これはゾンビですか?~いいえ、彼は黒の剣士です。 作:西じゃない東(斎藤 隆)
あれから、一ヵ月後梅雨も過ぎた快晴の午後、窓よりの席に座っている俺は、夏のうだるような暑さを耐えつつ、数学の授業を真面目に受けていた。すると、後ろから
「悪い、カーテン閉めてくれないか?」
アユムの声が、聞こえてきた。親友とも言えるアユムの頼みを無下にはしたくなかったのだが、
「無理だ、まず俺じゃあカーテンに手が届かないよ。織戸に頼めばいいんじゃないのか?」
「その織戸が寝ているからお前に頼んでるんだ」
ちらりと後ろを見てみると、たしかに織戸は爆睡中であった。
「悪いけど、自分でやってくれ。もうすぐあてられそうなんだ」
「ああ、そうか」
明らかにだるそうな、それでいて残念そうな声が聞こえてきた。
「この授業が終わったらカーテン閉めてやるよ」
「ああ、頼む」
見た目は普通の男子高校生だが、ゾンビでそして、魔装少女である。集中力のとぎれてしまった頭で、その時の事を思い出す。
大体十二時二十分だっただろう、太陽が沈むまでアユムといっしょにのんびり過ごし、夜を待って校門を出た
何でゾンビでもないお前が、夜まで待つのかと言われれば家に居ても暇だから、話す相手はいるが、会話が続かないからという事があげられる。
学校から相川家までは、約五分で帰る事ができるが、その日は俺もアユムも寄り道をして帰る気分だった。
アユムの家の近くに、墓場があるのだが、アユムはその場所が大好きなのだ。まあ、俺も六月下旬の暑さに抵抗するような涼しい風は気持ちいいので、まあまあ悪くない。風景がおどろおどろしいのが玉に瑕だが・・・・
しゃりしゃりと音をたて俺とアユムは中ほどまで進み、アユムは墓石の上に、俺はそんな事をする気にはなら
ないので立ったまま月を見ながらコンビニで買った雑采パンを食べながらひと時の至福の時をおくっていると
アユムに首を持たれ引きずられた。
「何するん
だ。と言おうとしたが、言葉を作るよりも先に、ドーン!とやや大げさじゃないのかと思うほどの音が鳴り、
さっきまで俺達がいた所には、大きな大きな穴があいていた。
そして、俺たちはよせばいいのにクレーターに近づいていった
「いたたたたたたた〜」
そこには、目測百四十五cmぐらいの女の子がいて姿は、アキバでもこんなコスプレするやついないだろと思うぐらいの服を着ていた。しかし、俺はその子よりその下にいた学ランを着たツキノワグマのほうがきになった。でかい、とにかくでかい普通のツキノワグマより三倍・・・いや、それ以上の大きさだろう。
そして俺と、アユムの間には、なぜかピンク色のチェーンソウがあった。そしてアユムは、そのチェーンソウを持ち、[どうやら、見た目にそぐわず軽いようだ。]「おーい」と少女に呼びかけた。が、栗のような色をしたその髪を振り乱し、猫のように大きな瞳でにらみつけてきた。なぜか、俺もいっしょに。
さすがに、女の子が怪我をしていないかどうか、心配になったので、
「大丈夫か?」
と声をかけると、頭のてっぺんの俗に言うアホ毛が、ビコンと動き、
「あーーーーっ!」
とアユムのほうを向き言った。俺の事は無視か。
「あたしの魔装錬器!返せっ!早く!急げ!すぐさま刹那の内に早々に早々と即行で瞬く間に束の間に瞬時に一瞬でたちまち今すぐさっさとすぐさま返せっ!」
ようするに、すぐ返せという事を言いたいのであろう。ずしずしと地面を踏みながら、どんどんとアユムのほうに近づいていった。すると、どんどん服がすけて・・・・・す、透けっ?
「だから早く・・・おいそこのメガネ何してるんだ」
俺は、裸が完全に見える前に手で、目を隠していた。メガネと言われても何も感じないぐらいあせっていたんだと思う。・・・あせっていたんだと思いたい。
「あ・・・あのさ、ほかに着替えとかないのか?」
「ほえ?」
俺の言葉を反復しているのだろう。あせったような声で、
「こっち見んなっ!こんの変態っ!エロスペシャルが!」
「いや、だから見ないように目を隠しているんだ。それよりそこで、・・・・指を立ててにやにやしてるやつになにか 言ったらどうなんだ?」
「こんの!」
即決即断だった。女の子はアユムの顔を蹴り飛ばし、墓石の後ろに隠れた。
これからどうするか、もう走って家まで帰るかと思っていると、後ろから、ぞくりといやな気配がしたので、
受身を考えずに飛ぶと、砂埃が舞い、アユムがぶっとんでいった。そしてそれを追う黒い影たぶんあれは、あの巨大ツキノワグマだろう。あいつは、ゾンビだから死なないのでアユムはほうっておいて、とりあえず、
俺は、近くの墓石に隠れると、
「こっちくんな!この変態!」
「わざとじゃな・・・ぐはっ」
女の子に、思いっきり腹をけられた。いや、場所を考えなかった俺も悪いけど、口で言うとかもっとこう・・・・と言い訳じみた事を考えつつ、俺は気になっていたことを聞いた。
「あいつは何なんだ?」
「あいつはB級メガロの凶悪女子高校生クマッチだ!あんたあいつの友達なんだろ!あいつもすぐに殺されちゃうぞ!」
またわけの分からない言葉が出てきたぞ。と思いながら返答を返す。
「まあ、あいつなら、大丈夫だろ」
「ばか!ほんとばか!あんたら相手の力量も測れないのか?これだから、この世界の人間は!」
「全く」と何回もあきれた声で続けていた。お前はあいつをもっと信じろって。
すると、ここにまでクマのぬいぐるみに似た姿に見合わない猛々しい咆哮が聞こえてきた。
おお、これはやばいかもな。[俺と女の子が。]
すると、遠くから、
「学ランでいいか?」
「知るかっ! は? 何言ってんの?」
「お前の着替え」
それだけ言うとアユムは一気に距離をつめ、クマが、おそらく投げようとでもしていたのだろう。伸ばした手をつかみ引き寄せ、クマの頭を両手で持ち、首を回した。ゴキャッという音がしてクマの首が落ちた。
なぜ、これだけの力が出せるのか、それはあいつがゾンビだからである。わかりやすくいうと、痛みも感じないしすぐ怪我も治るので普段人間がセーブしている力全てを出せるのだ。あまり上げすぎるとアユムの手が千切れたりするが。
そしてアユムは、学ランを彼女にわたし、[「こっち見んな」といわれ蹴られたのは余談だろう。]女の子が、着替えるまで待ち、着替えると質問タイムとなった。
「あのくまはいったいなんなんだ?」
「さっきも言っただろっ!凶悪悪魔男爵クマッチだっ!」
微妙に変わっていた。
「いや、そうじゃなくてだな、もっと総意としての正体を知りたいんだよ俺たちは。」
「あれは、あたしの世界を襲うやつらで、あたしの任務は、そいつらを倒す事なのっ!」
なるほど、つまりほっとくと、やばい奴らってことか。
「それよりそこのあんた」
「なんだ?」
「そこの魔装錬器とって」
「ああわかった」
そうしてとろうとしたのだが、
「っ!痛っ」
触ろうとした瞬間バチバチっと音がして、俺の手に電気のスパークみたいなものが走った。そういえば、アユムが戦っているときに女の子もさわろうとしてはね返されてたな。
「すまんアユム。とってあげてくれ」
「ああ」
アユムが触っても何もおきなかった。
「よしちょっとあんたらの家につれてけ。電話しなきゃ」
「んっ?電話ならここにあるけど」
と言うと女の子はズザッと音がするぐらいの勢いであとずさり、
「何よその魔装具・・・・・・・・・」
俺の愛用の黒の携帯を突き出すように前に出すと、さけるような動きを見せる。もっとやってあげようか。
と言う考えをかろうじておさえ、
「ただの電話だよ」
「ほんとか?もし騙したら、そこのクマッチみたいになるからな。」
粒子化ってことか。できればなりたくないな。
軽くそれをあしらい、携帯を渡すと女の子はどこかにかけだした。
「あ、大先生ですか?あたしです。リフレイン年ライジング組のハルナです!」
つながったようだ、どうやら、この女の子はハルナと言うらしい。そしてこの世界と言っていたので相手は別世界だろう。電波って世界越えるんだなーそして、リフレイン年ライジング組って、どんなセンスだよお前の世界。
「えっ!まさかそんな!この世界の人間が・・・・はい分かりました。では」
そして電話をいささか乱暴に返してもらい、そのあとの女の子の第一声が、
「お前、私の魔力奪っただろ!」
と、アユムのほうに向いて言った。
「はっ?」
「とぼけんな!この天才のハルナちゃんの魔力を奪うなんて、ありえないほどの魔力がないと無理だって、大先生が言ってた」
「残念ながら、俺はただのゾンビだ」
「不死者!ならあんたも」
まさかのところで俺に回ってきた。
「いや、俺はただの一般人、人間だ」
「フーン」
普通の人間と分かったら、興味0か。そして、再度アユムのほうを指差すと、
「あんた責任取ってもらうからな!」
「責任とは?」
わけが分からないと言った表情でアユムは聞いた。俺もだよ。
「あたしの任務は、この腐った世界でアーティファクトを探し出すこと。それと、魔装少女として、この世界 に現れるメガロを探し出す事。それと魔装少女としてこの世界に現れるメガロを倒すこと。」
「ああ、『魔法少女』ねー。そうじゃないかと思っていたんだ」
「はあっ?あたしは『魔装少女』だ! そんな陳腐なもんと一緒にすんな!」
このままだと、一番重要なことが、聞けないような気がするので、
「メガロってさっきも言ってたけど、なんで、あんなものと戦っているんだ?」
ゾンビであるアユムでも、骨が折れる相手なんだ、この小さい女の子では、手に余る・・・・いや命の危険さえあるだろう。
「メガロってのはね、あたしの世界を壊そうとする害虫だ。一匹残らず駆逐しないと、あたしら魔装少女に未来はない。つまり、あたしは戦士なわけ。すごいっしょ!」
「なるほどな、天敵ってことか。ならなんで、そのメガロがこの世界に来るんだ?お前の世界を壊したいんなら、お前の世界で戦えばいいんじゃないのか?」
「じゃあ聞くけど、あんたは自分の家で戦争がしたいのか?」
だが、他人の庭でするのもおかしいだろ。結果的には、助けている事になっているんだろうけどなんだか腑に落ちない。そして、俺に対する説明は終わったとでも言うかのようにアユムに向かい、
「とにかく、あたしは戦えなくなったから、あんたがやれ!」
「はっ?」
「あんたは今、現時点をもって魔装少女だっ!光栄だろっ!」
びしっとアユムに指を突きつけて言った。
「待て待て。その、魔法少女だっけ?俺は少女どころか男だぞ?やめたほうがいいって」
「俺も反対だ。そんな尻拭いみたいな真似をなんでアユムがやらなければならないんだ」
「知るかっ!やれって言ってるだろっ!」
こいつは、人の話を聞いているのだろうか?少しばかり意思セービング能力を使い、
「だけど、そんな簡単に・・・・」
「その間・・・・・・・・・・・超ウルトラスーパー究極不本意だけど、あんたん家に居させてもらうからな」
これ以上の悔しそうな顔はないだろうと言うぐらいの顔で、視線をそらしながら呟いた。
「そこのあんた名前は?」
「歩だ。相川、歩・・・・・・ていうか、やっぱり、もう少しかんがえて・・・・・」
「・・・・・・アユム。そう、アユムだな」
聞く耳がほんとにないな、こいつは・・・・
俺がそう思っていると、アユムが、
「わかった。その・・・・・・魔装少女とやらはやってやる」
「おい、アユムほんとにいいのか?今でさえ十分に・・・・・・」
今でさえ、十分に危険なのに。そう言いたい俺の事を察したのか、
「ああ、元をたどれば俺のせいみたいだからな。しゃーなしだ」
「まあ、お前がいいならそれで俺はかまわないが」
そのアユムの最大級の譲歩に、女の子はアホ毛を弾ませ、したり顔で頷いた。
「そうと決まれば、早速魔装少女になる練習だ!」
拳を天に上げ、こ踊りしそうなステップで歩み出す小さな女の子の姿に俺は何か胸騒ぎのようなものを覚えた。
「ただし、ひとつ条件がある」
アユムが、そう女の子に言った。まあ、あたりまえか、こんなことをノーリスクで受けるわけが・・・・・・
「俺の事をお兄ちゃんと呼んでくれ」
刹那の瞬間に蹴られていた。そりゃそうだろ。いや、しかしまさかここまで変態だったとは、
「・・・・・・」
「おい、和人?お前、俺を見る目が『失望した』とでもいいたげな目にになってるぞ!?」
いや、それはそうだろう。現に失望してるからな。
まあ、こんな訳で、相川 歩は、魔装少女になり、俺にロリコンじゃないのかと疑われるはめになるわけだ。