受付に二階堂が確認すると伊達と少女は既に署内から出ており、少女が近くの公園で別の人間と待ち合わせしていると話していたそうだ。
受付では既に二階堂の噂を聞いて追跡にノリノリになっている交通課の辻本巡査と、頭を押さえている小早川巡査の二人…だけでなく出歯亀をするため集まった各部署の馬鹿どもがにやにやと集まっていた。
その様子を見ていた両津は大きな溜め息をする。
「はぁ~…お前ら…全くこの署にまともなのはいないのかー!」
「まぁまぁ両津先輩、落ち着いて。なにか事件かも知れないじゃないっすか?」
「そうですよ。それに何か抱えてるなら俺達に手伝えることがあるかもしれませんしね。」
「青島…一平…お前らまで……うー…なぜここまで当たり前みたいな顔してるんだ、こいつら腹立つ…」
と、呆れる両津と青島、一平が話している間にも、杉下、辻本を中心に公園の監視網が張られようとしている。
「…だからおそらくここ、この茂みからは見付かりませんので、警部殿、神戸さん、両さん。そして2つ離れた所に私と頼子が入ります。
アパートの屋上から監視するグループはカメラを忘れずにね♪」
すぐに辻本が指示をだし、それを嬉々として受ける所員たち。署内に残る連中も、設置されるであろう盗聴器に自分の無線の周波数を合わせ今か今かと待ちながら仕事を続けている。監視班は各々が尾行しているグループに確認を取りながら先回りをし、公園周囲にスタンバイする。そして辻本、二階堂の元に連絡が入る。
「こちら青島。一平ちゃんと位置についた。」
「こちら特車~…言われた通り変装して位置についた。」
「えー…こちら矢部…今から座るであろう一つだけ空いているベンチにマイクを仕掛けたら位置につくからな!」
「こちら神戸、警部、両津さん…位置につきました。」
「…こちら小早川……位置についたわ。
…夏実、頼子、本当にやるの?」
と、総員が位置につく。やべと秋葉は新聞で顔を隠しながら公園の中のベンチに座り、青島、一平はトイレの掃除に来た業者の服装、特車の面々は公園の側の電信柱に点検に来ている電気会社の格好をし、小早川は普通車に乗り、公園に横付けしている。
残る五人も予定通り植え込みの裏に隠れ、息を潜めている。
更に辻本が無線に指示をだす。
「美幸ぃ…もう参加してるんだから文句言わない!
皆ぁ!今回は警部殿もついてるししっかりとみはるわよぉ!」
「「「「「おぉー!」」」」
「…私もこのようことの責任を取ったことはないのですがねぇ…」
と活気付く所員と苦笑する杉下。しかし勢いづいた辻本が笑いながら小声で話す。
「大丈夫ですって警部殿。私達は仲間の心配をしていただけですから!私達のいた署でも似たようなことしましたし!ねぇ~み・ゆ・き~?」
と過去に同僚のデートを署員で監視していたことをばらす。二階堂も思い出し笑いながらどんなことをしたのか盛り上がっている中、車にいる監視されていた小早川は顔を赤くして更に車のシートを深く倒した。
「おや、小早川さんに想い人がいたとは、ディナーに誘おうとしてたのに、残念」
神戸が軽い調子で懐から高級レストランのチケットを見ながら残念がる。
それを見て眼を光らせる二階堂、
「それなら、神戸さん~私を連れてって~!そのチケット!あの新しく出来た美味しいって評判の所の奴ですよね!私行きたかったの~!」
と、少し可愛い子ぶりながら、おねだりするが、神戸は爽やかに笑いながら、
「まぁ、シェフの友人から貰ったものだし、連れていってあげるのはいいけど…今度、墨東署の葵双葉ちゃん…だっけ?紹介してよ?」
後半の台詞は婦警にだけ聞こえるようにこっそりと耳打ちしてきた。以前二階堂達のいる交通課に遊びに来ていた美人との交流を求め、交換条件を出したのだ。また、あまりの美人に少し調べた神戸だったが、女性署員のデータに載っていない為、二階堂たちに渡りをつける機会を狙ってもいたのだ。
それを聞いた二人は固まったかと思えば、二人だけで会話を始める。
「(ねぇ!神戸さん…葵ちゃんを狙ってる!どうしよう!)」
「(落ち着きなさい頼子!神戸さんと言えば一応エリートで私的にはないけどイケメンで、少しキザだけど女の子には優しいって…好条件じゃない!)」
「(…どうする夏実?現実を教える?)」
「…いやぁ…今度、中島くんと美幸のデートの時に、緊張しないようにってダブルデートとして葵ちゃんと二人を引き合わせるってのは!?)」
「(よし!それで!)」
「(バレないようにね頼子!!)」
と何か二人が計画したところで、二階堂は神戸に向かいにこにこと笑いかけながら、
「解りました神戸さん。でも彼女…少し人見知りな所があるから、今度確りとデートのプランたててあげるね!」
と、交渉成立の旨を伝える。
神戸は嬉しそうに、
「それはどーも。このチケット、結構期限短いから気をつけてね?」
と、本気で双葉に当たる為、二階堂とは食事に行かないとの胸も伝え、二人分を渡す。
それを聞き、楽しみが増えたと心のなかでほくそ笑む、元墨東署のメンバーであった。
伊達さん出てこない
すみません。
葵双葉さん…元祖ともいっていい男の娘です