「うーん、旨い!隼君との命懸けの喧嘩の後のコーヒーは旨い!」
不自然なほどテンションがハイな創真。碧海も奢って貰ったコーヒーを一口啜ってみる。
「……に、苦い……………もっと甘いやつが良かったなぁ……………」
「ただで飲めてるんだから贅沢言うなんじゃない」
創真はコーヒーを飲み干し、さて、と呟く。
「じゃ、本題に入るよ。君さ…………なんかの薬を打たれてなかった?」
「………なんでそう思うの?」
「初めて会ったときから何かおかしいと思ってた。何て言うか……………目的のためなら殺しすらも躊躇しないように見えた」
「………その通りよ。シロって奴に、隼を取り戻したいのなら、飲めと。そしたら、色々とおかしくなっちゃった。自分でも気づかない内に」
「うちの魔法使いが言うには、その薬の効果としては心理的ハードルを下げる、理性の崩壊、そして隼のみには肉体を異常に活性化させ、身体能力を大幅に上げる作用もあった…………ざっとこんなもんだったっけ。てか、シロから薬の効果とか聞かされなかったの?」
「何も知らされてない。特に害は無いとしか聞いてない………………にしても、やけに詳しくない?この短時間でよくそんなに………てか、魔法使いって?」
「さてさて、何でしょうねー」
創真ははぐらかすように笑う。
「そう言えば、初めて僕の前に姿を現した時は何だったの?」
「あぁ、あれは私がシロに内緒でこっそり会いに行ったの。少し強引にでも取り戻せないかなー、って思って。そしたら、もうシロに用は無くなると思って」
「ふーん…………シロとはどういう経緯で知り合ったの?」
「あっちからやって来たの。シロから隼が椚ヶ丘のE組に通っている事を教えてもらったの。ついでに君達がやってる暗殺の事も。そして、協力を申し込まれた。『私に協力してくれれば、隼君を取り戻してあげよう』って。今思えば、何で私が隼を取り戻したいって知ってたんだろうね」
「色々と調べたんでしょうね。それだけでかなりの労力を使っただろうに。それで?」
「で、私は協力を承諾した。で、さっきも言ったけどシロは1つ条件をつけた。それが、あの薬を服用すること」
「なるほどね。心理的なハードルを下げて、隼に対して躊躇なく多少過激な事も出来るようにしときたかったのかな。そうしておけば、自分の忠実な駒として使えるから。それで君はシロと協力してた訳だ……………なら、シロが隼を殺せんせー……………あ、僕らの標的ね。殺せんせーを殺すために肉体改造させることも知ってたよね?」
「うん。シロが絶対に大丈夫って言ってたからそれを信じちゃった。それに………………隼が地球を救った英雄となれば、お父さんも隼を認めてくれるかなって思ってさ」
「僕も全部は知らないけど、隼から君のお父さんの事は聞いてるよ」
「…………………そっか。隼は君に話してたんだ。隼がそれを話してたって事は、相当君を信頼してたんだね………………なら、君は良い人だね」
「随分とすんなり言うね…………ま、それはさておき。碧海さん。君は薬の効果とは言え、あなたは僕のクラスメートを危険にさらした。それは許されないことだし、隼だってあの程度で済んで良かったけどさ……………下手すれば死んでたかもよ?」
「…………………」
「それに、シロなんかと取引をして……………下手したら君も危険な目に遭ってたかもしれないんだよ。自分も危ない目に遭うかもしれない……………それを君、考えてなかっただろ?」
「……………うん……」
「自分がどうするべきだったのか。どうすれば良かったのか………………それをしっかり考えておけ」
創真はチラッと時計を見て、椅子から立ち上がった。
「じゃ、僕は帰るんで………寝不足は体に良くないよ」
そう告げて創真が部屋のドアに手を掛けた時だった。
「ねぇ…………創真君………」
「……………ん?」
「私………隼に対して酷いことをしちゃった………もう、姉でいる資格なんてないよね…………」
創真は少し考え込む動作を見せて、碧海の方へ振り返った。
「…………それを決めるのは僕じゃない。隼自身だ。まー、当たり前だけど、悪いことしたら謝っとかなくちゃ。明日にはあいつも目が覚めるらしいから、その時にでも言っておけば?」
「そう…………だね。………ありがとう」
「別に僕は大したことを言ってないよ………じゃ、おやすみなさい」
「うん、おやすみ…………あ、ちょっと待って!」
創真は閉め掛けたドアを再び開ける。
「もーなんです?僕、寝たいんだけど……」
「これからどうするのかな……と思って」
「ホテルを予約したからそこに今日は泊まろっかな………って考えてるが………?」
「あのさ………ここに居てくれない?」
「…………………………は?」
衝撃的過ぎて、創真は暫く言葉が出なかった。
「だって寝れないし、寂しいんだもん……」
「えぇ………………あんた、僕と同い年じゃないの?」
「そうだけど?」
───────精神的には小学生じゃん。
そうツッコミたくなるのを押さえている間にも、ねだるような目で碧海は創真を見つめる。
「あー分かった分かった。ただし、寝るまでなら」
「やった!ありがとう~創真君!」
「とっとと寝てくれ……………………」
30分後
「遅かったですね、創真様。ホリーたちは眠いと言って、さきにホテルに行ってしまいましたよ。そんなに長話だったのですか?」
「寝かしつけてました…………中3の女子を」
「はぁ…………ちょっと意味が……」
「分からないで良いですよ、永遠に」
「左様ですか。それで、どうだったんです?」
「まっ、色々と知れたしスッキリしました…………じゃ、早く寝ましょう」
「そうですね。私も早く寝たいです…………」
眠そうにあくびをする氷室。2人は静かに夜の街へと消えていった。
to be continue…………
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