青春は神憑りにつき……   作:蓬操

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こんにちは。蓬操です。
昨日に続き、短めですが投稿です。

今日も23時に投稿するつもりでしたが
このペースならあと2回で序章も終われそうですね。

休みの日は時間を気にしなくていいのが良い。



週末は理不尽により……

週末なのに校舎へ来ているのは可笑しいと思いつつ、現在は文芸部の部室にお邪魔している。

読書は比較的する方だし、誰1人声を発さずページを捲る音、筆を走らせる音だけで満たされた空間は好きだ。

だから文字を読みながらの考え事も非常に捗る。

例えばこの週末。運動系の部活動を除き、様々な部活動を体験させてもらった。

手芸部、科学部、料理研究部、テーブルゲーム部、占い部、数学部、英語研究部などなど。

数々の体験を通して、神憑りの状態にある僕について分かったことがある。

華凰が″芸術″の神様だとすれば、それに関したことが出来るようになるだけだと思っていた。

しかし、実際は″芸術″と括れない分野においても、そつなくこなせていた。

数学や科学などがまさしくそれだ。

ここに来る以前は全体で見ると成績の悪かった教科だったのに、部員の人達の説明も難なく理解できていた。

しかし絵が描けたこの前のこともあるし、″芸術″の神様なんだろうけど。

僕に掛かる恩恵は、広い分野を平均以上にこなせる″器用さ″だ。

そうすると、華凰の言う″能力が上がった″という表現は少し間違っているような気がする。

 

「天城さん」

 

正解なのか間違いなのか解答を思う中、部室にいたもう1人が僕を呼び掛けた。

僕も、その人の名前を呼んだ。

 

「星河さん、どうしましたか?」

 

「いえ、長いこと部室に居てくれてるから、他の部活動はいいのかなと」

 

同級生の星河さんと部室で鉢合わせたときはビックリしたのと同時に納得した。

文芸部は3年生が進路を決めるのに手一杯で、部室に来ることは全く無いらしい。

星河さんは先代から部長を任されている。それでもどっかの誰かのように入部を押し迫ることもなければ、勧誘しようという気さえも見えない。

かと言って、部室に長居する僕を追い出そうとせず、気遣ってくれる。

今日まで何度か彼女と話してきたけど、いまいち彼女という人間がわからず、意図せず警戒してしまう。

 

「寮にいても、時間を無駄にするだけ。こうして部活動体験している方が何かと勉強になるし」

 

「勉強……ですか」

 

「学園に来て数日間。まだ学園の生活に慣れないし、神様について理解するのに時間が掛かりそうだからね」

 

星河さんには、神様について話してみた。

彼女なら周りにおいそれと話し回ったりしないだろうと判断したからだ。

華凰の詳細については、もちろん秘密に。

 

「それより小説、書いてるんだろ? 僕と話してていいの?」

 

「もう起承転結の転まで書けてます。これは自分の趣味の範疇だから、そこまで集中するものでもないの」

 

「そうか。まあでも、ちょうど現実に帰って来たし、ここいらで出ていくことにするよ」

 

「そうですか……」

 

そう言うと、彼女の視線は作文用紙に戻った。

 

「また、本が読みたくなったら来ていいかな?」

 

入部するかどうか別としてね。

 

「それは構いませんが」

 

彼女は視線をそのまま、

筆を走らせながらこう続けた。

 

「出来たら、入部を考えてくれたら嬉しいです」

 

顔色を変えずに星河さんはそう言った。

もっと嬉しそうにしても良さそうなのに。

 

「わかったよ。じゃあまた月曜日、教室でね」

 

 

文芸部の部室を出て、僕は見学に行ってない部活動を探し始めた。

廊下で走り込む運動部?の人達とすれ違う。

男女が混ざるそれらに、″桃ちゃん″が居るのを確認した。

「! …………」

 

向こうもこちらに気付いたようだ。

あの後、本人から名前も教えてもらい、白幡桃子という。

白幡さんは、僕が先輩から一方的な勧誘をされたことを知ったらしく。

 

『ご、ごめんね大地くん!』

 

彼女からの第一声がそれだった。いきなり名前呼びなのが印象的だった。

髪はセミロングで眼鏡の似合う、星河さんとはまた違う文学少女みたいな白幡さん。

そのアワアワした様子を見ていると、あの人が言っていた″危なっかしい″というのも頷ける。

勧誘自体は嬉しかったし、先輩の態度に問題があっただけだから気にしなくていいと伝えた。

『でも、あたしが勝手に喜んで舞い上がって彩夏先輩に話したのが原因だもん。先輩はこれと決めたら中々ぶれない人で、その、ごめんね』

 

あの絵を見て、そう思ってくれたんだ。

勝手に描いてしまったし、一歩引かれるかなと思ってたのが、その一言でで一蹴された。

ただ今はまだ自分の実力で描けたわけじゃないのが申し訳ないけど。

 

『なんであたしをモデルにしたかは知らないけど、出来たら新しく1枚描いてくれないかな。部屋に飾りたいよ』

 

そう言われた僕は断る理由も無かったため、授業用のノートを取り出し、その1ページに彼女を閉じ込めた。

『ありがとう』

 

お礼を言った彼女の微笑みが寂しげに見えたのが少し気になった。

 

『どういたしまして』

 

詮索できなかった。今は出来なくてもいい。

時間が流れて、いつかなんでもない話で笑い合えるくらい仲良くなれてからでも遅くはない。

約2年近く、この校舎で共に過ごすんだ。

ゆっくり。焦る必要はない。

 

すれ違う彼女にエールを込めて軽く手を降った。

彼女はそっと顔を背けたとき、ちょっとショックを受けたのは僕だけの秘密だ。

 

 

そのあと吹奏楽部、軽音楽部、合唱部と音楽系統の部活を体験した。

どの楽器、どのパートもこなせた。音楽の″お″の字も知らないような僕が。

やはり″器用さ″がかなり強化されているにしても、出来すぎて恐くなる。

華凰が言うには、若干水増ししている所はあれど、基本的にはその人の持つ潜在能力を引き出しているだけ。

人間が筋肉本来の力が使えないのを、神様がそれを使えるように解放している状態だとのこと。

 

ただそれなりの代償があり、僕の場合は今まで鍛えてきた筋力や体力を失ったらしい。

その証拠に疲れやすかったり、重い物を持てなくなっている。

さらに推測通り、学園の外に出れば、失ったものとそれまで積んだ経験は残ることもわかった。

以前までは、喧嘩を売られても、返り討ちに出来るほどに強かった。

 

だけど……

 

「編入生。お前の神様は祈っても何にもしてくれない無能だなオイ」

 

今の僕は暴力に弱い。

たたでさえ心の弱い僕が、身体まで弱くされた。

 

恩恵の代償を痛みで味わい、動かない身体は引きずられる。

 

誰も来ない旧校舎の散らかった教室に投げ捨てられた。

声も出せず、天井を見つめるしか出来ない僕の意識は静かに終わっていった。

 




以上、序章の第6話でした。

突如、天城の身に災難が降り掛かった。
その末に直面する陰と陽は彼を惑わす。
己の無力さに嘆く人と神。
それを助けるは彼に関わりを持つ者たち。
差し伸べられた手に彼の行動は……。

次回、序章の第7話「それでも君は……」

次回予告、こんな感じでいいんでしょうか?
とりあえず第7話は1週間以内に投稿する予定です。

最後にここまで読んでくださり
誠にありがとうございます。
読んでくださる貴方がいるおかげで
私は書き続けることが出来ます。

本当にありがとうございます。
それではこの辺で、失礼します。

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