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評価ありがとうございました。
最近、ようやくハーメルンの機能に気付いてきた作者です。
さぁ、あと2話でUSJ編は終わる予定です。
ドミネーターが火を噴きますよ。
雄英高校にて、4人の男女が正門前で佇んでいた。
正門は以前の崩壊事件からさらに強化した仕上がりになっており、厳重さに磨きがかかっていた。
あるヴィランの持つ物体を崩壊させる個性を除けば、強力な個性の攻撃を最低でも1時間は止められるほどのものだ。
その中でリーダー格の男―――切れ長の目で鋭い印象のポニーテールをした20代の男性―――が腕時計型の携帯端末で正門の向こう側、雄英高校の校長、根津校長と会話中だった。
「―――こちらの要求は呑めないと?
アメリカからの正式なルートで日本政府には連絡は取って、許可も下りている。
早くこの正門を空けて頂きたい」
『いま文科省、外務省、公安委員会に連絡を取っていてね!!
あと5分もしない内に全ての確認が取れるので待ってほしいな』
「それは10分前にも聞いた、いい加減時間稼ぎは止めてもらおう」
「―――ギーノさん、オレ行くっスよ?
いい加減待ちくたびれたんだけど」
年若い、少年が緊張感のない声音で、ニヤニヤしながら事態の進展の為にと立候補していた。
本音としては小一時間もこの場に待たされて限界が来たのだが、少年の個性では正門を破壊して事態を悪化させるだけだったため、ギーノと呼ばれていた男はあえて無視した。
「ハウンド4、あんたの個性だと確実に面倒になるわ。
自重して」
整った顔立ちをした、クールな印象を受ける金髪の女性がはぁとため息をついた。
「んだよハウンド2、お前のだって確実に面倒になるだろうが」
「私のは気化させるからせいぜい音程度よ、あんたのは周囲一帯砂だらけでしょう」
「お二人とも、お静かに。
どちらもアクトさんの許可がなければ個性の使用はいけませんよ?
ですが、あと10分待ってもダメだった場合は…この頑丈な扉に『自発的に』開いてもらいましょう」
2人の言い合いに仲裁へ入ったのはアクトが乗っていた車の運転手を務めていた雷銅駿太だった。
落ち着いた様子だが、この場で一番不穏で過激な発言をしたのは彼だろう。
ギーノの後ろで揉めている声が聞こえてきたのか、根津が気難しげな声が端末から漏れ出るが、次の瞬間、驚きに変わった。
『なんだって、中央の演習場でヴィランが!?』
ギーノは知っていた。
この時間帯、中央の演習場を使っているのがアクトたち1-Aの生徒たちだということを。
思わぬ機会に、ギーノは根津に強引な交渉を行った。
「根津校長、戦力はあればあるだけいいだろう?
我々もヴィランの対応に協力させてほしい」
事態が動いたことで、ギーノは事件解決に協力することで状況を動かそうとした。
根津は悩んだ。
加減アクトを含め、アメリカ勢力とってもいい彼らが日本のヒーローに対して良からぬ影響を与えるのではないかという不安があった。
それと反対に、『これが日本のヒーローだ!!』というものを見せつければ、今後の関係を良くしていけるのではないかという期待に揺れ動いていた。
事態は刻一刻と過ぎている。
根津は決断した。
『―――すぐに開ける、迎えの教師をよこすので、案内に従って協力してほしい!!』
穿った目で見れば、雄英側が独力で事件の対処ができないという証明とも取れる判断だが、ギーノとしてはどうでもよかった。
「いや、場所はある程度分かる。
中央の演習場が現場だというのなら、正門を通り次第、
携帯端末から、アクトの所在情報が浮かんでくる。
やっと再発信し始めたのだ。
根津は非番にしていた教師を含め、今動けるヒーローたちへ連絡を取り始める。
波乱に満ちた事件は、収束に向かっていた。
* * *
デクの前に降り立ったアクトは徐にドミネーターをホルスターから抜き死柄木たちに向けた。
アメリカからの癖なのだろう、黒霧の個性は警戒しているが、それでもと首謀者たちのサイコパス指数を確認しておきたかったのだ。
「マッドスピード…このチートがぁっ!!」
「もう来てしまいましたか…一番数の多いエリアに飛ばした筈なのですが、貴方の事を過小評価していたようですね」
死柄木が激昂し、黒霧が作戦の失策を悔やんだ。
アクトが死柄木を攻撃して転がしたのか、砂埃塗れになった彼と、その近くにいた脳無の姿にデクは驚いた。
「くははははっ、有象無象が100や200増えたところで俺に近づく事など出来ないぞ!!」
「う、腕が…切られてる!?」
脳無の右腕からは夥しい量の血が流れている。
肩口からバッサリと切られており、まるで噴水のように流れ出していた。
その光景を遠くからクラスメイト達も驚愕していた。
アクトの個性は加速と減速を操る個性だった筈、それがどういう使い方をすれば人体を切断するほどの危険な一撃を放つ事が出来るのか。
デクは脳無の魔手から逃れられた原因がこれだと悟った。
これを誰がやったのかも、同時に分かってしまう。
「か、加減くん、やり過ぎだよ!!」
「いや、あの程度なら後で焼き潰せば出血は止まるだろうさ。
…それに、それほどのことでもないみたいだぞ?」
アクトが脳無を指さすとそこには異様な光景が映っていた。
「腕が…生えてきてる!?」
「…対象黒霧サイコパス指数295、対象手だらけヴィランオーバー300越えか。
アメリカなら執行対象だったな、そして…脳丸出しヴィラン、
なるほど、フレッシュミートなゴーレムときたか」
アクトはドミネーターから送られてくる情報を冷静に分析していた。
脳丸出しヴィラン―――脳無からはサイコパスが測れなかったのだ。
その代わり、ドミネーターからは別の警告が発されていた。
「おい、そこに転がっている小汚い教師、意識はあるか?」
「…グッドスピードか、状況は?」
相澤―――イレイザーヘッドは首だけを動かして状況の確認をアクトに促した。
「エリアの半分は制圧完了しているようだ。
思いの他クラスメイトたちが奮闘しているようだな。
戦闘は終結に向かっている…後はここだな。
さて、提案だがなイレイザーヘッド。
貴様をボロ雑巾にしたと思われるあの脳丸出しのヴィラン、消滅させるが構わないな?」
なんでもない、当たり前の提案をしたつもりのアクトだったが、相澤には受け入れられなかったのか、苦悶した表情が更に歪んでいた。
「はははっ、何だよイカレてやがるぜヒーロー、綺麗事がお題目のお前たちがヴィランとはいえ人殺しをするのかよ!!」
「加減くん!?」
「訳を言えグッドスピード、いくらヴィランであろうと、殺人の許可はできんぞ」
「殺人ではない、そもそもあれはもう既に人として正気を失っている。
ドミネーターがあれを人と認識しなかったというのもあるな、治る見込みもゼロだ。
言ってみればあれは生きた人型のラジコンだ、手だらけヴィランの命令を忠実に守る生きたラジコン。
殺すというよりも、この場合壊すということだ」
「…なんだよ、バレてんのかよ。
そうさ、こいつが対平和の象徴、改人脳無っていってな。
元あった人格なんて余計なもん取っ払って、徹底的にこの体を弄繰り回して生まれたものだ!!
いくらお前がチート染みた個性を持っていようと、こいつの前には無個性も同然!!」
舌打ちする死柄木は痛みも引いてきたのか、落ち着きを取り戻した死柄木は脳無に命令を下した。
「脳無、黒霧、2人がかりで、マッドスピードを殺せ!!」
「殺人教唆の現行犯だな、全力で抵抗させてもらおうか。
あとイレイザーヘッド、俺が抵抗しているうちに結論は出しておいてくれ。
勢い余って消滅させた時、許可がなかったとあれば器物損壊罪だからな!!」
ドミネーターをホルスターに戻したアクトは個性を発動して突撃する。
「だめだ加減くん!!
そいつは僕のパンチが効かないし、腕なんか小枝を折るように破壊できる怪力の持ち主だ!!」
デクが脳無の危険性をアクトに説いて引くように伝えるも、アクトは一向に下がろうとはしない。
アクトは脳無に向かって手刀を繰り出す。
単純な、振り下ろすだけの行為だが、デクが見えたのは振り上げた一瞬だけだ。
次の瞬間、脳無の右腕が切り裂かれた。
「ちっ…硬いな、不意打ちで切り落とせたから、真正面でも可能と思ったのだが」
脳無の右腕の半が抉れるようにして切り裂かれたその一撃は、常人ならば即両断されてもおかしくない一撃だったが、強靭な肉体はその必殺の一撃に耐え切った。
むしろ手刀を繰り出したアクトの肘と手に激痛が走った。
一撃目は個性を応用した風を使った斬撃だったが、直接攻撃となるとアクトの戦闘力はさほど高い訳ではない。
個性を使って無理やり攻撃力を上げているようなものだ、相手の防御が固ければその分諸刃となって自らのダメージとなってしまう。
アクトは黒霧の位置を確認しながら脳無から距離をとった。
「超高速の手刀!!
いくら物理耐性のある脳無でも、あの一撃は拙いですね」
濃霧の傷はすぐさま再生を始める。
「…10秒もかかっていないな、さながら超再生といったところか。
超パワー、超耐久、超再生…完全なパワータイプだな。
性質の悪いラジコンだ!!」
右腕から鈍い痛みが発信されていた。
折れてはいない、だが、酷使すれば治りが遅くなってしまうという危惧を抱いたアクトは脳無との戦闘方法を近接戦闘から遠距離攻撃に切り替えた。
右手をパチン、と
瞬間、脳無と黒霧のいた個所から超高温の炎が吹き上がった。
火だるまにされた脳無は突然の炎に動きが止ってしまうが、黒霧は動きを封じる事が出来ず、そのままアクトに突っ込んできた。
「この程度なら私の個性ならば対処可能ですよ!!」
黒霧は己とアクトとの相性の良さを活かし、アクトを自らの霧で包み込もうとする。
襲撃時にクラスメイト達をあちこちに転移させたような
アクトはアメリカ時代、何人か空間転移系の個性を持ったヴィランやヒーローを見てきた。
その中でも彼らには共通していることがあった。
それは―――、
「―――己の個性の優位性に慢心しているということだ!!」
「がはっ!?」
アクトは黒霧に接近すると、全身を黒いモヤで身を纏った黒霧の、人間でいう首元に巻かれた金属に手を掴んだ。
アクトはこの金属が黒霧の
浮いた黒霧を地面に叩き付けた。
「くははははっ!!
そんな
そして案の定、その部分だけが生身の様だったな。
獲物を前に舌舐めずり…個性は一級品だが、戦闘は3流だな」
黒霧は己の弱点にカバーをして、更に自らの個性でそれを隠していたが、クラスメイト達を囲い込んだ時の一瞬を見逃さなかった。
嘲笑うかのようにアクトはそのカバーを圧倒して叩き伏せたのだ。
開戦直後の慢心を拭い去ればこの通り、アクト1人でヴィラン側の切り札を圧倒してしまった。
「くっ!!」
「さて、黒霧とやら、動くなよ?
反撃と見られる行動をとったと俺が判断したら、即座に
勿論、火加減は
黒霧を抑え込んだアクトだったが、回復した脳無がアクト目掛けて絶死の拳を振るった。
だが、アクトは避けようとせず、ゼロ・フィールドを脳無の前に展開。
超加速した暴威の拳は見る見る内に減速していき、アクトから1メートル手前であらぬ方向へ振り抜いていた。
「バカめ、パワーだけはオールマイトに匹敵するかもしれんが、力任せの一撃で俺に近付けると思ったか!!」
「…は?
なんでそんなとこで振り抜いているんだよ、もう一度だ脳無!!
アイツがグシャグシャになるまで痛めつけろ!!」
目測を誤ったのか死柄木は訝しんで、再度脳無に命令を下す。
命令を受信した脳無が今度こそとばかりにアクト目がけて拳を振るった。
一撃一撃が全てアクトを絶命させ得る拳にアクトも分析を終えていた。
減速した拳も充分な脅威であるとアクトは気付くと、脳無の初撃を同様に、攻撃を反らせることにした。
時速300キロの速さのボールを150キロに減速させたとして、危険なことに変わりはない。
ならばと、アクトはゼロ・フィールドに触れた脳無の拳の行き先を強制的に誘導して、攻撃をアクトのいない空間に放たせたのである。
デク達の視界には脳無がまるで威嚇するかのようにアクトの周りを殴っているように見えて、唖然とさせた。
アクトも黒霧の反撃を警戒しながら脳無に何度も炎をぶつけるが、再生を続ける脳無は構わず拳を振るい続ける。
いくらアクトの個性で攻撃を反らし続けていても、その迫る一撃に全く恐怖せず一度として自らに近付けさせながら反撃するアクトの集中力は常人を遥かに超えていた。
「…しぶといな、焼いた先から再生して灰にならんとは…おい黒霧とやら、この脳無に弱点はあるのか?
教えてくれたら今なら焼き加減をミディアムレアにしてやろう」
ふざけた質問に黒霧は冷ややかに返した。
「お断りします。
教えでもして実行されれば、我々の敗北は決定してしまう」
「ふん、まぁ期待していなかったからいいとしよう。
―――おいそこのボロ雑巾みたいなヒーロー、決断したか?」
アクトは相澤に脳無の処遇をどうするか再度決断を迫った。
「たとえこの場で脳無を捕まえたとして、情報はロクに手に入らんぞ?
分かるのは非人道的な実験の被害者の身元位で回復の見込みも無し、ヴィラン連合とやらの情報が手に入る訳でない。
生かしておいていざ奪還でもされたらこれほどの戦力だ、並みのヒーローでは束になったところで太刀打ちできん。
どうするヒーロー、俺としてはどちらでも構わなくなってきた。
生かしておいて後の禍根とするか、消滅させて後の脅威を消し去るか、好きにするがいい」
「……グッドスピード、その哀れな被害者を、何とかして拘束してくれ」
後の禍根となろうとも、ヒーローとしての立ち位置を間違える訳にはいかない相澤は脳無の拘束という決断をする。
だが、実行するのはアクトである。
面倒事を押しつけられたと相澤を睨んだアクトだが、勝手をする訳にはいかない以上その決断を尊重するしかない。
アクトは脳無を再生困難なまで追い詰めた後で死柄木をどうにかして拘束する事を計画し始めた。
「くそっ、これ無理ゲー過ぎるだろう!
話しが違うじゃないか、
死柄木が頭をガシガシと掻き毟って苛立ちを見せているが、状況は変わらない。
むしろ、脳無が倒されれば次は自分だということも分かっている。
捕まってしまった黒霧がいなければ逃走もままならないこの状況は最悪の一言に尽きた。
そしてヴィラン連合にとっての悲劇は更に続く。
USJの入口が勢いよく外側から吹き飛び、アクトたちのいた噴水近くまで残骸となって降ってきた。
視線を向けると、そこには日本において誰もが知る彼がやってきていた。
「―――オールマイト!!」
「―――もう大丈夫、私がき…た?」
不敵なスマイルを浮かべた平和の象徴、オールマイトがトドメとばかりにやってきたのだ。
とはいえ、事態は既に終局へと向かっている。
生徒たちの危機を救いにやってきたオールマイトも、事態が思っていたよりも危機的ではない事に気付いたのか、拍子抜けして首を傾げた。
「ようやく到着かよ
…くそっ、マッドスピードがいなければいまごろっ!!」
オールマイトを前に激高した死柄木が射殺さんとばかりにオールマイトを睨みつけるが、生憎ながら彼の個性は視線で殺傷する個性ではなかった。
「俺の前に立った時点で、貴様らヴィランの運命は決している。
オールマイト、そこの手だらけヴィランを拘束しろ。
今回の事件の首謀者だ。
俺はこちらで手が離せん、そいつを片付ければこの脳丸出しヴィランは止まる筈だ」
命令する側がいなくなればおのずと
「なにっ!?
よし、任された!!」
オールマイトは着ていたスーツを脱ぎ捨て死柄木を拘束しようと超速で接近する。
いくら死柄木が接近戦に有利な個性を持っていようと、相手がオールマイトでは相手が悪過ぎた。
切り札の脳無はアクトを、グッドスピードを牽制している為呼び寄せる事が出来ない。
「くそっ、くっそおおおおおおおおおおおおおっ!?」
死柄木の背後に回り、無力化しようとオールマイトの一撃が死柄木に迫ろうとした時、思わぬ事態が起きた。
『―――それは困るな、あまり私の望んだ状況ではない』
「―――っ!?」
身の毛がよだつ、ぞっとする声がどこからともなく聞こえてきた。
アクトが、オールマイトが思わず固まってしまうほどに圧倒的な気配。
オールマイトは死柄木から離れて周囲を見回すが、誰もいない。
一切の気配を辿らせないほど接近していたという違和感を覚え、アクトは真下にいる黒霧を睨みつけた。
「―――黒霧、貴様っ!?」
『―――個性強制発動、さぁ、続きといこうか』
既に黒霧はアクトの元にはおらず、何もない地面だけとなっていた。
どこに消えたのかと思えば、いつの間にか死柄木のいる場所にまで移動していて、個性が発動していた。
ずぶずぶと黒霧の個性に沈んでいきながら、死柄木はオールマイト、そしてアクトをこれでもかと睨み付ける。
「今回は失敗したけど……今度は殺すぞ、オールマイト、マッドスピード!!」
「玩具ではしゃいでいるようなガキに俺が殺されるか…次会った時が貴様の最後だ」
霧に沈んでいった死柄木と入れ替わるように新たな脳無が現れる。
『脳無、その2人を殺すんだ』
見る限りアクトを襲っている脳無と同タイプの戦闘力を有した相手に、アクトも舌打ちする。
声の主はそれ以上何も言わず、おぞましい気配は消え去り、あとは脳無を残すのみだ。
「オールマイト、この脳みそ丸出しのヴィランの個性は超パワー、超耐性、超再生のガチガチのパワータイプだ。
俺たちからしたら頑丈なサンドバック程度だが、安全第一だ。
俺が抑えている内にそちらの1体を拘束して2人掛かりで俺の方のを拘束で行こうと思うが、いいか?」
2対1であれば苦戦しただろうが、1対1の状況ならば時間を掛ければ勝てない相手ではない。
だが、アクトにはある一点、不得意としていることがあった。
アクトがアメリカにいた頃、凶悪犯専門として活動していたアクトの逮捕記録は驚くほど少なかった。
ドミネーターをヴィランに向ければ、その殆どがエリミネーターとして起動する潜在犯ばかりを相手にしてきたせいか、アクトが対象を確保―――拘束した回数は片手で数えるほどしかない。
アクトがオールマイトに言った安全第一とは、アクト自信が詰みの段階で失着を打たない為の最後の一手だった。
「よし、任されたぞ加減少年!!
さぁ、いくぞヴィラン!!」
戦闘を始めたオールマイトをよそに、アクトは戦場をクラスメイト達から離していく。
現状の脳無は逐一命令例を下さなければならなかったコマンド式ではなく、一度命令を下せば後は手当たり次第に暴れまわる自動式になっていると懸念したアクトが万が一を防ぐ為この場から離れようとしていた。
直線距離にして300メートルを稼いだ頃、オールマイトが脳無を吹き飛ばしたところで、予期せぬハプニングが起きた。
「この、壊れたラジコンが!!」
アクトが相手にしていたヴィランがオールマイトに突っ込んでいったのである。
ただでさえ早い脳無に出遅れたアクトは脳無の後を追っていく。
「―――よっしゃー!!
ようやく中央に戻ってこれたぜ!!
おい爆豪、救援に―――」
アクシデントは更に続く。
中央広場に戻ってきた爆豪と切島が脳無の進行方向に出てきてしまったのだ。
アクトと脳無の距離は約100メートル、絶望的な程遠かった。
速度的にはまだ上がるが、バランスを欠いた速さは逆に命とりだ。
相澤との約束を守っていては2人の命がない。
アクトは決断する。
「―――すまないがイレイザーヘッド、約束は破らせてもらう」
『執行モード・デストロイ・デコンポーザー・対象を完全排除します・ご注意ください』
アクトのドミネーターが変形した。
装甲版が、禍々しい生き物の翼のように広がる。
鋭い牙を持った動物が、口を開けて獲物を飲み込もうとする光景に似ている。
ドミネーターの最終形態、デコンポーザーの一撃。
脳無の全身、そして地面も巻き込んで綺麗な球状に消失した。
分子破壊砲、公安局の
アクトと対峙した脳無の脅威はこの世から消え去った。
爆豪と切島は脳無が迫ってきたと思ったら目の前が光り、目を開けてみれば何もなくなっているという状況に思考が追い付かなかったのか、困惑していた。
読んでいただき、ありがとうございました。