15、晴風出航しちゃった!
小型スキッパーで学園艦へ向かう。
その操縦席にはバナナを片手に持つ岬明乃士官候補生。その後ろには同じく士官候補生葉月ほのか。
ちなみに、明乃が寝坊したのをほのかが起こしに来ていた訳ではなく、ほのかが体調を崩していて、ギリギリまで寝ていたから明乃が迎えに来たのだ。大型水上バスで移動するのもいいが、それよりは小型スキッパーの方が速い。
ちなみに、スキッパーは手軽で速い乗り物でありかつ燃費はともかく機体は比較的安い。なのに大量に走っていないのは、免許を取るのが鬼難しいからだ。中型スキッパーなんて、よっぽど勉強しないと取れない。
ちなみに、学園艦についた時にたまたまましろともえかが居たが、明乃が落としたバナナの皮に滑ってましろが落ちた。
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「すごいよもかちゃん!武蔵だよ!武蔵!」
私も驚きね。公開されている入試成績なら私が武蔵の艦長になるはず…だとするならば、恐らく校長の真雪さんがまたバッシングの話で気を回してくれたのね。
「うん、ほのちゃんだと思ってたよ。」
「そんなことないわ。もかちゃんも十分歴代の武蔵艦長に匹敵する成績と実力をもってるもの。」
「ありがと。」
「それに、ミケちゃんも艦長よ?晴風の。私の上司なんだからシャキッとして欲しいわ。」
「そうだね…」
そう。私の例の事があってから青葉は1度改装し直して、現在は最終チェックでドック入りしていて、結局は青葉がロールアウト出来ないで空いていたこの晴風になったのよね。この艦も私が手を加えてるけど。
ん?あの猫…ミケちゃん好きそう。
「ミケちゃん、あの猫かわいいよ?」
「かわいい!」
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晴風。陽炎型航洋艦。
全長122m。全幅11m。基準排水量2,137トン。船籍番号Y467。最大速力38.7ノット。航続距離6,400海里/18ノット。武装:16式14cm連装砲3基、4連装魚雷発射管+自発装填装置各2基、12.7mm単装機銃2丁、高性能機関砲「ファランクス」2基、大海掃具1基、小海掃具1基、爆雷投下台2基、爆雷投射機1基、爆雷68個。
現代の航洋艦の平均最大速力は33~35ノットと言われている。その中でも私の開発した缶を使っている艦は36ノットが平均。島風型なら42くらいまで出るかしら。
とはいえ、安定性にかけるのも事実。超高圧超高温圧縮缶を使っているから。
その晴風の中には様々な部屋がある。例えば教室や艦長室、食堂、医務室。もちろん乗員用に幹部乗員は2人部屋、一般乗員は4人部屋となっている。この他に第1士官室、第2士官室がある。幹部クラスの会議には第1、さらに限られた人なら第2を使うわ。
それはさておき、そのうちの教室に入ると、航洋艦とは思えない教室の広さが目に入ってきた。
「ミケちゃん、教官が来るまで時間が無いわ。そろそろ着席させて幹部だけでも自己紹介させた方がいいわ。」
「そうだね…とりあえず、私とほのちゃんだけでいいと思うよ。時間もないし。」
「分かったわ。」
私の進言にミケちゃんが声を上げる。
「みんな!時間前だけど、着席して!」
ミケちゃんの言葉にみんなが話をやめて着席する。
「はじめましての人が多いよね。まずは艦長の私と副長の自己紹介だけやらしてください。艦長の岬明乃です。浪江中学校出身の士官候補生です。ちなみに、航洋艦クラスでみんな成績が低いと思ってるかもしれないけど、このクラスは元々重巡クラスが間に合わなくて急遽用意した艦なの。その証拠に、副長も士官候補生で、各科には実技で特殊な方向に能力を持つ人が集まっています。この艦なら士官候補生だけで構成されている艦と同等以上に動けると信じています。これから3年間、よろしくね!」
「副長の葉月ほのかよ。半年ほど前に酷いバッシングを受けた艦船開発者。まあ本職は指揮官なのでそちらがバッシングを受けても毛ほどでもないけどね。あと、体力的には虚弱体質なので、そういう点では配慮してもらえると助かるわ。ちなみに、バッシングを受けても、搭載され続けてる高性能機関砲ファランクスも私の設計よ。よろしくお願いするわ。」
私の自己紹介が終わると同時に古庄教官が入ってきた。
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(この子達…統率力が高い。特に副長は艦長の補佐が勘弁ね…さすが小学生から士官候補生なだけある。)
古庄薫は晴風の教室の前で2人の士官候補生について見ていた。
(…!?葉月ほのか…気配を消した私を気づくとは…)
古庄は終わったのを見計らって教室に入る。
「晴風クラス、全員そろっているな?」
古庄は左右を見回して、人数を確認する。
「艦長。」
「起立!」
「主任指導教官の古庄です。これからあなた達は2週間の海洋実習に出ます。初めてのことで不安もあるでしょう。ですが、穏やかな海は良い船乗りを育てないという言葉があります。この2週間で皆さんがどれだけ成長できたか…楽しみにしています。それでは各自、艦長の指揮の下、出港準備。」
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艦橋に行くのにミケちゃんに手伝ってもらう。真梨ちゃん―彩木さんだけど、真梨ちゃんが三隈の頃は手伝ってくれて、改装中は長時間のため基本的に車椅子だった。今回は艦橋に私用に設置型折りたたみ椅子を複数取り付けてもらっている。
「大丈夫?」
「はぁ…はぁ…虚弱体質は若干治ったと思っても…はぁ…体力は変わらないわ……」
「ほら、この階段で最後だから。」
流石にミケちゃんがどれだけ運動神経が良くてもおんぶはできまい。真梨ちゃんと私なら身長差が20cm以上あるから出来るかもしれないけど。
艦橋に着くと、既に航海長以外は居た。
「艦長に副長!?大丈夫ですか!?」
「私は大丈夫だけど…ほのちゃんはしばらく無理そうだね…」
すると、ミケちゃんが艦長の証である艦長帽を脱いでみんなに自己紹介をする。
「さっきも自己紹介したけど、改めまして、岬明乃です。よろしくね!こっちが副長の葉月ほのかちゃん。あなたは?」
ついた時に安否を聞いてくれた子が答えた。
「私は…書記の納沙幸子です。」
それに連なるように制服にオレンジのパーカーを着た子が自己紹介する。
「水雷委員の西崎芽依よ。」
遅れた人が今到着した。
「すみません!遅れました!航海長の知床鈴です。あなたは?」
どうやら残った1人以外は面識があるようだ。運がいいわね。
「わ…う…」
「砲術委員の立石志摩さんだよね?」
「うんっ」
「よし!それじゃ、定位置について!出港用意!」
私もそろそろ動かないとね。
「前部員、錨鎖詰め方!出航準備!錨をあげ!」
西崎さんが驚く。
「うおっ!?復活した!?」
「艦長。」
「両舷前進微速、140°、ヨーソロー!晴風出港!」
出港して艦と艦の間がある程度開くと、ミケちゃん…艦長が命令する。
「航海長操艦。」
「「「航海長操艦。」」」
「両舷前進原速、赤黒なし、進路150°!」
「頂きました、航海長。両舷前進原速、赤黒なし、進路150°!」
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案の定、エンジン停止。再始動しないという不具合を起こした。
一旦学校に帰ることになった。近くを通る、大湊海洋学校第一学年所属の松型航洋艦 梨 に曳航してもらう予定である。
大湊海洋学校は、ブルーマーメイド養成学校のうち、共学である珍しい学校だ。東舞鶴男子海洋学校からブルーマーメイドに就職することはあるが、ブルーマーメイドのための学校で、男子がいるのは珍しいのだ。(ブルーマーメイドは艦長などの組織のトップには女性を配置することが義務となっており、ホワイトドルフィンの男性のみとは違う。が、もちろん男子のブルーマーメイド就職率は毎回0.1%から0.5%と言われる。)
大湊海洋学校は毎年募集人数が35名で、1クラスしかない。
そして、今年の首席合格者は…
「お久しぶりです、葉月艦長!」
かつての三隈の水雷長の浪江中学卒業の士官候補生 中野千歳であった。