大遅刻の原因の一つは引っ越し、次いでFGOのイベやってました。
…ガチャは爆死しましたがね、Xまたいつか。
*このお話には残酷な描写が入っているので、お気に召さない方はブラウザバックをお願いします。
ではでは、どうぞ。
アクトの一番近くのフィールド―――山岳フィールドには響香や上鳴、八百万がヴィランたちと奮闘していた。
上鳴の無差別電撃で殆どのヴィランたちが戦闘不能に追い込み優勢だったが、電気に耐性のあるヴィランがいたのか、不意打ちを受けた
時間を稼いで隙をつこうとした響香や八百万も戦闘経験の未熟が見抜かれたのか、その動きを制止したヴィランは得意げに笑ってみせた。
「―――残念だったな!!
さぁ、こいつの命が惜しけれ―――ばぁっ!?」
相性的には優勢だが、子供とはいえヒーローの卵相手に油断していないのか、ヴィランの男は上鳴を二の腕で締め上げながら後退していく。
あとは2人を遠ざけて逃亡しようと試みたところで、逃亡を開始しようとした時、その可能性を根こそぎ奪い取る存在が現れた。
「―――時間が押している、茶番はそこまでにしてもらおうか」
ヴィランの後頭部を鈍器で打ち抜かれたような衝撃が襲う。
ヴィランはそのまま失神してしまうが、アクトはそんなヴィランにお構いなく追い打ちをかけた。
―――パチン。
たったそれだけで、悲劇がまた一つ量産された。
「ぎゃああああああああああああああっ!!」
ヴィランの両手両足が燃え上がり、失神していたヴィランが炎の痛みに覚醒し絶叫し、そして痛みから逃れるために現実から夢の世界へと逃避する。
あまりの出来事に、クラスメイト3人は茫然としてしまった。
「うっ」
「うぇいうぇい!?」
「アクト、あんた何やってんの!?」
特にアクトの非道を始めて見た八百万など人の焼ける匂いに耐性が無かったのか、口元を抑えながら顔を背けた。
響香と上鳴は2度目ではあるが前回よりも酷いアクトの非道に憤った。
「何とは?
…ああ、これは逃亡封じの一つだ。
コスチュームの機能に風を起こすものがあってな、それを俺の個性で操作、圧縮させて対象の四肢へ向かわせてこの手袋…発火布というのだが…まぁ指パッチンだな、火花を起こし…酸素に火花を近付けたら、どうなるかは簡単な実験でも結果は解るだろう?」
「そ、そんなことを言ってるんじゃない!!
そこまでしてこんな酷いこと…」
「これが酷い?
そんな事だから容易に人質になどされるのだ。
日本はヴィランを制圧するにも対応が生温過ぎる。
気絶させるだけ拘束しただけ?
反撃できる選択肢を、逃亡できる選択肢を…そして反抗のチャンスを残すなど本来ならば有り得ないぞ?
逃亡反撃の選択肢を奪い、特に反抗の意思を根こそぎ奪うには、これは一番効率がいいのだよ」
アクトの理論は正しくはあるが、もはやそれはヒーローの思考ではない。
―――猟犬の思考だ。
「…駄目だよアクト、そんなことしたらアクトが何時かヴィランになっちゃう」
「心配するな、加減はする。
ここまでするのは、よほど状況が悪い時だけだ」
「…絶対だかんね?」
「…なるべく日本流に合わせるようにしよう。
善処する」
疑いの目を向けられているが、アクトとしては別段悪びれた様子もないので尚性質が悪かった。
―――携帯型心理診断鎮圧執行システム、ドミネーター起動しました
―――ユーザー認証、加減アクト特別監視官
―――公安局サンフランシスコ支部刑事課所属、使用許諾確認
―――適正ユーザーです
通信状況が正常になったのか、ドミネーターが起動し指向性音声がアクトの耳元に届いた。
先程のヴィランが電波妨害を担っていたヴィランなのだろうと当たりを付けるが、このことを目の前の3人には敢えて伝えなかった。
「…では、俺はこれから中央へと戻る。
お前たちは散らばったクラスメイト達に合流次第この場から退避だ。
そうだな…轟や爆豪あたりに護衛をさせれば必ず脱出できるだろう。
外壁をぶち破ってでもお前たちは退避して、この状況を近くの施設の通信機を使って知らせるんだ」
アクトも通信機の類を持っているが、耳郎達の目の前で遣う気はなかった。
理由を作ってしまえばこの場を離れてくれる理由にもなるし、万が一の良い訳も考えてある。
この場を離れていった耳郎達としっかり距離を取った後で時間差をつけて通信を行えば、『後になって通信が回復した』という言い訳になるからだ。
「アクトを置いて逃げるなんて…!?」
「わたくしも耳郎さんの意見に賛成ですわ!!
いくら貴方がアメリカでヒーローをしていたとしても、1人であれだけの数をするのは無茶です!!
ここは…」
そうとも知らない2人はヒートアップして頑として譲ろうとしないが、アクトとしてもこの問答を続ける気はない。
「―――はっきり言おう、足手纏いだ」
アクトが一番懸念しているのはクラスメイト達が先程のようにヴィランに人質として捕まってヒーロー側が戦意を落とすことだ。
今回の一件、大規模ではあるが蓋を開けてみれば大した戦力は片手で数える程度の数であった。
この程度であればクラスメイト達も知恵を巡らせれば対処可能だろう。
問題は想定を超えた相手―――遥か上空の謎のヴィランだ。
直接の戦力は不明だが僅かなりとも感じ取ったあの悪意をアクトは、敗北の可能性を少しでも減らす為、この際邪魔な要素には退場してもらうことにしたのだ。
それが、いくら仲の良いクラスメイトである耳郎であろうとだ。
「…言い方がきついのは分かっている。
だが理解しろ、これはまだお前たちには早い…聞き分けてくれ」
「…分かった。
絶対、絶対戻ってきてよ!!」
「ああ、また後で会おう」
アクトは宙に浮かぶと、セントラル広場へと向かっていく。
小さくなっていく彼の姿に耳郎は寂しさと悔しさがぐちゃぐちゃになった感情を抱きながら、八百万と上鳴を連れて山岳ゾーンを降りていく。
途中、尾白と轟と会い、アクトの言葉通りこの場からの退避を提案しようとしたが、轟はセントラル広場へ向かうといって耳郎たちを置いて行ってしまったが、その後青山と葉隠れたちとも合流し、アクトの思惑通りUSJからの退避には成功したのだった。
***
セントラル広場では、集団戦をしていた相澤―――イレイザーヘッドが脳丸出しの黒ヴィランに蹂躙されていた。
戦闘中、首謀者の手だらけ男に肘を
「個性の無効化…素敵だけどなんてことないね」
手だらけ男がイレイザーヘッドを嘲笑う。
黒ヴィラン―――脳無によってまるで枝を折るような手軽さで満身創痍のイレイザーヘッドの右腕に追い打ちをかけるように
「圧倒的な力の前では―――ただの無個性だもの」
イレイザーヘッドの個性は多少の肉体の一部でも視認すれば個性を封じる事が可能だ。
―――だが、視認したにも拘らず、脳無の身体能力は衰える様子はない。
相澤は戦慄する。
この異常な身体能力は、個性によるものではなく、素のものであるという事に。
その状況を、水難エリアのヴィランたちを撃退したデク達は遠目から見ていた。
水難エリアで辛くも初勝利した彼らは錯覚していた。
自分たちの力がヴィランに通用する―――そんな錯覚に。
通用はした―――だが、それはアクトの言うところの雑魚が相手だったからだ。
手だらけ男の言ったとおり、圧倒的な力の前では自分たちが相澤の下へ行ったところでむしろ邪魔にしかならない。
「―――死柄木弔」
そこに加えて、クラスメイト達を方々へ四散させた黒霧が手だらけ男―――死柄木弔の下へと戻ってきた。
嫌な予感がする、デク達は息を潜めてその会話に耳を澄ませた。
「黒霧、13号はやったのか?」
「ええ…行動不能には出来たものの…散らし損ねた生徒がいまして。
……1名逃げられました」
「……はぁ?」
死柄木の声音に苛立ち交じりの疑問符が上がった。
黒霧の言葉を理解する為に自らの顔をガリガリと苛立ちを抑える為に何度も何度も引っ掻く。
思考を落ち着かせる為に、何度も引っ掻く姿はまるで苛立ちを隠せない子供特有の癇癪の様で、その不気味さに拍車がかかっていく。
「はぁ……黒霧、お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしていたよ。
…何十人ものプロヒーロー相手じゃ敵わない。
―――
帰ろっか、と死柄木はまるで
その死柄木の言葉が聞こえた峰田は喜んだ。
どさくさに紛れて蛙吹の胸に軽いお触りをするが、蛙吹に容赦なく沈められる。
「気味が悪いわ緑谷ちゃん」
「うん…これだけの事を引き起こしておいてあっさり…」
オールマイトを殺したいのであれば、こんな中途半端に撤退したところで雄英側の危機意識が上がるだけだ。
非常事態ということで、オールマイトの周りにも質の高いヒーローが傍に付く可能性も高い。
何より、この状況を『ゲーム』という物差しの壊れた判断基準を持つ
この場から離れた方が良いのでは、そんな思考が鎌首を上げてくる。
「―――だけどその前に」
死柄木がデク達のいる方向へ向き直る。
デク達が気付き、その場から離れようとするが、一足遅く。
「平和の象徴としての矜持を少しでもへし折って帰ろう!」
完全に虚を疲れたデク達の目の前にまで、死柄木の文字通りの魔手が蛙吹に迫った。
顔面にその魔手が触れたが、個性が一向に発動する気配はない。
死柄木はすぐにその原因を悟る。
「本っ当かっこいいぜ―――イレイザーヘッド」
脳無に拘束されていたイレイザーヘッドが死柄木個性を寸前で止めたのである。
デクは目の前の死柄木をどうにかしようと個性を発動する。
全身に10パーセントの出力を掛け、相手を吹き飛ばしてこの場からの撤退。
「手っ…離せえ!!」
「―――脳無」
「SMASSH!!!!」
だが、現実は非常である。
未だ万全に個性を使えないデクの一撃はたった一言、死柄木の呼びかけで呆気無く潰えてしまう。
衝撃と粉塵がデクと脳無の周囲を覆う。
デクは己の腕を見て驚いていた。
折れていない、アクトの助言通り10パーセントの出力でヴィランを殴った。
そこまではよかった。
力の制御がうまく決まった。
目の前に、脳無と呼ばれた真っ黒な脳丸出しのヴィランが平然と立っていなければ、もっと喜べたであろう。
死柄木の盾のようになった脳無は無機質な目をしてデクを見下ろしていた。
敵意、悪意はない。
あまりにも異質な存在だ。
デクの脳裏に疑問が浮かぶ。
―――相手が早すぎる
―――いつの間に僕の目の前に…
―――それよりもこいつ…僕の力が効いていない?
蛙吹の言葉が思い出される。
オールマイトを殺すといったその根拠。
殺せる算段が整っているから、こんな無茶をしているのではないかという。
「良い動きをするなぁ…スマッシュって…オールマイトのフォロワーかい?」
振り返らずに、死柄木は脳無に命令する。
「まぁいいや君…死んで」
命令を受諾した機械のように、脳無は死柄木の言葉に反応しデクの利き腕を掴む。
蛙吹はデクをその場から遠ざけようと個性の舌を使うが、脳無はしっかりとデクの腕を掴んで離さない。
「―――そこまでだ、ヴィランども」
酷く落ち着いた声が、衝撃と共に空から降ってきた。
「―――がはっ!?」
衝撃が走り砂埃が中央エリアに舞う。
視界が悪い中、死柄木のうめき声、そしてデクを掴んでいた脳無の力が弱まったことで再度デクは全身に個性を行き渡らせてその腕を払った。
脳無の腕は殆ど抵抗もなく、
2度目の個性発動も失敗しなかったという実感と共にデクは先程の声の主を探した。
「―――加減くん!?」
「…デクよ、あまり無茶はしてくれるな?
それと個性を安定して使えたようだな、おめでとう」
「あ、ありがとう?
じゃ、じゃなくって!!
いったいどうやって!?」
視界から砂埃が消えていくと、デクの前には見知った光景があった。
黒を基調としたソフトハット・マント・外套・スーツ・手袋・ブーツに至るまで全てが黒。
まるで一昔前の映画に登場していたヴィランを切り取ってこの場に降り立った姿。
ノンストップヒーロー、グッドスピードがそこにはいた。
読んでいただき、ありがとうございました。