「ダメです!右舷亀裂広がります!浸水拡大!―――!?右舷艦首付近にも亀裂!右舷側に傾斜します!現在右12度!」
「スタビライザーは!」
「既に全力です!」
「くっ…仕方ないか。設計主任、艦橋作業員以外の作業員に甲板への避難命令を。全隔壁閉鎖で時間を稼ぎます。」
「えっ…あ、指揮権を作業員長に譲渡します…」
「……了解」
(今はこの娘をカウンセリングしてる場合じゃない。今は艦を持たせることと作業員を死なせないこと。彼女にトラウマが残ることはほぼ確実と言っていい。でも、艦が沈んだり、死者が出ればそれはもっと深くなってしまう。自分の娘程の子供にそんなものは負わせられない。)
「艦橋作業員以外の作業員は直ちに甲板へ避難せよ。全隔壁を閉鎖する。繰り返す、艦橋作業員以外の作業員は直ちに甲板へ避難せよ。全隔壁を閉鎖する。」
「艦首付近隔壁閉鎖!第1区画全閉鎖確認!」
「左舷側への注水は?」
「完全にいっぱいです。」
「分かった。隔壁閉鎖を急げ!」
――――――――――
sideましろ
私達1年生はみんな各専門科の講習を終了して艦隊運用講習をもう少しで始めようとしていた。
とはいえ、1年生の間はダイビング講習と中型スキッパー免許講習以外は座学中心であり、今日も今日とて座学の時間。
そんな所に―――1本の電話が担任の所にかかってきた。
「―はい。―――え!?―――――分かりました。直ちに向かわせます。
宗谷さん、ちょっと話があります。廊下へ出てください。」
「了解です」(なんだ?)
疑問はすぐにわかる
「ましろさん。落ち着いて聞いてください。
今日は葉月ほのかさんの改修した「あおづき」の公試の日だったのですが、その際右舷中央に亀裂が入り浸水。さらに数分後、ブルーマーメイドに救難要請が来てから約2分後に右舷艦首付近にも亀裂が入り、現在、右18度傾斜しています。
そして…ほのかさんは設計ミスだと思いひどく錯乱しています。今こそ彼女の傍にいるべきはあなたでしょう?
行きなさい。学校はほのかさんと同じ扱いにしておくから。もともとあなたも行く予定だったのだから変わりはないわ。」
「…ありがとうございます。学校の中型スキッパーをお借りしても?」
「許可します。急いでいるからと言って、事故には十分気をつけてください。事故現場は旧伊予灘海域です。さ、行ってきなさい。」
「了解。宗谷ましろ、旧伊予灘海域へ急行します!」
――――――――――
side葉月沙穂
トゥルルルル、トゥルルルル―――――
「はい、技術局兵装部部長、葉月です。―――!?―――――!?
本当ですか!?――はい、すぐに伺います!はい、―――はい、では。」
作業員長は熟練だし多分大丈夫。
でもそれでも心配せずにはいられない。
とりあえず、緊急招集が必要ね。
―――トゥルルル
『はい。部長、どうかなさいましたか?』
「緊急招集を。兵装部及び造船部の各課長クラス以上に。」
『了解しました。緊急対策室へ招集します。
特殊第二部はどうしますか?』
「事故調査体制で待機させてください。海域の情報は今のうちから収集してください。」
「了解しました。失礼します。」
―――ガチャ ||.c( ゚ω゚`|
とりあえず、今回の事故に関して今後どう対応するかを協議しなければならない。
さて、あおづきはドックまで曳航して間に合うかしら?
しばらくは情報収集をしなければならなそうね。
sideout
――――――――――
「ブルーマーメイドの救難隊及び曳航艦が到着した模様です。甲板上の作業員を収容始めました。」
「了解、こちらの状態をあちらの艦長に知らせろ。」
「了解!」
「あ、もう一つ。艦橋にも救難隊員を寄越してほしいと伝えろ。要救助者は1名、酷いショックで自発行動不能だ。」
「了解しました。こんな所で天才葉月を失うわけにはいきませんし、ここにいても仕方ないですからね。」
―――やっぱり私は意味無いのか。それもそうだよね。天才だからこれまでみんな頼ってくれたけど、私はもう使えない子だもんね。私は“天才”じゃなくて“天災”だね。こんなことになるくらいなら、何もしたくない。もう、どうでもいい。疲れた。ちょっと休憩しよ……パタッ
「―――!?設計主任!?作業員長!主任が…」
「……心が失敗を拒絶したか。救難隊がもう来る。そちらに任せよう。
言ってるそばから来たな。」
「救難隊です!要救助者は?」
「彼女だ」
「了解です。」
救難隊員2人がほのかを担架で救難船に運んでいった。
「浸水、ほとんどブロック隔壁により止まります。現在傾斜角、右36度。データリンクを曳航艦に繋ぎました。まもなく曳航を始めます。機関は停止、補助電力を全てスタビライザーに回します。」
「了解、呉の改装ドックに行くのか?」
「いいえ、横須賀に向かいます。技術局がこっちで弄るとの事です。」
「外洋を通るのか?」
「いえ、浮きドックを防波堤がわりに使うそうですね。あ、ありました。これが資料ですね。」
「ほう、最新鋭の自走式メガフロートドックか。どえらいものを持ってきたな。大和型や超大和型すら使えるドックを巡洋艦クラスで使用するとは。確かに防波堤がわりだな。設備が多すぎる。」
「近くを航行しているところをそのままこっちに差し向けるようですね。」
あおづきは無事に浮きドックに到着し、横須賀へ
――――――――――
私はあのあとブルーマーメイドの救難隊に船に乗せられて呉の病院へ入院させられた。
検査とか色々してから、カウンセラーが話したいって来て別に問題もなく終わったあたりで病室のドアが開いた。
―――ガラァ!
「ほのか!」
「ましろ、どうしたの?こんなところまで」
「大丈夫か?怪我は?」
「入院って言っても検査だけ。問題ないよ。」
「そうか…ならよかった。途中で気を失ったって聞いたから驚いたよ。」
「少し疲れただけだよ。体力ないから…」
「そうか。
ほのか、私は今回の事故に関して、いいや、もっと前。ほのかが昔倒れた時からほのかを守るって決意したんだ。だから、もう絶対に離れないから。」
「………ごめん。しばらく放っておいてほしいんだ。今はまだ。」
「………………あおづきを気にしてるのか?」
「別にそんなわけじゃ…」
「だがそうは…」
「やめて!もうやめて…」
「あれはお前のせいじゃないはずだ。天才のほのかが失敗しているわけが―――」
「やめてって言ってるでしょ!」
「気にしなくていいんだ!」
「そうじゃないの!もう帰って!……かえってよぉ…」
―――ポタ
こんな自分、もう嫌。
自分せいじゃないと言ってくれる人に、よりによって、ましろにあたって。
もう、嫌……
「……………………ごめん。また来るから。」
「…もう来ないで」
「…………分かった。呼ばれるまで来ない。」
―――ガラ……
ましろが出ていった。
なんでこんなこと言うの?
やっぱり自分が嫌い。
自分が嫌いで嫌いで、努力して自分がを認められるように頑張った。
この世界に貢献したり、ましろに好きになって欲しくて自分からじゃしないようなおしゃれをしたり。
それでも変わらなかった。
女の敵は女とよく言うけど、私の敵は私だった。
ましろに嫌われなくない?
違う。私が付き合っていることが嫌だった。
ましろの事は好き
こんな自分には生きてる価値はない。
パパとママが悲しむからとりあえず生きるけど、2人がいなければすぐにでも自殺するのに。
せめて、天才なら世の中に生きる価値を見出せた。
でも、もう、私には――
――生きる意味も価値も意思もない。
ほのかさんはあおづきの設計ミスをしてしまいました。
ほのかさんは、病んじゃいました。
海月はこの小説を中間考査の前日に書いてます。
私は、詰んじゃいました。
※ほのかさんは表面的にはこの事を引きずりません。