「まずはこれを見てくれ!」
ブォン!
目の前に大きなスクリーンが出現する。
そしてそこには先程の俺の戦いが写っていた。
「後ろにルゥちゃんがいるじゃろ?」
「そうですね。でもそれが…え?」
確かに目の前にはルゥがいる。いや、いた。
フードを被った人がルゥに近づいたと思ったら突然二人とも消えてしまった。
「い、いったい何が…」
「おそらくは転移魔法じゃろうが…他人まで飛ばすのは不可能に近い。
こやつの正体は全くわからんのだ…」
「そんな…」
無属性の魔法を扱っている。それだけでもかなりの上級者だ。
さらに二人目を飛ばす…恐ろしいほどの運の高さだ。
学園長の言う通り不可能なのだろう。この世界の人間には。
「どこに行ったのかはわからないんですか?」
「うむ…正直想像もつかん。転移魔法を使ったのじゃから時空の歪みなどはあるかもしれんが…」
時空の歪み…?それがあるところにルゥは…?
「シンさん。」
「………え?あ、なに?」
「時空の歪み…利用しましょう。」
「利用?」
いったいなにを…相手は時空に穴を開けて別の場所に移動したのだ。
移動先にも歪みはあるかもしれないが、どこにあるのかはわからないし…
「歪みがあるなら、そこを私たちも通ればいいんですよ。」
「…そうか!」
確かにそうだ!穴が開いているなら通れるはず!
俺は一度転移を成功させている。
あのときは魔力が足りていなかったから倒れてしまったが今は違う。
たった一度しか戦闘をしていない。魔力は十分だ。
「ティア」
「はい。どこまでもお供します。」
友達を拐っておいてただですむと思うなよ…!
「ま、待ちなさい!何を…」
「早くしないと歪みが消えちゃうかもしれないじゃないですか。
今は立ち止まっている時間はありません。残りの試合は不戦敗でいいです。」
それだけ言って立ち上がる。
ティアと一緒に部屋を出て向かうのはさっきまで俺がいた場所。
でもどうする?
転移はおそらく出来るだろう。
だが二人可能かはわからない。ティアの運は転移に耐えられるのだろうか。
俺だけで行ったほうがいいのだろうか…
ぎゅっ
不意に手が握られる。
驚いてティアの方を向くと…
「シンさん。何か変なこと考えてませんか?」
「え?いや…」
「だいたいはわかります。成功するのだろうか。シンさんはともかく、私が飛ぶことは可能なのだろうか…と。」
…さすがはティアだ。これは隠し事出来そうにないな…
「うん…ティアはどうなるかわからない。危ないからオレだけで…」
「何いっているんですか?シンさんはバカだったのですか?」
「いや…でも…」
「ルゥさんは私のお友だちです。シンさんと同じくらい大切なお友だちです。
そのお友だちが拐われて…シンさんは危険をおかそうとしている。
なのに私は黙ってみていろと…出来るわけないでしょう!」
「………」
こんなティアは初めてだ…
いつも笑っているティアが…嬉しそうに俺たちを見ているティアが…怒っている。
これを置いていく?それこそ俺はバカだ。
今ムチャをしないでなんのためのチートだ。運だ。
友達を救えないチートなんて役に立つか!!!
「そうだね。ごめん。」
「はい。私はシンさんファンクラブの会長です。
いつもあなたの側にいますよ。ずーーーっと。」
「う、うん…ちょっと怖いね…」
「でも嬉しいでしょう?」
「ははっ…違いないや。」
「ふふっ…やっと笑いましたね。」
あぁ…そうだ。俺には横にいてくれる子がいるじゃないか。
でも今は一人足りない。俺たちに笑いをくれる彼女が…
「ティア。行くよ。」
「はい。」
しっかりと手を繋ぎ、指を絡ませる。
絶対に離れないように。絶対に離さないように。
失敗はできない。いや、しない。だって横には…
「「転移!!」」
彼女がいるのだから。