グッドスピード!!   作:夢落ち ポカ

6 / 20
お待たせしました、本日2話目です。
轟くんとの戦闘ですね。

タグにある通り、主人公最強と打っているので圧倒的で呆気無く終わらせますよ。
にしても、ハーメルンの機能って初めて使うのですが難しいですね…取説とにらめっこしまくりです。


第05話 戦闘訓練《下》

 轟は訓練開始と同時に障子を後ろに下がらせ、ビル全体を凍結させた。

 

 仲間を巻き込まず、核にもダメージを与えず、動かすことを封じ、そしてヴィランも弱体化する。

 

 そして、核とヴィラン組3人をその場に固定させ、訓練は拘束代りのテープを貼って終了―――という形で終わるはず(・・)だった。

 

「…む、轟、足音が聞こえてくる…2人だな、このビルは階段が2か所から上がり降りできるから、どちらかが1対2になる。

 どうする?」

 

 障子目蔵の個性は複製腕。

 

 触手の先端に自身の体を複製することが出来る。

 

 これを使って彼は周囲の状況をかなりの精度で把握していた。

 

「…どういうことだ?

 こんだけの威力だ、足が凍って動けなくなるのが普通だ。

 動けたとしても…足の皮剥がれて満足に戦えねえはずだ」

 

 G組の3人は轟の予想を大きく外れて動いていた。

 

 障子に再度確認を取るが、走っている2人の歩調は引き摺るような様子もなく、片側の階段で待ち伏せしているようだと返ってくる。

 

 最後の1人は最上階で防衛を担当しているのか、一歩も動かずに佇んでいると追加の情報が返ってきて、轟は障子に2人の足止めを頼むと、階段を駆けていく。

 

「と、轟!!

 独断専行はさっき講評で…!?」

 

 障子の呼び止めも聞かず、轟は周囲を見渡し駆けていった。

 

 ビルは確かに凍っている、それは間違いない。

 

 ビルは外から見て5F、上の階へ行くには二つの階段があり、その一方に2人待ち伏せをしている可能性がある。

 

 たったこれだけの情報しかもっていないというのに、轟は動こうとしていた。

 

 モニタールームにいるオールマイトは眉間をぐっと寄せ、ペンを動かしている。

 

 どう評価したのかは、傍から見ているクラスメイトから見ても一目瞭然だった。

 

 そんなことも露知らず、轟は階段を駆け上がっていく。

 

 3階まで駆け上がるが待ち伏せの2人はおらず、轟は敵対するのは1人だけだと気付くが、誰が相手なのかはなんとなくだが察していた。

 

 ―――加減アクト、入試試験を圧倒的速度で蹂躙し、個性把握テストでは圧倒的有利だった八百万を僅差だが超えた英才だ。

 

 ―――否、英才では収まらない才気に、轟はどこか彼との戦いが厳しいものになると感じていた。

 

 彼の個性は増強系の一種の加速に属している、いわば高速での近接戦に特化した戦闘スタイルだ。

 

 故に、轟の対策はアクトを如何に近付けずに拘束するかにかかっていた。

 

 相性で考えてみれば、轟の方が遠距離から攻撃できるから有利だ。

 

 遠距離から攻撃しながら拘束の機会を窺い、接近してきても氷壁を展開して防げばいいと考えていた。

 

 そして、最上階の5Fへ到達した時、ようやく轟はお目当ての核を見つけた。

 

 核は確かに凍り付いており、動かすことは至難の業だ、ヴィラン側の勝利条件が難しくなったことを意味していた。

 

 だが、その手前―――轟はありえないものを見るような目でそれ(・・)を見た。

 

「加減…それ(・・)はいったいなんだ?」

 

 轟の前に現れたアクトは特に何かをしている様子もない、ただ立っているだけに轟には見えた。

 

 しかし、アクトの周りには異常(・・)が起きていた。

 

 アクトを中心にして、半径2メートルの円が出来ており、その内部には周囲のような凍結は起こっておらず、必然アクトの足は轟の個性は届いていなかったのである。

 

「クハハハハ!!

 轟よ、今は実践試合の最中だ、お前はヒーロー側、そして俺はヴィラン側だぞ?

 ―――答える訳がないだろう、お前の氷を無効化(・・・)した謎はこの試合が終わるまでに解き、そして乗り越えてみろ。

 もっとも、謎を解いたとして、乗り越えられるはずもないがな!!」

「…後悔するなよ!」

 

 傲慢にも聞こえるアクトの挑発は轟の癪に障ったのか、右足から放たれる氷の第二撃がアクトを襲う。

 

 無防備にも、アクトは懐から取り出したタバコ(・・・)を暢気に吸い始めた。

 

 喫煙の年齢制限は現在では15歳まで引き下げられていて、アクトは喫煙可能な年齢に達している。

 

 だが、戦闘中にも拘らず、こうしてタバコを吸っているのは、攻撃をしている轟でも分かった。

 

 アクトは轟に『お前程度タバコを吸っていても楽勝だ』と暗に挑発しているのである。

 

「…ああ、タバコに見えるかもしれないが、これは違うからな?

 アメリカにいた友人の1人が持っていた創造系個性、薬物生成(メディスンバースデイ)から作った『無害なタバコ』だ。

 ちなみに、味はサイダー味だな」

「聞いてねぇ!!」

『か、加減くぅん!?

 無害なタバコ(それ)、ちゃんと税関通っているかい!?

 それに、学校にも届けているのかな!?

 危ないクスリじゃないよね!?』

 

 オールマイトがモニタールームから慌てた声でアクトに声をかけたが、アクトは上機嫌で答えた。

 

「無論だともオールマイト、税関にも血液検査も全て空港で済ませて異常なしと判断されているし、根津校長や誰もかもがこの精神安定剤(・・・・・)を絶賛していたぞ?

 量が限られるから俺も節約して吸っている。

 オールマイトも吸ってみるか?

 特別に1箱プレゼントだ、決して賄賂ではないから評価は普通にしてくれていい。

 無論俺の評価は賄賂など送らんでも最高だろうがな!!」

『え?

 ちょ、いま君精神安定剤って!?』

「おおおおおおおぉっ!!」

 

 轟は先程の倍の氷をアクトに叩きつけるが、あの円の中を突破する事は出来ない。

 

 一瞬、自分の左腕を見て『もう一つの個性』を使用しようと考えたが、即座に否定する。

 

 自らの誓い―――左の個性を使わずNo.1ヒーローにることで父に復讐する、という目的を入学して2日目で投げ捨てることは出来ない。

 

 そんな思いを知らず、アクトは涼しい顔をして轟の攻撃を無効化、あるいは防いでいた。

 

 アクトの個性が自分が、おそらくは誰もが予測していなかった個性でなかったことに驚きもあるが、それでも轟に敗北することは出来ない。

 

「…なんだ、まだ謎解きも終えず、無駄に個性を使用していたのか?

 そろそろ終わらせるぞ轟よ、お前はやる方だと思っていたが、これ以上は無駄だ。

 お前を制圧した後、響香たちの支援に行かなければならん」

「てめぇっ!!」

 

 轟が声を震わせながら、全力で部屋を覆いつくさんと氷をぶつけるが、その先にアクトはいなかった。

 

「…まったく、もう一つの個性も使っていれば謎解きのヒントになっただろうに、馬鹿な奴だ」

「うしっ―――ガハッ!?」

 

 突然轟の背後に現れたアクトに隙を突かれた轟は不意の一撃を受けて倒れてしまう。

 

 致命的な一撃ではないが、手刀の一撃は見事に轟の意識を刈り取った。

 

『ヒーロー轟、戦闘不能!!』

 

 オールマイトの宣言がビル内に響き渡る、アクトは懐からテープを倒れた轟にぺたりと貼り付けた。

 

 強力な個性ではあるが攻撃が大味だったこと、実力の内半分を使ってこなかったこと、認識不足―――どれもアクトを圧倒するには足りなかっただけの話であるとアクトは吸い終えたタバコをポケット灰皿にきちんと捨てる。

 

「さて、轟も倒したことだし、響香たちの援護に行くとするか。

 状況を聞ければいいが…響香、電気、状況を教えろ。

 放送を聴いたとは思うが、轟は倒したから人質として―――」

『ヒーロー障子戦闘不能!!

 ヴィランチームWIN!!』

 

 再度オールマイトの宣言が放送されて、アクトは2人が障子を倒したのだと気付き、随分と早い決着だと思った。

 

『…あー、アクト?

 何とかこっちも勝てたよ!!』

『うぇーい、うぇい!!』

 

 耳郎と上鳴の声に2人とも無事だったのかと声を掛けたいアクトだったが、その前に一つ、耳郎に聞くことがあった。

 

「…響香よ、何やら電気がうぇいうぇい言っているのだが、心当たりはあるか?」

『あー、奇襲に失敗して埒が明かないから、上鳴の奴を人間スタンガンにして…』

 

 2対1という不利な状況から、防戦して轟の来援を待っていた障子に痺れを切らして、耳郎が上鳴を文字通りの人間スタンガンにして障子に投げ付けたらしい。

 

 放電しながら急接近したこともあり、障子もとっさの判断に迷っている内に上鳴と接触、最大出力で放電された彼はあえなく戦闘不能にされたのだった。

 

 その代償に、個性の過剰使用で脳に負担がかかった上鳴は『うぇいうぇい』としばらくの間著しくアホになっているらしい。

 

「…まぁ、いいとしよう。

 とっさの機転はさすがだな、後で電気も労ってやるといい」

『さぁ、講評の時間だ、モニタールームに全員集合だぞ!!』

 

 オールマイトの放送でアクトは耳郎と上鳴と障子を連れてくるように伝えて、轟を担いだ。

 

 第2試合、圧倒的有利だった轟たちチームを下した加減たちはモニタールームへ凱旋するのだった。

 

 

 ***

 

 

「―――今戦のベストは加減少年だ!!

 わかる人!!?」

 

 オールマイトの声に、クラスメイトたちが口々にアクトの活躍した点を上げていく。

 

「作戦がすごかった!!」

「いや、それいうならその前の地形の把握とかじゃない?」

「轟の初撃を予測して防いだのもすごかった」

 

 逸早く周囲の状況の把握、分析した情報を元に勝率の高い作戦を立案する能力、対象を素早く無効化した制圧力、無効化した対象を人質にするという設定にも順応した対応力。

 

 圧倒的な個性を見せつけながらも、絶賛されるアクトはさも当然とばかりに腕を組んでいた。

 

「う、うむ、どれも正解だ!!

 さすがは加減少年だな!!

 アメリカで最年少サイドキックとして活躍していただけある!!

 お父上譲りの迅速な対処は素晴らしい!!」

「「「「「えーーーーーーー!?」」」」」

「オールマイト、あまり俺の血生臭い経歴を暴露しない方がいい。

 今のこいつらには刺激が強すぎる」

 

 驚愕の事実に声を上げたクラスメイトたちに反して、当の本人は冷めた目でオールマイトを軽く睨み付けた。

 

 別段隠していた訳ではない、聞かれたら答えられる範囲で答える気でいたアクトであったが、こうした場で暴露されたら嫌でも注目の度合いは高まってしまうだろう。

 

 特に血生臭い経歴―――アメリカでの濃い半年間は平和(・・)な日本とは比べられないほどに殺伐とした思い出ばかりだった。

 

「っていうかさ、加減の個性って自己強化系の加速とかじゃなかったのか?

 轟の個性を防いだ個性とは相性悪いし、そもそも防げねえと思うんだけど?」

「なんていうか、見えない丸い壁みたいな感じだったよね?」

「加減の個性って実際どんなのなんだ?」

「俺の個性は『加減速自在(ラディカルモデラータ)』という。

 物理法則における『加速・減速』を意のままに操る能力でな、轟の個性を防いだのは俺のもう一つの個性、減速による停止結界…ゼロフィールドという。

 自己強化系の個性ではない。

 ちなみに、ゼロフィールドの突破方法は単純に力押しだ。

 オールマイトほどの超パワーであれば突破出来るだろう。

 まぁ、易々と突破させる気はないがな!!」

 

 基本秘密主義に徹しているアクトであるが、アメリカでサイドキックをしていた頃にある程度の情報は知られてしまっている為、情報の開示についてある一定までは比較的寛容だった。

 

 轟の個性を防いだ減速によるゼロフィールド、運動エネルギー熱エネルギー、その他諸々のエネルギーをどんな形であれゼロ―――停止させる。

 

 摂氏10000度であろうと、マイナス100度だろうとゼロフィールドに触れれば0、つまり停止してしまうまで減速させる強力な防御手段となる。

 

 異形型、発動型、そしてオールマイトもおそらく属している強化型の個性もよほど強力な、それこそオールマイト級の超パワーの個性の持ち主でなければ、停止結界を突破する前に停止してしまうだろう。

 

「…才能マンだ、才能マン」

 

 ようやく電気がまともに口を利けるようになったのか、アクトの個性を知ってうわ言の様に呟いていた。

 

「相手への攻撃に加速系の個性、防御に減速系の個性…という事ですか?

 応用の幅がありますね」

「なんか轟君と似たような…個性の発現っぷりだね?」

 

 クラスメイト達の声に、アクトは特に気にした様子もなくその疑問に答えた。

 

「それはそうだろう、何せ俺の個性はそこの轟の親のした方法をそっくり真似てそういう風に望まれて生まれてきたからな。

 当時の週刊誌だと轟の所より酷くバッシングされていたぞ」

 

 アクトの両親は轟の父―――No.2エンデヴァーがしたとされていた個性婚をして、意図的にアクトが轟の様な個性のデメリットを補い合う個性を持つ子供を望んでいたと週刊誌に報じられていた。

 

 加えてアクトの両親はこの個性婚は契約婚として、アクトのような子供を何人も生もうと何やら非合法な技術にも手を出していたと噂されていた。

 

 既にこの2人は他界していて真実は闇の中だが、アクトとしては死んだ人間にあれこれ思うところは特にない。

 

「まぁ、個性なんて所詮は身体機能の一部でしかない。

 使おうが使うまいが当人の自由だ、ヒーローをする以上使える手段はいくらあってもいいがな」

 

 轟がアクトを凄まじい目で睨んでいるのに気付いていながら、あえてその話題を振ったアクトは素知らぬ顔で流していた。

 

 そして順々に試合が流れていく。

 

 それぞれの個性を自分なりに工夫している戦いが見れてアクトとしても最終的に満足のいく結果となった。

 

 それと同時に、現状アクトに匹敵する戦闘力を持っている者がいない事も浮き彫りとなる結果にも繋がったのだが、それも仕方がないといえた。

 

 片や両親が死んで以降アメリカで自己研鑽と個性研究に情熱を傾け、アメリカ最年少でサイドキック(プロ)となったアクトと、ぬくぬくと平和な日本のぬるま湯に浸かってきたクラスメイトたちでは生まれや辿った軌跡、覚悟が違った。

 

 何より、誰よりも自分の立ち位置を自覚しスタートしたアクトと彼らでは既にかなりの開きが出来ている。

 

 実力差などあって当然といえた。

 

「お疲れさん!!

 緑谷少年以外は大きな怪我もなし!

 しかし真摯に取り組んだ!!

 初めての訓練にしちゃみんな上出来だったぜ!」

 

 1日目の相澤の後の授業とあって全うに感じられたクラスメイトたちは拍子抜けしていたが、真っ当な授業を行うのも教師の自由とのたまうオールマイトはデクに講評を聞かせるために超パワーを駆使して走り去っていく。

 

 オールマイトはちらりとある少年に目を向けていた。

 

 爆豪勝己、初戦で見せた自尊心の塊の彼は授業終了までただ黙ったままであった。

 

 膨れ切った心ほど脆いもの、オールマイトは教師として機会を作り、彼としっかりとしたカウンセリングをせねばと奮起する。

 

 加減アクト、アメリカどころか世界で知らぬ者はいないといわれるほどの新進気鋭のヒーロー。

 

 噂される残虐な姿勢など見られず、真摯に、誠実で、だが傲慢さも見える発言がありながらも根っこは善良だと思いながら、この場から早く去るのだった。

 

 まるで、何かに気付かれては拙いといわんばかりの走りっぷりにアクトはいぶかしんだが、さほど興味を抱かず着替えるため更衣室へと向かっていく。

 

「なぁ加減!!

 学校終わったら飯行かね?

 何好きなんだ?」

「俺ぁ切島鋭児郎、今みんなで飯先で訓練の反省会しようって話してたんだ!」

「私芦戸三奈、凄かったね試合!!」

「騒々しい…」

「ほう、向上心があっていいことだな。

 …今日は特に予定はない、よければ一緒に行くとしようか。

 響香、一緒に行くか?」

「ウチも行こうかな、反省会したかったし」

 

 次第に放課後ファミレスで訓練の反省会をするメンバーが決まっていく中、爆豪に轟は更衣室へと向かっていく。

 

「爆豪に轟、お前たちもよければ来るか?

 楽しいかはともかく、有意義に時間を過ごすならこういう機会も必要だぞ?

 多角的な視点はヒーローには必要だからな」

「…いや、俺はいい」

「………」

 

 遠慮がちに轟は行かないと答え、爆豪も無言でアクトの呼びかけにも答えず行ってしまった。

 

 余程堪えたのか、アクトとしては知る由もないが、彼等にも考える必要があると思い、それ以上誘いはしなかった。

 

 そして放課後になり、デクが保健室から帰ってきたところで切島たちが放課後の反省会に誘ったが、デクは爆豪に用があったのか追いかけていった。

 

 関係が良好でない2人でもやはり幼馴染ということなのか、爆豪を追いかけたデクに興味を抱きながらも、アクトは執事の雷銅に電話を掛けた。

 

『はい、どうされましたアクトさん?』

 

 アクトのスマホから落ち着いた青年の声が聞こえてきた。

 

「雷銅か?

 今日はクラスメイトと夕食をするから迎えはそこに来てくれ」

『畏まりました、お気をつけていってらっしゃいませ』

 

 短い間ではあったが、すぐに電話が終わると切島が不思議そうにアクトへ声をかける。

 

「なぁ加減、雷銅さんって?」

「俺の家の執事だ」

「「「しつじぃっ!?」」」

 

 アクトの発言に驚くクラスメイトたちをよそに、アクトは耳郎と共に教室を出て行く。

 

 遠くからオールマイトがどこかへ猛スピードで駆けていくのを見たが、それを呼び止める者はいなかった。

 

 

 ***

 

 

 アクトたちは反省会に使うファミレスに耳郎、上鳴、切島、常闇、飯田、遅れてやってきた麗日とデクの8人で来ていた。

 

 雄英高校から少し離れた立地的にも安心感が持てるのか、店内は客で込み合っていて30分ほど待たされて、ようやくアクトたちに番がやってくる。

 

 アクトは約10年ぶりのファミレスへと来て、物珍しそうに店内を見回していた。

 

 両親が存命の頃は滅多に外出を許されなかったアクトにとって、ファミレスというのは新鮮に映ったものだ。

 

「…帰国して初めて来たなこうした店は」

「やっぱ金持ちになるとこういう店にはこねーのか?」

 

 上鳴は嫌味ではなく興味本位で聞いてきたのだが、アクトも気にせずに答えた。

 

「あぁ、アメリカでもこうした大衆向けの店ではなくコース料理が出ている店ばかり行っていたな。

 もっとも、俺の場合会食という形の食事ばかりで食べた気はしなかった」

 

 サイドキック時代から最年少プロと接触を持とうとする業界人が多く、アクトは時間が合えば事務所の勧めでそうした企業人たちと会食をしていた。

 

 中には自分の娘まで連れてきて婚姻を仄めかす食わせ者もいて、アクトとしてはそうしたやからを振り切るのにも神経を使っていたのを思い出したのだった。

 

 とはいっても、それは最初の時期だけで、1ヶ月もすると接触しようとする業界人も激減したものだが、それをアクトは口にしなかった。

 

「やっぱプロは違ぇなぁ。

 なぁ、ヒーロー名聞いてもいいか?

 もしかしたら知ってるかもしれねえし」

「まぁやめておけ、食事中に俺のヒーロー名や評判を聞いたらヒヨっ子のお前たちでは食事も通らなくなるだろうからな。

 俺のことよりも、まずは今回の実戦試合の反省会だ。

 俺の意見から言わせてもらうと―――」

 

 アクトはモニタールームで見た反省会参加者たちの良かったところ悪かったところ改善すべきところを、次々と上げていく。

 

「…まぁ、全体的に見てお前たちに足りないのは体力だな、基礎がまだまだ固まっていない。

 個性の使い方はやはり長年付き合ってきているとあって目を見張るものもあるが、個性以外の…基礎体力や格闘技術、状況判断の仕方がまだまだ圧倒的に不足している。

 …まぁ、デクは少々例外だがな、お前は基礎もそうだが個性の使い方がなっていない、自爆するその個性をどれほど理解しているかは知らないが、早急に使い方を見詰め直すのだな」

 

 総括して全員には体力が足りないと言い切り、デクにもきつめの指摘を付け加えた。

 

「格闘かぁ、あんましして来てないから、どこか部活動でもやってみようかな?」

「体力は…確かに持久走を八百万君みたいな個性便りと違って個性と自前の体力であれだけ走っていたからな、確かに必要なんだろう、勉強になるな!!」

「最後に物を言うのは体力という事か…」

 

 耳郎たちも食事を終えない限り口を開きそうにないアクトに釣られるように食事を摂り始める。

 

「食事も来たことだし、後にしよう」

 

 アクトは無理に話を切り上げ、ウェイトレスが配膳してきた料理を食べ始めた。

 

 アクトとしては食事をしている間、どう言って彼らの気分をなるべく害さない程度の話に持って行こうか考えていた為、あまり味を気にすることなく注文していたチキンドリアを食べている。

 

「ねぇ、加減君のヒーロー名って…〝グッドスピード〝で合ってる?」

「「「「グッドスピード!?」」」」

「デクよ、良く気付いたな」

 

 そして食事を終えた面々はアクトが口を開くのを待っていた時、店内に衝撃音が走った。

 

「えっ、なに!?」

「いったい…あれはっ!?」

「―――お前たち伏せろ!!」

 

 アクトの鋭い声が上がり、デク達はすぐに体制を低くして周囲を見回す。

 

 入口周辺の自動ドアがぶち破られていて、その周辺も何かの個性を使ったのか、壁面が抉れていて外部から店内が見て分かるほど破損していた。

 

「か、金を出せえええええええっ!!」

 

 店内に響き渡るほどの男の声が聞こえてきて、自然とその方向にアクトたちも視線を向ける。

 

 そこには、目の血走しった短髪の狼男が興奮して暴れていた。

 

 強盗―――アクトたちの前にヴィランが現れた。

 

 




あっという間の戦闘回でした。
そして主人公の個性紹介。
アクト君の言ったとおり、原作の轟くん同様個性婚で意図的に狙った個性を子供に宿そうと画策して生まれたのが彼でした。

どこまでも加速し、どこまでも減速させる。

技のゼロフィールドはオリジナル技ですね。
技クロスについてはそのうち出す予定です。

そして最後にまた戦闘!!
次回残酷描写入ります、ご注意を。
読んでいただきありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。