果たして、彼女たちは運命を、覆すことが出来るのかっっ!
…これだけ聞くとRPGのラスボス戦みたいじゃありません? 違う?
っと、失礼しました。いよいよ秋イベントの完結ですよ~!
…ちなみに言わなかったけど「丙」です。いやもう何とは言わなくても分かりますよね?
さあ、西村艦隊は、そして「彼女」はどうなってしまうのか?
…それでは、どうぞ!
- その光景を何と例えようか。
…そう「地獄」。これが一番しっくりくる。
「私」は…あの戦場に赴き…多くの仲間の最期を見届けた。
そして私も…そうなるはずだった……
だが、私は「生き永らえた」。
あの日、黄泉への道一歩手前まで行っていた私は、遂に沈むことなく護国に帰還した。
彼女は言った。姉さん、貴女は頑張ったんだよ?
彼女は言った。生きていてくれて、ありがとう。
彼女は言った。貴女を誇りに思います。
彼は言ってくれた。お前は頑張ったよ。
…違う。
私は……何も出来なかった。
何も…守れなかった……
敬愛するモノたちを…親愛なる姉妹も
何もかも、守れない…守れなかった………!
これは罰
私はもう
戻れない。
私は、もう
し
ず
メ
ナ
イ
・
・
・
・・・・・
○スリガオ海峡突破部隊(西村艦隊)
山城(旗艦)
時雨
満潮
最上
朝雲
山雲
扶桑
再びスリガオ海峡へ赴く西村艦隊。
道中は、栗田、志摩の二艦隊が梅雨払いをしてくれたおかげか、すんなりと通ることに成功する。
だが気になるのは、陣形の並びだ。
警戒陣…先程まで駆逐艦がいた最前には「扶桑」が。これは彼女を助け出すならば、自分が前に出て鍵となる満潮たちを守るべきだという、彼女の意見を尊重してのこと。
…山城が気掛かりであるとばかりに狼狽しているのは、ここだけの話。
そして夜となる…今回はスコールはなく、穏やかな波間に揺れ、艦隊は彼女の待つ因縁の地へ……
そして、レイテ湾前に到着すると。
「…皆、いよいよよ」
山城が通信で呼びかける。
「この戦いに正義も悪もない…私たちはただ、あの「夜」と決着をつけるだけ」
西村艦隊一同、無言の肯定。
誰しもが顔を引き締めて、目の前の決戦の地に思いを馳せた。
「…時雨、満潮? …用意は良い?」
「もちろん!」
「ええ、今はやってあげる。しかも全力でね!」
山城は二人の返答に顔を綻ばせながら、最後の戦いに向けた言葉を投げかけた。
「これで最後よ…今度こそ、暁の水平線に勝利を! 続け!!」
「了解!」
全員の闘志は今、ここに極まった。
意を決して、スリガオ海峡夜戦へ突入する…あの夜に、失ったものを取り戻すため………
・・・・・
敵中枢部、到達
クラス「姫」出現…
防空駆逐艦
防 空 埋 護 姫
『私ガ………オ相手……シマ…ス…!』
まるで、海面に写し出された月の光のように、彼女は球状障壁を展開しながら、何モノかを待ち侘びていた…
夜の闇に映えるその姿は、禍々しい、ではなく「美しい」という言葉が似合った。
『……』
「来てやったわよ」
満潮が話し掛ける…たとえ話が通じなくとも、話さないといけない。
「アンタが何を守りたいのか、私は知らない…けど、それでも守りたいのなら、好きにすればいいわ」
『………』
その時、彼女の口の端と端が釣り上がる…これは「笑っているのか」?
「…そう、そんなに「嬉しいんだ」、アンタ。守る戦いが出来る事が」
『……マ…モル…』
「そう、なら…私たちは「悪」でなきゃ。アンタの守りたいモノを奪おうとする私たちは」
でも、と言うとその瞳に闘志を燃やす満潮。
「私たちはそんなことどうでもいい…あの日の借りを返す。ただそれだけよ!」
「戦うことは、罪なのかもしれない…でも、何も出来ないで…ただイノチが流れていくのなら。今度こそ僕は、皆を守るために戦いたい!」
「いくわよ皆…私たち、西村艦隊の!」
「ええ…西村艦隊の本当の力…この戦いで見せてあげる…っ!」
西村艦隊にとって、最大の試練が訪れる…彼女たちは、運命を越えることができるか?
『…ワタ…ガ………私ガ…ネ……守…ッテ…イクノッ!!!』
敵対する彼女。その虚ろな瞳は、彼女たちの何を映すのか…
- 我、夜戦ニ突入ス!
防空埋護姫の号令のもと、深海連合群が編成された。
先程の海峡夜戦姫の編成と全く一緒。旗艦が入れ替わっただけだか、戦艦ル級五隻と再び戦わなければならなかった。
思えば、長い道中、その中の連続夜戦と「正に地獄の海」を駆け抜けたこの最終海域。その上でこの決戦…並みの覚悟では精神が摩耗してしまうが…
「うおおおーーーっ!!」
「いっけえーーっ!」
「山雲の攻撃ぃ…どーかしらぁ〜?!」
最上、朝雲、山雲の連続砲撃…敵第二艦隊に風穴を開けた。
『■■■■■■■■■■■■------!!?』
『シャアアアーーー!!』
pt群の、反撃と言わんばかりの雷撃。
「! 危ないっ」
扶桑は皆を庇うため、雷撃の前に立ち塞がる…その様はさながら「巨大な壁」であった。
「…っ! 二戦隊……突破しますっ! ってええええーーー!!!」
扶桑の砲火が華やかに咲く…それは「史実のレッテル」を払拭するようだった。
『イキャアアアーーッ!!?』
扶桑の砲撃により、第二艦隊は壊滅した…残すは第一艦隊のみ。
防備を固める戦艦ル級群。そこに疾(はし)るオオカミの如く現れたのは…
「悪いけど…砕かせてもらうわ!」
満潮はそのままル級の前に踊り出ると跳躍、同時に右手の主砲を振りかぶる。
「やあぁーっ!」
殴り抜けるように主砲を突き出し、近距離砲撃を食らわせる…砲火は紅い閃光のように光り、辺りに撃鉄で殴った音が響いた。
『■■■■■■■■■■■■------!!!』
一隻撃沈。仲間の仇と言わんばかりに、ル級がその砲を構えた。
「! 満潮っ!!」
「…!」
- ズウウウゥン!
一瞬の隙を突かれ、満潮に向けられた凶撃。だが彼女は無傷だった…
「! 時雨っ!?」
満潮の前には、自分を庇い「大破」になってしまった時雨が。
「…ッ!」
「バカ! アンタ無茶を…!」
「大丈夫…! 僕はもう沈まない…っ! 皆も…沈ませないっ!!」
ニッと笑う時雨には、生きる為に抗う「生者の覚悟」が。
「…必ず、生きて戻るわよ!」
「うん!」
西村艦隊の決死の覚悟。しかしその中には「必ず生きて戻る」という思いが…!
最上、朝雲の砲撃。
山雲の雷撃。
護る扶桑。
それぞれが、各々に出来る能力と武装で敵を駆逐していく。
形成はこちらに傾く。ル級の壁は崩れ去り、残るは「二隻」…ル級と防空埋護姫のみ。
『………ッ』
力なく、弱々しく苦痛を漏らす防空埋護姫。だが…
「来なさい…まだ終わりじゃないわよ!」
『! ウ…ウアア………ウアアアアアアアッ!』
防空埋護姫の叫び、それは「夜の終わり」を告げていた。
- 水平線の彼方より夜明けの光か射す。
同時に、基地航空隊より航空支援が空に舞い上がった。
『ウアアアアアアアア!!!』
その深海対空艤装で、次々と基地航空隊を撃ち落としていく防空埋護姫。
だが精強精鋭の基地航空隊。ル級を仕留め、更に防空埋護姫にもダメージを与えた。
『効カナイッ……!』
打ち立てられる水柱、その中央には小さな戦士が。
「………」
『………』
睨み合う二人。
暫しの沈黙の後、誰とも言わず疾りだす満潮。
飛び上がり、先ほどの要領で主砲を振り上げた。
「やあああぁーーーッ!!!」
『ウアアアァーーーッ!!!』
両雄激突。
それは、獣の闘争のような泥にまみれた、しかして己が誇りをかけた戦い。
両者共、守るべきモノを守るための戦い……
爆炎と硝煙が視界を消す…そこには
「!」
障壁を保った「健在の」防空埋護姫。
ゼロ距離射撃を防がれた満潮には、敵の反撃を防御する術はない。
『守ル…ッ! 私ガ……守ルンダアアアアアアアアアアア!!!!!』
― ズドドドオオオォン!!!
敵の深海艤装から繰り出される砲撃…満潮は、もちろん「大破」となり吹き飛ぶ…現実は非常、無残にも勝敗は決着した
ように思えた。
― ニッ
だが終わっていない。
『…!?』
吹き飛びながらも、なお不敵に笑う満潮。体を反らす彼女の後ろには「山城」。
「邪魔だ………ッ!」
『!!』
どけええええええええッ!!!!!
魂の叫び、そして渾身の一撃。
一瞬の隙を突いた集中砲火は、確実に敵の装甲をぶち抜いた…!
豪炎に灼かれる隠者は、遂にその身を倒れ伏し、海中へ消えようとしていた…
ウ……ソ…ッ、私ガ…「戻レナイ」……ナンテ…ッ、ソ…ン……ナ…
― まだだ
まだ私は罪を償っていない。私は戻るべきだ私は…っ!
…いや、これも天命。
守れないモノに、何の価値があるだろうか。
私は、このまま…海に……
「言いたいことは、それだけ?」
― !? 貴女…どうして! 一緒に沈むつもり!!?
「馬鹿ね…アンタを助けに来ただけよ?」
私は…私は「罪人」です。何も守れない私は…
「五月蠅い」
私は…守るために生まれたのに…っ
「黙れ」
私は……私はっ!!
「ああもうごちゃごちゃうるさい! 助かりたくないの?! また海を駆けたくないの!!?」
……!!
「御託並べんな! 助かりたかったら…手ぇ伸ばしなさいっ!!」
………っ!!!
―― パキィッ!
『…エ? 腕ガ……自由ニ…?』
「…これでアンタは自由。後は自分の「好きなように」生きなさい?」
『…戻ル。モどれる……帰れル…のネ? ワたし…! もう一度、ジゆうに』
― 海を…駆けて……っ!
・・・・・
もうすぐ闇は晴れ、空に光が灯る。
満潮はその腕に、激闘を繰り広げた彼女を抱いていた…両腕の鎖は引きちぎれていた。
『…あ、リガ……と…ウ……』
「別に。大したことしてないわ? アンタが自分でやってのけたのよ?」
『…フフ』
「ふん……」
満面の笑みの防空埋護姫に、照れくさそうにする満潮。その隣には、時雨。
「…やったね、満潮」
「時雨……ありがとう。あ、アンタ私を庇うんだったら、二度とあんな真似しないでよね!」
「はは、約束する」
「どうだか? アンタはすぐ無茶するんだから」
「満潮が止めてくれるからね?」
「確信犯かっ!? ったく…」
西村艦隊は、そんな二人のやり取りを見て微笑んでいた。
「…はっ! 姉様!!」
山城が、突然思い出したように叫ぶ。
「第一遊撃部隊、第三部隊「二戦隊」は、スリガオ海峡を……「突破」しました…っ!」
「…!」
― やったああーーーーーーっ!!!
山城の言葉に、万歳三唱。全員が目を輝かせ「歴史」という運命に打ち勝った艦隊は「喜び」に満ち溢れていた。
各々に健闘を称え合う彼女たち。
「ふふふ…やったわっ!!!」
「山城! 私たち、遂にスリガオを越えたのよ! …あの「海峡」を…越えたのよ?」
扶桑が自分に言い聞かせるように綴る。そう、彼女たちの悲願が「遂に」達成された瞬間だった。
「…扶桑、聞こえるかよ?」
「! 提督」
「話は聞いたぞ? ようやったにゃぁ? オレも嬉しい」
「提督…ありがとう」
通信越しの祝福の言葉。自身の信頼する人物からの賛辞…彼女にとって、これほどまでに嬉しいことはなかった。
「…扶桑、山城、最上…そして、満潮、朝雲、山雲も。皆…本当に、ありがとう」
涙目になりながら感謝の気持ちを述べる。もちろん、それは「悲しみ」ではなく「嬉しさ」の涙だ。
「…どうや時雨? 今の気分は」
「提督…止まない雨は……「ない」…ね?」
「…それから?」
「……ありが、とう!」
感情の波が押し寄せる。彼女の涙は、ダムが決壊するように止めどなく溢れようとしていた。
「…うぅ……う、ぅぅううううううう!!!」
「時雨…ボクも…っ、うわあああああん!!!」
「ひっく…良かったよおぉ」
時雨の号泣に、思わずもらい泣き。
地獄の苦しみを、耐えて、耐えて、耐え抜いた彼女たち…こうなることは必然だった。
「良かったわねぇ~……ぐすん」
「全く…まあよく頑張ったんじゃない? …ホント…よく…がんば…たん……から…っ!」
満潮も思わず涙。しかし彼女の抱いている姫は別の方角を見ていた。
『……ア』
「…? 何よ…!」
満潮も同じ方角を見る。すると水平線から光が
「朝焼け…綺麗」
鮮やかな始まりの光に、思わず見とれる西村艦隊。
…そう「始まり」。ここから、彼女たちの物語が終わり、新たな物語が紡がれるのだ。
「…満潮」
「……何よ?」
「君には、感謝してもしきれない…本当に、ありがとう」
「さあ? 何の話だったかしら?」
その日、彼女の見せた笑顔は、誰よりも輝いていた…とその日を思い返す度、時雨は思うのだった。
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クリスマス編…書きたかったなあ(時間ねーんだよ;;)