仕事が主に忙しかったのですが、それ以外に塔とか登ったりチョコとか作ったり忙しくしていました。
チョコの女帝?出ましたが何か?
…サイコパス要素を少しずーつ、入れていく予定です。
ではでは、どうぞ。
雄英高校上空500メートルに、その人影はあった。
青空に浮かんだ白いシミのようなソレはよく目を凝らしてみると人の形をしている。
白いシャツにパンツスタイルの青年は銀髪を靡かせ、白い翼を羽ばたかせながら遥か地上を見下ろしていた。
これで金色の輪があれば天使のようだと見る者は言うだろう。
見下ろした先では雄英高校の一部演習場を狩場としたヴィランたちが続々と黒い霧から現れていた。
突然現れたヴィランに目撃した生徒たちはショックで身を構えてしまっていて、動ける生徒は極僅かだ。
この非常事態に周囲は気付いた様子はない。
広大な土地を有した雄英高校は演習場へ行くのにもバスなどの移動手段を要している。
つまり、それだけ学校が広く、隣接している施設は限りなく少なかった。
連絡手段も必然文明の利器である携帯機器となるが、電波を遮断された演習場は陸の孤島と化した。
「…さぁ、見せてくれ英雄の卵たち」
落ち着いた声の筈なのに、寒気のする声で彼は口を開く。
「僕に…人の、魂の輝きを見せてくれ」
熱の籠った瞳で彼は―――天使の姿をした
×××
「先生、侵入者用センサーは!?」
「もちろんありますが…おそらく」
八百万の詰問に13号は言葉を濁す。
鉄壁を誇っていたセキュリティシステムが破られた。
だが、それも過去の話。
先日の時点で既にセキュリティシステムに綻びがあるのは指摘されていた。
対策も打ったつもりだったが、結果がこれだ。
現れたヴィランはここにいるだけなのか、それとも重要施設を重点的に狙っているのか。
センサーが反応しないということは、ヴィラン側にシステムを妨害できる個性、あるいはスキルを持ったヴィランがいるということだ。
現状、校舎と離れた隔離空間、そして意図的なのか偶然かも分からない状況で最悪を想定するならば、
「―――
オールマイトを狙い撃ちしたこの奇襲、まったくもって最低な事態だ」
この状況下でも最悪と口にしないあたり余裕があるのだろう。
アクトは手だらけ男を不愉快な目で見やった。
怖気の走る目でアクトたちを見つめるヴィラン、アクトは彼が今回の現場におけるリーダー格と認識する。
「…バカだがアホじゃねえ。
オールマイト狙って用意周到に画策された奇襲だ」
相澤は13号に生徒たちを非難するように指示を出す。
ヴィラン側に再度連絡するように重ねて指示を出した。
上鳴には既にアクトが指示を出していた為、個性を使った連絡はやめておく。
保護対象である生徒である上鳴にあれこれと指示をして混乱させてはいけないと判断したからだ。
「先生は!?
1人で戦うんですか!?」
デクが相澤にヴィラン側の人数に相澤の個性を使っての戦闘スタイルでは不利だと、口にはしないものの自分たちも何か手伝えることがあるのではと声を上げようとしたが、相澤は―――ヒーローイレイザーヘッドはゴーグルを嵌めるとデクの言葉を遮った。
「…一芸だけじゃヒーローは務まらん。
13号、避難を任せる。
かげ…いや、グッドスピード、お前は13号と一緒に生徒たちの護衛だ。
責任は取ってもらうぞ?」
「元はといえば俺の蒔いた種でもある、言われなくともしてみせよう、イレイザーヘッド。
責任を以て全力で対処しよう、視界に入ったヴィランは全て殺さず、よほどの相手がいない限り生け捕りにするとも」
アメリカヒーロー界の新星の力強い言葉を聞いて、相澤は生徒たちを残し、ヴィランたちのいる前方に突撃する。
「―――射撃隊、いくぞぉ!!」
「ん?
情報じゃ13号とオールマイトだけじゃなかったか!?」
「ありゃ誰だ!?」
「知らねえが、1人で正面で突っ込んでくるたぁ―――」
遠距離射撃の個性のあるヴィランたちが相澤に狙いをつける。
複数からの射撃では相澤の個性を消す個性にも限度があり、その行動は無謀だと一部の生徒たちは思ったが、次の瞬間それは勘違いだったと悟った。
「「「―――大まぬけっ…え?」」」
口々に相澤をバカにしようとしたヴィランたちの声に戸惑いの声が上がる。
相澤をハチの巣にしようとした彼らの個性は、誰1人として発動しなかった。
その隙を逃さず、捕縛武器を使ってヴィランに巻き付けると、慣れた手つきで操る。
拘束されたヴィランは隣接していた味方のヴィランと勢いよくぶつかり昏倒する。
個性が発動しなかった―――ということに気付いた聡いヴィランが大声を上げる。
「―――ばかやろう!!
あいつは見ただけで”個性”を消すっつうイレイザーヘッドだ!!」
「はっ!!
俺らみてえな異形型の個性も消してくれるのかよ!?」
四つ腕に鉱石を纏ったヴィランが相澤に襲い掛かるが、相澤はその一撃を交わし、カウンターで顔面に一撃入れる。
「いや―――発動系や変形系に限るっ」
殴ったヴィランが吹き飛ぶが、それと同時に捕縛武器を絡め、同じく近接戦闘に持ち込もうと相澤の背後から襲い掛かったヴィランへ投げ飛ばした。
個性を消すという以外無個性と変わらない相澤は、その身体能力だけで異形系のヴィランを圧倒してみせた。
これを皮切りに、次第にヴィランたちは相澤を取り囲めはしたものの、肉弾戦も強い上にゴーグルで目線を隠している状況では『誰が個性を消されているのか』分からないヴィランたちはせっかくの包囲した状況でうまく連携が取れないでいた。
「すごい…!
多対一こそ先生の得意分野だったんだ!!」
「デクっ、状況を見てから行動しろ!!」
デクが相澤の戦闘を見て感嘆しているが、アクトとしては見ていて気持ちのいいものではなかった。
相澤は生徒たちが無事に避難できるまで囮を買って出たのだ。
アメリカならばアクトが率先してその任を受け、ヴィランたちを蹂躙したのだろうが、日本である以上は勝手は出来ない。
アクトは八百万の通信機創造の進捗状況を確認するが、構造が複雑な通信機の創造には時間がかかっているようでようやく3分の1程度だ。
「―――させませんよ?」
13号を先頭にアクトを
相澤は己の失態を悔やんだ。
戦闘能力はではあるが、この状況下で一番厄介なヴィランを生徒たちの前まで通してしまったのである。
「初めまして、我々は
僭越ながら…この度ヒーローの巣窟、雄英高校に侵入させていただいたのは…」
アクトはあえてこの男の話に耳を傾けた。
周囲を警戒するのは怠らないが、これだけの規模の事件を起こした組織に興味を抱いたからだ。
「―――平和の象徴、オールマイトに…
13号が男の言葉と同時に戦闘態勢に移る。
アクトもいつでもゼロフィールドを展開できるよう臨戦態勢の状況でいる、少しでも情報を逃すまいと耳を凝らしていたアクトはある違和感に気付く。
誰かが自分を―――自分たちを見つめる視線があることに。
僅かとはいえ実戦で鍛えられた勘に従って遥か上空を睨み付け意識を空に向けてしまった隙に、男が個性を展開した。
黒い霧が生徒たちを取り囲むように広がっていく。
アクトはすぐゼロフィールドを展開する。
あらゆる力をそのフィールドに触れるだけで停止させるという鉄壁の盾が、この黒い霧を阻むだろうと、アクトは確信していた。
―――だが、予想だにしていなかったことに気付く。
アクトのゼロフィールドを
単純な力技でしか突破方法がない考えていたアクトの持つ最強の盾を易々と突破されたとショックを受ける。
己の慢心に気付いた時には遅く、体の殆どを黒い霧で覆われたアクトは響香に手を伸ばした。
「響香っ、俺の手をっ!!」
「アクトっ!!」
だが、その手は届かない。
己の慢心を恥じるも、経験から空間転移の個性に直接的な殺傷能力はない事は知っているが、厄介なのは単純な転移とその応用性だ。
広場にあれだけのヴィランを連れてこれただけの個性だ、アクトのいたアメリカヒーロー界でもあれ程の個性を持ったヴィランは片手で数えるくらいしかいなかった。
飛距離がどれほどかは不明だが、単純な飛距離がキロ単位となればオールマイトを殺害する不安定要素であるアクトをこの場から
「響香っ、無理はするな、俺が行くまで…」
最後までアクトは響香に伝えることが出来なかった。
視界が漆黒に覆われたアクトは次の瞬間、演習場に転移していた。
想像していた最悪な展開より数段下の事態に安堵した。
「―――来たぜ、マッドスピードだ!!」
「アメリカヒーロー界の期待の新星だってよ?」
「こいつを殺しちまえば、オールマイト程じゃねえが名が売れる!!」
「かこめかこめぇ!!」
そう、視界いっぱいに広がる異形系のヴィランたちに取り囲まれながら、アクトは安堵したのだ。
周囲にはクラスメイト達はいない、アクト1人だ。
あの黒い霧のヴィランの個性の限界を凡そだが予測できたのも次会敵した時のアドバンテージとなることを頭に入れながら、思わず笑みを浮かべてしまった。
手にしたドミネーターに意識を向ける。
相変わらず『通信エラー、システムとのリンクを構築できません』というシビュラシステムとのリンクが切れた指向性音声しか届かない事態だが、アクトはこの事態をこう受け止めていた。
「―――シビュラの目を盗んで動くのは殲滅作戦以来か…」
この時アクトのサイコパス指数をシビュラが読み取っていれば即座にドミネーターの使用権限停止が通達されていたかもしれないが、アクトには己がその範疇に当て嵌まらないと確信していた。
アメリカにおいて、シビュラが自らを裁くことは出来ないという、絶対的な確信を―――。
「では、始めようか。
なに、殺しはしない、ここは日本だからな、加減はしてやる。
ああ、ところで貴様ら―――」
―――地獄を見たことはあるか?
アクトの言葉を皮切りに、ヴィランたちはアクトに向かって突撃した。
* * *
アクトのコスチュームには数々の精密機器が装備されている。
しかもその設計を行ったのがシビュラシステム。
アクトにとっての要望を期待通りに叶えた結果作られた装備となれば、トップクラスの装備といえよう。
「とはいえ、手の内を多く見せる気は更々ないがな。
それでは我が憤怒の炎、受けるがいい!!」
パチンと、アクトの
炎は瞬く間にヴィランたちを飲み込んでいく。
パチン、パチン、パチンと。
鳴らすこと3度、指パッチンを重ねるごとに炎は周囲に広がっていきヴィランたちを容赦なく呑み込んでいく。
「い、いきなりなんだぁっ!?」
「なんで炎が!?
こいつはモノを早くしたり遅くさせたりする個性の筈だろう!?」
悲鳴と共にヴィランたちから話が違うといった見苦しい言い訳が聞こえてくるがアクトはお構いなしに炎を再度放った。
「ほう、俺の情報をある程度知っているということは、雄英高校側のサーバーにでも侵入したのか?
とはいえ、俺が提出した個性にウソはないぞ?
―――周囲の大気速度を早くして酸素濃度を局所的に上げ、コスチュームにある発火布で火種を付ければ…ボンっという訳だ」
アクトは全力でこの状況を楽しんでいた。
シビュラの目が届かないこの状況を。
パチンと鳴らす度に響き渡る悲鳴の合唱を。
パチンと鳴らす度に響き渡る憎悪の猛りを。
パチンと鳴らす度に響き渡る怨嗟の叫びを。
丹念に、念入りに、丁寧に、
暴威の炎は瞬く間にヴィランたちを戦闘不能に追い込んでいく。
死亡したヴィランはいない、だが、それ以上に悲惨な今後を歩んでいくだろう彼らからすれば、死んだ方がマシだと思うような人生となるだろうことは確実だ。
生きながらにして全身を焼かれ、特に両手両足は炭化してしまい物を持つことも、歩くことも満足に出来なくなった彼らの人生はただただ悲惨で、無常で、自業自得と片付けるにはあまりに無情であった。
「これが結果だヴィランども。
己の欲求不満を犯罪行為で解消しようとした結果がそれだ、そのザマだ!!」
パチンと、炎が上がる。
赤赤とした炎が、赫赫とした炎が、蝋燭ヴィランに火を灯していく。
だが、アクトは止めない、止まらない。
この場にいるヴィランがすべて立ち上がれなくなるまで、彼は止まらない。
作業的に、機械的に、ヴィランを燃やしていく。
そして最後のヴィラン―――50超えたあたりからアクトは数えることを止めていた―――を焼き終え、ようやくアクトは止まった。
疲れた様子はない。
ただの一度も、黒い霧のヴィランに転移されてから一歩も動かずにこの惨状を作り上げたアクトに疲労の表情は窺えなかった。
「つまらないルーチンワークをこなした気分だな。
どいつもこいつも燃やされに来てからに…時間を取られた、さっさと行くか」
アクトはふと、空を見上げた。
あの時の視線は既にない。
異様な視線、熱を孕んだあの悪意の眼差しに気を取られたのは不覚であった。
「…今回の騒動の裏に、俺の探している人物がいる?
いや、さすがに早計か?
……まぁいい、まずはこの騒動を収めるのが先決か」
次こそは油断しないと気を引き締めたアクトは個性を使って宙へと浮かんだ。
風をいったん加速させることで制御して自らの機動力を上げると、一番近くのフィールドへと向かっていく。
後日談ではあるが、この場にいたヴィランたちを黒い霧のヴィラン―――通称黒霧が逃亡させる為に個性を使うことはなく。
使い捨ての駒にされた彼らの人生は、暗澹としていた。
読んでいただき、ありがとうございました。