IS―地這い鴉の答え   作:ゲバラ

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先ずは、感想をいただいた方に感謝の意を


Mission19

 

 

 「暑いとは言ったけどさぁ……」

 メイがそう(こぼ)したのは装甲車の中。時折上下に揺られながら隣を見()ればロザリィとフランが同じようにして座っている。正面に完全武装の戦闘員がいるのも、気が詰まりそうで良くない。前から警戒した雰囲気(ふんいき)を感じること幾何(いくばく)かして、やっと装甲車が停止する。

〈到着だ、傭兵〉

 マスクで顔を隠した、正面の彼がぼそりと言って車外に出ていく。

「到着、ってことかしら?」

「……そのようですね」

 揃って車外に出ると、硝煙(しょうえん)を含んではいるものの、数日前までいた砂漠のそれより数段爽やかな風が吹き、其処此処から弾着の音と衝撃が響く。

「んあぁー、久しぶりに息した気がするわ」

「ここは?」

「陸軍所有の演習所だ。……既に入口では無いが」

 フランの言葉に、後続車から降りた男が答える。

「改めて、レイレナード側代表の者だ」

「へぇ、じゃあ貴方(あなた)がベル――」

「申し訳ないが、今は時間が無い。こちらに」

 言って、男は目の前の建物に入る。後ろに戦闘員を置いた三人がこれに続き、下層階だが見晴らしの良い一角に辿り着く。

「ボリスビッチ、到着だ」

 ……うわ、こわそうな人

 メイのボリスに対する印象はともかくとして、メリーゲートの三人は旅行に来た訳ではない。

「わざわざ時間を割いて頂き感謝する。テクノクラート側交渉役のボリスだ」

「別に。アタシ達はまだ受けるって決めてないわ」

「ご(もっと)も、先ずは此処の説明から始めた方がいいかね?」

 

      ●

 

 いつもの、と表現できる位には入り慣れたIS整備室の二重扉を開くと、いつもとは違う青色が視界に入った。

「あ、グラズノフさん。お疲れ様です」

「エイ・プール? 何故(なぜ)君が?」

「あの、私が呼びました」

「……フゥン、そうか」

「えっ、き、聞かないんですか」

「何をだ?」

「その、理由を」

「見れば解かる」

 ……ASミサイルか、イェルネフェルトの紹介だろうな

「エイ・プール、ASミサイルの対象認識システムは憶えているか?」

「はい、確定後の誘導から複数発射されたミサイルの軌道制御まで、一通り再現できますよ。って何聞いておいて引いちゃってるんですか!」

「……正直そこまでとは思わなかった。感心する。まぁ、とりあえずはこちらの依頼を頼む」

 言い終える頃に、ヴィクトルは左前腕のサポーター(IS)を外していた。腕の形が残るそれを専用の台に載せると、ISの遠隔起動が始まる。

「アルゼブラから取り寄せたのはフレームと武装がいくつか。これをコンバート、それに少し加工を加えて搭載する」

 遠隔操作を管理する画面をスライドし、加工の工程表を表示する。

「時間の見積もりは立つか?」

 ヴィクトルの作成した工程表には、表が埋まるほどにデータや注釈の字が並ぶ。

「この、虫みたいなフレームを頑丈にして、この拡張をアンロックユニットに。ん、次の大会には間に合いそう」

「よし。では取り掛かろう」

「あれっ? 私が来た意味は一体……」

 エイの出番はまだ少し先である。

 

      ●

 

 学園は夕の光に包まれ、生徒たちは部活動の終了と共に寮の自室へと帰っていく。セシリアもその一人であったが現在彼女が立つのは生活空間とは異なる部屋である。

「ISの補助がない分、銃を構える時には相応の力が必要だ。しかし身体のしなやかさは保て。常に照準を動かせるように意識しろ」

[はい、先生(ma’am)]

 透明なゴーグルを装着したセシリアが、背後に立つスミカに答える。

「銃底を肩に固定しろ、反動が強いから覚悟するんだ。じゃあ撃ってみろ」

 スミカがボタンを押すと、セシリアの前方にホログラムで出来た目標が立ち上がる。

[――ッ!]

発砲音が一回、射場全体に響く。

[っつうー]

セシリアが右の肩口を抑える。

「だから言ったろう。ISに合わせるためとは言え、急に大口径を使うことはない」

[だ、大丈夫……ですわ]

 セシリアが構え直すのは銃身を長めに設計されたバトルライフルだ。アサルトライフルに近い取り回しを維持したうえで火力と射程距離の向上を狙った分、幾分か反動が大きく制御に難がある。人間サイズの銃初心者の彼女が使うのには無理がある一品だが、スターライトに近い点で言えば彼女が求める能力の到達点にある。

 ……涙目で言うようでは説得力が無いな

「移動しながらの射撃能力、だったか? 君が求めるのは」

[そうですわ。正確には回避と並列した射撃能力の向上を目的にスミカさんの所へ]

 言ってる内に無数のホログラムが立ち上がる。

「命中率は気にするな。どうせ撃たなきゃ当たらない、撃ち続けられる身体になるのが先だ」

 

〚おい〛

 射場にもう一人加わったのは、それから数十分の事だ。

〚ここで何をしている〛

〚ラウラ・ボーデヴィッヒか。園内の見回りだな?〛

〚こちらの質問に答えろ……っ〛

 ……教官!? いや、髪の色が違う。しかし、この感じは確かに教官のもの……

 固まって動かないラウラを見かねて、スミカが口を開く。

〚私は霞・スミカだ。シャルル・デュノアのサポートをしている〛

〚デュノア……私の弾を弾いた奴か〛

 ラウラがしきりに周りを見回す。

〚デュノアは居ないぞ。私は子守りではないんでな〛

 それと、

〚デュノアが弾いたのは()()()()の弾だ。ISのスペック自体はお前自身の力ではない〛

 その言葉にラウラは苦い顔を浮かべる。

〚クッ、前にも言われた事がある。ますます教官に似ている……〛

 彼女はこれを捨て台詞に、またセシリアを興味なさげに一瞥し去っていった。

「あいつ、結局何も聞かずに帰ったな」

[え? えぇ、そうですわね]

 その後、なんとも悔しそうな顔をするラウラを数人の生徒が目撃することになる。

 

      ●

 

 「全く驚きだわ……」

 文庫本程度の大きさをした、金属質の板を手に取るロザリィがそう零した。

「どうかね」

 ヨーロッパ・ロシアの陸軍演習場で、一つ商談が大詰めに入っていた。

「確かに、この装甲の性能はなかなかの物ですが……動作の安定性には不安が残りますね」

「吾輩とベルリオーズの二人で動作の確認を行った。リンクスとして、戦闘に耐えうる実効値を保証する」

 メリーゲートの三人が額を寄せる。

「私達にとってこれが安定して手に入るのは願ってもないことよ。それに“リンクスとして”って言ったとき、彼らの誇りに懸けてウソは無い筈よ」

「信用の話になって来ては、これ以上の譲歩は貰えそうにありませんね。この条件で――」

「待った」

 ロザリィは言うや、一人でボリスに振り返る。

「この板、ウチの縄張りではアタシが買い付けるわ」

「まさか。“北アフリカを寄越せ”とでもいうつもりか?」

「アタシ達共通の敵に流れないようにするには、こっちの方が確実よ」

 そーれーに、

「この一連の仕事、代案で言ってたオッツダルヴァの連中にはもう出来ない内容になってるっぽいけど、どうするぅ?」

「チィッ、足元を見おって。良いだろう、交渉成立か?」

「まいどありぃ!」

 ……よしっ、副収入ゲットね!

 ボリスを相手に、この気楽さで強気の交渉をするのだから彼女は恐ろしい。

 

 




 いっけね、先週の更新忘れてた。
まぁ、活動報告の更新は生存報告程度のアレなんで、フワッと待って頂けると嬉しいです。

 あとどの位でこの話は完結出来るんだろうか……。次の作品案もまだないのでのんびりやっていこうかと思ってます。

 ではまた。
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