「………あれ?ここは……?」
倉橋は目が覚めると、自分が椅子に縛られているのに気付いた。
(あれ、私なんで縛られてるの?それにここは………………あ、思い出した!確かお土産を買いに行ったら意識が無くなった気が………)
「目が覚めたかね、倉橋 陽菜乃さん」
倉橋が意識を失う前の事を思い出した直後、奥から見知らぬ男が現れた。
「あなたは誰?」
「私?名乗るほどの者ではないさ。手荒な真似して悪かったね。ここは郊外の廃工場さ」
「……………何が目的なの?」
「君には結城 創真の会社のデータを獲得する餌になってもらうよ」
その男は説明を始めた。自分は創真の会社のライバル企業であり、だんだん実績が延びてきたが創真の会社には及ばないため、会社の機密データを全て盗み、技術力等を獲得する……その為に創真の近辺を調査し、ターゲットを倉橋にして、今日実行した、と言う趣旨を。
「そんな……」
「まぁ、彼の性格上、助けないと言う選択肢は無いだろうねぇ。私の勝ちは決まったものだ。おっと、もうすぐ7時だ。随分と眠ってたねぇ、倉橋さん」
男が高らかに勝利宣言するのを倉橋は黙って見てるしかなかった。
「……ここか」
倉橋救出作戦の参加メンバーの創真、ホリー、デュオ、キバット、氷室は、指定場所の廃工場に来ていた。
「周りには見張りが数名いるぜ。中に入ったら彼女はすぐそこにいるはずだぜ」
周りを偵察していたキバットが創真らに報告した。
「第1目標は、倉橋さんの救出。からの、敵の制圧、ですね?」
「氷室さんの言う通りです。じゃ、打ち合わせ通りに…………行くよ」
創真の言葉に皆は頷き、一斉に行動を開始した。
「さーてそろそろ来るか……?」
男がそう呟いた時、ドアが叩かれる音がした。
「入れ」
ドアが開き、姿を現したのは
「創真君!」
「フハハハハ!やはり私の計画通りだ!さぁて、データを渡してもらおうか」
創真は無言でケースを男の方に投げ飛ばした。男が中を確認すると、チップが入っていた。男は部下に本物か確認するように言った。
「ご苦労だった。だが………生きて帰れるとでも?」
胸元から銃を取りだし、創真の方に向ける。
「ダメ!創真君、私の事はいいから逃げて!死んでほしくない!」
「黙れ。安心しなお前もすぐに逝かしてやるからな!」
バン、と言う乾いた銃声が響いた。倉橋は思わず目を瞑った。銃弾を受けた創真はゆっくり倒れ──────────
「……………うーん。流石に、この程度じゃ傷つかないな。せめて機関銃とかじゃないと、かすり傷すら付かない」
──────────倒れなかった。
「な、何故だ!なぜ倒れない!?脳に命中したはずだ!なのに何故死なない!?」
倉橋が目を開けると、そこには驚いている男と余裕そうに立っている創真の姿があった。
「……何故生きてるか?答えは簡単さ……」
その瞬間、創真の体が輝き出した。その場にいた全員が目を瞑った。すぐに光は収まった。目を開けると、そこには全身白いファッションで、白い羽のマフラーを巻いている中学生位の男が立っていた。
「僕は創真じゃない。名前はホリー。『コピー』で化けてただけさ」
「こ、コピーだと…………?」
「あー、別に知らなくて良いよ。どうせ忘れるし」
そう喋りながらホリーはポケットから笛を取りだし、口に加える。
ピ─────────!
パリン!!
2人の男が窓ガラスを突き破って入ってきた。それとほぼ同時に男が持っていた銃が弾かれた。銃は転がり、男は手を押さえる。
「だ、誰だ!?」
男が銃声のした方を向くと、そこには黒の少年と、もう1人、銃を持っている少年がいた。
「創真君!」
「やぁ、倉橋さん。今度は本物だよ」
創真の手にはドミネーターがあった。
「えっと……その全身黒い人は?」
「俺はデュオだ。元死……」
ここで創真が口をふさいだ。
(それ、言っちゃダメ!)
(…………すまん、つい癖で)
目配せでそんな会話を繰り広げるデュオと創真。
「くそ!舐めた真似しやがって!結城 創真!」
「あ?舐めた真似……だって?それはこっちの台詞だよ。よくも大切なクラスメイトを巻き込んでくれましたねぇ?」
創真から出される殺気に、男は冷や汗をかく。恐怖を払うように、男は大声を出す。
「ふん!だがこっちには人手が沢山いる。それにまだ人質も……ってあれ?」
見渡すと、
「返してもらったよ」
説明すると、話してる間にホリーがスキル『高速移動』で縄を切って救出→そのまま創真にお姫様だっこさせる→倉橋、赤くなる。
「これで人質もなし。恐くもないねぇ」
「ちっ!だが逃がすか!お前ら、出てこい!」
シーン…………………………………………(-_-)
────────誰も出てこなかった。
「ちょ!?お前ら!」
「誰も来ませんよ、もう。全員、私が事前に意識を刈り取っておきましたから」
粗大ごみを捨てるかのように気絶した男を投げながら来たのは氷室だった。
「お仕事終わりました。創真様」
「おー、どうもありがとうございます、氷室さん」
「くそ!こうなったらお前ら全員私の手で殺してやる!」
男はナイフを持ち、突進してきた。
「させるか!」
その声と伴に現れたのはキバットだ。
「な、なんだこいつは!?コウモリが喋った!?」
「ガブッ!」
キバットはナイフの刃を噛み砕いた。
「観念しやがれ、こいつ!」
キバットの渾身の体当たりが命中し、男はそのまま頭を床に打ち付け、昏睡に陥り、寝息をたて始めた。
「創真君、ありがとう!助けに来てくれて!」
「いーえ。無事で良かった」
倉橋が創真に抱き付き、それをにやにや見つめるホリー達。
「あ、創真君。私言いたいことがあってね………………
私、創真君の事が好き。付き合ってください」
その言葉にキバットが特ににやにやする。
「喜んで」
「良かったー………………って、ええ!?」
倉橋は大声をあげる。まるで驚いたかのように。
「ど、どうしたんです?急に大声なんか出して………」
「え、だって…………まさか創真君がOKしてくれるなんて思ってなくて……………デートだって、今日が初めてだったし……………」
「良いこと教えてやるぜ、お嬢ちゃん。創真は君のこと好きだったみたいだぜ。優しいところとか、あと笑顔が好きとか言ってたぜ?」
ニヤニヤ顔のキバットがそう教えると、倉橋は顔をパッと明るくして創真の方を見る。
「え、そうなの!?それ本当、創真君?」
「え、まぁ…………本当です」
「そうだったんだ………………あれ、ちょっと待って」
倉橋はある事に気が付いた。
「さっき………………て言うか今も…………コウモリが喋ってたよね…………?」
「………………………ホリー」
倉橋の質問に創真は答えず、ホリーの名を呼ぶ。
呼ばれたホリーは頷いて、倉橋の後ろに回り込み、首もとをトン、と叩く。気絶した倉橋が倒れるのを創真が受け止める。
「………………キバット」
「………………わりぃ。つい、喋っちまった」
「次から気を付けてくれよ………………ホリー」
「言われなくても分かるよ。僕らのことを彼女の記憶から消せるか、って言いたいんじゃない?別に出来るよ…………ただ、魔力の消費が激しいんだよねー。1日三回程しか使えない高位魔法だから、疲れるしあんまりやりたくないけど」
「じゃ、頼む。流石に、君達の事は言えないからね…………」
「ま、確かに部外者に知られるのはこちらとしても、極力避けたいからな……………だが、もし隠し通せない時が来てしまったら、お前ならどうする、創真?」
「…………………その時はその時に、だな。それよりも、倉橋さんが無事で良かったよ」
「ほんとだよー。こんな美女に傷1つでも付いたら、世界の終わりだねー」
「世界じゃねぇな。宇宙の終わりだぜ!」
「……………ホリーとキバットは相変わらず大袈裟だな」
ホリーとキバットにデュオは静かにツッコミを入れるのだった。
かくして、事件は終息を迎えたのだった。
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