「んん…」
暖かい…体がポカポカする。
まるで湯たんぽに抱きしめられているようだ…
顔にも何か暖かいものが当たっている。
「んん…?」
「んっ…」
柔らかい…顔にジャストフィットなこの感触…眠気を誘う柔らかさ…
あれ?こんなに枕って最高だったっけ…?
というか今しゃべっ…
「ん?」
「あら?」
意識が覚醒する。しかし目の前は真っ暗。
顔を柔らかいものから引き離す。もう少し暖まりたかったが…
「おはようございます♪シンさん♪」
「ティア…なにしてんの?」
見上げたところにはティアの顔があった。
目の前にはティアの胸が…
「快眠を提供しようと思いまして。」
「うん。最高でした。」
はっ…!つい本音が出てしまった…
「さて。皆さん待ってますよ。」
「はい?」
状況がいまいちつかめないのだが…なぜティアが部屋にいるのだ?ルゥは?皆さんって誰?
聞きたいことはたくさんあるのだがとりあえず…
「ティアさんや」
「はい」
「なんでオレの服のボタンを外してるのかな?」
「着替えを手伝ってあげようと思いまして。」
「大丈夫だから。脱がさなくていいから。下もやめてね?」
「遠慮はいりませんよぅ。」
すでに上はシャツ一枚。下も半分脱げている。
これは…諦めるしかないね。
「完成です!」
脱がされ着せられ…俺の仕事はなにもなかった。
ずっと脱がされていく服を眺めていただけだ。
いや…さすがに下着まで脱がされそうになったときは抵抗したよ?『じゃあ私も脱ぎますから!』とか言い出した時は頭大丈夫か?と思いました。
そして今の格好は…真っ赤。赤い服に赤いズボン。赤い帽子…
「ティア…サンタって知ってる?」
「今のシンさんの格好の人ですよね。良い子にはプレゼントをくれるやさしいおじさんです。」
…あれ?この世界にもサンタはいるのか?でも昨日ルゥは…
あいつ嘘ついたのか?いや、そんなことができるやつじゃない。ということは…さては知らないな?あいつ。後でからかってやろう。覚えてろよ。
「では行きましょう!」
「どこに?」
「行けばわかります。さぁ!行きましょう!」
手を繋ぎ歩き出す。ルゥは…いない。先に行ったのかな?
「えっと…?」
ついたのは1年C組の教室。冬休みの今は誰もいないはずだが…中からはざわざわと声が聞こえる。
「どうぞ。入ってください。」
「う、うん。」
ガラガラ…ドアを開けると…
「「「メリークリスマス!」」」
クラスの皆に迎えられた。皆サンタのコスだ。見慣れた教室が真っ赤に染まっている。
「えっと…何してるの?」
「今日はクリスマスなので…皆で祝おうと思いまして。せっかくならパーっとやりたいなーと思い先生に相談したら…」
『じゃあ教室を使ってパーティしよっか♪』
おぅ…さすがはアリア先生。行動力は無駄にあるね。ロリのくせに。ロリのくせに!
「ねぇ。なにか失礼なこと考えてない?」
「うわっ!先生…いたんですか…」
同級生たちの間から先生が出てきた。
全然気がつかなかった…生徒にまぎれすぎじゃないですかね…
「それじゃあ主役も来たことだし…クリスマスパーティを始めましょうか!」
「「「「うおーーー!!!」」」」
教室が一気に騒がしくなる。
パーティか…久々だな。いつもクリスマスは部屋に一人引きこもってたからな…
「シンさんシンさん!一緒にケーキに入刀しましょう!」
「え?ケーキ?そんな切るほどのものは…」
言葉が出なくなる。どこに置いてあったのだろうか。三段のケーキが机の上にドンッと置かれていた。
「頑張りました。」
「すごいの買ってきたね…」
「え?そんなお金はないので…作りましたよ?」
「は?これ全部?」
「はい。頑張りました。」
机にはケーキの他にサラダや肉など豪華な料理が乗っている。
これらすべて手作り…?すごいな。
「入刀!しましょう!」
「おう!」
今日くらいははしゃいでもいいだろう。だってクリスマスだ。一年に一度しかないお祭りなのだ。
「にゅーとー!」
「「「「わぁーーー!!!」」」」
大きな包丁がケーキに刺さるのを合図にそれぞれ食事を始める。教室は賑やかになった。
「美味しいですか?」
「うん。ティアも手伝ったの?すごいね。」
「はい♪」
時間はどんどん過ぎていく。気がつけばもう夕方。楽しい時間はすぐに終わってしまう。
楽しい時間の中で一番驚いたのはカラオケが始まった時だ。
俺にもマイクが回ってくる。しかしクリスマスソングなど知らない俺のチョイスは…
「きーみーがーぁーよーぉーわぁー…」
「「「「うぉーーー!!!」」」」
恐ろしく盛り上がりました。内容なんてどうでもいいんだろうね。歌うという行為が盛り上がるのかな。
パーティや片付けが終わり、俺はティアを誘って俺たちの部屋へ…
「なにかご用ですか?」
「うん。はい、これ。」
昨日買ったネックレスを手渡す。
「え…これって…」
「クリスマスプレゼントだよ。」
「あ!それあのお店の!ずるい!」
ルゥも反応した。あ、そうだ…
「ねぇルゥ。サンタさんって知ってる?」
「はい?昨日も言ってたけどなんなの?それ。」
「ふーん。知らないんだぁ。ふーん。」
「うぐっ…し、知ってるし!あれでしょ?あのー…あれよ!」
わちゃわちゃと手を動かしてなにかのアピール。
サンタをアピールしようとしてるのかな…
「ルゥ。はい、これ。」
「え…あ、ありがと…」
ルゥにはブレスレットを。最初見たときのイメージがピッタリだったのだ。
「シンさん。ありがとうございます。大切にしますね。」
「うん。」
「あの…私も…これ…」
ルゥも袋を取りだしティアと俺に手渡した。
「あ…」
「い、一応お世話になってるし!これからも仲良く…ってことで…その…」
真っ赤だ。指をお腹の前でモジモジさせている。
破壊力は抜群。俺の心にクリーンヒット!
「ふふ。ありがとうございます。まさかルゥさんから貰えるなんて…大切にしますね。どちらも。」
ん?どちらも?
「シンさん。欲しいですか?」
「何を…すごいな!欲しい!」
見せられたのはカメラの画像。中にはさっきのルゥのレア画像。
「え?なに?私にも見せて。」
「………」
「………」
ティアと顔を見合わせ…笑う。
「ダメだな。」
「ダメですね。」
「な…なんで!?」
これは見せるべきではない。俺たちだけの物だ。
「では私からも…」
持っていた鞄の中から出てきたのは…二つの袋。
「どうぞ。」
「え…いいの?」
「はい。お二人のことを考えて作りました。」
中には…
「おぉ…」
輝く指輪が。
「え?作ったっていった?」
「はい。せっかくなら手作りしたいと思ったので。」
「うわぁ…きれい…」
ルゥも中を見て驚いているようだ。
すごいな。さすがはお嬢様。裁縫なんかもできるのか。
すごくしっかりしている。売り物だと言われても納得できるレベルだ。
「私のもあるので、三人お揃いですよ。」
「ありがとう。大切にするよ。」
「私も!」
「せっかくなのではめさせてくれませんか?」
「え?あ、うん。喜んで。」
右手を差し出す。なのに左手を持たれ…薬指に指輪をはめられる。
「えぇ…」
左手薬指…ま、まぁいいか。相手は女の子だし…
「…」ワクワク
すごいこっち見てる…なんかルゥもこっち見てるし…
「はぁ…指出して。」
「はい!」
「わ、私も!私も!」
三人左手を並べて…微笑む。
いいな…こういうの…
「写真とりましょう!皆で!」
ティアがタイマーをセットし横へ。
それぞれの贈り物を身につけ、三人左手を胸の前に掲げて…
カシャッ!
指にはまっている指輪。部屋に飾られている写真。
この日を忘れることはないだろう。
今日は今までで最高のクリスマス。最高の思い出。
絶対に色あせない俺たちだけの…