秘宝伝   作:雪宮春夏

1 / 4
 |ω・`)





 |ω・`)チラ




 お久しぶりです。
 音信不通のまま、いつの間にか秋が終わっていました。
 雪宮春夏です。

 小説情報でもお知らせしておりますが、これは二次創作ではありません。

 一次創作……オリジナル作品が受け付けない方は今すぐ逃げて下さい



ヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ


それでも良いよという方は、どうぞ( ・∀・)つ


これからも宜しくお願いします_(._.)_

最後に、この物語の原案を作るにあたり、ご協力して下さった方々に特上の感謝を。

どうもありがとうございますm(._.)m



標的 1 月光姫《ムーン・プリンシア》
1 死血街(デス・ブラッド)


 それはいつも通りの事の筈だった。少なくとも男は、そうと思いながら仕事をこなしていた。

 しかし、現実は異なり、男は窮地に立たされている。

(畜生……っ! 何なんだ一体っ……!!)

 なんで俺はこんな目に……。

 人気の無い入り組んだ道を全速力で駆け抜けながら、男はこうなった経緯に思いを巡らせる。

 しかし、無情にも、男にはこうなったそもそものきっかけが、思い当たる物さえなかった。

 後ろめたい物が無いとは言えない。

 しかし男は同時に、犯罪と呼べる犯罪をも、犯したおぼえは無い。

 単体で恨みを買うおぼえは尚更だ。

 男は有り体に言えば、売り手と買い手の間を繋ぐ、仲介業者でしかない。

 対象となる商品はその時々によって様変わりするが、その取引での恨みを己にむけられるのは身勝手極まりないとも思っている。

 しかし、今己を追いかける相手、その姿はまだ目視してはいないが、それは間違いなく、身勝手極まりない相手なのだろう。

 人目のある仕事中から違和感を感じてはいたが、帰り際になり、隠す素振りも無くし、ジリジリと殺気まで当て始めた所で男は相手の立ち位置を知った。

(表にのうのうと暮らすカタギじゃねぇ……多分あの街の……()()()()()()()の住人だ……!!)

 「死血街(デス・ブラッド)」。そう呼ばれるのは、世界全土において、唯一法に縛られない治外法権の場であり、犯罪者達の巣窟と呼ばれる、表向きは伝説上の都市の名だった。

 「表上」と前置きが付くのは、実際それは伝説でも何でもない、事実だからだ。

 一体いつからどのような経緯で、そのような国が成り立ったのかは一般人でしかない男の立場では知る由も無いが、一つ言えるのはそこに住まう者達は、その全てが極刑になっても生温い、札付きの極悪人揃いと言うことである。

 それらを嘗て世界を支配していた者達は、一つの都市に集め、その入り口を厳重に閉ざすことによって、黙認したのだ。さながら臭い物に蓋をするように。

「冗談じゃねぇ! 死ぬのなんざごめんだ!! どうにかして、警察に……」

 己の中の混乱を鎮めるために口に出しながらも動いていた男は、しかし無遠慮に浴びせられる……そう思わされている殺気によって、どんどん人気の無い袋小路へと誘導されていることに気付かなかった。

「いっ……行き止まりっ?!」

 それに気付いたのは、その袋小路を視界に映した時。

 そして背後に人の気配を感じたのは、その直後だった。

 

「た……助けてくれっ! 頼むっ!! 命だけは……!!」

 こちらから目を離すことも出来ずに、恐怖に駆られながら必死に命乞いをする男を前に、鋭利な五指に装着された刃……それを指の動きに合わせて遊ばせながら笑ったのは、まだ幼さの残る少女だった。

 動きやすさを追求しているのか、着込んでいる赤で統一された装束は肌の露出も多々ある。

 それでも艶やかさを感じされないのは、その少女の動きがあまりにも女を感じさせないせいだろうか。男らしさともまた違うが、短く切られた黄土色の髪と、甘さを一切感じさせない鋭い青の瞳も、その一因を担うかも知れない。

「死にたくないのなら、答えなさい」

 鈴を思わせる凛とした声音で、しかし、震える男の首筋に容赦なく凶器とも言える五指……そこに纏う鉤爪を沿わせながら、歌うように少女は問いかけた。

「先月の末に、あなたは裏の人間から表の人間にある品物を渡したと聞いたの。……何を渡したの? 答えなさい」

 先月の末。裏の人間から表の人間へ。

 その二つのキーワードで、男は直ぐに思い至ったらしい。

 震える声で、言葉を紡いでいく。

「……そう。どうもありがとう」

 薄らと笑みを浮かべた少女に、男は解放の予感を感じて。

「さよなら♪」

 歓喜の表情を浮かべたまま、男の脳天に風穴が開いた。

 

 別れの言葉と共に首を切断しようとした少女は、微かな風の流れを感じて、その場に静止した。

 その直後に音も無く男の額に風穴が空き、そこで少女はあの風の流れがサイレンサー付きの銃による狙撃だと知り、狙撃したであろう相棒に向けて、声を上げた。

「ちょっと嵐! 私の獲物とらないでよっ!!」

 不満を隠さぬまま上げられた非難の声に答えが返ってきたのは、少女の耳に装着された通信機からだった。

 どれほどの長距離からの狙撃かは少女は知らないが、まともに考えれば、入り組んだこの場所から張り上げた声を己の耳で捕らえるのは少し無理な話である。

《あまり騒ぐな。ここは表なんだぞ。こちらとあちらの事情も知らない下っ端の警察(奴ら)に見つかると面倒だ》

 耳元から聞こえる声は平淡に正論を紡いでいく。

 朗々とまるで朗読するかのような声に、少女は口をへの字に曲げた。言い返さない少女の姿が見えるかのように……いや実際にスコープで見ているのかも知れないが。小さな溜息と一緒に嵐と呼ばれた声は続ける。

《それにまだ依頼の内容が分かっただけだ。下手にお前の鉤爪を使って表の方で注目を集めれば、依頼そのものがやりにくくなる。その点銃の方がまだ特定されにくいだろう》

「……いや、そこまで正確無比な命中率誇るのって、表の世界でも裏の世界でもそういないと思うけど」

 皮肉交じりの小さな返答に答えは返ることなく、プツッと、通信機独特の音が、電源が落とされた事を知らせてきた。それはあらかじめ決められていた、撤収の合図でもある。

「……さてと、帰りますか」

 話し相手のいなくなったその場に敢えて聴かせるように呟きながら、少女は軽い足取りでその場を後にする。

 息絶えた骸に一瞥することは、最後まで無かった。

 

 この少女、セツは相棒としている彼、嵐と出会い、コンビを組んで「盗賊」となった。

 法の無いこの街では、そうするより他、強者の庇護無しで生き残る道が無いからだ。

 そんな彼等が受けた今回の依頼……それの始まりは、なんとも風変わりな物だった。

「……まぁ、依頼の詳細を教える前に腕試しをさせてくれって言われる理由も分かるけどねぇ」

 一人悪態をつきながらも、セツは古巣とも呼べる都市へ戻るために、表との境界になっている門の方へ向かっていた。

「その腕試しに盗んで欲しい物品の情報まで、詳細は人から奪えって、何なのよ! もうっ!!」

 流石にそうまで言われては嫌でも分かる。

 腕を試さなければ不安で詳細を話せないというのは本心なのだろう。おそらく。

 しかし、腕試しの詳細までわざわざ調べろというのは。

(絶対にこっちで遊んでるわ……! ムカつく……!!)

 思い当たる物がそれしか無く、セツは眉間の皺を深くする。しかし、相手は同時に金を落としてくれるかも知れない上客なのだ。

 ここには、二種類の犯罪者がいる。

 それは、依頼を受けず、閉ざされた街の内部で犯罪に走る、大多数の者達……所謂負け犬の落伍者と、外の法治国家の上位階級……所謂お偉いさん方から、彼らが表向きは頼めないような黒い依頼を受けて、街の外で彼ら公認と言う後ろ盾を得た上で犯罪に手を染める、都市の中でも一握りの精鋭達だ。

 他にもごく僅か、はぐれと呼ばれる依頼も無しに外で犯罪に手を出す無能者もいるが、まともな後ろ盾も資金もない者達は大抵一、二度で失脚する。

 そのような先例がある以上、はぐれとなるものは滅多にいないのが現状だ。

 そんなとりとめの無いことを考えながらセツは表と裏の境界となっている門を潜る。

 門の両側には何処の所属かは知らないが重装備の兵士が二人。

 しかし、彼らはこちらが見えていないかのように視線一つ向けることはない。

 所謂暗黙の了解という奴だろう。

 そんな体の良い物のような働きに……道具としてしか動こうとしない彼らの姿を嘲うように、セツは僅かに鼻を鳴らず。しかし、それに反応さえ返らない。

 見た目は生きた人間ながらも、中身はでくのぼうと同等の者達を、相手にするのも愚かしいと考え、セツはそのまま通り過ぎた。

 

 

 木製の二面扉を押し開けた先の見慣れた風景に、力んでいた余分な力が抜ける気がした。

「いらっしゃ……何だ。セツじゃないかい」

 ガラリと、こちらの姿を確認した途端に、よそ行きの顔から身内に向ける顔へと戻ったのは、ここの女主人だった。

 僅かに外側に癖の入った、肩にかかる程度の茶髪の下にある同色の瞳と、微かに散らばるそばかすは、彼女を表にいる一般人に誤認させる事もある。

 しかしここにいる以上彼女も、表から見れば一癖も二癖もある危険人物だった。

 ここでは「女将さん」と呼ばれる彼女は、この建物……酒場「血海(ブラッディーズ・スィー)」の中では一番の権力者だ。

 そして、都市の者達からしても、この酒場の持つ裏の顔から、彼女を蔑ろには決して出来ないのである。

 それは、表権力者達との仲介役、つまり如何に腕が立つ精鋭であっても、彼女の采配一つで仕事にありつけなくなるのだ。

 聡い者は決して彼女の不況を買わない。

 つまり暗黙として、この店での騒ぎは御法度となっている、とも言える。

 たとえ相手が誰であっても、勿論それは、ここにいるセツとて例外ではない。

「何だぁ? セツゥ。珍しいじゃねぇか、テメェが一人とは。まさかとうとう相棒の坊やには愛想尽かされたのかい?」

 掠れた笑い声と共に名前を呼ばれた彼女は微かに目を眇め彼女を呼んだ男に視線を投げる。

「バカな事言ってんじゃないわよ。ディーセス」

 凍てつくような冷淡な声音で呼ばれた男……ディーセスには動じる気配は無い。

 それほどの強者とも言えるが、それ以上にこの男は……今。

「あっはっはっは!! ムキになるって事は図星か?! なぁ!? 本当に振られたのか!! ……だったらコンビ、俺と組むかぁ!!?」

 ……ベロンベロンに酔っ払っていた。

「悪いけど、体力無しの飲んだくれ親父と付き合うほど、私は落ちぶれてないし、話の合わないあんたとなんか、絶対に組まない! ……大体単に別行動していただけよ! 勘違い甚だしいんじゃない!?」

 しかし、酔っ払いの戯れ言とは言え、軽く流すほどこの少女、セツは大人ではなかった。

 僅かに頬を赤めながらも鋭い瞳で男……ディーセスに啖呵を切ったが。

「あーあ。この酔っぱらい。自分が喋りたいことだけ喋って、寝ちまったようだね」

 お冷やを開いている一席におきながら、苦笑う女将さんの言葉通り、己が座する一席に顔を押しつけたまま、男は大鼾で夢の中へ突入していた。

「………」

 何とも言えない沈黙を誤魔化すように、大きな音をたてて椅子を引き、乱雑な動作で座り込んだセツに、彼女の扱いに手慣れた女将さんは微かな苦笑を漏らしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。