序章の第5話ですね。
仕事の合間に書いていると、
あっという間に文字が埋まって恐い。
因みに「青春は神憑りにつき ……」は
ハーメルンに直書きではなく、
携帯のメールで下書きして、それをコピペしてます。
ハーメルンだと横幅が大きすぎて、
非常に慣れないためです。
ですが、何とか慣れるようになろうと、
最近ある原作の二次創作として試しに書いてます。
中々慣れず、完成がいつになるのか不透明です。
二次創作は連載形式にしない方向なので、
書き上がるのに時間がどうしても掛かりますね。
年内にアップ出来たらいいなと思う今日この頃。
ーーー神原学園1階 美術室ーーー
教室へ戻ると、日永と星河さんが待っていた。
美術で使う道具も貸し出されるため、持っていくものは筆記用具と教科書、資料集と手軽だ。
日永の様子が若干おかしいと思ったのだが、とりあえず無視をして3人揃って美術室へ向かった。
僕自身それまでの授業は受けてないため、最初は誰かの似顔絵をデッサンしてていいと言われ、実質見学のようなものだ。
(誰でも自由に描いていいって言われたけど、誰にしようかな)
日永は授業中落ち着きなくて常に動いているし、星河さんは気付かれたら後が恐いし……。
(意外と臆病者ですね、天城くん……ふふっ)
うるさい。大体絵は下手だし、上手く描く自信あるわけないじゃん。
(大丈夫。私が憑いてるんですから、保証します)
…………まあ、描かなきゃいけないし、早く人を見つけて……。
辺りを見回していると、1人寂しそうに授業を聞いてる女の子がいた。
目線は先生がいる教壇かノートにしか動いてない。
あの子を描いてみようかな。
まっさらな画用紙に鉛筆を走らせた。
顔から順に描いていく。本人のクール加減とは違って童顔で小顔なんだ。
眉毛を弄ったりした跡もなく自然に伸びている。
目が二重なのは自前なんだろうか。
少しふっくらした口元の色も良い。
高校生の割りに、化粧っ気のない純粋なすっぴんらしい。
心の中でとはいえ気持ち悪いな僕……。
(私がバッチリ聞いてますけどね)ジトー
そんな視線向けないでくれよ。絵を描く上で観察は重要だろ。他意はないよ。
(ふーん……でも、私の能力だけあって、やはり上手いではありませんか)
確かに。生涯で最高の出来ではなかろうか。
思わず、目が点になる。
(例え私の力を加えても、元が駄目ならこうはいきません)
プラマイゼロ。むしろマーイ。そんなギャグをしていた芸人を思い出した。
(天城くんには元々絵を描く素質はあったんです。最初に描いたのが上手くいかず諦めたから気付けなかったんでしょう)
諦めた……いやあの絵の出来で、練習して磨けばこうなるとは誰も予想つかないだろ。
でも事実、僕の手で描かれた彼女はそこにいる本人をそのまま閉じ込めた写真の様に思えた。
「天城さん、描き終えましたか?」
美術の教科担任が、僕の様子を見て、問いかけてきた。
「はい。とりあえず一通り終わったので、これで提出します」
席から立ちあがり、先生の前へ歩き、それを手渡した。
渡した後、気にせず席に戻る。授業の時間も僅かだし、先生の話を聞くだけでいいだろう。
「好実先生、天城くんの作品もみんなのと一緒に飾りますよねー?」
……みんなのと?
「そうですね! 天城さんも今日から晴れて、このクラスの一員ですし! 今度美術室前の廊下に貼っておきますので見たい人はどうぞ!」
好実先生と呼ばれたその人は急にテンションが上がったみたいだ。
クラス全員飾られているのなら、僕に拒否権はないよね。
(天城くん、やっぱり″すまほ″とやらを買いましょう。写真撮りたいです)
そんな金あるわけないし、僕では契約出来ないから無理。
それに写真撮るだけなら、インスタントカメラで充分だ。
購買で売ってたような気がするから、それで我慢して。
顔を向けずに、言葉を思い浮かべるだけで伝わる……テレパシー使ってるみたいで楽しいな。
ーーー神原学園3階 2年B組教室ーーー
放課後。日永と星河さんはそれぞれ部活動に入ってるらしく、早々に教室から出ていった。
今朝、担任の宇津見先生から渡された諸々のプリント類に目を通す。
学校だよりとか学年だよりとか、そういったものは流して良いとして、問題は入部届けだよな。
部活に入る意思が無いことを伝えたのだが、この学園において部活動は義務化されていた。
それを知った瞬間、僕の学園生活計画が無惨に崩れ去った。
(そう落ち込まないで下さい。色んな事を試せるいい機会だと思いましょう)
そうは言ってもね……。
別に今日決めなきゃいけないわけでもない。
締め切りは来週の水曜なんだから、見たり体験したりして、のんびり決めればいいか。
(今日の夜御飯は、なんでしょうか)
涎を垂らしてる顔が容易に浮かぶ。
実体化してないのなら食べる必要性皆無でしょ?
もっとも晩飯はまだ決まってないんだけどさ。
ーーー神原学園1階 玄関前廊下ーーー
後ろの華凰の気配を確認しつつ、買い物をするため購買へ向かう。
昼時に買っても、取り置きはしてくれない。
運が良ければ刺身や寿司なども置いているそうで、これを狙っている。
しかし、野球でもそうだったが、狙っている球ほど中々来ないもの。
ここは欲がオーラに出ないよう″普通″でいることが肝心だ。
(天城くんはオカルト好きですね。狙ったものが取れるかどうかなんて所詮運じゃないですか)
君みたいな幽霊に出逢えたら、そりゃあオカルトを信じたくもなるでしょうよ。
「そこのキミぃ~!!」
突然の大声に身体がビクついた。
廊下では反響するから、大声出さないでくれ。
そう心に思いながら歩いていると、両肩に重いものがのしかかり、体勢を崩された。
「いたた……。急に何が起き」
「キミが桃ちゃん描いた少年だね!?」
女の人は目をギラギラさせて、そう問い詰める。
なんだかわからないけど、その人からレモンの香りが漂い鼻を刺激した。
いい匂いだ……と呆けつつ、少しずつ冷静さを取り戻し我に返る。
「その……桃ちゃんっというのは……僕のクラスの……」
名前を把握してないので、疑問符が付かないよう言葉を濁す。
クラスメイトを知らないというのは、とんだ薄情者だと言われ兼ねないし。
「そうそ! 桃ちゃんはアタシの初めての後輩なの! 部活は別々で、ただ委員会が同じってだけだったんだよね。でもあの子、どこかふわっふわしてて危なっかしいでしょ? これはもう放って置けないって思ったら一直線! 桃ちゃんに猛烈なアタックをしてたら去年の学園祭前に心を開いたから、学園祭連れ回してね、互いに食べ過ぎてしばらく食べるのを控えた記憶が新しいよ! でも密かに寮で夜な夜なお菓子を食べてたけど、桃ちゃんには内緒よ内緒っ! 約束だよ! あ、それからキミ、美術部入らない? というかあの絵を見せられたらスカウトせずにはいられないっしょ! いやぁ桃ちゃんには感謝感謝だよ! そんなわけで是非とも我が美術部へ入部しよ♪ ね?」
言葉のガトリングが、鼓膜に撃ち込まれた。
ほぼ0距離と言っても差し支えない程に近く、そのくせ弾が大きいから性質が悪い。途中からは完全に死体蹴りである。
たぶんというか絶対、日永に会わせてはいけない人物だよこの人。
そして話を聞く限りでは先輩らしい彼女の押しにやられたんだろうね、その桃ちゃんとやらは。
「熱烈な……アプローチありがたいんですけど。今日決めるつもりではなかったし。まだ他の部活動も見てないので」
「なら余計よ! 選択肢が増える前にキミを確保したいのよ!」
銃声が鳴り止まない。
出来たら関わりたくないんだけど……
「大丈夫、キミなら必ず即戦力になれる! 年俸は決めてないけどそこは出来高払いで、何なら次期部長も確約す」
その言葉を聞いた瞬間、急に世界は暗転し、僕の意識が途切れた。
「貴女は大きな失敗をしましたね」
…………あれ? 目の前にいるのって先ほどのガトリングと、僕?
なんか身体が浮いてるような気がしてならないんだけど。何が起きた?
「天城くんに対して、その誘い文句は禁句ですので」
「………………」
おお、銃声が止んだ。
というか、この状態ってまさか……。
「それ以前に、学園に来てまだ2日目の天城くんに対して、そんな押し迫るような真似は威圧感を生み出し、天城くんも嫌がります。それに彼は野球を通して負ってしまった心の傷を治すためにここへやって来たというのに。ここの学園の生徒は物珍しさだけで寄ってたかってまったく。興味本位で近付く人、私は大嫌いです」
完全に華凰だな口調といい。ただ見たことがないくらい激おこの様子。
僕のために怒ってくれるのは嬉しいけど、あることないことを言うのは止めてほしい。
普段はあまり感情出さない分、爆発力が凄まじい。
「天城くんを誘いたかったら、その態度を改めてから来なさい。それでは失礼します」
そう言った華凰が入っている僕の身体は、先輩を置いて即座に立ち去った。
「あちゃー、あちらの神様怒らせちゃったかー」
そんな独り言を拾ってしまうも、僕は僕を追うことに必死だったため彼女に声を掛けられなかった。
今度先輩と会ったとき、どんな顔したらいいのだろう。
関わりたくないと思ってるのに、僕はその事ばかり気にしてしまった。
ーーー学園寮 212号室ーーー
「いきなり何してくれてんの君は」
夜御飯にする前に、僕はフローリングの上で華凰を正座させていた。
当然の光景である。
「なんで前兆なく、超常現象起こすの? いきなり幽体離脱とか、あのガトリングに撃たれてマジで死ん……そこまでは思ってないけど、なんで死んだ!? くらいには思ったんだよ?」
「ごめんなさい。朝からストレスが溜まっていたのでやってしまいました」
「要するにイライラしたからやっちゃいましたって言いたいのかな? 万引き犯かお前は」
「神様は犯罪などに手を染めたりしません!」
「ツッコミの台詞として言っただけであって、別に犯人扱いしたんじゃないよ」
あの後、元に戻ったときは既に寮にいて、両手が重いなと思ったら、大量に買い込まれたカップ麺の入った袋を持たされていた。
とりあえず華凰を部屋に置いといて、疲労に苛まれながら購買まで歩き、ある程度返品した後、目当ての物を購入して帰ってきた。そして現在に至る。
「互いに自己紹介してないし、こっちの過去暴露した所で納得するわけないだろ」
「ですが、天城くんを追い込んだあの言葉が出たとき、明らかに貴方は動揺したじゃないですか!」
確かに年俸がどうとかの言葉を聞いて、視界が回っている感覚に陥った。
両親に攻められたその時と同じように、自分の存在があやふやになった。
異常だ。言葉1つで、こんなにも心は揺さぶられ、歪みそうになる。
なんて脆いことか。
「トラウマ抱えてたらああもなるだろ!」
「ならあそこ黙っていたら、流れで美術部に入ることになってるんですよ? 折角これから色んな可能性を探ろうとする、天城くんの覚悟が台無しにされると思うと私には堪えられませんでした」
「だからって、身体に乗り移っていい理由にはならないぞ。本当に僕を思ってるんなら、前以て僕に伝えること。予想外の出来事はびっくりするから嫌なんだよ」
「……それでいいのですか?」
「良いも何も、今後こういうことが無いとは言い切れないし。ただ乗り移るんなら、事前に報告してってことさ。あとそれと」
「?」
「もしまた僕の身体で好き放題してたら、脳内でも会話しないからね」
「…………」ウルウル
「涙目になってもダメだよ。君が前に言ったよね? 僕らは一心同体って。なら、身体だけじゃなくて心も1つにしないといけないでしょ?」
「はい……」
「なら、尚更2人でこれから決める約束事くらい互いに守ろうよ。それを守り抜くことで、僕も少しずつ君を信頼できるようになると思うから」
「天城くん……」
「その約束事は御飯の後でいいだろ。流石に疲れて腹が減りすぎたわ」
それがなんであったかは、敢えて聞かない。
どういった現象で、どういった縛りがあるのか。
華凰が話してくれないのは、まだ僕を信じてない所があるからかもしれない。
みんなはまだ2日目だと言うのに対し、当事者の僕としてはこの2日間があっという間に過ぎたように感じた。
神様の恩恵や乗り移りを味わった身として、ある考えが頭に過ってしまった。
それは全生徒が神様に取り憑かれているのなら、学園内にいる間は各々、神様の恩恵に隠された本当の自分を押し殺して生きているのではないか、ということ。
他にもいくつか思い浮かんだけど、今はこの考えが吸盤のように貼り付いて離れない。
『学園内において天城くんは神憑りしてるので、私の能力と合わさった状態なんですよ』
裏を返せば、学園の外に出れば本当の自分に戻るということ。
神様の影に隠れている人と仲良くなるには、どうすればいいんだろう。
2日目にしてよく話す、あの2人のことを思って考える。
その最中、視界が静かに閉じていき、今日という日が終わってしまった。
以上、序章の第5話でした。
ここまで読んでくださり誠にありがとうございます。
ふと思ったのですが『次回予告』のようなもの
やってみたいものですね笑
何度書いてみても最後にスタンバイ!と
付け足したくなるのは何故でしょうか笑
さて11月の終わりまでに5話も書いていたのは
少し驚いてしまいました笑
年内には序章は終わる予定です。
第1章までもう少しです。
年越し直前くらいには
第1章の1話を投稿出来るように頑張ります。