“ドライシチュー”さん
“oota”さん に、感謝の意を。
「――で? 説明して貰おうか」
喫茶店ビッグボックスは“準備中”と札が出されている。
中には男女が五人。
「ちょっと待て」
言ったのは首を
「メルツェル、お前はなんとなく分かったが……そっちのオネーサンは誰だ?」
「失礼かもしれないが、私も同じ事を考えていた」
[リリウムもです……]
「まぁ、君達とは接触の無い所にいたからなあ」
青髪の女性が言う。
「前インテリオル・ユニオン所属、エイ=プールです」
……?
「エイ=プール…………?」
[…………]
「エイ……あっ。ASミサイルの!」
「あぁ、確かヴェローノークの」
「うぅ、そんなに知名度低かったの?」
「い、いや、そんな事は無いって! 俺聞いた事あるぜ、消費能力は随一だとか――」
[フォローになって無いですね]
「彼女についても説明あるよな、メルツェル?」
「勿論だ。――――喫茶店を開いた、うん」
「な、なにコレ……ORCAは皆ふざけてるの?」
[それは、ORCAを集めるため。ですね?]
「察しが良いな、若き女王。その通り、目的は旅団の人間を集めるためだ」
メルツェルは語る。
――
もしORCAの者が他に来ていた場合、“前世”の事もあるため企業を頼れない、
無援の同志らは手掛かりを求めて、世界に名の出たヴィクトルの元へ向かうだろう。
そこで“ビッグボックス”が有れば何かしらの関連を疑い、ここに来るだろう。
「と踏んだのだよ」
「すっげえ強引な論だな」
「事実、ヴァオーは来た」
「マジで!?」
「ではエイ=プールの場合はどうなんだ?」
「“途中で拾った”が的確だろうな」
「私は知っての通り、インテリオルに行きました。だけど何でか“採用”じゃなくって……」
客三人が額を合わせる。
「それってつまり――」
[面倒見切れない、と言う事を暗に示されたようですね……]
「インテリオルの財政も大変なようだな」
「話を戻そう。ORCAの同志を集めて、それから?」
「仕事だよ。傭兵の傭兵による仕事だ」
[勢力に所属しない“傭兵団”の結成……
「まぁ、ある程度の人数になるまでの間、ビックボックスはただの集会所の様な物だ」
「お? なんだこのメニュー、“ASパフェ”?」
「あ、それですか?」
アレックスにエイが応える。
「説明すると長いんですけど、要するに自動で調理、配膳されるんです。注文すれば分かりますよ?」
「へぇ、じゃ“ASパフェ”一つ」
カウンターにパフェのグラスが飛んできた。見ている内にクリームやら何やらがひとりでにグラスに収まっていく。
完成したそれを彼女は取って、
「はい、完成でsわひゃっ!?」
エイの手元でグラスが起動した。急に手を引かれる形になった彼女がグラスと共にバランスを崩し、大きく転ぶ。
「あー、まぁなんつーか、ダメプーだな」
「あぅ、この人情け容赦ないですー……」
「五回に一回は起きるから困ったものだ」
「グラスは足りるのか? 端から割られたら赤字だろうに」
「問題無い、経費の三割を“エイプー費”として確保出来ている、ヴァオー費も二割だがあるぞ」
[売上の使い方を考えた方が……]
「そうだヴィクトル、帰る前に一つだけ」
程無く昼休みが終了する。授業の前には学園にいないと、千冬にどんな顔をされるか分からない。
「IS学園には既にこちらの者が居る。こちらから連絡しておこう。コンタクトを取って来る筈だ」
「分かった」
……実際に私かどうかは解らなかった訳か
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
放課後、IS学園のアリーナは生徒に解放され、実機を用いた練習が可能だ。
今日も練習に来た生徒が四名いる。
[さて、アレックスさん。ご教授お願いたしますわ]
「どうしてこうなった……」
[それは勿論、あの
「せめてもうチョイ同じタイプの奴を指南役にしたらどうなんだ?
BFFの名に苦い顔をしたセシリアが目を向ける先には一夏と箒。
〚今日からは、これで特訓に付き合う〛
日本の量産型機“
彼女は刀を抜く動きで近接武装をコールした。
〚では一夏、始めるとしよう〛
〚お……おう……〛
一夏はどうも気が乗らない様子だ。
〚私では、何か不満か……?〛
〚い、いや! そんな訳ではない、んだけどさ……〛
彼は横の方を見る。
〚アレク、お前の機動教えてくれないか?〛
〚アン? 俺のをか?〛
〚あぁ。
〚別に構わねえけど……〛
……無理だろうな
“最強”と呼ばしめたリンクス。その技術は高校生の限界を容易に超えるだろう。
〚じゃ、先ずはついてこいよ――〛
長い長い修行の始まりである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アリーナの大地が広がる。しかし、いるのはアレックスらでは無かった。
彼らの使うアリーナより数段狭い。そこには人が、今来ているのを含め三人。
〚見つけた。邪魔するわ――〛
やって来た鈴の言葉が終わるが早いか、砲音が響く。
先客の二人、スラヴ系の青年は手持ちのコンソールに書き込みを続け、水色の髪をした少女は鈴にぺこりと会釈する。
〚面白そうな事してるわね、何しているの?〛
三人の前にはヴィクトルのIS。遠隔操作で火器を発射している。
簪が言う。
〚あの……この、人。日本語が――〛
〚IS、自分に部分展開してるでしょ? 翻訳出来ている筈よ〛
“え?”とした顔の簪は掛けている眼鏡型の機器を確認した。
……確かに、ちょっとだけ展開されている
『上手く隠せていると思ったんだが……』
〚アタシは代表候補生。それくらいは出来て当たり前よ〛
その言に簪が俯きを得る。
『全く、誰の仕込みだ? IS競技には使わない技能だろうに』
〚誰でもいいでしょ? 先ずはこっちの質問〛
『私の機体だ』
〚これが!? 気持ち悪っ!〛
『形容方法に気を遣う事をお勧めするぞ』
〚ぁ。アンタの愛機だものね、ごめん。……でもこれどうやって乗るの?〛
『平たく言えば、己の肉体を量子変換している』
〚マジで……?〛
流石に若干引くだろう。ヴィクトルは十分予測していた。
『見ての通りこいつは特殊でな、データが足りてない』
言いながら彼は数値を記入する。
〚ふーん。で、アンタは?〛
鈴は簪に向く。
〚わ、私は……〛
『更識簪、四組の代表で日本の代表候補だ』
〚へぇ、専用機もあるの?〛
〚それは……〛
『出来かけだがな、彼女がアーキテクトも行っている』
〚凄いじゃん。と言うか、なんでヴィクトーが答えるの?〛
半目の鈴にヴィクトルが、
『彼女は少々内向的でな、私が言った方が早い』
それに、
『自分を卑下する傾向が強い。必ず表現が
“非常に優秀なのだが……”と彼が言うと簪は俯く。
〈ふむ……〉
……流石はPIC、緩衝・安定性能は高い
無言のまま考察を続ける。
やはり重火器の使用が生きる、背面兵装の使用は有効であろう。
その上アンロックユニットに接続すると考えれば指向運動性能はNEXTを上回るか――。
〚……なんか無言タイムに入っちゃってるけど〛
〚何時もの事、です〛
時折、ヴィクトルの操作で弾丸が飛ぶ。
これは日が暮れるまで続くのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
〚ま、こんな所か〛
暗くなったアリーナの中央、気楽な様子でアレックスが言った。
それに対する三人は気楽とは程遠い。
〚ア゛ア゛……〛
〚終わった、のか?〛
セシリアに至っては声も出さずに座りこんでいる。
幾度と無く繰り返された急加速と急停止に急旋回の連続、身体に掛かるGは限界を超えたのだろう。
〚“付いてくる”だけでこうなるたぁ、一夏は基礎体力が足りんぜ。
毎朝ヴィクトルが走ってるから一緒に走ったらどうだ? ……ほぼ四時起きになるけど〛
彼は時間を確認する。
〚そろそろ帰らんとな、立てるか?〛
〚俺は無理……〛
〚そうか、聞いただけだ。見捨てて行くぜ〛
〚うわ、薄情な奴!〛
〚ずっとこれが続くのか……?〛
〚武器を使っているよりはマシな経験値になるはずだ。近接兵装しか無いならなおさらな〛
〚おつかれ一夏〛
ロッカールームに二人がやって来る。
〚飲み物はスポーツドリンクでいいよね? はい〛
〚鈴、お前ずっと待っててくれたのか?〛
〚えっと、まぁそんな感じ〛
〚ヴィクトルの機体、妙な形だったろ?〛
鈴と共に来たヴィクトルを見て、アレックスが問う。
〚正直ちょっと引いたわ〛
〔ストレイド、時間あるか?〕
〔分かった〕〚一夏、悪いけど先に帰っててくれ〛
〚おう〛
アレックスは手早く荷物をまとめて部屋を後にする。
〚?〛
〚何時もの事なんだ、ああなるとしばらくは帰ってこないな〛
〚そう……〛
鈴は長椅子に、一夏の隣に座る。
〚…………〛
〚……やっと二人っきりだね〛
〚え? あぁ、そういえばそうだな〛
〚い、一夏さ、やっぱあたしが居ないと寂しかった?〛
〚まぁ、遊び相手が減るのは大なり小なり寂しいもんだろう〛
〚そうじゃなくてさぁ……久しぶりにあった幼馴染なんだから、いろいろ言う事があるでしょ?〛
〚あ、そうだ。大事な事忘れてた〛
“ッ”っと鈴が身構える。
〚中学の時の友達に連絡したか? お前が帰って来たって聞いたら、すげぇ喜ぶぞ〛
〚えぇっ……じゃなくて! たとえばさぁ――〛
〚っと悪い、そろそろ身体冷えて来たから部屋に戻るは〛
〚待って! 一つだけ。あの時の約束、覚えてる……よね?〛
〚えーと……あれか? 鈴の料理の腕が上がったら、毎日料理を……〛
〚そうそれ!〛
〚奢ってくれる、って奴か?〛
〚……はい?〛
〚だから、俺に毎日飯を御馳走してくれる約束だろ? いやー一人暮らしの身には有り難い――〛
言いきる前に、一夏は平手打ちを食らった。
〚ゑぇ!?〛
〚最っ低!!〛
〚!? あの、だな鈴……?〛
〚女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて、男の風上にも置けない奴! 犬に咬まれて死ね!!〛
〚な、なんで怒ってるんだよ!? ちゃんと憶えてただろうが!〛
〚約束の意味が違うのよ、意味が!〛
〚じゃあ説明してくれよ、どんな意味が有るってんだ〛
〚せ、説明って……そんな事出来る訳無いじゃない!〛
平行線だ。
〚じゃあこうしましょう。来週のクラス対抗戦、そこで勝った方が負けた方に何でも言う事を一つ聞かせられる〛
〚おぉ良いぜ。俺が勝ったら説明して貰うからな〛
〚そっちこそ、覚悟しときなさいよ!〛
鈴は荒々しく部屋を後にした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
〔どうした?〕
暗い道を歩く影が二つ。
〔アフリカの件だ〕
〔メディアにも出てくるようになったな、傭兵にとってはまたとない稼ぎ時だ〕
〔あぁ、私にもカラードの仲介で依頼が来る。だが私はそれを受諾できない〕
〔今まさにミッション中だしな。それで?〕
〔これは私からの依頼だ。――某国に行って来れるか?〕
〔ア?〕
〔情報が入った。恐ろしく強い傭兵が居るらしい。
機体名は“ステイシス”と“メリーゲート”。真偽を確認してきて欲しい〕
〔そいつらが“本物”か、他にも居るのか。て事だな?〕
〔あぁ、お前なんぞには貸りを作りたくもないが、ここでの依頼を
〔で、俺か〕
〔私がミッションを仲介し道を作る。
そのミッションを遂行する間にステイシスのパイロットと接触、もしオッツダルヴァであれば渡して欲しい物が有る〕
〔……考えさせてくれ〕
〔報酬は
〔じゃあ、俺は先に帰るぜ、一夏も帰っているだろうしな〕
……煙草でも吸うか
思って歩きだすヴィクトルは、その歩みを三歩目で止める。
〈…………〉
ゾクリ、彼は背筋が凍る感覚を得る。
……何だ? これはまるで……
発する殺気を隠そうともしない、まるでリンクスのそれだ。
「――一人になれる時間が少ないな、この学園は」
「貴女だったか、ジュリアス・エメリー」
「ユリア・シルヴィアと名乗っている」
振り向く先には、ゲルマン系の少女が立っていた。
「メルツェルから聞いていたが、まさか生徒とは……それも一年先輩に当たるのか」
「彼と早くに合流していてな、今度は私が“表”からの要員となるつもりだったんだが……」
「悪いな、仕事を奪う形になった」
「戦力が増えて悪い事は無いだろう? ――あの後、遂げられたのか?」
「あぁ、クレイドルは墜ちた。私と真改の死を以ってな」
「そうか……っ!?」
ガサリ、と、近くの茂みが鳴った。
――心当たりは?
――無いな
アイコンタクトを取った。ヴィクトルは手首に隠した刃を抜き出す。
と、
〚うっ、ぐすっ……〛
「凰鈴音? 何故ここに?」
そこには泣き顔に鈴が居た。
〚ヴ、ヴィクトぉ……一夏が、一夏がぁ〛
彼女は泣きそうな、と言うか既に泣いている目を彼に向ける。
「知り合いか?」
「まぁ、そんな所だ」
「続きはまた、後日に」
「あぁ」
ユリアは消えるようにその場から去る。
「どうしたんだ? 全く……」
ともかく、このままにしておくと風邪を引きそうなので、ヴィクトルは彼女を抱き上げて自分の部屋へ歩く事にした。
……? アタシ、なにを?
〚っておわぁぁ!?〛
――ヴィクトルは自分を抱きかかえていた。
『多少落ち着いたか、いや、別の方向に落ち着かんか』
言って、彼は鈴の身を地面に立たせる。
『会話がし
……校則に抵触しているがこれは秘匿してくれるな?』
〚え? う、うん〛
『まぁ、なんだ。事情を聞かせてくれ、茶でも飲みながら』
鈴が“意識”を取り戻した時点で、既に1125室の前まで来ていた。
「帰ったか、随分遅か」〚ってえぇ!? まさか泣かした上に連れ込んだのか!?〛
『待て箒。これには事情が――』
〚ふっ、
立て掛けてあった竹刀を素早く構える。
それに対し鈴の目が鋭くなった。
〚問答無用! ぜぇぇい!〛
箒が上段の面を放つ瞬間、鈴がISの右腕を部分展開し――。
〈……ッ〉
その二つは両者に割って入るヴィクトルによって阻まれた。
左の肘を折り、竹刀を滑らせた上で手首に当てる事で止め、
右手は開き、ISの右前腕を掴み減速させる事で対応した。
〚!〛〘っ!?〙
『思い切りが良い、双方とも素晴らしい技能だが……使いどころは今では無い』
〚ぅ……〛
〚……ごめん〛
『番茶で構わんな? 箒もいるか?』
〚うん〛
〚あぁ〛
改めて事情を聞いたが、
……何とも、滑稽なもんだ
ヴィクトルが思う横で、
〚全く、あいつは何時もそうなんだ。うんうん〛
箒は同情する点が多いらしく、しきりに頷きを繰り返す。
『多少でも気は晴れたか?』
〚うん、ありがと〛
『茶はいつでもある、飲みたくなったら来ると良い』
〚随分遠回しだな、いつでも相談に乗ると言えば良いのに〛
〚まぁ、そうするわ。――ところで、箒は何で此処に?〛
『同室な訳だが』
〚えっ?〛
〚えっ?〛『えっ?』
結果から言うと、鈴は事あるごとに1125室にやって来る様になった、とだけ記しておく。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
同刻、アレックスが自分の部屋に歩みを進める。
……アフリカか、傭兵稼業を始めるには丁度良いが……
なんて事を考えつつ扉を開くと、
〚えぇ? アレクが? そんな奴には見えないですけど〛
〚人は見掛けによらないものよ? あっ、お帰りなさい〛
〚フィオナか、ただいま……アン?〛「なんでお前が!?」
アレックスの動揺は、また後日……。
間に合った……。年を越える事が無くて良かったです。
丸々一週間、ジュリアス・エメリーの偽名をどうするかで悩み続けました。
彼女の人種が分からな過ぎて困る……皆はどう思う?
ちなみに、
ジュリアス→ユリウス氏族→ユリア
アスピナ・レイレナード出身→ゲルマン系、東欧出身?→シルヴィア(独+芬)
なんて感じでした。
まともな情報があれば、是非にご教授頂きたい(ほんとに