これはゾンビですか?~いいえ、彼は黒の剣士です。   作:西じゃない東(斎藤 隆)

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謎の力発現です。

紫色の風は、体にまとわりつくように吹き抜けていった。すると、「うくっ」という声を出しハルナが自分の体を抱いた。

 

「何、これ・・・・・・嘘」

 

「ハルナ?」

 

「黒ずくめ、さん・・・・何このぞくぞくした感じ・・・・・」

 

そして、ザリガニがこっちに近づいてくると、ハルナが目を閉じ肩をピクッと上げた。

 

「ハルナ、もしかしてあいつの事が怖いのか?」

 

「ふざけんな!あたしが、メガロに恐怖するなんて・・・・・・そんな」

 

そこで、言葉が途切れ座り込んでしまう。

 

まずいぞ・・・こんな所で身動きができないなんて・・・しょうがない・・・か。

 

「よいしょ」

 

「な、なにすんだ」

 

危ないと思った俺は、チェーンソウを持ったままのハルナをおんぶしたのである。

 

「あんなところにいたら、危ないだろ。それに、アユムの邪魔にもなる」

 

「・・・・・・」

 

ハルナも納得してくれたのだろう。なにも返事は返ってこなかったが、うなずいた気配はあった。

 

しかし、戦況のほうはあまりかんばしくなかった。アユムの右腕が切り落とされてしまったのである。どうやらあのザリガニはスピードがはんぱなく高いらしい。

 

「アユム!」

 

ハルナが心配するのも無理はないだろう。だがしかし、この怪我で死なないとは言ってもこれでアユムの攻撃力は大幅に下がってしまった。

 

そして、じりじりとすり足をして距離をはかる。どっちにもまるで隙がない。ここは、先に動いたほうが負けの我慢比べだ。しかし、

 

「アユム!さっさと魔装少女になれよな!」

 

「ちょっ、まてって、うわあ!」

 

いきなりハルナがチェーンソウを投げ渡し、あまりに急な行動だったため俺はバランスを崩して倒れてしまった。

 

「なにやってんだよっ!このばかっ!」

 

ちなみに倒れる寸前に体をひねり、ハルナは下敷きになっていない。

 

「ばかはお前だ!」

 

「なんだとっ!このばーかばーか!」

 

これ以上言っても時間の無駄なので無視しておく。それよりアユムだ。

 

そう思いアユムの姿を探してみると、アユムはちゃんとチェーンソウをキャッチしていた。無論その過程でだろう。いくつか傷が増えている。

 

「呪文を唱えろ!」

 

ハルナの命令はちゃんと届いたようだ。アユムは呪文を唱えた。そう、魔装少女になる為の呪文である。

 

「ノモブヨ、ヲシ、ハシタワ、ドケダ、グンミーチャー、デー、リブラ!」

 

すると、アユムの制服がはじけとび、光が集まってきた。

 

そして、光が一つに集まり、アユムの体にコスプレ衣装がコーディネートされる。それは、ハルナが着ていたものである。鳥肌がたつほどの存在感がある。無論、アユムがそんなものを着ているということは、

 

「うわぁ、気持ち悪いな・・・」

 

「聞こえてるぞ、和人!」

 

「だが、事実だと言う事を受け止めろ」

 

「くっそお」

 

「なにやってんだよアユム!早く・・・・・・・早く行けよなっ!」

 

ハルナにせかされ、しぶしぶと言った感じに向き合った。

 

ザリガニも相当警戒している。しかしそんなザリガニをふっとばし、アユムはラッシュを決めて、倒れこむザリー(この時にハルナに聞いておいた)に赤く発光し、回転するチェーンソウをたたきこむが、防御されてしまう。

 

「ふん、私はこれまで六人の魔装少女を殺したが、貴様が一番厄介だ。それに・・・・奇怪だ」

 

「奇怪はおたがいさまだろう」

 

空気が震えるような、そんな緊張感がする。

 

すると、ザリーの右腕が突き出され、その大きなハサミがとんだ。

 

「「うわっつ」」

 

二重に聞こえた事に疑問をもち、廊下の奥を見る。(戦いは、廊下で行われ始めている。)

 

そこにいたのは・・・

 

織戸だった。

 

それはそうだろう。教室から騒音が聞こえてきたら、それは気になって様子を見に来るだろう。

 

アユムもそっちに気を取られていたのか、ザリーの攻撃を受けて紙くずのように吹き飛ばされる。

 

「ちょっとここで待ってろ」

 

「黒ずくめさん何する気だ?」

 

「織戸を避難させる。だからすこし待っててくれ」

 

「分かった」

 

ハルナにそういうと、今度はアユムに、

 

「織戸は、俺が避難させる。だから、お前は戦いに集中してくれ!」

 

「ああ、頼むぞ!」

 

そう言って、織戸のいるところに慎重に進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと、二メートル・・・一メートル・・・よし。

 

「織戸。怪我はない・・・みたいだな」

 

「なあ、和人何が起きてるんだ?」

 

「ああ、そのことについては後で説明する」

 

ちょうどその時、轟ッ!という音がした。

 

何事かと目を向けてみるとすごいスピードでザリーのハサミが飛んできた。

 

くそっ!せめて織戸だけでもッ!

 

そう思い織戸を横にありったけの力で突き飛ばした。もうハサミは目の前だ避けてる余裕は無い。

 

「和人ッッッ!!!!」

 

アユムの痛烈な叫び声がひびく。

 

こんなところで、こんなところで、俺は!俺は!

 

死にたくないッ!!

 

そして俺は硬く目をつぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?おかしい。痛みも何も感じない。でも、轟ッという音はしている。おそるおそる目を開いてみると、

 

「なっ!?」

 

なんと、俺の周囲に漆黒の炎が俺を守るように広がっていて、ハサミはそれに止められていた。そして次の瞬間。ボッ!という音がして、一気に燃え尽きた。今のは?

 

「おい、和人大丈夫か?」

 

「ああ」

 

「そうか、でも今の何なんだ?」

 

「それが俺にも分からないんだ」

 

アユムと話をしていると、ハルナがチョコチョコと気絶しているらしい織戸に向かって歩いて織戸の額を触る。すると、織戸の体から力が抜ける。

 

「おい、何してるんだ?」

 

「記憶操作。この辺一帯は今のあたしじゃ無理だから、あんたがやれ」

 

「へいへい」

 

そうしてアユムは、開始するが傍目には立っているだけにしか見えない。

 

「?」

 

直後、目に違和感があった。

 

「どうした?」

 

「いや、ちょっと」

 

目がよく見えない。なんだ?と思い、汗を拭くため眼鏡を取る。すると、

 

「あれ?」

 

「おい、本当にだいじょうぶか?」

 

「いや、大丈夫だ。けど、目がよく見えるんだ」

 

「はっ?」

 

そうなのだ、眼鏡を取るととてもクリアに景色が見える。

 

「なんで、そんなこと?」

 

「さあな。少なくともあれには関係してるだろうな」

 

そう言って外に目を向けると、そこにはもう、部活をしている人はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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