結城創真の暗殺教室   作:音速のノッブ

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第121話 死神の時間 3時間目

『聞こえるかな?E組の皆。ここから外に出るための扉のロックは僕の虹彩でしか開かない。だから、僕を倒さなければ、ここから出られないってこと。だから、どこからでも掛かっておいで。僕も腕試し代わりに少し体を動かしたいからね」

 

 

マイク越しにそう言われ、スピーカーの電源は切れた。

 

 

「よし……………ここで固まってちゃダメだ。グループを3つに分けよう」

 

 

磯貝の提案で、Aグループを戦闘班。Bグループをビッチ先生の救出班。Cグループを脱出への出掛かりを捜す班に別れた。

 

 

ちなみに、隼はA班。碧海はB班だ。

 

 

「よし律、円滑な連絡は任せるぞ」

 

 

『やる気しねぇ…………死神さんに逆らうとかまじありえね~』

 

 

律、あっけなく終了。

 

 

「無力化されたのか……………この短時間で………」

 

 

やはりただ者ではないと、皆は実感する。

 

 

「トランシーバーアプリがあるから、それ使っていこう」

 

 

「よし…………散るぞ!」

 

 

磯貝の指示で、皆は死神のアジトをバラバラに散って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A班

 

 

「で、どういう方針で行く?」

 

 

隼が皆に尋ねる。

 

 

「死神は必ず不意打ちで襲って来るはず。だから不意打ちをかわしてバトルに持ち込む。それで、一斉にスタンガンで襲い掛かって、気絶に追い込む」

 

 

「確かに、殺し屋は正面戦闘は得意じゃないからな」

 

 

「それなら、行けるかも」

 

 

カツーン

 

 

──────────足音。そして、どんどん近づいてくる。

 

 

「!!」

 

 

まさかの正面から死神は来た。

 

 

だが、姿が見えない。雰囲気さえも自在に操ってるとでも言うのか。

 

 

「バカが!」

 

 

「ノコノコと出てきやがって!」

 

 

吉田と村松がスタンガン片手に、懐に飛び込む。が、その攻撃は空を切った。そのまま肘打ちされ、意識を刈り取られる。

 

 

「殺し屋になって、最初に極めたのは戦闘技術だ」

 

 

そう語りながら死神は木村を吹き飛ばす。

 

 

「殺し屋には99%いらないが、これがないと1%の標的を殺れない…………世界一を志すなら必須さ」

 

 

死神は瞬時に茅野の前に移動する。

 

 

(((な…………!?)))

 

 

皆が驚く暇もなく────────

 

 

ベキィ!!

 

 

「あっ…………が………」

 

 

膝蹴りが茅野を直撃する。メキ、バキ、ベキと骨が折れるような音が響く。

 

 

「…………っと。アバラ折っちゃったか。残りの人質は粗末に扱えないな」

 

 

その言葉に、渚の目の色が変わる。

 

 

「どいて皆。僕が殺る」

 

 

渚はナイフを取り出し、ゆっくりと死神に近付く。怒りに駆られたのだろうか?いや、違う。……………あの技……………猫だましをやる気だ。

 

 

皆は瞬時に、渚の思惑を理解する。渚は突入前にこう言っていた。

 

 

ナイフの方を警戒していたら、猫だましを。ポケットの方を警戒していたら喉元にナイフを。どっちにしても隙は一瞬作るから、その隙に一斉に………………と。

 

 

渚は横目で茅野が大丈夫というサインを確認する。超体操着はゲル状の骨組みで、強い衝撃を受けると硬く固まり、音をたてて崩れるダイラタンシー防御フレーム。その音をアバラ骨の破壊と思い込み、それに渚が激怒したと思っている。

 

 

渚と死神の距離がどんどん縮まっていく。

 

 

ついに目と鼻の先にまで近付き、渚はナイフを手放し、猫だましを…………………………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚の目の前に死神の手があった。そして…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バアァン!!

 

 

それは離れている皆の耳にも大きく響く音だった。

 

 

「渚!?」

 

 

思わず隼が叫ぶが、渚は何も答えない。

 

 

「フフフ………」

 

 

死神の姿が消える。

 

 

「どこに行」

 

 

隼は最後まで言い切れなかった。何故なら後ろから強い衝撃が襲ったからだ。5秒足らずで、死神は全員の意識を刈り取った。そして、ふわりと渚の前に戻ってくる。

 

 

「クラップスタナー。人間の意識の波長の山が最も敏感なときに、音波の最も強い山を当てる。当分は神経が麻痺して動けなくなる」

 

 

模範解答を上の空で聞いていた渚は膝をつき、力尽きる。

 

 

「さて……………残りは何人かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、B班はビッチ先生の捕まってる部屋のドアの前へたどり着いた。三村が爆弾をセットし、起爆の用意をする。そんな彼らから少し離れたら場所で、碧海は耳につけてる通信機に耳を傾けていた。

 

 

(隼の超体操着に通信機をつけといたけど……………全滅しちゃったみたいだね。まだ1分前に散ったばかりなのに……………)

 

 

「碧海ちゃん?どうかした?」

 

 

「あ、ごめん莉桜ちゃん。少し考え事してたよ」

 

 

「ほら、中入るよ」

 

 

中村に促され、碧海も中に入る。中では既にビッチ先生を縛っていた縄を切り、気絶しているビッチ先生を杉野が背負っているところだった。

 

 

「じゃあまずC班と合流しよう。岡島君と三村君が先導して。私は後衛につく。碧海さんは真ん中で直ぐに戦闘が出来るように備えといて」

 

 

「了解、片岡さん」

 

 

皆は出口に向けて歩き出す。

 

 

「良かった~ビッチ先生が無事で」

 

 

「まだ教えてもらいたい事が沢山あるもんね」

 

 

倉橋と矢田が話しているのを感じながら、碧海はスマホで時間を確認する。間もなく7時になろうとしていた。

 

 

(さて…………創真君気付いてるかな?気付いてればそろそろ………)

 

 

ドサッ

 

 

皆が振り向くと、杉野と片岡は倒れ、代わりにビッチ先生が立っていた。

 

 

「ずっと自分の本来の姿を忘れていたわ。彼のお陰で目が覚めた。さて…………逝かせてあげるわボーヤ達」

 

 

「まさか死神につくとは…………でも、私達も訓練を受けてる。この人数差で勝てると?」

 

 

「そう思うのアオミ?なら、最後の授業をしてあげるわ」

 

 

ビッチはゆっくり近付き、襲い掛かかる…………!!

 

 

「あっ、痛うっ!!」

 

 

「へ?」

 

 

「小石踏んだ………………」

 

 

「はぁ………………」

 

 

「大丈夫かよ…………」

 

 

半分呆れ気味で矢田と三村が起こそうと近付く。

 

 

プシュ

 

 

ビッチ先生はいきなり立ちあがり、2人の首に注射器で何かを投与する。そのまま岡島と中村にもたれ、注射。そして、落ちていた布を足で手繰り寄せ、神崎と速水の方に投げ、布越しに注射する。近くにいた倉橋の首にも容赦なく打ち込む。

 

 

(後はアオミだけ………!!)

 

 

突然の攻撃に固まっているのか、動かない碧海にビッチ先生はスッと近付き、首筋に注射─────────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシッ!!

 

 

「!?」

 

 

「ざんねーん」

 

 

注射器を持っている手を、しっかり掴む。ビッチ先生はもう一方の注射器で打とうとするが、碧海の蹴りで床に落ちる。

 

 

「私はね、創真君から体術教わってるんですよ。創真君の教えは容赦ないですよ。私が女なのを関係なく、普通に蹴りを入れてきたりしますから。まぁ、でも特殊な空間でやってるんで、痛みはないんですけど、ね!」

 

 

容赦なく、ビッチ先生に蹴りを喰らわす。至近距離からの蹴りを対処できる訳もなく、ビッチ先生は苦痛の表情を見せる。

 

 

「さて、死神が来ると相手が悪い。ここは一旦逃げよ」

 

 

碧海は懐から球体を取りだし、スイッチを入れてビッチ先生に向けて投げる。その球体のライトの部分が赤く点滅する。

 

 

(まさか爆弾!?)

 

 

ビッチ先生は慌てて部屋を出る。

 

 

すると

 

 

プシュー!!

 

 

「(煙幕!?)」

 

 

「流石に殺しはしないよ。先生だし」

 

 

そんな声が聞こえたかと思うと

 

 

ドコーン!!

 

 

爆発音。直ぐに煙幕は晴れ、中の様子がうっすらと見えてくる。部屋のまん中に大きな穴が空いていた。綺麗にあいた穴を覗き込むが、碧海の姿はない。

 

 

『イリーナ。今の音は?』

 

 

「床に穴を開けてさらに下へ逃げたわ。追ったほうが良いかしら?」

 

 

『いや、良いさ。僕は残りの生徒の所に行くとする』

 

 

通信は切れ、ビッチ先生は暫く突っ立っていたが、身を翻し、部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛たた……………流石創真君の秘密兵器。ちゃんと説明通りの威力だね」

 

 

さらに地下へと降りた碧海は歩きながら呟く。さっきの爆弾をどう調達したかと言うと、前に体術の特訓で武器がたくさんある秘密の部屋、王の間に来たときに何個か役立ちそうなのを取ったのだ。

 

 

─────────許可は取ってないが。

 

 

「まぁ、後で怒られるかも…………ま、いっか」

 

 

ポジティブな碧海は階段を降り、重厚そうな扉を開ける。ドアから向かって右側は檻だ。

 

 

「……………ここはあいつのアジトかな?」

 

 

檻は固く、壊すのは難しそうだった。変わって左側は、まだ道が続いてるようだ。

 

 

「ま、行くしかないよね……………」

 

 

ぶっちゃけあんまり行きたくないが、足を1歩ずつ進めていく。だんだん暗くなり、少し怖くなる。ライトを使うと位置がばれそうなので、自分の目を頼りに進んでいく。

 

 

「どこまで続くんだろう……………?」

 

 

そんな碧海の疑問に答えてくれるものは誰もいない。

 

 

ゴン!

 

 

「痛!」

 

 

何かに頭をぶつけた。手を前に出すと、コンクリートの感触が伝わってくる。スマホのライトをつけてみると…………単に壁だった。

 

 

(まさかの行き止り……………?)

 

 

碧海はライトを上に向けて見る。

 

 

「ええ…………天井が見えないよ……………」

 

 

スマホのライト程度では上まで見えない。

 

 

「ほんとここ何処…………?」

 

 

「教えてあげようか?」

 

 

「うん、是非お願………………」

 

 

言いかけた所で後ろを振り向くと、死神がいたのは言うまでもない。碧海は引きった笑顔のまま固まる。

 

 

「ここは国が作った地下放水路。僕のアジトと繋げておいたのさ。……………さて、君以外は全員捕らえた。で、どうする?」

 

 

こりゃ無理だ……………碧海はそう思い、静かに手を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ。ビッチ先生から逃げれたと思ったら……………はぁ」

 

 

「彼から逃げれるとでも思ってたのかしら、アオミ」

 

 

「………………ビッチ先生位なら瞬殺だったのにな~」

 

 

「………………………」

 

 

ビッチ先生は碧海を一瞬にらみ、檻の外に出る。

 

 

「さて………お次は烏間先生だ。彼を捕らえておけばメリットがある。これで計画は仕上がる」

 

 

こいつならやりかえない、と皆は直感する。それにしても……………なんて強さだ。今の自分達が100人いても勝てない。桁違いだ。そう結論付けるしかなかった。

 

 

そして、皆のどこか心は沈んでるように見えた。

 

 

「…………………………………あ!!」

 

 

突然、碧海が大きな声を上げた。

 

 

「どうしたの碧海ちゃん?……………あーなるほどね」

 

 

カルマも納得した様子。

 

 

「ねー死神さん。モニター見てみ。あんた計算違いしたみたいだよ」

 

 

カルマに言われて、死神もモニターに目をやる。

 

 

そして表情を曇らせた。

 

 

「やれやれ……………ここで来たか」

 

 

モニターには、烏間先生、殺せんせー、そして創真が映っていた。監視カメラに気付いた創真がニヤリと笑ったかと思うと、映像が途絶えた。




THE NEXT story 4/4 PM 22:00


明日、塾の模試があるのでお休みです。


と言うわけで、水曜日にまたお会いしましょう!
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