グッドスピード!!   作:夢落ち ポカ

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まだ続いています…。


第03話 早速テスト

 

 

 アクトが車の送迎で雄英高校へ向かっている途中、知った後姿を見ると運転手の瞬太に車を止めるように命じた。

 

「おはよう響香、乗っていくか?」

「アクト…あんた、金持ちだったんだ?」

 

 徒歩で通行中だった耳郎は高級車から見える運転手とアクトを見て驚いていたが、アクトとしては面白くない返しだったのか、表情を若干だが曇らせた。

 

「金持ちだの貧乏だの今はどうでもいいことだ。

 どうする?」

「………乗る、乗るよ。

 席詰めて」

 

 耳郎はアクトの誘いに乗った。

 

 アクトと話したいこともあって登校の時間も短縮され、一石二鳥なので断る理由もなかったからだ。

 

 耳郎を乗せると、車はすぐに発進し雄英高校へと向かっていく。

 

「それでは改めて、試験合格、並びに入学おめでとう響香。

 これから3年間、よろしく」

「…よろしくアクト。

 そういえばさ、試験の結果どうだった?」

「当然、1位だ。

 わざわざこの日本の平和の象徴、オールマイトが通知の映像で教えてくれた。

 どうやら今年度から雄英の教師になるらしいな」

 

 アクトは合格通知が届いた時の事を思い返す。

 

『おめでとう加減少年!!

 君は雄英史上最高得点を出して合格した!!』

 

 年齢不詳、個性不明、ヒーロー界に颯爽と現れその実力で不動の人気を得たかれの登場以降、深刻だったヴィラン発生率は年々と低下し、存在そのものが"抑止力"とされ名実共に"平和の象徴"となった男。

 

 国民栄誉章も断った彼が今年度から雄英高校の講師になると知れば、マスメディアが騒がない筈がない。

 

 騒々しい高校生活1年目を迎えることは間違いないだろう。

 

 守秘義務ではなく『お願い』をされたアクトや他の入学者たちは、当然口を噤み、NO.1ヒーローの授業を楽しみにしている者が殆どだろう。

 

「驚いたよね、あのオールマイトが教師になるなんてさ。

 …って、アクトってちょっと前まで海外にいたんだっけ?

 海外のオールマイトの評価ってどうなの?」

「素晴らしい人物と高い評価を受けている。

 彼がいるだけでヴィラン発生率が低下したという一種の社会現象は他国でも何とか模倣出来ないかとよく研究されていたな」

 

 アクトとしては留学先(アメリカ)相棒(サイドキック)をしていた頃に度々聞かれていたのでうんざりするほど話していたのでその手の話は食中り気味だった。

 

 アクトとしては次代の平和の象徴がオールマイトの背負っていた重圧を乗り越え、評価を更に高める事が出来れば今後のヒーロー社会の秩序は更に磐石になるだろうと考えてはいるが、そう都合よく行かないのが世の中というものだという事をアクトは嫌というほど知っている。

 

 アメリカは個人よりもシステムによって管理することで平和を―――シビュラシステムを生み出した。

 

 アクトは耳郎と話を咲かせながら、雄英高校へと向かっていくのだった。

 

 

 ***

 

 

 アクトと耳郎の所属クラスは1年A組、異様に高さのある扉を開くと、そこには既に殆どの生徒、これから苦楽を共にする同級生たちが揃っていた。

 

「…ふん、響香とはすぐ側の席か、よくよく縁があるみたいだな」

「ウチ、何か悪いことしたかな…?」

「ほう、どういう意味だ響香?」

「いやなんでも?」

「ようよう、何だよ一緒に登校とか、仲良しか!?

 あ、俺は上鳴電気ってんだ、よろしくな!!」

 

 お調子者の気の匂う生徒がアクトたちに声を掛けてきた。

 

 席順としてはアクトの後ろの席だ、耳郎は『こいつバカそう』といった表情を隠さずに見ていたが、アクトとしてはこういった明るい人間が嫌いではなかった。

 

 髪形や飾っているベルトを見る限り、流行にも目敏い視野を持っていると見て取ったアクトは、好意的なあいさつを交わした。

 

「クハハ、俺は加減アクトという。

 よろしく電気、こちらは耳郎響香だ」

「……よろしく」

「―――あっ、加減君!!

 やっぱり君も受かってたんだね!!」

 

 上鳴と挨拶をし終えたところで、新たなクラスメイトが入ってきた。

 

 ―――緑谷出久、アクトが実技試験演習のプレゼンを聞いていた時、そばに座っていた縮毛とそばかすが特徴的な少年だ。

 

 隣りにいる明るい髪の少女は、麗日お茶子(うららかおちゃこ)と名乗った。

 

「クハハハハッ!!

 無論だ、これからよろしく出久、それにお茶子。

 俺は加減アクトという、最近まで海外にいたからあまり日本のヒーロー事情にあまり詳しくない。

 色々教えてくれると助かる」

「よ、よろしくね加減君!!」

「―――お友達ごっこしたいなら他所(よそ)にいけ」

 

 アクトたちが和やかに挨拶を交わしていると、背後から声をかけられた。

 

 声のした方向へ視線を向けると、そこには寝袋を着た男が横たわっている。

 

 芋虫が直立したかのようにふらふらと起き上がった男は無造作に伸ばした髪と無精ひげとくたびれた容姿をした痩身の男だ。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。

 時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

「そういう貴様は社会性に欠けているな、本当にヒーローか?」

 

 挑発するような発言をしたアクトだったがそれを無視したくたびれた男―――1年A組担任、相澤消太(あいざわしょうた)と名乗ると、先ほどまで入っていた寝袋から体操着を取り出した。

 

「……早速だが、体操着(コレ)着てグラウンドに出ろ」

 

 ―――個性把握テスト、入学式をすっ飛ばし、早速授業を開始する担任に驚愕するクラスメイトたちはだったが、自由な校風が売り文句の雄英において、講師側もまた自由とのたまう相澤に閉口したのだった。

 

 

 ***

 

 

 日本では未だ、個性を禁止した体力テストを行っていた。

 

 個性を使わず、画一的な記録をとって平均を作り続けるのは現在の社会構造からして合理的でない。

 

 相澤からすれば、文部科学省の怠慢だと切り捨てた。

 

 体操着に着替えた1年A組全員はグラウンドに出ると相澤から全8種のテストに対して、

 

 個性を使うことで自分の最大限を知ることが最初の授業だと伝える。

 

 それが、ヒーローの素地を形成する合理的手段なのだと。

 

 わかりやすい一例として、爆豪と呼ばれた少年がソフトボール投げを実演する事となり、その一投をクラスメイトたちが遠目から眺めている。

 

 爆豪の中学時代のソフトボール投げの記録は67メートル。

 

 もちろんこれは個性を使用せず記録だ。

 

 相澤は爆豪に個性を使って投げるよう伝えると、爆豪は軽くストレッチをしながら円の中に入った。

 

 ストレッチを終え、爆豪が振りかぶると、タイミングよく、球威に爆風を乗せた一投を放つ。

 

「―――死ねえ!!」

『『『……………死ね?』』』

 

 爆豪の掛け声に内心で疑問符を浮かべたクラスメイトたちが多くいたが、そんな内心をよそに爆風を乗せた一投はボールを天高く飛んでいき、相澤の持つ計器に記録した結果が伝わってくる。

 

 計器には『705.2m』と記載されており、個性を使用しての体力テストに胸を弾ませた何人かは興奮した。

 

 個性を禁止されてしていた体力テストよりも、はるかに楽しそうだと感じたのだ。

 

「なんだこれ!!

 すげー面白そう!」

「705メートルってマジかよ」

「個性思いっきり使えるんだ、さすがヒーロー科!!」

「クハハ、中々の記録だな」

「……面白そう…か。

 ヒーローになる為の3年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」

 

 ―――よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう。

 

『『『はあああ!?』』』

 

 相澤のこの発言によって、クラスメイトたちは今日何度目かの驚愕の声を上げる。

 

 アクトは冷ややかな目で相澤を見ているが、別段反感を抱いた訳ではない。

 

 見込みがないのなら、早々に退場した方が将来の為だと常々思っていることだからだ。

 

 ヒーロー向きな個性であろうと、本人がヒーロー希望であろうと、それがいざ仕事になってヒーロー活動に活かせるかは本人の能力次第。

 

「生徒の如何は先生の自由。

 ―――ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 入学初日、アクト達に最初の試練が立ち塞がる。

 

 入学初日にして最下位除籍、理不尽すぎる担任相澤の言葉にクラスメイト達は声を荒げた。

 

「自然災害…大事故…身勝手なヴィランたち…いつどこから来るか分からない厄災。

 日本は理不尽にまみれている、そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー」

 

 厳しい言葉を投げかける相澤に、声を荒げたクラスメイトたちは段々と鳴りを潜めていく。

 

 アクトも相澤の言葉に耳を傾けていた。

 

 アクトにとっては今更な言葉ではあるが、生徒たちは相澤の厳しいに戸惑いながらも耳を傾けてる。

 

「放課後マックで談笑したかったらお生憎様、これから3年間雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける」

 

 ―――”Plus(更に)Ultra(向こうへ)さ、全力で乗り越えて来い”

 

 相澤の挑発と激励の言葉に、一人、また一人と闘志を燃やしていく。

 

 そして、第1種目が始まった。

 

 第1種目、50メートル走にて。

 

 アクトは上鳴とペアだった。

 

 既に足にトルクを付けた第一印象が真面目と見られるだろう眼鏡の少年は3秒04という記録を出している。

 

 速度に重きを置いた個性なのだろうとアクトは推察し、個性を使い準備を始める。

 

「上鳴、ベストを尽くせよ?」

「おおっ、もちろん頑張るぜ!!」

 

 お互い声掛けをして、トラックで構えているところで、号砲が鳴る。

 

 そして、鳴ったと同時にアクトは駆け出す。

 

 上鳴をあっという間に後ろに置き去りにし、ゴールラインへ到達したと同時に、記録用の機械がタイムを打ち出す。

 

 ―――0.54秒。

 

 先程の眼鏡の少年の3秒よりも速いタイムだとクラスメイト達は理解していた。

 

 何しろ瞬きした瞬間(・・・・・・)にはアクトはゴールラインへ到達していたのだから。

 

「はやぁっ!?」

「え、あれっ、もうゴール着いてる!?」

「飯田より早い!?」

「韋駄天の化身か?」

「…む、0.1秒遅くなっているな。

 柔軟が足りなかったか」

「眼帯少年、少しいいかい!?」

 

 口々に驚きの言葉を口にしているクラスメイトたちをよそに、アクトはタイムを見て嘆息していると、眼鏡の少年がやってきた。

 

「ぼ…俺より早いクラスメイトがいるとはね…飯田天哉(いいだてんや)だ。

 君は強化系の個性なのかい?」

「クハハ、そんなところだ。

 こと速さにおいて、俺の個性は世界トップクラスと自信を持てるほどに速いぞ?

 …それと、俺の名は加減アクトという、よろしく天哉」

 

 アクトは軽い自己紹介すると、飯田はいきなり自分の名前を呼んだ理由が海外暮らしに起因しているのだと理解した。

 

「せ、世界か…それは凄いな、俺ももっと努力しないと。

 …フォームを調整すれば更に速くなるだろうな」

 

 飯田はアクトが走っていた時の瞬間は見えていなかったようだが、タイムが伸びなかった理由の1つを指摘してきた。

 

「そうか、引越しでバタバタしていてな、あまり個性の鍛錬時間が取れなかったんだ、指摘に感謝を。

 それと天哉のフォームは良かったぞ、理想的なフォームで殆ど無駄がなかった。

 それじゃあ天哉、また後でな」

「君もな加減くん!!

 お互い全力を尽くそう!!」

 

 手をカクカクと動かしているのは癖なのか、アクトからすれば不思議な踊りをしている飯田を背後に残して、次の種目の場へと向かっていく。

 

 その後もアクトの快進撃は続いていく。

 

 握力テストは個性を瞬間的に使って『198kg』、ソフトボール投げは爆豪よりも上の『2258.6m』と4桁台を叩きだす。

 

 他のテストもトップクラスかそのテストの相性の良い個性を持ったクラスメイトに後塵を拝すことになったがそれでもトップクラス。

 

 必然、その記録を眺めていたクラスメイトたちからはアクトが汎用性の高い、特に速さに特化した個性なのだと理解していく。

 

 そしてある程度終えて一休みしていると、思い詰めた顔をしていた出久がソフトボール投げのテストを受ける為円の中に入っていく。

 

 それを見ていた爆豪がアクトを険しい目で睨んでいたが、アクトはあえて放置した。

 

 アメリカでも似た経験をしてきていたアクトは、爆豪に苦々しさと嫉妬と対抗心を煮詰めた感情を向けられるのはシビュラシステムが擁するアカデミーにおいて日常茶飯事だったからだ。

 

 右目は警告音(・・・)を鳴らしているが、ここはアメリカではないと切り捨てる。

 

「緑谷くんはこのままだとマズイぞ…?」

「ったりめーだ、無個性のザコだぞ!」

「無個性!?

 彼が入試時に何をしたか知らんのか!?」

「は?」

 

 飯田と爆豪の会話が聞こえてきて、アクトは興味をそそられ会話の中に入っていった。

 

「興味深い話をして入るな2人とも?

 出久が無個性だと?」

 

 この雄英高校は偏差値の高さもあるだろうが、クラスメイト各々の個性も全体的に質の良いものばかりだ。

 

 磨けば光る原石たち、これが彼らに今最も相応しい呼び方といえる。

 

 そんな中、出久が出している記録はどれも個性を使っているようには見えないものばかりで、アクトとしても不思議には思っていたのだ。

 

 この程度の記録で入試を突破出来たのかと。

 

「てめえは眼帯野郎か…。

 あいつの父親は火を吹く個性で、母親は物を引き寄せる個性だ、ありえねぇ!!」

「ほう、確かに出久がそのどちらの個性を使用していないところを見ると無個性と疑うのかもしれないが…あの入試を無個性が突破出来るとは思えんな」

「だが、緑谷くんは入試時にあの巨大仮想ヴィランを破壊するほどの強力な個性を持っている、個性を持っているのは違いないぞ?」

 

 飯田は出久が入試時同じ試験演習場にいた麗日を助けるために巨大仮想ヴィランに立ち向かっていき、右腕を負傷するものの破壊していたことを説明した。

 

「クハハ、俺以外にあのデカブツをガラクタに出来た奴が出久とはな、俄然興味が湧いてきた」

 

 両親の個性のどちらかを引き継ぐ、もしくは両親の個性を併せ持った個性が発現するならともかく、そのどちらでもない、強化系の個性となると隔世遺伝、それとも突然変異なのか。

 

 アクトの出久への興味は尽きない、右目を使って解析(・・)したいと思うくらいに、アクトは出久に興味を持った。

 

 出久がソフトボールを持って第一投目を始めようとするのを、アクトはじっと眺めていた。

 

 すると、出久の右腕が段々赤みを持っていくのが見え、アクトは出久が個性を発動したこと、

 

 出久は確かに個性を持っているのを右目(・・)で確認した。

 

 だが、個性を発動したはずの出久の記録は僅か『46m』という冴えない結果だった。

 

「…個性の強制キャンセルか、珍しい個性を持っているなあの担任は」

 

 アクトはすぐにその原因(相澤)を見つめていた。

 

 アクトのいた海外でもそうした個性を持ったヒーローは少なからずいて、制限時間はあるものの発動型の個性と相性の良いこの個性はアクトにとっても天敵だった。

 

 異形型の個性持ちであれば相澤もただの無個性と変わらないだろうが、そのあたりは首に巻いた布で対策済みだろう、アクトはそう分析する。

 

「…まあ、2年前ならともかく、今なら既に無効化対策も出来ている、問題はないか」

 

 遠くでは相澤が出久に何か伝えている、おそらくは出久への助言か除籍勧告か、そのどちらかだろう。

 

 相澤のことを『抹消ヒーローイレイザー・ヘッド』の話で盛り上がっていたが、ふとアクトはある視線に気付く。

 

 ちらりと視線を感じた方向に目をやると、そこには画風の違う、アルカイックスマイルを浮かべたNo.1ヒーロー、オールマイトがアクトたちの個性把握テストを隠れて覗いていた。

 

「…何をしているのだあのNo.1ヒーロー(オールマイト)は?」

 

 隠れる気があるのか隠行のなっていない、ただ壁の影に隠れているだけのオールマイトにアクトは呆れたが、出久の二投目が始まろうとしていたので捨て置いた。

 

 表情は冴えず、考え込みながらブツブツと呟いていている出久が何をするのかじっと見つめていたアクトは出久の荒業(・・)に思わず笑ってしまった

 

「クハハハハ!!

 最小限の負傷で最大限の結果(パフォーマンス)か、面白いな出久は!!」

 

 アクトは見た、出久が個性を発動したのは腕ではなく『指』であるということ。

 

 ソフトボールは距離を伸ばしていき、爆豪と同等の『705m』と言う記録を叩き出した。

 

 代償に人差し指が赤黒く変色し、涙を浮かべた出久がぎゅっと怪我のした右拳を握り、相澤に向き直った。

 

「まだ……動けます」

「やっとヒーローらしい記録出したよー」

「指が腫れ上がっているぞ、入試の件といい…おかしな個性だ…」

「スマートじゃないね」

「面白いが…まるで生まれたての子供のようなちぐはぐさのある個性だな」

 

 発動型の個性持ちは個性が発現する4歳児からその個性を使いこなす為に感覚的にコントロールしていくことが多い。

 

 出久と同じく発動型の個性持ちであるアクトも個性が発現してから個性のコントロールと研究を欠かさず行い、今では繊細な制御も可能としていた。

 

 出久の個性はアクトの言ったとおりまるで生まれたての子供同様、個性に振り回された結果のように見えた。

 

 とはいえ、じっくりと考察する時間はない。

 

 その後もアクトたちのテストは続いていく。

 

 最後の持久走はポニーテールの少女、八百万(やおよろず)(もも)との一騎打ちとなった。

 

 彼女の個性『創造』という特殊な個性を持った彼女は自転車を創り出してアクトと対抗するが、一向にバテないアクトに時間も差し迫ってきていたのか、お互い100周で終わった。

 

 出久は持久走開始前に爆豪に迫られたり、ソフトボール投げの際に負傷した痛みが起因してかその他の記録を伸ばせずに終了していた。

 

 トータル最下位が除籍という相澤の言葉に怯えているのか、震えている出久にアクトが声を掛ける。

 

「心配するな出久、心配する必要はない」

「…え、加減くん?」

「まぁ見ているがいい」

 

 そして、最初の試練を全てのクラスメイトが終え、結果はすぐに相澤の持った機械で表示される。

 

 1位は僅差でアクト、2位が八百万、そして最下位は出久。

 

 この瞬間、出久の除籍は決まったと思われた瞬間、相澤は口を開いた。

 

「―――ちなみに、除籍はウソな」

『『『『『!?』』』』』

「―――君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

『『『『は―――――――!!!??』』』』

 

 相澤の鼻につく言い方が気に入らなかったアクトだが、差し迫ってアクトに害意のない事なので放っておいた。

 

 相澤は最初の授業を終了すると、出久に保健室利用書を渡して去っていく。

 

「あんなのウソに決まっているじゃない…ちょっと考えればわかりますわ」

 

 八百万が声を上げていたクラスメイトたちに呆れていたが、アクトはそうでもないと口を挟んだ。

 

「最下位を除籍するのがウソとは言ったが、それ以外を退学にするとは言っていないからな。

 出久が除籍にならなかったのは、相澤の目に留まったからに過ぎん」

 

 相澤は嘘はついていない、ただ言っていない事があっただけだとアクトは感じ取っていた。

 

 見込みのない生徒は早い内から切り捨てておく。

 

 それが本人の為にもなるし、無謀な夢を見ないで済む。

 

 相澤の隠れた意図を好意的に読めばこの辺りなのだろうが、合理不合理を基準とする彼を思い出して、アクトは深読みをしすぎたと思考を切り捨てた。

 

「ケロケロ…加減ちゃんはいろいろ考えているのね」

「…蛙吹(あすい)か」

「梅雨ちゃんと呼んで?」

 

 大きな瞳をした、堂の入った落ち着きを見せた少女は蛙吹梅雨(あすいつゆ)という。

 

 個性『蛙』、"蛙っぽい”ことは大体可能という異形系に寄った個性を持つ少女だ。

 

 今回のテストでは順位を14位と中間より下の位置に座してはいるが、アクトとしてはその年に見合わない落ち着いた態度の彼女に一目置いていた。

 

「即時即断即決が求められる現場だろうが、ここでは熟慮する時間が多くある、やはり日本は平和だな…」

「加減ちゃんのいたアメリカは治安が悪かったのかしら?」

 

 現在では半鎖国状態であるアメリカの内情はほとんど入ってきていないからか、彼女の好奇心かアクトに尋ねた。

 

「そうだな、治安はいい方だが日本と比べると悪い。

 凶悪犯罪を起こすヴィランの数は日本と比べるとアメリカは多いからな。

 あす…梅雨ちゃんもアメリカに行く時は気を付けろ、俺は旅行先にはお勧めしないな。

 そもそも入国できんだろうが」

「行く気はないわ、興味があっただけよ」

 

 こうして、益体のない話をしながら、アクトは着替えに向かうため巧者へと向かっていく。

 

 下校の途中、何故か耳郎が当たり前のように送迎の車に乗ってきたのが不思議だったが、アクトの入学1日目が終了した。

 

 




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