グッドスピード!!   作:夢落ち ポカ

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いつの間にか半年もほったらかしにしていまして、大変申し訳ありません。

多作品でも申し上げていましたが、作者のメンタル的な事情もあって完全リフレッシュの為、ゲームとか旅とか行ってスッキリするために専念していました。

絶好調とは断言できませんが、最近はリフレッシュになるかなぁと思って、ミラティブっていう実況系動画もちょこっとあげていたりもしています。

やってるのはツムツムとFGOですが。

同じアカウント名でしてるので、気が向けばどうぞご覧ください、グダグダダラダラしているのでお勧めできませんっっw

ではでは、お待たせしました。




第017話 悲惨散々第2種目

 予選突破者の最後の1人がゴールするが出来ていない生徒たちはリタイアする者、最後までゴールを目指す者で分かれた。

 

 体育祭の運営上放送される事はないが、予選落ちしながらもゴールしていく者たちの中には転科を志す生徒もいた。

 

 誰一人として声をかける者はいない、声も上げず悔し涙を流し、ただ黙々と生徒側の観客席へと戻っていく彼らの背中をアクトはただ黙って眺めていた。

 

 表情で見て取れた、彼らは確かに短期間の訓練をしてきたが、その想いだけは本物だったと。

 

 勝者であるアクトが敗者に声を掛けたところで、傷心の彼らの殆どは更に傷つくだけだ。

 

 ヒーロー科以外の生徒もそれぞれの努力をした。

 

 予選の内容が自らの個性と合わなかったという理由もあるだろう。

 

 体育祭当日に限って体調不良で万全の状態で臨む羽目になったという理由もあるだろう。

 

 しかし、現実は非情である。

 

 後出しの言葉など言い訳に過ぎず、予選突破に至るだけの結果に繋がらなかった。

 

 冷たい言い方になるがそれ以上でもそれ以下でもない。

 

 ヒーローは国内では人気の職業とあって競争率が非常に高い。

 

 当時人気だったヒーローも1年も経たない内に後からやってきた後続に追い抜かれてしまう、そんな人気(……)商売なのだ。

 

 そう、商売。

 

 誰よりも上に、と貪欲な精神を持ったヒーローが人々をあらゆる障害を守り、助けていく商売(……)だ。

 

 元々あった『ヒーロー』という正義の味方からかけ離れているとアクトは日本のヒーローを見て常々感じているが、目の前にいる生徒たちの思いは果たして将来の現実を見てどう思うのか。

 

「まぁ、死体蹴りは勘弁しておいてやろうか」

「泣いている連中にそれしたらアクトホント襲われるよ?」

 

 響香は予選落ちした彼らを眺めるアクトに声を掛ける気はなかったのだが、アクトの不穏な言葉が聞こえてきて思わず突っ込みを入れてしまうのだった。

 

 ***

 

「予選順位は43名!!! 

 残念だけど予選落ちした生徒は安心なさい、まだ見せ場は用意されているわよ!!」

 

 予選落ちした最後の生徒がゴールしてから10分ほど経った頃、18禁ヒーロー・ミッドナイトがそれぞれの順位を発表していく。

 

 43位から順に伝えられていき、そして1位のアクトの番となった。

 

 アクトとしては当然の順位だと思っていた為、特に感じるものはない。

 

 少し離れた距離から熱い視線を向けている轟と爆豪が鬱陶しい以外は特に思うところはなかった。

 

「そして次は本選……第二種目!! 

 何かしらね~~~私は知っているけど!!」

「変な振りをする女だなミッドナイト……」

「そこ、聞こえているわよ!!? 

 ……第二種目は、コレよ!!」

 

 巨大モニターから次の種目が発表される。

 

 その内容は──―『騎馬戦』だった。

 

 直後にアクトは自分が1人で動くことになることを察した。

 

「参加者は2~4人チームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!! 

 基本は普通の騎馬戦同じルールだけど1つだけ違うのは先ほどの順位に従い、各自にポイントが振り分けられているわ!!」

 

 最下位から5ポイントずつと上がっていき、2位の210ポイントが発表される。

 

 アクトとしては215ポイントをどう守り通し、相手チームからどうやってポイント奪取を行うかこれから伝えられるだろう特別ルール(ハンデ)を考慮しながら対策を練り始める。

 

「1位のポイントは──―1()ポイント!!」

 

 だが、説明を続けているミッドナイトの1位のポイントのあまりの低さに一瞬だが思考が停止した。

 

 再起動して思ったのは『雄英の連中この前の腹いせに理不尽なルールを押し付けすぎだろう』だった。

 

 仮に当たっていたとしても、これまでのアクトの所業を考えればこの程度軽いものなのだが、自覚が薄いのかアクトは理不尽さを感じていた。

 

「…………ん? 

 今『いち』と聞こえたのだが……聞き間違いか? 

 最下位よりも酷くないか?」

「──―さぁ、ここでやってきたわよ、特別ルール!! 

 第二種目におけるグッドスピードのハンディキャップは以下の4つよ!!」

「響香、無視したぞあの年増ヒーロー」

「アクト、黙っていようねー?」

「さあ全員ディスプレイに注目、しっかり頭に叩き込みなさい!! 

 1つ、手足に20キロの重りを付けること!! 

 2つ、開始して10分間は舞台中央から動かないこと!! 

 3つ、相手選手に直接触れないこと!! 

 4つ、1人(……)で戦うこと!! 

 以上のルールよ!! 

 もちろん他の生徒たちにはコースを守る以外のルールはないわ!! 

 あとそこの予選1位、レディにそんな口を聞いたら主審権限で特別ルール増やすわよ!?」

「レディ(笑)」

 

 アクトの写真がディスプレイに映し出され、次いで特別ルールがその横に点灯されていく。

 

 写真写りの悪さからヴィラン顔負けの写真を映したディスプレイに、部下が大爆笑しているのが聞こえたアクトは保護者席にいるヴァーリを睨むアクトは無言で空気の弾丸をお見舞いしたのだった。

 

 直撃したヴァーリは席からひっくり返ると、リンジーとともにその場を離れて行く。

 

 雄英側に依頼されて、巡回を依頼されているからだ。

 

 ギーノ1人に任せていたが、離れて行ったのを見ると応援を呼ばれたのだろうと思いながら特別ルールの対策を考えるのでった。

 

「ふむ、騎馬なしで騎手をしろと? 

 なるほど、トンチだなこれは!!」

「飛べるアクトからしたらトンチでも何でもないんだよなぁ……」

 

 ぼやく響香は誰とチームを組むかを見定め始めていた。

 

 隣にいるアクトはルール上誰とも組むことはない。

 

 となると制限時間15分の内のラスト5分に猛攻を仕掛けてくることは容易に想像できたし、このルールの裏をついてくるかもしれないと頑丈な仲間が必要かとシミュレートしていく。

 

「さぁ──―チームを組むのに15分間の交渉タイムのスタートよ!!」

 

 生徒たちは自分が次のステージへ上がる為に、互いの個性を打ち明けメリットをプレゼンしていく。

 

 勝算が高ければ受け入れられ、低ければ断られる。

 

 アクトはクラスメイトたちが将来行っていくだろう生存競争の一幕をただ悠然と眺めているだけだった。

 

「じゃあアクト、また後で」

「じゃあ響香、また後で」

 

 たったそれだけの声掛けだったが、それ以上何も話さず2人は分かれた。

 

 アクトは舞台中央へ、響香は交渉をしているクラスメイトたちへ向かっていく。

 

 ──―そして15分後、

 

「さぁ上げてけ鬨の声!! 

 血で血を洗う雄英の合戦が今!! 

 狼煙を上げる!!」

 

 第二種目、騎馬戦が始まった。

 

 ***

 

 第二種目が始まった頃、警備をしていたヒーローたちが休憩所で観戦がてら休憩を取っていた。

 

「この雄英体育祭って──―ヒーローとしての気構えって言うより、『ヒーロー社会に出てからの生存競争をシミュレーションしている』よな?」

 

 ヒーロー名デステゴロと呼ばれる巨漢の男がタバコを吹かせながらモニターを眺めていた。

 

 向かいにはMt.(マウント)レディと呼ばれる最近知名度を上げてきているヒーローが煙たそうに向かってくる煙を払っている。

 

「ヒーロー事務所が(ひしめ)いている中で俺たちはおまんま食っていかにゃあいけねぇ。

 時に他のヒーローを蹴落としてでも活躍して見せなきゃ何ねーってのが障害物競走(予選)だろ?」

(けむ)いです、止めてくださいセンパイ。

 ……あれ心苦しいんですよね、悪気はないんですけど」

「貴様……デビュー当日のあれ(……)は新人に花を添えたということを忘れるなよ?」

 

 Mt.レディの隣で低い声音でねめつけているのは汎用性の高い個性を活かし活躍するヒーロー・シンリンカムイ。

 

 つい最近の話ではあるが、デビューを果たしたMt.レディに手柄を目の前で掻っ攫われた思いをしたヒーローである。

 

 一見間の抜けたと見られている一件であったが、シンリンカムイの実力は若手でもトップクラスの実力派ヒーローだ。

 

「おっと、悪いな今消すぜ……っと。

 まぁ、その一方で商売敵といえど協力してなくちゃぁならねぇ事案ってぇのも腐るほどある」

 

 デステゴロが灰皿にタバコを押し付けて消した。

 

 実況を眺めながらぼやく姿はヒーローになってからの苦労が滲み出した声が多分に混じっており、シンリンカムイやMt.レディもうなずいた。

 

「あぁっ、騎馬戦がまさにそれですよね!! 

 そっか、自分の勝利がチームの勝利になっちゃうもん。

 相性やら他人の『個性』の把握やらを持ちつ持たれつ、それにサイドキックとの連携」

「──―他事務所との合同『個性』訓練。

 個を高めることも必要だが、それだけではやっていけないヒーロー業界か」

 

 灰皿を遠い場所へ置いたデステゴロは第二種目の観戦をしながら代わりに持ってきた煎餅をバリバリと食べている。

 

「プロになれば当たり前の生きる道を子供が今からやっているとはなぁ……」

「大変ですねぇ……1枚もらいますねー」

「それにしても──―今回は粒揃いの筈なんだが、どうもヤツ(……)の所為でいまいち褪せてしまうな……カメラワークも露骨というか」

 

 シンリンカムイの一言で、2人の表情が若干だが曇った。

 

「あー、それってやっぱりあの子の事ですよね? 

 アメリカからの刺客(……)、グッドスピード!! 

 あの子ヤバイですよ、この前あの子のチームが捕り物しているの見たんですけど、相手のヴィラン半殺しで凄かったんですから!! 

 思わずヴィランが可哀想って思っちゃいましたよ……アメリカのヴィランもあんな目に遭ってるんだろうなぁって思うとぞっとしますね」

 

 体育祭1週間前の夜の出来事である。

 

 銀行強盗をしたヴィランが逃走に失敗して付近にいた民間人を人質に建物に立て籠もった案件だった。

 

 この手のヴィランのセオリーなのか、逃走用の足の用意、ヴィラン個人の追加要求──―このヴィランは1か月分の食料を逃走用の車に入れて準備しろと要求した──―を警察へと要求した。

 

 当然だが要求を全て呑む筈もなく、交渉に時間をかけてヴィランの個性に対抗したヒーローの救援要請をした時、アクトたちが呼び出されたのだ。

 

 犯人、人質は共に5人いて、それぞれ複数の箇所で拘束されており、場所もまだ全て把握し切れていない状況下で、アクトたちのチームは突入を開始した。

 

 ブリーフィングもなし、迅速果断というよりも無謀な突入と思われたその選択は人質は無事に保護・救出され、ヴィランたち5人も逮捕された。

 

 ヴィランたちは全員両手両足がそれぞれ大火傷、氷結、ミイラ化、銃創、粉砕と容赦のない処理(……)をされており、命に別状はないが今後の生活に障害が残るだろう重傷を負っていたのだという。

 

 Mt.レディが到着した頃には既に捕り物は完了しており、ヴィランたちは護送車ではなく救急車で警察病院へ運ばれていく様子をただ見るだけだったという顛末だった。

 

「いや、刺客じゃねぇだろ? 

 ヒーローネットワークで偶然知ったんだが、どうやらアメリカから逃げてきたヴィランを追ってはるばるアメリカからやってきたんだそうだぜ。

 どうして雄英に留学してきたかは知らねぇが」

 

 アクトの流した情報に辿り着く辺り、肉体労働専門に見えるデステゴロの情報収集力の高さはそれだけではないと示していた。

 

「……恐らくは彼が未成年であることがヒーロー委員会でも問題になったのでは? 

 アメリカでは個性使用(ヒーロー)免許を持っていても日本では飛び級制度が未だ無い。

 あとは日本政府もグッドスピードの所業を知って彼が暴走しないよう幾重もの枷をする為に雄英に入れたのではないだろうか?」

 

 個人の凶悪性、行動範囲、個性使用、国内ライセンス不所持などを理由に殆ど無理矢理だがアクトの国内での活動を制限する動きが日本政府の要望もあったのか、その器として選ばれたのが雄英高校ではないかとシンリンカムイは推測した。

 

 選ばれた雄英側としてはヴィランを誘き寄せる狩猟場にされて堪ったものではない。

 

 とはいっても、既にその手の情報は既にヒーローネットで出回っている為、全て彼が考えたものでもなかったが。

 

「──―失礼、東側の巡回警備が完了したわ。

 置き引きが2件ほど発生していたから詰め所(ココ)に引っ張ってきたのだけど、ここに連れてくれば良かったのかしら?」

 

 冷めた印象を窺わせる女性の声音が詰め所の入り口に響き、それに気付いたヒーローたちが声のした方へと視線を向ける。

 

 金髪の女性──―ハウンド2のコードネームを持つリンジーが詰め所の入り口に立っていた。

 

 不機嫌な表情だが、これが彼女のいつもの表情だ。

 

 少し後方には両手両足がまるでミイラのように水分が飛ばされているチンピラが這い蹲っていて、彼女の個性が原因なのか、悲惨な状況が一瞬にして見て取れた。

 

 これではどちらがヴィランか分からないという状況に気の抜けた、明るく弾んだ男の声が聞こえてくる。

 

「ちーっス!! 

 南側の巡回ケービ終わったぜぇっ。

 なんか設置されてる設備パクろうとしてるアホが5人と隠しカメラとか盗聴器仕掛けてるメディア関係者がいたからしっかり捕まえてきたぜ……って、ナニコレ?」

 

 ヴァーリはまるで世界の時間が止まったような待機所に拍子抜けしたのか、砂で拘束していた窃盗犯(ヴィラン)の拘束が緩んでしまった。

 

 既に気絶しているため、逃走する恐れはなかったが、待機所を一瞥すると納得する。

 

「ははぁん? 

 ナルホドナルホド? 

 リンジーが日本のヒーロー様にご迷惑をかけたってことなんだな、俺納得」

((((いや、お前もだからなっっ!!!???))))

 

 ヒーローたちの心は一つとなってヴァーリに心の中でツッコミを入れた。

 

 捉えた砂からは血が滲み出していて、たとえ砂が緩んでいても逃走は難しい、あるいは不可能と知っていたから砂が緩んだのか。

 

 結果は不明だが、あんな風にはなりたくないとどのヒーローたちは思った。

 

 空気を読まない、無邪気に見える彼の目つきがまるで猛禽のごとく鋭いと気づいたしまったヒーローはあの無邪気さが彼の擬態であると解ってしまった。

 

 一瞬だが値踏みをするような視線が向けられるヒーローたちだったが、その意図までは読めなかった。

 

「鏡見て見なさい、あんたのバカもドン引きされているわよ?」

 

 そんな彼ら彼女らの目が物語っていたのを悟ってか、リンジーがヴァーリに冷水をかける。

 

「まっさかぁっ…………え、フォローがヒーローからこねぇんだけど?」

 

 おどけているヴァーリだったが、お通夜ムードの待機所からは何の声もかからなかった。

 

「ちぇっ、なんだよせっかくヴィランを引っ張ってきたってのに。

 俺そんなに滑ってるかなぁ……?」

「滑ってるのよ」

 

 つれないリンジーの一言にヴァーリはうなだれるも意識を切り替えたのか、ヴィランの引き取りをヒーローにするように声をかけた。

 

「おーい、そこの木目調の……シンリンカムイ? 

 こいつら受け取ってくれねぇ? 

 俺たちこれ終わったら観客席でアクトちゃんの雄姿を観戦しねぇといけねぇっていう大事な使命があるんだ」

 

 突然よばれたシンリンカムイは何故自分が呼ばれたのかと疑問を覚えるが、拘束力に定評のある自分の個性のことを知っていたからと思うことにして、ヴァーリの元へと向かって行く。

 

「あ、ああ、すぐいく。

 じゃあ2人とも、俺はこの辺で」

「お疲れ様でーす」

「ああ、いってこいよ、ご指名だぜ」

 

 シンリンカムイはヴィランズを受け取ると、どこかへと連絡し始めた。

 

 恐らくは護送車の呼び出しなのだろう、必要台数を伝えながらヴァーリとリンジーからも状況を聞いていく。

 

 大雑把にしか伝えないヴァーリと事細かに伝えるリンジーの対照的な2人に苦慮しながら、時間が過ぎて行く。

 

 そして警察も呼び出されると予想していたのか、5分と立たずに護送車が複数やってきて、ヴィランズを手際良く拘束し連行して行く。

 

 手慣れた作業姿に、ヴァーリはさすがヴィラン受取り係と呼ばれているだけあるなと内心で皮肉っていた。

 

 護送車が雄英を出たところを確認して、執行官の2人は観客席へと戻って行く。

 

 シンリンカムイは観客席への最短ルートを教えてから巡回へと戻って行った。

 

※ ※ ※

 

 コンクリート製の舞台中央で、アクトは宙を浮いて目の前の状況を眺めていた。

 

 見渡す限り死屍累々(比喩表現)の光景にどうしたものかと呟いた。

 

 原型を保てていないコンクリート製の舞台は余すことなく破壊し尽くされていて、多くの個性が使用された痕跡が残っていた。

 

 舞台に残っている生徒は少ない、殆どの生徒はアクトの時間制限が取り払われた瞬間に舞台から弾き出された。

 

 運が良かったのか悪かったのか、残った生徒は洗礼とも言えなくもないアクトの一撃を耐えた優秀な「戦闘カン」のある優秀な生徒だ。

 

 響香は他チームを盾にしたおかげで耐えていたが、ニ撃目は絶対に耐えられないと分かると回避に専念していた。

 

「死人はゼロだな、いやはや何の罪もない一般人を殺さなくて本当に良かった」

 

「死んでないのが不思議なくらいの天変地異が起きていたんだけどね……」

 

 舞台外から這い上がってきたミッドナイトはコスチュームが破れてはいないもののボロボロでアクトは念入りに吹き飛ばしていた彼女が思いの外早く帰ってきたのに対し、身体能力の高さにわずかばかりだが驚いた。

 

 騎馬戦が始まって直後、アクトはゼロフィールドを展開して回避に専念していた。

 

 幸いアクトを狙ったのは牽制目的の轟だけだったが、視界を氷に塞がれた以外の結果は齎さなかった。

 

 実況をしようにも視界は360度氷で塞がれている為プレゼントマイクの実況に返せるコメントを返すだけというお茶の間の視聴者もどう反応すれば良いのか分からずに見守っていた。

 

 そして時間がやってくると、アクトは轟が放った氷をいとも簡単に破壊しそのまま武器に転じて全方位に散弾銃のごとく放ったのである。

 

 氷塊の大きさにもよるが、大概が自身の体格と同等のものばかりで直撃を避けられたチームは他チームを盾にした響香と空にいた緑谷チームくらいのものだ。

 

 たった一撃、それだけで舞台にいた殆どのチームが場外行きとなり、残ったチームは残り時間を回避に専念しようとしたが2分と持たず全員が失格となる。

 

 結果、1ポイントしか所持していないアクトが結果的に勝者となり本戦を待たずして優勝が決まってしまった形になるのだが、流石に本線も待たず終了というのは雄英側としても待ったがかかり、VTRを確認して最後までアクトの一撃目を耐えられた4チームが本戦決定となった。

 

 とは言え、アクト以外の体力が息も絶え絶えの状態で反骨心と傲慢の塊である爆豪も暴言を吐けるほどの余力もなく、自分の個性をまさか武器になって返ってくると思っていなかった轟は呆然として仰向けの状態でただ大空を眺めているだけだった。

 

 デクは一撃目を運良く空中にいて難を逃れていたが、それ以降はアクトが放った複数の竜巻を避け切れずにバランスを崩し墜落。

 

 命に別状はなかったが、碌な抵抗も出来ず一方的な展開でやられてしまい呆然としてしまっていた。

 

「こ、こいつぁシヴィ──ー!? 

 予選以上にショッキングな映像がお茶の間に流れちまってるよなぁこれぇっ!? 

 おいおいおいおいグッドスピード!? 

 会場が凍りついてるぜっ!? 

 お茶の間も確実に凍りついてるYO、氷河期突入だ!!」

「アメリカ基準にしたのが間違っていたな、これくらいうちの執行官なら一時間くらい余裕なんだがな?」

『スケールがでかすぎるぜアメリカ!! 

 なに、なんなの!? 

 アメリカは人の形をしている戦略兵器を作るのが趣味なんですかぁシビュラシステムはぁっ!?』

「失礼な、シビュラシステムは生涯にわたって利用者の人生をサポートをする『福祉システム』だ」

『物騒なシステムもあったもんだな……いや、使い方次第でこうなったということなんだろうな……』

 

 プレゼントマイクが絶叫しイレイザーヘッドはシビュラシステムがアクトに施した合理的なプランから導き出された効率的な訓練の末に生まれたアクトという存在に改めて静かに戦慄するのだった。

 

 第2種目騎馬戦の結果は蓋を開ければアクトの蹂躙劇となってしまった。

 

 感想文を書くとすれば『グッドスピードがみんなを虐めた、酷いと思った』といったことをメインにしたものにしかならないだろう、酷いものである。

 

 休憩時間は当初予定していた時間を大幅に取るという変更が為され、その間はレクリエーションの時間を取ることになるのだった。

 

「酷いものだな……」

「アンタが言うなっ!?」

「アクト……流石にフォローできないよ……」

 

 ミッドナイトがアクトのぼやきにツッコミを入れ、ようやく立ち上がることができるほど回復した響香が力なく笑うのだった。

 

 

 第2種目終了

 勝者──ー加減アクト、以下4チーム計17人進出

 




読んでいただき、ありがとうございました。

感想、ご指摘よろしくお願いします。
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