それではどうぞ!
「どうしましたか、創真様?その程度ですか?」
「そんなわけないっしょ!」
こんな状況にも関わらず、創真と氷室は崖登りの早さを競っている。
「やっぱり凄すぎ……」
そんな様子を見て呟いたのは岡野だ。
「あの2人もですが、皆さん崖登りが上手いですね」
「裏山でやらせている。どんな場所でも暗殺できるようにな」
殺せんせーの疑問に烏間が答えた。
「ちょっと、早く登りなさいよ!腕が疲れるわ!」
────────つーかビッチ先生、自分で登れよ。
隼は心の中で呟き、少し上にいる片岡に話し掛ける。
「なんでビッチ先生ついてきてんだ?」
「置き去りものとか嫌なんだって」
「………重いお荷物だな」
「なんですって!?隼、後で覚えてなさい!」
「へいへい」
あっという間に皆は崖を登りきり、通用口のドアの前にたどり着いた。
「ドアの電子ロックは解除しました。監視カメラも加工済です」
「よし……では律、ルートを再確認だ」
烏間の指示により、律はマップを表示した。
「んー……今気づいたけど、このホテル、テレビ局みたいに占拠されにくい構造だね」
「創真君の言う通りだ。だから、ここのホテルはマフィアらが愛用するわけだ」
「使う奴等からしたら好都合だろうが、攻め込む側からしたらめんどいお話だね」
皆の内心を代弁するように、創真はため息混じりで言った。
「よし、では行くぞ」
ついに侵入。烏間先生の指示で皆は素早く進んでいく。
そして、いきなり難所に差し掛かった。ロビー付近には大量のフロントマンや警備員が配備されていた。
(人数を絞っては作戦の幅が狭まる。どうするかね……)
烏間先生の思っているであろう戸惑いを創真も対処法を考えていた。そんな中、異端を付く事を言い出したのはビッチ先生だった。
「何よ。普通に通ればいいじゃない」
「……………は?この警備の中どうやって通るんだよ?」
隼が怪訝そうな表情で聞く。
「だから……普通によ」
置いてあったシャンパングラスを手に取り、ビッチ先生は堂々と歩き、一人のフロントマンにぶつかった。
「あ、すみません。お酒で酔ってしまって」
「い、いえ。お気になさらず……(うお……超可愛い……)」
ぶつかられたフロントマンはビッチ先生の美貌により、秒速で虜になった。
「来週ここでピアノを弾かせてもらう者よ。酔いざましのついでに弾かせてもらっても良いかしら?」
「え……ではフロントに……」
ビッチ先生はフロントに行こうとしたフロントマンの腕を掴む。
「良いじゃない。それと貴方に審査してほしいの。どこかダメな所があったら叱ってちょうだい」
ビッチ先生はピアノを引き始めた。
(幻想即興曲………か。腕前もさすがだが、魅せ方も上手い。やるじゃん、ビッチ先生)
いつもの様子とは似つかないビッチ先生の姿に、創真は少し見直した。色気の魅せ方を熟知したビッチ先生が、全身を使って奏でる『音色』はその場にいる全員の目を奪った。
「ねぇ、もっと近くに来て聞いて?」
完全にビッチ先生の虜となった他の警備員達は顔をデレデレさせながら近づく。
(20分稼いであげる。行きなさい)
ビッチ先生のハンドサインを見た皆は小走りに走り、非常階段へたどり着いた。
「うーむ……20歳のお姉ちゃんが引くピアノは目の休養になるねぇ……」
キバット(今は透明化中)も小声で呟いた。
「彼女は潜入暗殺に必要な技術は大抵身に付けている。君達に会話術を教えているのは世界でも有数のハニートラップの使い手なのだからな」
皆が廊下を進む中、創真は少し皆と離れて、ホリー達と話していた。
「ホリー、デュオ。もし、皆が命の危機程度の危険に遭うようなら、憑依を使うよ」
「…………………バレるぞ?」
デュオが、それで良いのか?と言いたげな様子だ。
「いーよ、別に。皆の命に比べればそんなの安いもんだよ」
「……………創真がそう言うなら、それに従うよ。まぁ、でもなるべく憑依を使わずに対処したいけどね」
「まぁ、そうだな」
「おい、待て。俺様は?」
「キバットは状況に応じて指示する」
「了解だぜ」
こそこそ話している創真に、隼が声を掛ける。
「おい、創真。置いてかれるぞ?」
「分かってるって。所で異常とかなかった?」
「ないよ。あったとしたら、前にいる烏間先生と氷室さんが発見してくれる。それとお前、さっき誰かと喋ってたか?」
「ないけど?」
「おかしいな………気のせいか………?」
─────────これはセーフ……だな。
その頃、前では
「なんともねーじゃねーか。時間ないんだからとっとと進もうぜ」
寺坂と吉田が烏間と氷室を抜かして進む。前には帽子を被った男が1人だけしかいなかった。
その時、不破が何かに気づいた。
「二人とも!そいつから離れて!」
そう言った瞬間、男はポケットから何かを取り出した。氷室は吉田を、烏間は寺坂を引き離す。ガスが噴射され、たちまち視界が悪くなる。烏間はすぐにガスから出た。
しかし──────────
「「氷室さん!」」
氷室だけは倒れていた。
「チッ、1人だけか。何故分かった、おかっぱちゃん」
「おじさん、ホテルのサービスドリンク配ってた人でしょ?」
創真は来た日が違うため分からないが、皆からしたら確かにそうだった。
「断定するには証拠が足りないぜ。ドリンク以外にも盛れる機会はあったかもしれないだろ?」
「竹林くんは飲食にウイルスが盛られたって言ってた。全員が同じものを飲食したのはドリンクとディナーだけ。でもディナーを食べてない三村くんもウイルスに感染した。したがってあなたが犯人よ!」
「凄いよ不破さん!」
「まるで探偵みたい!」
渚と茅野は不破を誉める。
「いや、僕もドリンクにウイルスが盛られていたのは分かってましたよ」
「創真君、そこで張り合うの!?」
渚が創真に突っ込みを入れていると…………烏間先生が膝をついた。
「俺が作った室内用の麻酔ガスの効果がやっと効いたか。そこの倒れてる奴には即効だったが」
「なるほど。ウイルスを開発したのはあなたですね」
殺せんせーが確認する。
「さーね。ま、交渉の意志がないのは分かった。ボスに報告するか」
男はもと来た道を引き帰そうと背を向けるが、既に周囲は囲まれていた。
「既に指示済み………我々を見た瞬間直ぐに引き返さなかったのが間違いです」
そう口を開いたのは烏間………………………………
ではなかった。
「なに!?貴様、なぜ………グハ!」
最後まで待たず、氷室は男の顔面に回し蹴りを喰らわせた。
(こいつ……吸ってなかったのか………!?)
男は倒れ、昏睡に陥った。
「氷室さん、なんで動けるんです!?」
「息を止めてました。倒れたふりをして、隙を伺っていたのです」
「流石氷室さん………………」
茅野がポツリと呟いた直後、ドサっと言う音が聞こえた。見れば、烏間が倒れていた。
「「「烏間先生!」」」
今日はここまで!
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