はいふり~天才な私の物語〜   作:風早 海月

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3、受験しちゃった!

私、今柄にもなく緊張してるのかしら?

 

そんな柄じゃないのに。

 

前世でも幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、就職。今世でも、幼稚園でそれぞれ入園式や入学式、入社式なんてあったのに。慣れたもんでしょ?

 

なのにこんなに緊張するなんて…

 

どう考えても彼女が原因ね

 

でも、まだ誰も知らない。まだ大丈夫。私さえ気にしてないフリをと押せれば。

 

――――――――――

 

入学式が終わって

 

 

私は両親とましろの4人で家路についたのだけど…

 

ましろはその持ち前の不運さを存分に発揮して、2回植木鉢が落ちてきて、消防用の水栓の点検から狙ったかなように水が吹き出していたわ。なんか本当にかわいそう…不幸を打ち消す何かを開発できないかしら?

 

「ついてない…」

 

小学校1年生の言葉とは思えないわね…

まあ、そんなところも可愛いんだけど。

 

まあそんな感じで家に帰ってきたわ。

 

今まで言わなかったけど、ママの名前は「葉月沙穂」で、パパは「葉月(しげる)」。この世界ではあまり珍しくもないけど、パパが婿養子に来てるの。ブルマー、あ、ブルマーっていうのはブルーマーメイドの略称でよくみんながそう呼んでるのよ。で、ブルマーの家系だとよく婿養子が多いんだってパパが言ってたわね。

 

パパが一緒にいる時に、と思ってね。

 

「2人とも、小学校入学おめでとう。ほのかにとっては退屈かもしれないけど、ましろちゃんをささえてな。ましろちゃんもほのかのこと頼むよ。一応学校の前までは護衛の方が付いてるし、外も見てもらっているから大丈夫だとは思うけど、2人とも気をつけて学校に行きなさい。まあ、ましろちゃんにお願いするのはほのかの体調の事と学校の友達のことだよ。よろしくね。」

 

「はいっ任せてくださいっ」

 

若干幼いそのリアクション…パパぐっじょぶ!

あれ?ロリコンだった?私って。

 

いや、手は出してないからセーフね。

というか、私も容姿上は幼い女の子だし…

問題無いわね。

 

「堅苦しい事はもうおしまいていいわよね。せっかくパパが帰ってきたんだし、ましろもいるし4人で遊びましょ?」

 

「ははっ、やっぱりどんなに天才でも子供は遊ばなきゃなぁ。」

 

「いいのよ、天才でも遊びたいのよ」

 

 

そう、私が1番疑問に思うことの1つ。

精神的年齢は40ちょっと。しかも、超絶天才ときた。なのに年相応に遊びたい。すごく不思議。

 

あれ?今ふと浮かんだ仮説なら辻褄が合うのかもね。

 

 

精神的年齢が高いから幼少でも難しい本が読めた。

肉体的年齢が低いから頭が柔らかかった。

転生特典があったからアタマの柔らかさが保たれてる。

転生特典があったから同時に思考を分けられる。

 

なるほど何もかけても私の天才はなかったわけね。

ちょっと納得したわ。

 

 

――――――――――

 

 

小学校6年生の頃

 

 

 

私は進路に悩んでたわ。

 

 

夢はブルーマーメイド。

 

しかもほぼ決まっているようなもの。

副官も決まってて、私もましろも士官候補生。まず入れないわけがなかったわ。

でも中学校は選ぶところによって将来の配置や発言力、引いては専門科が変わってくる可能性すらある。

 

ママは2人とも技術士官になって欲しいみたいだけど。

 

あ、ちなみに、私のママ「葉月沙穂」はなんと!ブルーマーメイド技術局兵装部部長に昇進しました!やったね!

 

ちなみに、説明文曰く。

技術局は兵装部、船務部、保安部、造船部、機関部、補給部、港湾施設部、特殊第一部、特殊第二部の9つの部、各部長及び技術局長以下委員数名で構成する技術方針決定委員会、組織を内側から監視する監査委員会の三者で構成されている。

 

つまり、ママは技術局の中でも上位の発言力を持っていることになるわ。しかも、代々兵装部部長は技術局副長を兼任することになっているので、事実上の技術局のNo.2になるの。

 

 

 

話がズレたわね。戻すと進路をどうするか、よ。

 

私しだいでましろの方向も決まるって言われちゃったし。どうしようかしら。

 

「ましろはどこに行きたい?」

 

「私はどこでも良い。お前について行くよ。私はお前の副官なんだぞ。」

 

「分かった。ましろがそれでいいなら、決めた。浪江中学校に行こう。」

 

「分かった。では沙穂さんに伝えてくる。」

 

「…お願いね」

 

 

 

sideましろ

 

「………という訳で浪江に行くことになりました。先方への挨拶等お願いします。」

 

「挨拶とかは別にいいけど…そっか、やっぱり海に出て指揮を執るつもりなのね。」

 

「そうなりますね。浪江は年20人しか取らないですし指揮官養成を掲げてる唯一の学校ですから。」

 

「ましろちゃんは大丈夫?進路、本当にほのかに合わせても。それに挨拶しても試験に受からなきゃ話にもならないし。」

 

「進路に関しては私は後悔しません。ほのかの副官ですから。一生ついて行くつもりです。試験に関しても、筆記、及び実技もあの学校は2人1組ですから。」

 

「分かったわ。そこまで意志が固いなら何も言わないわ。全寮制で少し寂しくなっちゃうけど、頑張ってね。」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……言えない。言えるわけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

副官だからじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……好きだから。

ただあの子を守ってあげたくて。

あんなに弱いのに、めっちゃ頭は良くて。

すごく堂々としようとしてもから回って可愛い。

 

 

ほのか隣にいるだけでぽかぽかした気持ちになる。

もっと隣にいたい。

この立場は絶対譲りたくない。

どんな事があっても、ほのかを守れるのは私。

 

 

好きだよ、ほのか。でも、まだ言えない。

この気持ちはあなたが結婚しても、言えない。

多分、最期まで言えないと思う。

 

それに私が近づき過ぎればほのかも不幸になってしまうかもしれない。そんなの許されない。

 

こんなアブノーマルな女の子なんて受け入れてくれないだろうし、今の立場すら失いたくはない。

 

せめて、私はほのかを守る。

 

 

 

 

だから…………

 

 

こんなこと、誰にも言えない…!

 

 

 

 

 

side out

 

 

――――――――――

 

入学試験への対策講座!

 

 

 

やぁやぁ諸君。私は鬼軍曹の「葉月ほのか」よ。今私は「宗谷ましろ」を鍛えているわ。ビシバシね。

 

穏やかな海は良い船乗りを育てない。

緩い教導は身にならない。

頭に入らないなら体に刻み込め。

 

ブルーマーメイドの教導隊員や教官などがよく言う言葉らしいのだけど…

 

でも、今ほどこれを実感したことはないわね。

 

まさかましろが手こずるような問題があるなんて…

 

頭の良さなら私がいなければ海洋学校でも首席クラスになるだろうし、今でも模試の全国順位は最高8位と非常に良い成績を修めているわ。

 

それなのに…ましろを苦しめる犯人は…

 

 

 

「意味わかんない…」

 

 

 

 

なんと小論文だった。

 

しかも今回のテーマは「運を良くする方法」だそうよ。

 

 

「コレは仕方ないんじゃない?何しても運が良くなったことないでしょ?」

 

「そうなんだけど…」

 

ましろとしては完璧にしたいらしいわ。

とはいえ、ましろは結構抜けてるんだけどね(笑)

 

 

――――――――――

 

受験当日

 

私達は浪江中学校へ来たわ。

 

この学校の受験は泊りがけ。この学校の施設に泊まることになってるわ。

 

1日目は筆記試験。

科目は

基礎学力200点満点(120分)

海上法規100点満点(50分)

小論文 100点満点(45分)

の三科目といいつつ、基礎学力には国語、算数、理科、社会の4教科が含まれるから実質6科目ね。

 

しかも算数に三角関数や放物線など特殊な問題も入っているわ。

ズルいの一言に尽きるけど、ここに来る子は基本的に頭が良いし、邦題の進み方なども教わっているから解けるみたいね。

 

ちなみに、浪江中学校の受験は独特で、2人1組になって試験を受ける。その内1人はブルーマーメイドの士官候補生もしくはブルーマーメイド教導隊員か教官に許可証をもらった子が必要という受験にも必須な条件が多くて大変みたい。

 

基本的にこの年頃の子を士官候補生とすることはないので、ブルーマーメイド教導隊員か教官に許可証を貰っているということになるわね。

 

もちろん、筆記もペアなので楽勝だったわ。

まあめんどくさいから、ましろにやってもらって、回答欄のズレを指摘するだけしかしてないのだけど。

 

2日目以降は実技試験を行うのだけれど、その前に今回受けた68組の中で筆記試験で足切りにあったペアは2日目以降のテストは受けさせてくれないわ。残ったのは56組ね。

 

まず、残った56組は講堂に集めれたわ。今年の受験生56組でくじ引きを引いて出てきた番号順にシミュレーションルームに入って試験を受けるわ。2日目以降は1日に14組づつ行う。少し時間がかかる。

 

残った人と終わった人は食堂で現在試験中の人達の試験を観てるか部屋にいるかのどちらかね。

 

実技試験の内容は艦橋を再現したシュミレーションルームに入り、まずは試験の説明を受けて、ペアの2人が艦長副長としてその船を目標地点へ持っていくこと。海図と海域はランダム生成になっているわ。もちろん、戦闘もあったりなかったり。

それを見ていた採点者が1,000点満点で評価をして、毎日上位10組のランキングにして更新。最終日の56組目が終わった時にランキングに残っていれば入学許可ね。

ちなみに、艦橋要員の砲術長、水雷長、航海長、記録員は浪江中学校の教員よ。操舵以外はシュミレーションルームを見ている管理室で専門の教員がコンピュータに反映してるわ。

使用艦船はカタログの中から受験生が選べるようになっているようね。

 

 

2日目の結果は

 

1位No.3:689

2位No.9:638

3位No.……………………

 

結果は一応見たけど、No.3の人は確かに安定した航海はしてたけど見どころはあまりなかったはずだけど…あ、ちなみに、今回で既に落ちるのが確定してても最後まで見ていく権利はあるみたいね。

 

私たちの順番は最後。ゆっくり待ちましょ?

 

――――――――――

 

6日目

 

やっと私達の順番。

つまり最後。現在の順位は

 

1位No.48:798

2位No.24:778

3位No.22:749

4位No.15:724

5位No.03:689

6位No.31:688

7位No.44:670

8位No.49:640

9位No.09:638

10位No.36:612

 

つまり、最低でも612点以上を取らなければならないわ。

 

ま、どうにかなるわね。

 

 

「No.56、最後の組、入ってください。」

 

「やっぱり、ほとんどの子がモニターで見てるわね」

 

「緊張してきた…」

 

「大丈夫。ギャフンと言わせてやりましょ?」

 

 

 

「それではまず、使用する艦船を決めてください。」

 

「カタログは大丈夫です。もう決まっていますから。重巡洋艦、青葉でお願いします。」

 

「またマニアックですねぇ。旧型艦で基本性能が低いはずですよ?」

 

「大丈夫です。」

 

「分かりました。海域は試験開始30秒前に決定します。クリア条件は目的地点へ到着することです。最後に、艦長と副長を決めてください。」

 

「私が副長で、ほのかが艦長です。」

 

「了解です。それでは試験開始3分前です。」

 

 

「艦橋要員の皆さん、お疲れ様です。最後までよろしくお願いします。」

 

「気にしないでください。この艦の艦長はあなたです。敬語じゃなくて構いません。」

 

「…はい、では皆さん各自配置に!」

 

「配置につけ!」

 

《試験開始30秒前。海域展開します。》

 

(!?これは…)

 

「おいおい、小学生の士官候補生とはいえ、この難易度はやりすぎだろ。岩礁だらけで大和型が2隻と古鷹型2隻が目標地点までの航路に陣取ってやがる」

 

「大丈夫。あの4隻は無視して突破します。」

 

《試験開始!》

 

「抜錨!機関始動!緊急出航!」

 

「艦長、最適な航路は大きく迂回することですが?」

 

「左側の岩礁地帯を抜ける。

水雷長!魚雷発射用意!左雷撃戦!発射雷数1!」

 

「左魚雷戦、発射雷数1」

 

「機関第4戦速!面舵20!」

 

「第4戦速、面舵20!」

 

「魚雷、一番右の岩礁をねらえ。攻撃始め!」

 

「撃て!」

 

「取舵一杯!宜候!破砕した岩礁の上を通る!潮の流れと水深に注意せよ!」

 

《1時の方角、岩礁海域を抜けたあたり、距離40,000、最上型重巡洋艦1、敵性勢力のフラッグを確認。》

 

「右砲戦、反航の最上型重巡洋艦!撃ち方用意!撃て!」

 

「先制砲撃、初弾命中弾なし。」

 

「これ以降の砲雷指揮は副長に一任します。

取舵10!第5戦速!黒20!」

 

「取舵10!第5戦速!黒20増速!」

 

「右砲戦、一番砲敵艦左舷、二番砲敵艦艦首前に照準!」

 

「照準よし!」

 

「攻撃始め!」

 

「それぞれ着弾!敵艦こちらに舵をきる!」

 

「機関、最大戦速!」

 

「右砲雷同時戦!準備!一番砲二番砲三番砲は敵艦艦尾側甲板上の砲塔を照準!右舷魚雷発射管、発射雷数4!攻撃始め!」

 

「面舵10!

12時の方向に暗礁!取舵5!」

 

「右舷魚雷発射管、次弾装填!

三番砲、敵艦中央を照準!撃ち方始め!」

 

「ジグザグ回避運動!機関一杯!」

 

《魚雷命中。最上型重巡洋艦大破現在炎上中。》

 

「目的地点確認!」

 

「減速!両舷前進微速!」

 

「目的地点まで300」

 

「投錨用意!」

 

「機関停止」

 

「機関停止」

 

「目的地点到着。投錨始め!」

 

 

 

ブザーが鳴る。これで終わりね…―

 

「ほのかっ!?」

 

 

私の意識はブラックアウトした。

 

 

 

――――――――――

 

 

ほのかが倒れた。すぐに周りにいた艦橋要員をしていた教員とほのかを保健室へ連れていった。

 

私は後悔していた。いや、後悔はしてない。ただ、情けなかっただけなのだ。もっと精進しないといけないと思う。

 

 

 

 

終わってから1時間後。最終ランキングが発表された。

 

1位No.56:1053

2位No.48:798

3位No.24:778

4位No.22:749

5位No.15:724

6位No.03:689

7位No.31:688

8位No.44:670

9位No.49:640

10位No.09:638

 

なんと満点越えだった。

 

だが試験官曰く、本当ならもっと高くつける予定だったと。指揮官が作戦終了したとはいえ簡単に倒れてはいけない。艦長は乗組員全員からの信頼が必要。それが減点要素らしい。

 

ほのかはまだ起きない。明日には起きると思うが、私はやるせない気持ちでいっぱいだった。

ほのかのために何が出来たか。これから何が出来るか。考えていかないと、ほのかの傍にいる意味がなくなってしまう。

 

 

私は今後どんなことでも努力して、ほのかを支えられるようになると決意した。




いやー長くなっちゃいましたねー

ちなみに、実技試験はローレライの少女を参考に自己解釈しております。

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