序章の第7話、無事に書けました。
ここで、先に行っておきます。
前回第6話の次回予告は無意味です笑
というよりも、次回予告を考慮せずに
序章の終わりに向かってく事だけを考えて
書いてしまったのです泣
現段階での構想上、序章もあと1~2話です。
10話目はコメディ寄りの箸休めを予定。
休むことも大事なことなのです。
それでは序章の第7話を、お楽しみください。
目を覚ますと、慣れ親しんだ温もりに包まれていた。
身体全体に痛みが走り、声が漏れてしまう。
確か、誰だか知らない奴に絡まれてボコボコにされたんだっけ。
今までもそうだったが、いつも相手から仕掛けて来るから、遠慮なく返り討ちにしてきた。
ただ黙ってやられて過ごすのは、その暴力に屈して受け入れたと言っていいだろう。
今回、やられながら自分が置かれている状況を思い知らされた。
恩恵の代償を忘れて、売られた喧嘩を買ってしまった僕が悪いな。
何とか身体を起こそうとした。
♪ペンペンッ ペンペンッ♪
何故かセットされていた目覚ましが鳴った。
いまの気分的に、それはあまりに鬱陶しく、かわいいだなんて一欠片も思えなかった。
「うるさいっ」ベシッ!
騒音を止めて、辺りを見渡した。
「すー……すー……」
パソコンの画面を開いたまま寝ている華凰を見つけた。
顔には涙の跡が刻まれている。大分心配かけちゃったんだろう。
何故、彼女は傍にいなかったのか。聞くつもりはない。
僕に非があるのは当然だし、華凰を責めたところで八つ当たりでしかないんだから。
考えてみれば、喧嘩で負けたのは人生初だな。
予定していた部活動見学も今日は中止にしよう。
華凰が治療してくれたみたいで悪いけど、念のため保健室へ行っておこう。
普通の学校とは違うここならば、土日祝日でも診てくれるかもしれない。
……そういえば、服が部屋着になっている。
「………うはっ!」
「!?」
いきなり飛び起きた華凰。途端に辺りをキョロキョロし出した。
そして僕を見つけるなり、力強く抱き締めてきた。
「……華凰。その、痛いんだけどさ」
「神様を働かせたのですから、少し我慢してください」
華凰は僕の胸に顔を押し付けていて、彼女の表情は伺えない。
僕は出来るだけ、彼女から目を反らして、言うべき言葉を吐いた。
「心配、かけてごめん。それと手当てとか、慣れてないだろうにさ。ありがとう」
「……私の″器用さ″を以てすれば、ある程度出来るようになります。それと謝らないで下さい」
僕の背に回してる両手がシャツをグッと掴んだ。
「私こそ、貴方の傍を離れ、危機に駆け付ける事が出来ず申し訳ありませんでしたっ……」
彼女の謝罪に、どんな言葉を返せばいいんだろう。
気にしなくていいよ。
君のせいで痛い目に遭ったよ。
現状を理解してない僕が悪いんだから。
あの時こそ、君が乗り移ってさえいればっ!
感情に任せて動いた結果だから仕方ないよ。
いつの間にかいなくなって、どこにいってんだ!
今まで返り討ちにしてきた罰が昨日下っただけ。
何が神様の恩恵だ、良いことなんか何も……。
嘘と本音が混ざり合う。
何が嘘で何が本当なのか、僕は気付いていながら、言いたい事を言い始めた。
「野球に限った話じゃないけどさ」
「?」
「実力が物を言う世界では生まれの後先は何の意味も成さないんだ。だから意図せずに先輩を蹴落とし、そうして恨まれて襲われ、痛いのは嫌いだからと抗い、人を傷付けてきた」
先輩を差し置いて、グラウンドに立っても圧をかけられ、挙げ句の果てに脅されて喧嘩を売られて。
実力で取ったのに、理不尽としか思えない。
才能が無い上に身長も足りない僕は、ただ練習して実力を付けようと努力をしただけなのに。
出来ることに胡座をかいた怠け者は抜かされて当然だと思っていたから。
「昨日こうしてやられたのも、僕には必要だったかもしれない。 殴る痛みを知ってても、殴られる本当の痛みまでは知らなかったから」
「天城くん……」
「痛くて辛くて、そんな思いの中で浮かぶ名前を僕は叫べなかった。1人で居ようした自分が、どれだけ愚かだったか身に染みて、助けてなんて言えなかった」
やり返すのは止めよう。
あいつに同じ痛みを与えても、その暴力がまた争い呼ぶだけ。不毛だ。
傷が治った頃にでも、話し掛けてやればいい。
人であれば、ある程度は耳を傾けてくれるはず。
「悔しい気持ちは分かるよ。でも仕返しはしちゃダメなんだ。あいつもまた神憑りにある身だ。もしかすると…………かもしれないだろ?」
「…………貴方って人はわかりません。自分を傷付けた相手のことなのに、何故そこまで?」
僕の胸中を打ち明けると、分かってくれたのか華凰はそれ以上何も言わなかった。
「そんなわけだから、まずは日永と星河さんと友達になれるように頑張ることにする」
「それは良い事ですね」
「だから明日教室に行って、日永と星河さんが怪我について聞いてきたら、正直に話すよ」
「…………あの2人がどう思うかは別として、まあそれでいいでしょう」
「で、いつまで抱きついてるの?」
「私を不安にさせた時間だけです」
「それって一晩中じゃない? 抱きつかれても傷は治らないでしょ。保健室行ってくるから後にして」
「女子に抱きつかれて嬉しいくせに」
「そうだね。否定はしないよ」
それは本音である。
ただ自然と実体化してるようだけど、頻繁にしないでほしいと願う。
恩恵だけでもその代償を味わった身だからこそ、実体化と憑依についても、それなりの代償はあるはずだ。
そしてこれらは漏れなく全生徒の共通項だろう。
神原学園がこんな田舎にあり尚且つ有名にもならないのは、こうしたオカルト要素が強く、生徒の負担があるからなのかもしれない。
街中にあったら、色々騒がれて面倒になるんだろうね。
「寮長のおじいちゃんが言った通りかもね」
「寮長の? あの台詞のことですか?」
「人間の行動と同じ。善意が不幸を、悪意が幸を呼ぶことだってあるんだよきっと」
「私の善意は、どうなんでしょうか? 神様だからと偉そうに説教したりしてましたから……」アセアセ
「……まだほんの数日間だから、君の善意が何を呼ぶのかなんてわかるわけないだろ」
「…………」シュン
「そういえば、君は僕にしか見つけられないって言ってたよね。結局は、実体化も憑依も僕無しでは出来ないから周りに見えなかっただっけか」
「はい、言い……ました」
「最初にあの言葉を聞いたとき、半分はゾッとして怖かったな」
「こ……こわい……」ガーン
「もう半分は嬉しいと思ってたんだ」
「!」
「僕にしか見つけられないということは、君には僕が必要だったということでしょ? 初めて必要とされた気がして嬉しかった」
あの時言えなかった僕の本音。
神様なのかどうか、幽霊だからなんだとか。
半信半疑でいたけど、正直答えはどうでも良かった。
なのに華凰は必死に神様ぶったり、わざわざ実体になったり僕に乗り移ったり。
感情に身を任せての行動もあったけど、全部僕に信じてもらいたくて、認めてもらいたくて起こしたものだって思う。
確かに昨日は助けてもらえなかったけど。たった1度の失敗で見捨てるような人間にはなりたくない。
そうされた時の痛みを知ってる今だから、僕は強く思うんだ。
「僕にも君が必要なんだよ。君に出逢って説教されたからこそ、僕は前を向いて歩き始めた。卒業までの間だとしても、新しい道の上は誰かと一緒に歩きたいと思えるようになった。ありがとうじゃあ足りないくらいに感謝してる」
「…………」
「だから君を見捨てるような真似は絶対にしないよ。目の前の神様に誓って」
「!?」
僕はハッキリと言った。
それは華凰に何かあった時の力になりたいという決意を込めての宣誓。
言葉の裏側は、言ったり書いたりした当人にしか真意はわからない。
素直に言えばいいものを、僕はそこに隠した。
"芸術"の神様なら、それくらいの事は簡単に察してほしいところだ。
翌日。教室へ行くと、想像した通り日永は騒々しかった。
「大地!? そのケガ、週末何があったん!? 部活仲間から色んな部を回ってるって聞いたぞ! 部に入ってすらいないのに、もう先輩にイビられてるのか? それな」
「落ち着いて日永さん。天城さん大丈夫?」
一瞬、星河さんが日永を睨んだような気がしたけど、気のせいであってほしい。
「一昨日に部活動の見学に行ってて、その帰りにDクラスの人に絡まれてこの有様」
「編入生も大変だな! しっかし、絡まれた割りには無事なようで何よりだ!」
「無事ってさ、身体のあちこちが痛いんだよ?」
「C組やD組と喧嘩した人の7割くらいは重症を負って学園を去っていくの」
星河さんはそう告げた。
相変わらず、顔もほとんど変わらず、声に抑揚も無いから何を思ってるのか分かりづらい。
「運が良いのか悪いのか。天城さんはよくわかりませんね。でも、大事に至らなくてよかった」
「! …………僕も星河さんがよくわからないからお互い様だね」
「でもよ大地。男にだって逃げていい時はあるんだぞ。なんでそうしなかったん?」
「前の学校まではよく喧嘩売られてたから、いつもの調子で受けちゃってさ。ここが神原学園だって事をすっかり忘れてたせいで、ボコボコにされちゃったのさ」
「お前のその筋肉は飾りかよっ!?」
飾りです。少なくともここにいる間は。
「喧嘩慣れしてる、というのは意外」
「前の学校じゃあ因縁つけられるの日常茶飯事だったし。黙って殴られる趣味はないからね」
「D組の野郎が強すぎただけで、案外大地が弱いわけじゃなかったりしてな!」
無理矢理持ち上げないで。本当に弱ってるんだからさ。
明日が部活動入部届けの締め切りだ。
あれ以来、先輩は現れず勧誘は諦めたものだと思われる。
確かに失礼な態度ではあったが、入部してほしいという気持ちが強すぎただけだろう。
実際、勧誘された事自体は嬉しかったし。
しかしあの時、勧誘を断ったのは華凰であって僕じゃないからな。
ちゃんと僕の言葉で、気持ちを伝えるのが筋だ。
その思いを胸に美術室前廊下までやって来た。
廊下にはたくさんの生徒の絵が飾られている。
華凰が眺めていたおかげで、自分の作品がどこにあるのか探すまでもなかった。
白幡桃子の授業風景を描いた作品。
なんで彼女なのか。理由を浮かべるほど、深く考えていなかった。
ただ目に留まったから、描いてみようって思っただけ。
あの時は華凰からの恩恵を知るために試し描きした。それを素直に言うのは白幡に対して失礼極まりないだろう。
さて。部室であろう美術室からは賑やかに声が宙を行き交っている。
扉を開けようと、僕は手を伸ばした。
「じゃあアタシは、出かけてそのまま直帰するからお後はよろしくね!」ガララッ
思いっきり後ずさる。
心臓に悪いし、驚くの嫌だから止めてほしい。
「あっ……」
「こんにちは、先日はどうも」
てっきり部室内に引っ張られるかと覚悟した。
だけど、その覚悟は無意味だった。
「場所、変えよっか!」
変わらない笑顔はそこにあるのに、あの時ほどの輝きを感じられない。
先導する彼女を追っている間、僕は勧誘の返事をどう言おうか、迷い続けていた。
以上、序章の第7話でした。
いかがでしたしょうか?
第8話、第9話にて終わる予定の序章。
アニメが好きで、原作を読むこともあります。
例えばラノベの第1巻の序章は私が読んだ限りでは、
ほんの数ページ、多くても十数ページとか。
私にとって序章はスタートに立つのに欠かせない
大切な準備運動の様なものです。
第1章でやればいいじゃん←ダメです!
冗長だと言われようとも、
序章は起承転結の前を担う大事な役割があります。
色々言ってしまいましたね笑
序章が長くて申し訳ありませんが、
あともう少しなので、よろしくお願いいたします。
ここまで読んで下さり
本当にありがとうございました。