結城創真の暗殺教室   作:音速のノッブ

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─────────さらば、殺せんせー。


第170話 恩師の時間

創真side

 

 

「ヘックシ……………って、私なんて格好!?」

 

 

あ、超体操服が破れたのか。

 

 

「可哀相」

 

 

「何が!?」

 

 

「僕に任せて!一瞬で縫うよ!」

 

 

ホリーが何処から持ってきたのか、糸と針を持って云う。そして、文字通り一瞬で服の破れた部分を直す。

 

 

「ありがとうホリー君!」

 

 

「いいのいいの………………ほんと可哀想だ」

 

 

「だから何が!?」

 

 

………………やれやれ。

 

 

「いや、殺せんせーの事だ!少し位巨乳になってるかもしれないぞ?」

 

 

「そうなの、殺せんせー?」

 

 

岡島がそう言い、矢田さんが殺せんせーの方を振り返ると…………………スローモーションで殺せんせーはゆっくり倒れていった。

 

 

「流石に疲れましたねぇ……………」

 

 

何処か満足気で、殺せんせーは嬉しそうに云う。

 

 

「皆さん、暗殺者が瀕死のターゲットを見逃してどうするんですか?」

 

 

「「「!!」」」

 

 

「殺し時ですよ…………楽しい時間には必ず終わりがつきものです…………………」

 

 

空を見上げる。レーザーの光は刻一刻と輝きを増していた。

 

 

もう…………………時間がなかった。

 

 

「皆……………………このまま天に任せるという選択肢もある。手を挙げてくれ……………殺したくないやつ………?」

 

 

僕含め全員挙手する。当然だ。殺したいと思うやつはいない。下ろしてくれ、という磯貝君の言葉に手を下ろす。そして、磯貝君も意を決して…………もう1つの選択肢を云う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………殺したい奴……………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷い、葛藤………………僕も思うところはたくさんあった。だが、僕らは殺し屋。ターゲットは先生。

 

 

2度と現れないであろう、恩師を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────全員が手を挙げた。

 

 

 

自分達以外の手で殺されたくなかった。

 

 

殺したくないと同時に、殺したい───────これが、僕らの答え。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

 

全員が殺せんせーの触手を掴む。

 

 

期末テストで全員が50番以内に入ったときに教えてくれた弱点───────『全員で拘束されれば動けない』

 

 

「ネクタイの下の心臓…………最後は誰がやる?」

 

 

隼が皆に訊ねる。皆は、創真やカルマの方を無意識に見つめる。

 

 

「……………お願い、皆。僕に殺らせて」

 

 

そんな中、渚が名乗り出た。

 

 

「……………文句はねぇよ」

 

 

「渚はここじゃ首席だしね」

 

 

寺坂とカルマが同意する。そして渚は創真の方を見る。創真は少し黙っていたが─────────────

 

 

「…………殺りたいんでしょ?譲るよ」

 

 

「…………ありがとう、創真君」

 

 

渚は殺せんせーの上に股がる。

 

 

「……………ネクタイの上から刺せますよ。穴を開けてしまいましてね……………これも縁だと思い、残しておきました……………さて、皆さんにお別れの言葉を言っていては時間が足りません。長話は無用ですが……最後に出欠を取ります。全員が先生の目を見て返事が出来たら、殺してよし!では、呼びます」

 

 

皆の顔に緊張が走る。そして、殺せんせーは名前を──────

 

 

「その前に、先生方やホリー君達に挨拶しておかなければ」

 

 

────────呼ぶ前に烏間らの方に首を向けた。

 

 

「イリーナ先生、参加しないんですか?」

 

 

「この暗殺はあんたとガキ共の絆よ…………私はもう充分貰ったわ」

 

 

その言葉に、殺せんせーは満足げにうんうん、と頷き、次に烏間と氷室の方に顔を向ける。

 

 

「烏間先生、氷室先生…………あなた達こそが、生徒達をここまで強くしてくれた。これからも彼等の相談に乗ってあげてください」

 

 

「……………この一年、お前には迷惑を掛けられたが、生涯忘れることはないだろう。さよならだ、殺せんせー」

 

 

「ええ……………私もこの1年は絶対に忘れません。あなたの事も忘れませんよ」

 

 

2人の言葉に、殺せんせーは嬉しそうな表情を見せる。

 

 

「そして、ホリー君、デュオ君、キバット君………………君達と過ごせて本当に楽しかった。君達の持つ力を使って、多くの人の助けになってあげてくださいね」

 

 

「…………分かった。約束するよ!」

 

 

「……………あぁ。さらばだ、殺せんせー」

 

 

「寂しくなるぜ………………」

 

 

「ヌルフフフフフ…………そして…………」

 

 

最後に殺せんせーは、いつの間にか来ていた隼と創真の親の方を向く。

 

 

「あのときしたアドバイスを実践できてるようですねぇ……………ヌルフフフフフ」

 

 

「こりゃ、お前さんの事だな」

 

 

「……………何の事だかさっぱりだな、このタコ」

 

 

隼の父親はフン、とそっぽを向く。

 

 

そして

 

 

「お待たせしました。それでは呼びます…………はっ!!早退した人はいませんよね!?」

 

 

「「「はよ呼べ!!」」」

 

 

────────最期まで殺せんせーらしいな。

 

 

創真は改めてそう感じた。

 

 

「では─────────」

 

 

カルマから一人ずつ呼ばれていく。ある者は涙ぐみながら、ある者はハッキリと、ある者は涙を堪えながら………………それでも、一人ずつ確かに呼ばれていく。

 

 

そして────────────

 

 

「結城 創真君」

 

 

「はい」

 

 

「月城 隼君」

 

 

「…………ん」

 

 

「月城 碧海さん」

 

 

「…………はいっ」

 

 

全員の出欠が終わった。

 

 

「君たちに殺されて…………先生は幸せです」

 

 

渚はナイフの狙いを殺せんせーの心臓に合わせる。今までの思い出が走馬灯のように駆け巡る。この教室を修了させる…………自分達の手で。渚の手が震えていた。殺せんせーを尊敬している彼であるからこそ、プレッシャーに似たものを感じていた。感謝、惜別と言った感情ではなく………言葉では言い表せない感情を吐き出すように、声をあげながらナイフを差し出し───────────!

 

 

「そんな気持ちで殺してはいけませんよ。落ち着いて笑顔で」

 

 

触手を首元にすっと置いて、殺せんせーは云う。落ち着いた渚の頬を、すうっと温かいものが流れていく。改めて渚の脳裏に、色んな思いが駆け抜けて行く。

感謝、惜別、尊敬、そして悲しみ。そして…………………渚は殺せんせーに諭され───────いや、教え通りに、笑った。

 

 

そして、云う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さよなら、殺せんせー」

 

 

「はい、さようなら」

 

 

渚は全身で礼をするようにして、ナイフを刺し出した。殺せんせーの全身が優しく、暖かく弾け、僕らの手から消えていった。

 

 

最後に────────卒業おめでとうと聞こえた。

 

 

そして────────殺せんせーの全身は粒子となって────────空へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆は泣いた。泣き叫んだ。ほぼ全員が涙を溢した。ほぼ、と言うことは全員ではなかった。唯一、涙を見せぬ創真が小声で呟いた。

 

 

「こうなるとは覚悟していたが……………やっぱり悲しいです、殺せんせー。あなたには、こるからも僕らの成長を見守ってほしかった。僕らの最高の先生、最高の恩師のあなたに、ね……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、教室に戻るとそれぞれの机にアドバイスブックとアルバムが置いてあった。超分厚いのだが、それでも皆暫く読んでいたのだが、アドバイスが細かすぎてうんざりしてきて、結果皆ぐっすり寝ていた。皆が寝ているなか、創真は独り屋根上で寝そべり、物思いに耽っていた。

 

 

(ほんと…………………寂しくなるね)

 

 

そこへ

 

 

「そーうーまーくん!」

 

 

碧海が上ってきた。そして、隣に寝そべる。

 

 

「……………創真君」

 

 

「うん?」

 

 

「創真君は、殺せんせーが死んだとき何か1人で呟いてたよね?何を言ってたの?」

 

 

「そりゃ、秘密だね」

 

 

「そう………………あのね、創真君」

 

 

急に真剣な口調になった、碧海はスッと立ち上がる。

 

 

「私、決めたんだ。将来、創真君が社長になったときにさ、君を支える役割を担いたい、と」

 

 

「………………………………」

 

 

「あのね…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は創真君が好きだよ…………君が私を助けてくれた時からずっと………………」

 

 

「………………………………」

 

 

創真は何も言わず、ピョンと立ち上がる。暫く何も創真は言わなかった。その間、碧海はじっと返事を待つ。

 

 

そして遂に、創真は少し口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秘書…………って所かな」

 

 

「…………………へ?」

 

 

創真は振り返って云う。

 

 

「いや、だーから。僕が父さんの会社継いで社長になったら、秘書の席でも作ろうかなーって事」

 

 

「…………!!それって………」

 

 

「まーそゆことだ。それと……………さ」

 

 

創真は少し照れ臭そうに言った。

 

 

「もし、陽菜乃よりも先に、君に会ってたら、君が1番好きになってたかもなー…………って」

 

 

「…………………そっか」

 

 

実質的にフラれたのだが、碧海はさほど落ち込んではいなかった。その時、暖かい光が彼らを照らした。彼らを照らす光の正体は日の出だった。

 

 

「今日でこの学校ともお別れ、か」

 

 

「そうだねー。もう1年くらい、ここで過ごしたい気もするなぁ……………」

 

 

「それは同感」

 

 

「おーい!お前ら!」

 

 

そんな2人の元に、キバットが飛んできた。

 

 

「お前ら、皆もう起きてるぞ?いつまで2人でイチャイチャしてんだ?」

 

 

「イチャイチャはしてないがな……………そろそろ戻りますか」

 

 

「うん!」

 

 

そんな2人を見送ったキバット。すると、音もなくホリーとデュオが現れる。

 

 

「おう、オメーら。お前らはここでの生活は楽しかったか?」

 

 

「まぁ、悪くはなかったな」

 

 

「僕もここでの生活は楽しかったよー。ただ1つ残念なことが……………もっとカップル成立してほしかったよ───────!!」

 

 

「……………そこかよ」

 

 

「まぁ……………確かに、もっとくっついて欲しかったな」

 

 

「お前もか」

 

 

相変わらずゲスイ聖霊と蝙蝠、ホリーとキバットであった。

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