上層部の会議が終わり数日後、警察内に新しい警察署が出来ることとそこに配属される自身の署内の人間の話で持ちきりだった頃…
ー官房長室ー
静かで張り詰めた空気のなか対峙している二人の内、椅子に座った方の男がニヤリと笑いながら口を開いた。
「それで?僕に用件って何かな?僕も今忙しくてなかなか時間が取れないからはやくしてね?」
それにもう1人が柔和に笑い答える。
「それでは、端的に。今、官房長官が忙しいのは、今建築されている新しい警察署の件ですね?」
「そうだけど?色々やり易くするのに特別に行動出来る部署を纏めて置いておきたかったんだ。お前も含めてね?」
「なるほど。それで私にお呼びが掛かったというわけですね。しかしそれだけではないでしょう?」
「…何が言いたいのかな?僕はお前ほど賢くないからね。遠回りするならこれで終わってくれる?」
「すみません。貴方は新しい署に所轄や本庁にいるいわゆるはぐれ者を集め、そして雑用をさせ、腐らせ、問題を起こしたらすぐに切れるようにするのが今回の狙いだと。」
「そうだよ?前に会食の時にお前の話をしたらね?あちこちに訳のわからない署員がいるって言うじゃない?だから上の皆が困らないように、僕が責任を持って、問題児を預かろうってこと。まだ選考が進んでないんだ。急がないとね。」
「しかし、それは建前の一つ。」
人差し指を天に刺し、警部は続ける。
「今、あなたが集めている各署の署員は確かに問題を起こす署員だ。間違いない。しかし彼らは…有能だ。
警察というシステムのなかで動くには問題だらけだが、それさえ取り除けばまさに…護国を担う優秀な人材だ。少なくとも貴方はそう思った。そして、そこに…蟻塚監察官が乗ったというところでしょうか?」
自身の推理を一息に言った警部は長官の返事を待つ。
「…まぁ概ねその通りだよ。
悔しいけど、お前は優秀だからね。さっき会食の話をしたでしょう?あの時、他のところの問題児の話を聞いて思ったんだ。何で優秀な奴らをうまく使おうとせずめんどくさがるんだろう…ってね。なら僕がそいつら貰おうって思ったのが最初。蟻塚ちゃんは自分でもう二人ほど抱えてたんだ。だからなら纏めてみようって思ったら上手くいってね…いやぁ話がすぐ進むから良かったよ。脅したりするには骨が折れそうだったし…」
そう言いながら椅子を回し、外を眺める
「それで?異動が嫌なの?駄目だよ?これはちゃんとした辞令なんだから。」
「いえ、あなたが何を思いこのようなことを起こしたのか…きになりましてね?」
「はぁ…あぁあ…またいつもの病気?僕だってね真面目にこの国を思ってだよ…… ねぇ杉下?時代が変わってこの国は昔よりいろんな奴らから狙われるようになったよ?だけどね?この国の上層部は未だに自分の利権を奪い合って潰し合いだ…下らない…
そんな奴らの中に本当に国を思ってる奴らがどれくらいいるのかな?」
「…どうでしょう…少なくはないと思いますが…」
「あれ?全員だ!とかは言わないんだね…そうなんだよ…全員ではないんだよ…だからかな?全力で自分の正義を貫く奴らを集めてみようって思ったんだ。…そんな感じだよ。まぁ、柄にもなく真面目に答えちゃったね。こりゃ君のところにいた亀山くんだっけ?彼の影響かもね?」
「成る程。私の正義は暴走する…でしたか?そんなことも仰っていましたよね?」
「なんだよ。筒抜けじゃないか。別にその通りだろ?」
「今となっては否定も出来ませんがね?」
「もう恥ずかしいからこの話終わりね?所で杉下、君は警部課長になるから。まだ、部署の名前は決まってないけど役職的に上になるからね?今ついてる子だけじゃなくなるからちゃんと面倒みるようにね?」
「分かりました。それでは失礼します。」
「うん。頑張るようにね?」
官房長室から杉下警部が出ていく。
「…少し話しすぎたかな?でもねお前に期待してるのは本当なんだよ…杉下…」
そしてまた、官房長官は仕事に戻っていく。
そして初顔合わせの日、オープンセレモニーの1週間前、自分の荷物を持った男が二人、車から降りてきた。
一人は元特命係警部 杉下右京
もう一人は元特命係警部補 元警視 神戸尊
これより彼らは新しい勤め先に異動するのだ。
「しかしいくつになっても新しい職場というのは緊張するものですねぇ。神戸くん?」
「そうですね。ま、僕としてはここの前のところに異動してきた時が一番驚きましたがね?」
と神戸のすこしとげのある言い方に、含みのある笑いで答える杉下。 神戸にも小野田官房長官の考えを伝えているが、やはり納得しきれていないのだろう。出ていく時に捜査一課の伊丹、芹沢に嫌みを言われ、少しイラついているのだろう。
多くない荷物を抱え、新しい署内の中に入っていく二人。署内は自分達のように自分の荷物を搬入する人たちで溢れている。
「なかなか込み合っていて…進めませんねぇ…」
「そうですね。…なかなかレベルの高い女性もいますね…後で部署聞いとかないと…」
「貴方はすぐ女性ですか…」
足元に荷物を置き、入ってくる同僚を観察しながら神戸に呆れる杉下。
そんな杉下もまた、新しい同僚を見ながら自身の高揚を押さえられずにいたのだった。
取り敢えずこんな感じです。
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