青春は神憑りにつき……   作:蓬操

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こんばんは。蓬操です。

序章の第8話ですね。

読み返していると自分の拙さを実感します。
第9話と箸休めが終わったら
もう少し試行錯誤してから
第1章に入りたいですね。

第9話は最長となるのが確定なので、
長く期間を空けてしまいますが
どうか待っていてくださるようお願いします。

今回は後書なし。

それでは序章の第8話をどうぞ。




僕達で決めたこと

先輩に連れられ、校舎の裏側へ来た。

普通であれば告白とか思い浮かべるだろうけど、2回会っただけで、それをする人はいない。

 

「ごめんね! ご足労掛けた上に、ここまで連れ出しちゃって」

 

「いえ別に構いませんが」

 

「頭の包帯どしたの?」

 

「これは野郎に絡まれてボコられただけですね。おかげで休みが1日潰れました」

 

「見た目に寄らず、血の気のある子だね~」

 

先輩は僕の包帯をマジマジと見つめながら、撫でてきた。

 

「あの……」

 

「ありゃりゃ! 左手の傷痕ヒドイじゃない! 大丈夫なの?」

 

何故こうも地雷を踏んでいくんだろこの人はっ。

 

「学園に来る以前の傷ですから大丈夫です」

 

「野球……が関係しているんだよね?」

 

「この手と一緒に、夢も希望も砕けたんですけどね。まあ詳しい事は話したくないので控えます」

 

先輩はそれまでの笑顔をしまって、泣きそうな顔を浮かべて俯いた。

 

「度々、アタシって失礼だね。傷付ける、つもりなんてこれっぽっちもないのに」

 

「まあ今日で会ったの2回目なのに、的確に傷痕を抉るような発言出来るの逆に凄いですよ」

 

「皮肉しか聞こえない」

 

先輩は一向に顔を上げない。

ただ思ったことをそのまま言っただけなんだけど、先輩もこんな感じかもしれない。

 

「とりあえず、勧誘についてですが、断ったのは"僕"じゃないので改めて返事をしに来ました」

 

「! でも、キミの神様に嫌われちゃったみたいじゃんか」

 

「関係無いですよ。仮にそうだとしたら、先輩は僕を諦めるんですか?」

 

ストレートにぶつける。

それが真っ直ぐに思いをぶつけてきた人への誠意だ。

伝えたい気持ちが強すぎて、踏み潰されそうになっても、それを跳ね返してやるくらいの気持ちでいないといけない。

 

「…………」

 

「結論から言いますと、僕は部活動をしません」

 

「!?」

 

僕の発言に、先輩はハッと顔を上げた。

うっすら見えた涙の跡は見なかったことにした。

 

「なに言ってんの? 部活動に入るのは義務だよ」

 

「神様を付けられるのと同じで?」

 

「それは……」

 

「学園に着て、試験の時にも神様に取り憑かれるという話をして鵜呑みする人間はいません。大方、鼻で笑い飛ばして終了でしょう」

 

部活を断るだけなのに、わかってもらおうと、打ち明ける予定の胸の内をさらけ出した。

 

「取り憑いた神様は、取り憑かれた人間にしか見えない。神様は取り憑いた人間に乗り移る。神様は条件が合えば実体化出来る。神様の話を持ち出さないこと。それも校則にありましたけど、守る気はありません」

 

「そんなことしていいの? 学園がキミに危害を加えるかもよ?」

 

「先輩に話してる時点で破ってますし、何より」スゥゥゥ

 

『僕達で決めたことですから』

 

「!?」

 

フッ「色んな部活動の体験をさせてもらって楽しかった。僕はこれからもそうしていきたい。自由にたくさんの事を学んでいきたいんです。だから、頼まれたその時は力を貸していこうと思います」

 

僕には野球以外にも選択肢があった。可能性がまだ残されている。

嫌な予感を振り払った後は、楽しい学園生活を送りたいものだ。

 

「た、だから! それはキミの勝手な考えな訳で、学園が受け入れてくれるかどうかなんてわからないでしょ!」

 

「それを含めて、答え合わせをするために明日、担任部活動をやらない事を告げて、学園長と話せるようお願いするつもりです。まだ編入試験の面接以来、挨拶をしてなかったので、そのついでとでも言って」

 

臆面も無く、僕はそう告げた。

なんでこんな行動を起こしてるのか。

逆らう事は怖い事。

この学園に来ていなければ。

華凰に出会わなければ。

心の中で色んな言葉に襲われているのに、僕は僕の思ってる以上に、度胸があるらしい。

"神様"が関わってるのなら、僕達がやろうと決めた事は天罰が下るようなことかもしれない。

勘違いしないでほしい。

たった数日間いただけのここに入れ込んでるわけじゃない。

華凰から話を聞いて、本当の事だったらと思うと背筋が凍って、何とかしたいと思っただけ。

嘘であってほしい。 嘘なのが1番いい。

そう願いながら、明日の解答を臨む。

 

「そういえば自己紹介まだですね。僕は天城大地と言います。先輩は?」

 

「葉風亜樹……」

 

「じゃあ亜樹先輩。また話したいことあったら、呼んでいただいて構いませんので失礼します」タタッ

 

「あっ! ちょい……!」

 

「それと、白幡ちゃん押しに弱いようなので、あまり迫らないようにして下さいね」

 

亜樹先輩を残して、その場を立ち去った。

 

 

 

もう授業は終わった。

明日は色んな事が起こるんだろう。

学園長に駆け寄って何の解決になるのか知らないけど。

自分の未来のために動き始めなければならない。

そう覚悟を決め、寮へ向かおうと歩いてると、突然腕を掴まれた。

 

「もう帰りますか?」

 

振り向いた先に、星河さんがいた。表情はいつもと変わらない真顔だ。

 

「部活に入ってない僕は寮へ帰る以外に用事なんてないからね」

 

「それなら、少しだけ話がしたいけれど、いい?」

 

「部活動の事なら、日永もいるときに話した通り、僕はどこにも入らないよ?」

 

「そういう些細な話じゃなくて」

 

僕の腕に伝わる力が強くなる。

その意図を汲めず、僕は首を傾げて彼女の言葉を待った。

何かを決めたように、僕の目を見つめて、ようやく口は開かれた。

 

「天城さんが、行おうとしてる事について詳しく話が聞きたい」

 

「……ただ先生に、入部しませんって言うだけ」

 

「違う!」

 

星河さんから初めてハッキリとした否定を聞いた。

近距離な上に大きな声。

何度もやられて慣れてきた事に嫌気が差した。

 

「神様についてだね。だって動かないと何にも変わらない。この学園に新しい生徒が来て神様に取り憑かれての繰り返し。どこかでそれを脱却しないといけないでしょ?」

 

「だからって、別に天城さんが行う必要性を感じない。他の誰かがきっと……」

 

「待ってたら誰かがやってくれるんだろうか」

 

誰かに任せるということは、誰かに責任を押し付けることだ。

そのくせ、その誰かが失敗をすれば寄って集って責め立てる。

任されたいとかじゃなくて、誰もやろうとしない事を僕はやりたい。

 

「神様に取り憑かれる事についての考え方は人それぞれだと思う。でも、人間の勝手で維持されているこの現状は打破されるべきなんだよ」

 

「田舎にある、普通の学園にしたいということですか?」

 

「それが1番いいね。でさ、星河さんは神様についてどう思う?」

 

その問いかけに星河さんは僕から目を反らして思案した。

 

「良い事もありますが、それは神様がいるからであって、自分で得たものではありません」

 

当然、星河さんだって何かを代償にして得た恩恵を受けている。

それが何なのかは聞いたりしない。彼女から話してくれるその時まで待つことにする。

 

「わたしもあなたも。ここにいる皆さんは、神様の力を自分の力と錯覚しているんです。神様に申し訳ありませんが、わたしは天城さんの意見を支持します」

 

真顔の多い彼女が優しい微笑み。

こんな表情も出来るんだということ、そして僕の話に賛同したことに驚かされてしまった。

 

 「ありがとう。その気持ちだけでも嬉しいよ」

 

 「でも部員全然いないから、時々本を読みに来てほしい」

 

 「時間を作れたら行くよ。特に話も出来ないかもしれないけど」

 

 「わたしも、話すのは苦手だから気にしないで」

 

 「それじゃあ今日はこれで。また明日ね、星河さん」

 

 「はい、また明日」

 

 

 

 星河さんと別れ、寮へ帰った。

 部屋に戻った途端、身体をベットへ放り投げた。

 話疲れと歩き疲れに襲われ、ものすごく怠い。

 夜ご飯も作る気力が無い。ただお湯を沸かして注いで3分待つだけなのに、それすら煩わしい。 

 

 「気持ちは分かりますが、ご飯はしっかり食べないといけませんよ? 大地くん」

 

 倒れた横に彼女はいた。

 慣れてきたせいか、あまり驚かなくなった。

 

 「元はと言えば、君があんなこと言うから」

 

 「でも全てを話してって言ったのは貴方ですよ?」

 

 「互いに秘密は無しって決めた以上は仕方ないだろ。それに君は僕の記憶を全部見たんだからさ」

 

 約束事を決めようとしたあの夜。僕達は互いを曝け出した。

 まず僕の記憶を彼女に覗かせて、その後で彼女について全部聞かせてもらった。

 これから一緒にいる上で、大切な約束事をいくつか決めた。 

 その1つが秘密を作らないこと。 

 互いにどういった人間で、どういった神様なのかを知る必要があった。

 おかげで、とんでもない学校に編入してしまったと思った。 

 

 「でも君の秘密に比べると、僕の過去がどれだけちっぽけだったか思い知らされたよ」

 

 「過去は誰かのと比べるものではありません。貴方の辛さが、誰かと同じなんてこともないんですから」

 

 「優希は凄いね。僕だったら、そんな風に誰かを諭すなんて出来ないし」

 

 「私は私の持論を述べているだけです。まあ語る相手も、私には貴方しかいませんので……」

 

 ある時から今まで。優希は1人だった。

 それを回避する術があったのか、僕にはわからない。

 優希の全てを聞いたからこそ、僕は彼女のそばにいてあげたいと強く思うようになった。 

 

 「僕に出逢えてよかったね、優希」

 

 「自分で言ってしまうんですかそれを」

 

 ピンポ~ン 

 

 僕達の会話を呼び鈴が横切った。

 出るのも面倒だし、居留守使おう。

 

 ドンドン! ダ~イ~チ~クン!

 

 なんで僕の部屋を知ってるんだろうか。

 怠いと思いつつ、これ以上被害が広がる前に、僕は部屋の扉を開けた。 

 

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