳でもないかな……」

「メイ? もう、そんな恰好(かっこう)では日焼けしちゃいますよ」

 そんな様子を遠間(とおま)に確認したからか、フランが近くにやってくる。

「じゃあフランにはさ、見せる相手いるの?」

「そ、そういう問題ではありません。これでも待機中なのですから、出撃準備していて下さい」

「ないない。出撃すれば請求額上がるんだし」

『ま、いるだけでお金が入るし良いじゃない』

 インカムでロザリィが言うことももっともな話で、5m級ACがいかに10m級のハイエンド機やNEXTと比べて安いといえども、出撃すれば相当な金額になる。彼女らは後詰めとして待機、何かあれば即応する担当だ。

「――うん?」

 知らぬ間に人影がメイの前に立つ。見るからに強靭な布を重ね合わせた外套(がいとう)に、顔を目元まで覆う荒布を被っている。

汝の元に平和を(Assalam arrey Kum)、傭兵」

「戦闘の指導者に言えた言葉ではないわね」

 現地の人間が、5m級ACと戦闘もこなす輸送ヘリの近くに寄る筈が無い。とすればここに来るのはクライアント側の人間になる。

「我々は金の為ではなく、信仰の為に剣を取ったのだ。大義は守る者の元にある」

 男は市街地の方を見据える。

「敵は撤退を開始した。この街を放棄すると見える」

 言って、男は懐から出したカードを差し出す。

「後は残敵を狩るだけだ、ACの必要はない。今回の報酬だ、額に変更は無い」

「受領します。――支払いに増額はなし、これより“メリーゲート”は戦闘状態の離脱を開始します」

 カードはフランが確認し、受け取った。男は二人に一礼して去り、“またね”と言った具合に手をひらひらさせたメイはジャケットの砂を払う。

『あら、今回は出撃交渉なかったのね』

「確かに、いつもなら減額報酬での出撃を求められますが……」

『ま、減らして出たら赤字だから蹴るけどさ』

「……今の人、私と同じ人だと思う」

「どういうことです?」

「ほら、あの人がここに来るとき気付いたら居たでしょ? こっちの人が砂漠慣れしてるとしても、いえ、だとしたら転ばないように十分に踏み込むし抜き足も地面から十分に抜くようにして歩くから音なんか気にしていられない筈」

 メイが見る限り、男の足跡に踏み込んだような痕跡は無く、その間隔も常に一定である。

「こんな歩き方普通はできない。自分で言うのもアレだけど異常なバランス感覚してるわ」

 それを可能にする技術が一つあり、すなわちリンクスである。

「リンクスならACの運用にも理解があると思うんだけど」

「今の(かた)が……。すみません、解放戦線で現場指揮を執っている以外私の記憶には」

「そう。ヴィクトルがいれば多分、解るんだけどなぁ」

『じゃあ、会いに行ってみる?』

「はぁ……?」

 メイが(いぶか)しげに向けた目にはタブレットを掲げるロザリィが映る。

『仕事よ仕事』

「またよくわからないお仕事を受けたのですか? まったくもう……」

 フランがヘリの方へ歩きだす。撤収の準備が始まるのだ。

「あーついな――もう」

 言う割には少し軽い足取りで、メイは機体に足を掛けたのだった。

 

      ●

 

 〚う゛――――〛

 更識 簪は悩んでいた。

 ……この量の誘導、プログラムを圧迫し過ぎだけど干渉を避けるにはこれしか。フレームとの兼ね合いもあるのに

未だに起動も覚束ない自作IS“打鉄弐式(うちがねにしき)”と無数に広がるプログラムコードを前にして彼女は立ち尽くす。“誰の手も借りずにISを作り上げる”自分のプライドに()けて打ち立てた方針を自分で曲げる訳にもいかず、一人倉持技研に放り出された機体に向き合っていた。

 だめだ、これ以上粘っても結果は出ない。思って彼女は椅子に身を預けて腕を伸ばす。と、

 ……ふにっ?

〚わひゃあっ!?〛

〚あっ、ごめんなさい、大丈夫?〛

 椅子から転げ落ちて、見上げた先には女性が一人、苦笑いをしながら手を出していた。

〚す、みません……〛

 先程の負い目があるからか自身の性格か、簪は目を逸らしてその手を取る。

〚行き詰っているみたいね?〛

〚べっ、別にそんなこと、ないです……〛

 核心を突かれて、つい意地を張ってしまう。

〚その、何か用ですか?〛

〚あ、自己紹介まだだったね、フィオナ・イェルネフェルトです〛

 後ろに髪を束ねた彼女はそう名乗った。

〚アレク、金髪の男子見なかった? またサボってるんだから〛

 簪の記憶によれば、フィオナはアレックス・ストレイドを探しているらしい。

〚ここには来ていません〛

〚そっか……グラズノフさんの定期報告もまだだしなぁ〛

 その名を聞いて、簪の心にサクリと来るものがある。意を決して頼んだクラス代表トーナメントの話が中止になって、結局彼に切り出せず終いになっている。

〚邪魔しちゃってごめんなさい〛

〚いえ……〛

 言って、フィオナは出口に向かう。

〚あ、そうそう〛

〚?〛

〚その連装独立ミサイル、だと思うんだけど、システムだけで難しいなら、物理的なアプローチがいいかも知れないわ、一部をアークジェットにしたらフレームの干渉も減るし、物理弾頭と科学弾頭を混ぜるだけでも推進特性が変わるかも――〛

〚あ、あのっ!〛

 最初の内はポカンとしていた彼女だが、途中から目の色が大きく変わった。

〚少し、良いですか……?〛

 

      ●

 

 カラン、とドアベルが鳴り、バーBIGBOXに来客を知らせる。

「ビッグボックスにようこs……」

 客はそれなり、ヴァオーとエイがテーブルの間を行ったり来たりしている。扉の前に立つセシリアの眼はカウンターに座る一人に奪われていた。

[シャルル・デュノア!?]

「あ、えっと――」

[いけませんわ! 未成年の飲酒は厳禁ですのよ?]

「う、うん……」

 ……何故そこに目を付けたんだ?

 恐らく事情を知る者は皆そう思ったに違いない――。

 

 




 これからはこのくらいの分量になった時点でサクサク投稿したいと思います。
プラスで二週に一回の活動報告をば。

 原作に沿うと、次は学年別タッグマッチですか、
実のところどう組ませるか決めてません。
シャル、もといアンジェと組む人は大変だろうなぁ。

では、また次回。
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