グッドスピード!!   作:夢落ち ポカ

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大変遅くなりました

風邪引いたり風邪引いたりFGOしたり風邪引いたりで不調だった作者です。

いえ、Twitterで生存報告のような☆5報告はしてましたから、生きているのは一部の方は知っているかな?

項羽×2、始皇帝いらっしゃいませー、ようこそー。

さて、年末は冬コミに行ける有休をとったので、今年はこれが最後の投稿・・・になるかも?です。

皆様、よいお年を、そして、メリークリスマス!!




第015話 雄英体育祭開催 下

 

 雄英体育祭開催2週間前。

 

 オールマイトとその個性(ワン・フォー・オール)を継承した少年―――緑谷出久は相談室で面談という形で落ち合っていた。

 

 オールマイト―――大衆に見せている体長220センチという巨漢はそこにはなく、上背だけ高く、病的までに痩せ細った枯れ木のような姿がそこにはあった。

 

 オールマイトの真実―――活動限界が更に短くなった事を告げるとデクは先の戦いでの不甲斐なさに俯いてしまう。

 

 だが、オールマイトはそんな事よりも身近に迫った危機があると告げた。

 

 言わずともデクにも分かった、雄英体育祭の事だ。

 

 オールマイト曰く、次代の後継者たる平和の象徴、緑谷出久がきたという事を世に知らしめよ、と師からの言葉にデクは「はぁ」と気の抜けた返事をした。

 

 USJ襲撃から直後という事もあり気が乗らない、オールマイトという偉大なヒーローから注目されているという事もあり、世に知って欲しいと言うモチベーションが低いこと。

 

 そしてなにより、現状世に自らを知らしめる事が出来るのかという疑問が過っているデクの心中は総合的に今回の体育祭に対してイマイチ乗り気でなかった。

 

「ナンセンス界じゃ他の追随を許さないな君は!!」

 

 そんなデクの反応にオーバーなリアクションだが、ひっくり返ったオールマイトは思わず声を上げてしまう。

 

「な、ナンセンス界・・・」

 

 オールマイトはデクの戸惑った姿にに今度は嘆息すると、一つの助言を口にした。

 

「常にトップを狙う者とそうでない者・・・その僅かな気持ちは社会に出てから大きく響くぞ?

 気持ちはわかるし私の都合だ・・・強制はしない。

 ただ、今年は事情が大きく違ってきている、何か分かるかい、緑谷少年?」

 

 助言を飲みこんでいくうちに質問が来て突然の事に詰まったデクだったが、すぐに答えは導き出せた。

 

 アメリカからの来訪者。

 

 悪名高く鮮烈で苛烈なヒーローにして警察官―――、

 

「加減君・・・プロヒーローにしてノンストップヒーロー、グッドスピードがいる」

 

 その答えに、オールマイトは痩せ細った身体に鞭打って、全身をしならせるように飛び上がる。

 

「そう、現役プロヒーローが体育祭に参加するという事態、しかもアメリカじゃトップの知名度を誇る彼がいる事だ!!

 既にマスメディアも新聞の記事は決めているだろう!!

 圧倒的パフォーマンスを見せる加減少年―――グッドスピードにね!!

 そして彼にかかれば1年ステージなんてお茶の子さいさい・・・それこそ赤子の手を捻るかのようなワンサイドゲームにしかならないだろう!!」

 

 それは容易に想像できて、プロヒーローだから当然とデクは思っていたが、オールマイトは違っていた。

 

「彼は素晴らしいヒーローだ、どんなに血塗られた道だろうと走破するという覚悟。

 いまだその手の内を見せない底知れない智謀、それを巡らせるセンス。

 そして何よりも・・・圧倒的な戦闘力。

 ビッグ3と呼ばれる雄英高校が誇るトップクラスの生徒なんて目じゃない、プロヒーローと比べても飛びぬけて優秀なヒーローだ」

「オールマイト・・・」

 

 デクは分かっていた、オールマイトが彼を絶賛するだろうことは。

 

 同年代よりも遥かに高みにいる彼はこれまで見たヒーローの中で、ある意味オールマイトすらも強烈な個性を持った少年だ。

 

 オールマイトの後継者は、元から無個性だった自分よりも才能の塊、まるで神が丹精込めて作り上げた芸術品のような彼にこそ相応しい物ではないかという不安が過る。

 

「緑谷少年―――たとえ先に加減少年と会ったとしても、私は彼を後継者には指名しなかっただろう」

 

 諭すようにオールマイトはデクにアクトが自らの後継者として指名することはないと断言した。

 

 加えて理由を告げようとした時、相談室の扉が勢いよく開かれる。

 

「―――次代の象徴にしてもアメリカの二の舞になるということが分かっているからだ。

 そうだろう、オールマイト?」

 

 完全な不意打ち、絶対に知られてはいけない密談の場に現れたアクトにオールマイトとデクは驚愕して開いた口が塞がらなかった。

 

 相談室の扉の鍵を閉めていないオールマイトの不備といえなくもないが、そもそもどうしてこの密談の場が分かったのか、そして何よりもどこまでの事情を知られているのか、不明なことに、オールマイトは不健康な表情をさらに蒼白にさせる。

 

 そんな様子をお構いなしに、相談室へと侵入を果たしたアクトはといえばデクの隣に座ると彼のポケットからあるものを取り出した。

 

「前から二人の仲が怪しいと思っていてな。

 少しばかり張らせてもらった」

「は、発信機!?

 そんな、いつから・・・」

「やられたね・・・」

 

 一生徒がヒーロー界の英雄、オールマイトに食事を誘われる。

 

 そんな奇異な場面を見てしまっては、怪しいと思わないのは無理があった。

 

 これまでもオールマイトはクラスの授業に時折顔を出したり、隠れて授業風景を眺めていたことを思い出し、アクトはこのクラスの中にオールマイトと密接な関係を持った生徒がいるのではと推測していた。

 

 穴だらけの推測だが、可能性が皆無ではないと判断したアクトは一部の生徒の衣類に発信機を潜り込ませて監視していたのだ。

 

 そしてこの状況に居合わせたのである。

 

 完全な違法捜査であることは明白だ。

 

 このことを警察へ報告して立場を悪くすることも可能だが、おそらくは一時的なもので弱味だけが掴まれてしまうだけの状況になってしまう。

 

 何よりも彼はアメリカからやってきたヒーローだ、自分という存在が世間で認知されている以上に不安定な存在であることを他国のヒーローに知られてしまうのはよろしくないというのは賢くない自分の頭でも分かった。

 

 それは避けたい、オールマイトは思わず厳しい目でアクトを睨んでしまう。

 

「怖いな、天下のオールマイトにそんな目で睨まれるとは。

 心配しなくてもこのことを本国(アメリカ)へ報告する気はない。

 この場に来たのは、ただの捜査の一環だ」

 

 その天下の英雄に睨まれたアクトは飄々とした様子を崩そうとはせず、苦笑しただけで話を進めていく。

 

「デクにはあまり関係のない話だが・・・後継者となれば知っておいても損はない話といえるか?

 ・・・いや、能力的にはまだ足手纏いの枠から抜け出せていないし、イレギュラー要素は無くしておいた方がいいか。

 オールマイト、デクは話から外してもらってもいいか?」

 

 明け透けにアクトはこの会話にデクを加えるデメリットを考え、席から外れてもらうことにしてオールマイトに声を掛ける。

 

 オールマイトとしても、どんな話題かは知らないが少なくとも現状のデクに話せる話題ではないと気付いて、苦々しい表情をデクへと向けた。

 

「緑谷少年、すまないが・・・」

「わ、わかりました。

 僕は席を外しておきますね・・・」

「すまないなデクよ、この件の埋め合わせはまた今度させてもらおう」

「う、うん・・・」

 

 アクトはデクに謝罪の言葉を口にして、デクも浮かない顔をして相談室から去っていった。

 

 それからの話をデクは知らない。

 

 話の内容を知ったのは、それから随分先の話であった。

 

 

 * * *

 

 

 

 『どうせてめーらアレだろうこいつらだろぅ!!?』

 『ヴィランの襲撃を受けたにも拘らず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!』

 『ヒーロー科!!! 1年!!! A組だろぉぉ!!?』

 

 プレゼントマイクの声が入場口から聞こえてきて、A組の生徒たちは入場したと同時に爆音に襲われた。

 

 1年の部を見に来た観客たちの歓迎の拍手を浴びて、デクは目を回しかけ、一部を除いて圧倒されていた。

 

 観客席は見渡す限り一席も見られず、生徒の家族、プロヒーロー、そしてメディア関係者でごった返しになっている。

 

「わああああ・・・人がすんごいいっぱいだぁ・・・」

 

 デクの言葉の通り、どこを向いても人、人、人が自分たちを見ている。

 

 これまで何度も雄英体育祭を見てきた自分が見られる側(・・・・・)に立っていられようとは去年まで考えていなかったデクの心境は嬉しさと不安が綯い交ぜに混ざり合い、汗になってシャツをじわりと濡らした。

 

「大人数に見られながら最大のパフォーマンスを発揮できるか・・・!!

 これもまたヒーローとなる素養を身につける一環なんだな」

「めっちゃ持ち上げられてんな・・・なんか緊張すんな・・・なぁ爆豪!」

「しねえよ、ただただアガるわ」

 

 続けてヒーロー科B組、普通科、サポート科、経営科と入場していき、主審の教師が朝礼台に上がる。

 

 校長の根津は毎年3年の主審をしている為この場には現れず、18禁ヒーロー・ミッドナイトが今年は主審を務める事となっていた。

 

 上下の白タイツに改造ボンテージに着てアイマスクという扇情的な姿に加え、手にはムチという昼間のお茶の間的に完全アウトなヒーローが現れ常闇が『18禁なのに高校に居ていいのか』と呟いていた。

 

 実はこのヒーロー現在のコスチューム以前は更に過激な姿で活動をしており、一時期社会現象(おもにエロス方面)を起こしたその筋では有名なヒーローである。

 

 煩悩塗れの峰田としては大歓迎で予選が始まってもいないのに興奮しきっていた。

 

 『静かになさいい!!! 選手代表!!!』

 学年首席(・・・・) 加減アクト!!!』

 

 ミッドナイトの言葉にある普通科の女生徒は最初、『ヒーロー科入試の選手代表だろう』と聞いていたが、ふと我に返りミッドナイトが言った言葉を心の中で反芻した。

 

 すなわち―――、

 

「―――この度は日本とアメリカの国際交流も兼ねた体育祭となり、その第一例に名を刻む栄誉に深く感謝するとともに、アメリカプロヒーローとしてその名に恥じない戦いをすることを誓います」

 

 普段から毒を吐くことを日課にしているような存在が何食わぬ顔でネットで拾ってきた顰蹙(ひんしゅく)を買わない程度の適当な選手宣誓をアクトは行っていた。

 

 平坦な、特に強い感情移入のない薄っぺらい選手宣誓だと相澤はため息をついていたし、主審のミッドナイトも『青くないわー』と期待外れの宣誓に詰まらなさそうに見ていた。

 

 学年最優秀生徒だけが呼ばれるその称号を海を越えてやってきた留学生(アクト)が掻っ攫っていった事に気付いた生徒たちは驚愕の声を上げたが、お茶の間の視聴者たちにはわからなかったが彼をよく知る部下たちはそれぞれ複雑な表情を浮かべていた。

 

「そして個人的な宣言だが―――言い訳作りに余念のない諸君、『僕は頑張ったけど相手はあのプロヒーローグッドスピードだからダメだったよ』という練習はしっかりしてきたか?」

 

 先程の感情の籠っていない平坦な声から一転、相手を遥か高みから見下ろしていますと言わんばかりの感情を込めた発言が降ってきた瞬間、ヒーロー科を含めた全て学科の生徒の殆どが爆発した。

 

「調子乗んなよA組オラアアアアア!!」

「何故品位を貶めることをするんだ!!」

「マッドスピードマジマッド!!」

「そっちこそ恥かく覚悟してきたかコラアアア!!?」

 

 聞けば聞くほど鬱憤の溜まっていた生徒たちからの罵詈雑言が飛んでくるがどこ吹く風の表情の元凶(アクト)は飄々と受け止めていた。

 

 ここでもA組は纏めて標的にされてたまったものではなかったが、爆豪だけは気にせずアクトを射殺さんばかりの目で睨みつけていた。

 

「クハハハハ、結構結構。

 俺はこれでもプロヒーローだからな、それなりの技術や戦闘力を持っている以上、アマチュア以下の輩に本気を出すような大人げない(・・・・・)ことはしない。

 精々慢心している俺ののど元にその刃、突き立ててみろ!!

 命懸けならその鈍ら、この身に届くやもしれんからな・・・フハハハハハ!!」

 

 後半から完全に悪役のセリフなのだが、似合ってしまっているのはヒーローとしてはどうなのかというレベルでお茶の間に映っているアクトは『ヴィランっぽいヒーローランキング』上位入賞間違いなしの一幕だ。

 

「どんだけ自信過剰だよ!!

 この俺が潰したるわ!!!」

「その傲慢、打ち砕いてみせましょう・・・」

「ブッコロス!!」

 

 そして更にヘイトが溜まっていく、大よそヒーローがしてはいけない目つきになってしまう生徒が若干名出てきているのを察して、ミッドナイトが予選の説明を始めた。

 

「さーて、それじゃあさっそく第一種目行きましょうか!!

 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!!

 今年の第一種目は・・・!!」

 

 ミッドナイトが指差した先―――巨大な液晶ディスプレイが第一種目『障害物競走』と映し出した。

 

「計11クラスでの総当たりレースよ!

 コースはこのスタジアムの外周約4キロ!」

 

 ミッドナイトが妖しく笑う。

 

 入場位置が液晶ディスプレイに映し出され、入場門が開かれていく。

 

「ウフフフフ・・・我が校は自由さが売り文句!

 コースさえ守れば、何をしたって(・・・・・・)構わないわ!」

 

 それはすなわち、雄英高校入試でアンチヒーロー的な行為が禁止されていた時と違い、明確な妨害をコースを守りさえすれば許可するという、主審からのお墨付きであった。

 

 それを聞いた生徒たちの視線がある方向へと向かう。

 

 視線の先には不敵に笑うアクトがいた。

 

 

「そして特別ルール!!

 今回参加している中で唯一のプロヒーローである加減くんにはハンデが課せられるわ!!

 1つ、手足に10キロの重りを付けること!!

 2つ、最後の選手がスタートゲートを抜けて5分後に開始すること!!

 3つ、相手選手に直接触れないこと!!

 以上のルールよ!!

 もちろん他の生徒たちにはコースを守る以外のルールはないわ!!」

 

 アクトの写真がディスプレイに映し出され、次いで特別ルールがその横に点灯されていく。

 

 写真写りの悪さからさながら指名手配犯の写真とその特徴を映した光景に見えて、部下が大爆笑しているのが聞こえたアクトは保護者席にいるヴァーリを睨むアクトだった。

 

 アクトとしても、これくらいのハンデがなければまともな戦いにならないのは知っていた為、拒否的になることもなく受け入れた。

 

 ミッドナイトが選手たちをスタートゲート前に集まるよう伝え、予選開始1分を切ったところで、ミッドナイトがアクトに近付いてきた。

 

「プレゼントマイクからあなたにって預かってきたわ」

「これは・・・マイクとイヤホン?」

「特別ルールという訳じゃないけど、貴方にも特別実況として加わってほしいのだって、嫌なら持って帰るわよ?」

「いや、開始まで愉しく(・・・)なるだろうからな、受け取っておこう」

 

 アクトとしては暇潰しの一環になればと思い受け取ることにしたが、これがその後ラジオ番組を運営する会社からオファーを受け『グッドスピードの一刀両断相談室~あなたのお悩みをサクサクざっくり最速で解決します~』という一部のマニアから大歓迎のラジオ番組が出来るとは、今のアクトの予想の範疇外のことだった。

 

 予選開始のランプが1つ、2つと赤くなる。

 

「さぁ、俺を楽しませてくれよ、諸君」

 

 

 ―――スタート!!

 

 

 予選開始と同時、スタートそっちのけでアクトに襲い掛かる生徒たちがいた。

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございました。

なるべく早めに更新したいです(願望)。
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