今回、すこし短めです。
聴覚が、軽快な音楽を感じ取る。
起床時間に設定しておいたアラームだ。
このアラームは設定次第で、スヌーズもでき、自分以外には聞こえない優れもので、自分で音楽を選ぶことができる。
俺はベッドから上体を起こす。
SAOの四季は現実と同じ設定のため、十二 月の始めの今は、布団を脱ぐと冷気が伝わってくる。
「うぅ、寒みぃ」
頭の中に広がる、まだ寝たいという欲求を無理矢理押さえつけて、俺はベッドから出る。
格好は、寝間着(日本のジャージと同じ様な物)のため、外に出るには薄着すぎる。
俺はメニュー画面を開き、いつもの狩りに行く服装に着替える。
最近は金がたまってきたので、装備を刀以外は新しい物に変えたのだ。
装備を整えると、宿の部屋を出る。
そのまま、廊下を進み、一階の食堂に行くと、
「あ、カズマおはようございます」
すでに、めぐみんが起きていた。
どうやら、朝食中だったようで、テーブルの上には野菜スティックとイノシシの骨付き肉があった。
「朝から肉食ってると太るぞ」
「大丈夫ですよ。ここでいくら食べようとあっちの体には影響は無いんですから」
「そうだな。まあ、めぐみんの場合は必要な肉も付いてないからな」
「おい、その必要な肉とはどこのことか詳しく聞こうじゃないか」
といって、野菜スティックをサクサク食っていくめぐみん。
その脇には、愛用の両手斧が置いてある。
「そういえば、めぐみんの斧ってなんて名前なんだ?」
「斧ですか?私的には気に入っていないのですが《プロードアックス》ですよ」
「充分いい名前じゃないか。どこが気に入らないんだ?」
「全部です。このゲームの武器はいい名前の武器がありませんから。上の階層で自分で名前を付けれる武器が出て欲しいですね」
「いや、この階層にもあるぞ」
俺は、腰の刀を外して机に置く。
めぐみんは、刀をタップして、オブジェクトの情報を見る。
「《無銘刀》ですか。斧はないのですかね」
「みた感じ無かったな。それもクエスト報酬だし、探せばあるんじゃないか?」
「むむむ」
めぐみんは数秒程何かを考えて、やがて覚悟を決めたように俺に聞いてきた。
「カズマ、この剣の名前私がつけてもいいですか?」
めぐみんの質問に俺はしばし考えた。
このゲームを始めて、初の名付け武器なのだ。
やはり、自分で考えてみたいものだが、
「むむむ」
めぐみんを見てみる。
格好はすごく中二臭くて、こういう名付けに関しては任せても良さそうだ。
俺は覚悟を決めて、言う。
「いいぞ」
「あ、ありがとうございます!」
「たーだーしー、格好いい名前にしろよ」
「わかってますよ。とびきり格好いい名前にしますから」
といって、嬉々として名付けを始めるめぐみん。
まあ、こいつのセンス的には大丈夫だろう。
俺は名付けはめぐみんに任せて、朝食をとることにした。
「カズマ、今日は早いのだな」
俺が、メニューを見ながら、悩んでいると、ダクネスが降りてきた。
「いや、いつもとあまり変わらないぞ」
「前までは、アクアと同じぐらいだったではないか」
ダクネスが疑いの目を向けてくる。
失礼な。俺とあの駄女神が同じだなんて。
アクアを駄女神と言っているのは、まあ、名前の通りだ。
「そういえば、先ほどからめぐみんは何をしているのだ?」
ダクネスが、めぐみんを指差して言う。
「めぐみんには、俺の刀の名前を付けて貰ってるんだ」
「ええ、私が素晴らしい名前を考えてあげてます」
「そ、そうか。一体どういう経緯でそうなったのかは知らないが、わかった」
ダクネスは、ウエイトレスが運んできた紅茶を啜りながら、アクシズ新聞(通称)を見ている。
「ふむ、ボス攻略部隊の参加者求むか。私たちも向かいたいところだな」
「行ったとしても、俺達のレベルじゃ駄目だろ。めぐみんなんてかすり傷で死にそうだ」
「むむ、そうだな。一度ボスの攻撃をくらってみたかったのだが」
溜め息を吐くダクネス。
「ボスの攻撃と同じぐらいの奴がいるじゃないか」
「いや、単に攻撃が強ければいいということではない」
「?」
「例えば、獣の様な目をしていて、巨大な図体を持っており、それに汚い口元で身の毛もよだつような鳴き声をあげる。さらに.......」
変態のリクエストを聞くのも嫌なので、気にせずウエイトレスに料理を頼む。
「そこで完璧に死ぬという攻撃を私の少し前で止めて、私が「お願いです、命だけは」といっても容赦なく剣を振り下ろすようなモンスターがいいな」
「言ってることはさっぱりだが、お前が変態ってことはわかった」
注文をしてから、わずか十秒で運ばれてきた朝食に俺は目を移す。
今日の朝ご飯は、カエルの唐揚げと野菜の付け合わせ、そして、チーズだ。
余談だが、カエルの唐揚げは見た目と裏腹に、香ばしく、鳥の唐揚げとあまり変わらない。
俺は、カエルの唐揚げをフォークで刺し、口に運ぶ。
「そういえば、今日は何をするのだ?」
「うーん、まだ考え途中。アクアが起きてきたら決めるよ」
「そ、そうか。なら、今日は森に住んでいる触手生物に」
「却下」
ダクネスの残念そうな顔を見ながら、唐揚げを食べていると、
「決まりました!」
めぐみんが、いきなり大声をあげる。
いきなりのことで、唐揚げが喉につまる。
「うぐっ!」
「か、カズマ、水だ!」
「ゴクゴクゴク、ありがとうダクネス。危うく死ぬところだった」
「ゲームの世界じゃ、喉にものを詰まらせても死にませんよ」
水を飲んで落ち着いた後、めぐみんに話しかける。
「それで、何が決まったんだ?」
「名前ですよ。この刀の名前が決まりました!」
と、めぐみんが見せてくる刀には、文字が小さくて見えないが、確かに銘が彫られている。
「ほう、そうか。じゃあ見せてくれ」
「はい、とても素晴らしい名前ですよ」
ドヤ顔でめぐみんが渡してくる刀を俺は笑顔で受けとる。
ワクワクしながら、刀の銘を読む。
そこには、《ちゅんちゅん丸》と見事な英語で..........
「はあああああああ?」
俺は絶叫した。
「ど、とうしたんですか?」
「どうしたも何も、なんて名前付けてくれてんだ!」
「ほう、どんな名前をつけたのだ?」
と、ダクネスが俺の刀をみるが、
「うーむ、これは確かに」
「なんですか、その微妙な反応は!私のネーミングセンスに文句なさすぎがあるなら聞こうじゃないか!」
「文句大有りだ、この馬鹿!てめえふざくんなよ!」
「なんですか!カズマも格好いい名前付けてくれって言ったじゃないてですか!」
「これのどこが格好いいのか、わかるかボケ!」
俺とめぐみんは取っ組み合いの喧嘩になる。
その後、遅れて起きてきたアクアと、ダクネスに止められるまで、喧嘩は続いた。
えっ、勝敗?そんなこと気にすんなって。